World of Fantasia

神代 コウ

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カフェテリアの男

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 受付を済ませた一行は建物の中で合流すると、中にいた案内人に証明書のカードを見せるように言われる。そこに記された記号には、如何やら事前に決められている席が記されていたようで、カードを返すと座席の場所へと案内された。

 「あんまり席に余裕ないんだな」

 「この人数だからねぇ。推薦状枠みたいなのが用意されているっていうのにも驚きだけど・・・。本当は推薦状も決められた人数しか出せなかったんだね」

 恐らくルーカスのようなアルバの役職を持った人物には、定められた人数の推薦状しか用意されていなかったようだ。それをシン達一行だけでも五人分の推薦状を使ってしまっている。

 これでは他に招待したい人物がいたとしても残りはほぼ無いに等しいだろう。それ程までにルーカスは、シンたちの情報収集能力を見込み、ジークベルトの調査を依頼したという事だ。彼の並々ならぬ覚悟が伺える。

 演奏が始まるまではまだ少し時間があるようだ。シンはトイレを済ませてこようと席を立つ。するとツバキも一緒に行くと言い出し、二人で教会内にいるスタッフの元へ向かうとトイレの場所を教えてもらう。

 男性用のトイレの方はそれほど混んでいなかったが、女性用の方はだいぶ長い列が出来ていた。女は大変だなと話しながら二人はトイレに入る。小便器の方へ向かうシンと、大便器の個室へ向かうツバキ。

 「お前、大きい方だったのか。大丈夫か?」

 「大丈夫だよ、大袈裟なんだから・・・」

 ツバキがどれだけ掛かるか分からない。一人で席に戻って彼が迷子になっても大変だと思い、シンは何処かで待っていなければと用を足しながら考えていると、隣で用を足していた男がシンに声をかけてきた。

 「無事に参加できたようですね」

 「え?・・・えぇっと、どちら様で?」

 「直接お目に掛かるのは街のカフェテリア以来でしょうか?」

 その男は、シンがグーゲル教会に忍び込んだ際にジークベルト大司教に部隊長の名前を聞いていた、オーギュスト・ケヴィンという探偵だったのだ。カフェテリアというのは、シンとミアでアルバの街を探索している時に立ち寄った店のことで、シンはそこで近くの席に座る男に憧れの視線を送っていた。

 「あっ!あの時のッ・・・」

 ケヴィンに言われたヒントで思い出すことに成功したシンだったが、カフェテリアでの印象よりも、シンの中ではグーゲル教会でジークベルト大司教と話している時の場面の方が、強く印象に残っていた。

 あの時は一方的にシンだけがその存在を確認していただけで、ケヴィンはあの場にシンがいたことを知らない・・・はずだった。

 「無事に参加できたって・・・。面識ありましたっけ?」

 シンが疑問に感じたのは、二人はこれまで一切面と向かって話をした覚えがないという事だった。なのに何故彼はシンに向かって“無事に参加できた“などと声をかけたのだろうか。

 「これは失礼。私は何度か貴方の気配を感じていました。カフェテリアの時は勿論、博物館の時やこの教会でもそうです」

 「!?」

 何とケヴィンは、要所要所でシンが盗み聞きしているのを知っていたのだ。その上でシンの手助けとなるような行動をしていたようだ。しかし、何故彼はそのような行動をしたのか。単なる気まぐれとは思えず、シンはケヴィンが何を企んでいるのかその思惑について問う。

 「一体いつから・・・。それじゃぁ式典に参加出来たのは・・・」

 「それは買い被り過ぎです。あなた方なら私の“余計なお世話“などなくとも、推薦状を獲得することが出来たと思いますよ?」

 「推薦状の事まで・・・」

 話によると、ケヴィンはシン達の知らぬまにニクラス教会にも訪れていたようで、その時シンとミアがルーカス司祭に連れられ教会の奥の部屋へと案内されるところを見ていたのだという。

 その後、シン達がニクラス教会を離れた後にルーカス司祭と接触。彼とも顔見知りだというケヴィンは、式典に推薦状が必要だということを知っていた為、自分にも用意してくれないかとルーカスに問う。

 だが、ルーカス司祭が用意できる推薦状は無くなってしまったと断られてしまったのだという。ケヴィンは別の方法で式典への出席を果たし、こうして今シンの前に現れた。

 その方法については語られなかったが、恐らく別の人物からの推薦状、或いは招待状などを入手したのだろう。シン達の受けていた依頼の手助けをしたのも、顔見知りであるルーカスが困っている事をどこからか聞きつけた為だったという。

 「でも驚きましたよ。貴方のあの能力・・・どんな所にも潜入出来そうですね。一体どんなカラクリが?」

 「カラクリっていうか・・・クラススキルなんだ」

 「クラススキル・・・なるほど。それでそのクラスとは?」

 この男が何者なのか分からず、一瞬言葉に詰まるシンだったが沈黙が続けばいらぬ疑いをかけられるかもしれない。それにクラスを口にするくらい、これまでの街でも普通にしてきた事だった。

 何なら、これまでアサシンギルドを見つけられなかったことに関して、何か情報が得られるかも知れない。ここは逆に男を利用するつもりで、シンは自身のクラスを正直に口にした。

 「アサシンのクラスだ。影を使って空間を移動した」

 「アサシン・・・?聞いたことはありますが、珍しいクラスですね。実際にお会いするのは初めてです」

 やはり如何にもおかしい事がある。WoFというゲームの中では、アサシンというクラスは決して珍しいクラスなどではなかった筈。それなりにアサシンのクラスについての情報やスキルの用途、成長の傾向など様々な解析情報なども、一般のプレイヤーでも調べることも可能だった。

 確かに派手さや爽快感のあるクラスではなく、所謂人気クラスランキングや最強クラスなどにその名が上がることはなかったが、それでもギルドが無いなどということはなかった筈。

 それでも男は、シンの口にしたアサシンというクラスに驚きの表情を浮かべていた。如何やらこの世界ではアサシンというクラスは珍しいものになっているようだ。
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