1,267 / 1,646
犯行の推測
しおりを挟む
一行はケヴィンとマティアスの申し出を受け入れ、共に事件解決に協力する事にした。それは自分達が宮殿から解放される為でもあるが、向こうも自身の私欲の為とはいえ見ず知らずのシン達を、式典やパーティーに参加できるよう工面してくれた恩がある。
「分かった。その話、受けよう。みんなもそれでいいよな?」
「あぁ、勿論だ」
「じっとしてても暇だしなぁ」
「自分達の身の潔白を、自分達で証明するのですね!こういうの、何だか燃えてきますね!」
部屋に閉じ込められ、事の顛末を待ち続けるよりも、自ら最良の結末を手繰り寄せられる選択肢があるのなら、それに手を伸ばさないのは勿体無いというのが、一行の判断として結論付いたようだ。
シン達の返事を聞いて嬉しそうな表情を浮かべるケヴィン。しかし、どうにも彼の笑顔には裏がありそうで素直に協力したいと思えなくなっていたシン。だが今回に限っては、ケヴィンの動向を伺う第三者としてマティアス司祭も行動を共にする。
ケヴィンとて、教団に目をつけられるのは望まぬ展開のはず。今度は監視の目も多くなり、不審な動きがあれば仲間達とすぐに共有できる。彼の思惑や目的を探るという意味でも、今回の話は一行にとってかなり有益な展開となった。
先ずは事情を説明しなければと、ケヴィンとマティアスはシン達の宿泊していた部屋へ共に戻り、調査の段階や今現在で把握している事などを共有した。
とはいうものの、事件に関しては多くは分かっていないようで、犯人は手掛かりとなる証拠を残さずして現場を去っていったという。しかし、それは同時に今回の犯行は突発的に起こされたものではなく、計画的なものだった可能性が濃厚になったとケヴィンは語る。
それもシンの扱う影のスキルのような、テクニカルな使い方をするスキルなどを用いた犯行ではなく、何らかの古典的な犯行であったのではないかと睨んでいるようだ。
と、いうのも、犯行現場や宮殿三階の要人達が宿泊していたエリア付近は、それぞれの護衛達により新手の人物を感知するスキルや、そもそもスキルの発動とその位置を感知する能力によって、厳重な警戒体制となっていた。
そんな中でスキルを使用しようものなら、護衛達に囲まれすぐに御用になるのがオチだ。そこでケヴィンが鑑識の者達に重点的に調べるよう依頼したのは、部屋や家具、食器などありとあらゆるところに、人間にとって“毒“となる成分が付着していないかどうかだった。
「何故“毒“だと思ったんだ?」
「簡単な事ですよ。ジークベルト氏の部屋は密室でした。中で大きな音がしたり、揉め事があったという話はありませんでした。何より選りすぐりの護衛隊がそうおっしゃるのなら信用してもいいでしょう」
「やけに教団の護衛隊とやらを信用しているんだな・・・」
ミアがケヴィンの話を聞いて疑問に思ったことを尋ねる。確かに教団の者ではない探偵のケヴィンが、盲信的に護衛隊の話を鵜呑みにしているのは気になるところだった。
「確かにそう言われるのも無理もないですね・・・。ただ、オイゲンという人物を知っていれば、彼が依頼を受けている護衛の対象を、その仕事中に始末するなんて考えづらいからです。じゃないと、騎士団最強の盾なんて異名では呼ばれませんよ」
実績やそれに付随する名声があるからこその信頼度という事だろうか。確かに他の得体の知れない者達よりも、そういった多くの仲間や街の人々に慕われる有名な人間の方が信用はできると言ったところだろうか。
「勿論、彼らが直接ジークベルト氏を殺したという可能性も無くはありません。ですが、そこに時間を割いているほどの余裕はありません。他にも疑わしき人物は、この宮殿内に多くいるのですから・・・」
可能性が低いところは後回しにし、最も信用度のある彼らを中心に犯人を探すのがいいだろうということで、それぞれのシン達のような団体は逐一彼らに報告を義務付けられている。
その代わりとして、各団体から得た情報は公開されるとのことだった。つまり集めた情報は共有され、犯人へと繋がる情報を手にする事もできるかも知れないということだ。
「話を戻しますが、私が毒による犯行を疑っているのは、それが最も今回の犯行に適しているように感じたからです」
「適している・・・?」
「ジークベルト氏の部屋に入れた人物は限られています。それにスキルや特殊な能力による侵入は考えづらい。となれば、彼が心を許した人物による犯行か、接触しなければならなかった人物。或いはジークベルト氏が外で何かに触れた事により毒を盛られたか・・・。なんにせよ、遅延性の毒であれば誰にでも犯行は可能だったという事です」
すぐに効果の出ない毒。一見それでは役に立たないように思われるが、戦闘やすぐに死に至らしめる場面では使い勝手は悪いかも知れないが、証拠を残さず確実に狙った相手を暗殺するには、これ以上ないほど適した殺害方法だったという事なのだろう。
「分かった。その話、受けよう。みんなもそれでいいよな?」
「あぁ、勿論だ」
「じっとしてても暇だしなぁ」
「自分達の身の潔白を、自分達で証明するのですね!こういうの、何だか燃えてきますね!」
部屋に閉じ込められ、事の顛末を待ち続けるよりも、自ら最良の結末を手繰り寄せられる選択肢があるのなら、それに手を伸ばさないのは勿体無いというのが、一行の判断として結論付いたようだ。
シン達の返事を聞いて嬉しそうな表情を浮かべるケヴィン。しかし、どうにも彼の笑顔には裏がありそうで素直に協力したいと思えなくなっていたシン。だが今回に限っては、ケヴィンの動向を伺う第三者としてマティアス司祭も行動を共にする。
ケヴィンとて、教団に目をつけられるのは望まぬ展開のはず。今度は監視の目も多くなり、不審な動きがあれば仲間達とすぐに共有できる。彼の思惑や目的を探るという意味でも、今回の話は一行にとってかなり有益な展開となった。
先ずは事情を説明しなければと、ケヴィンとマティアスはシン達の宿泊していた部屋へ共に戻り、調査の段階や今現在で把握している事などを共有した。
とはいうものの、事件に関しては多くは分かっていないようで、犯人は手掛かりとなる証拠を残さずして現場を去っていったという。しかし、それは同時に今回の犯行は突発的に起こされたものではなく、計画的なものだった可能性が濃厚になったとケヴィンは語る。
それもシンの扱う影のスキルのような、テクニカルな使い方をするスキルなどを用いた犯行ではなく、何らかの古典的な犯行であったのではないかと睨んでいるようだ。
と、いうのも、犯行現場や宮殿三階の要人達が宿泊していたエリア付近は、それぞれの護衛達により新手の人物を感知するスキルや、そもそもスキルの発動とその位置を感知する能力によって、厳重な警戒体制となっていた。
そんな中でスキルを使用しようものなら、護衛達に囲まれすぐに御用になるのがオチだ。そこでケヴィンが鑑識の者達に重点的に調べるよう依頼したのは、部屋や家具、食器などありとあらゆるところに、人間にとって“毒“となる成分が付着していないかどうかだった。
「何故“毒“だと思ったんだ?」
「簡単な事ですよ。ジークベルト氏の部屋は密室でした。中で大きな音がしたり、揉め事があったという話はありませんでした。何より選りすぐりの護衛隊がそうおっしゃるのなら信用してもいいでしょう」
「やけに教団の護衛隊とやらを信用しているんだな・・・」
ミアがケヴィンの話を聞いて疑問に思ったことを尋ねる。確かに教団の者ではない探偵のケヴィンが、盲信的に護衛隊の話を鵜呑みにしているのは気になるところだった。
「確かにそう言われるのも無理もないですね・・・。ただ、オイゲンという人物を知っていれば、彼が依頼を受けている護衛の対象を、その仕事中に始末するなんて考えづらいからです。じゃないと、騎士団最強の盾なんて異名では呼ばれませんよ」
実績やそれに付随する名声があるからこその信頼度という事だろうか。確かに他の得体の知れない者達よりも、そういった多くの仲間や街の人々に慕われる有名な人間の方が信用はできると言ったところだろうか。
「勿論、彼らが直接ジークベルト氏を殺したという可能性も無くはありません。ですが、そこに時間を割いているほどの余裕はありません。他にも疑わしき人物は、この宮殿内に多くいるのですから・・・」
可能性が低いところは後回しにし、最も信用度のある彼らを中心に犯人を探すのがいいだろうということで、それぞれのシン達のような団体は逐一彼らに報告を義務付けられている。
その代わりとして、各団体から得た情報は公開されるとのことだった。つまり集めた情報は共有され、犯人へと繋がる情報を手にする事もできるかも知れないということだ。
「話を戻しますが、私が毒による犯行を疑っているのは、それが最も今回の犯行に適しているように感じたからです」
「適している・・・?」
「ジークベルト氏の部屋に入れた人物は限られています。それにスキルや特殊な能力による侵入は考えづらい。となれば、彼が心を許した人物による犯行か、接触しなければならなかった人物。或いはジークベルト氏が外で何かに触れた事により毒を盛られたか・・・。なんにせよ、遅延性の毒であれば誰にでも犯行は可能だったという事です」
すぐに効果の出ない毒。一見それでは役に立たないように思われるが、戦闘やすぐに死に至らしめる場面では使い勝手は悪いかも知れないが、証拠を残さず確実に狙った相手を暗殺するには、これ以上ないほど適した殺害方法だったという事なのだろう。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる