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死因と取り調べ
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互いに歌足掻いの目を向けているのは、アルバへやって来た余所者ばかりではなく、宮殿内で働くスタッフ達も同じだった。職務の中で仕事への不満やスタッフ間の人間関係にストレスを抱えていたらしく、様々な人物の噂や疑いのある行動について話が聞けた。
だがその殆どは個人的な感情が多く、エリアマネージャーやシェフへの不満をここぞとばかりに語っているものが多く、犯行に直接関係あるかはさておき、あまり円満な職場というわけでもないようだった。
「どうだった?シン。犯人に繋がりそうな話は聞けた?」
聞き込みをしていたツクヨが、同じく聞き込みで疲れたのか、椅子に座り一息ついているシンの元へとやって来る。
「どうだろうなぁ・・・。なんかいろんな話を聞いてるうちに、さっきのシェフとか怪しく思える人物が増えてきちゃった印象かな」
「こっちも同じ感じかぁ。私の方もそうだったよ。みんなストレスを抱えながら働いていたみたいだね。こういう話を聞くと、正直現実の世界との境がわからなくなってくるよ・・・。どこの世界も同じなんだなってさ・・・」
休みながら情報交換を行なっていると、サボっている二人を見つけてツバキと共に行動をしていたミアもやって来た。
「おいおい、もうサボってるのか?」
「人聞きが悪いよ、ミア。君達の方はどうだったんだい?」
すると、質問をされたミアよりも先にツバキがウンザリとした様子で口を開く。
「有力そうな情報はなかったな。ただ愚痴を聞かされてただけだったぜ・・・」
「あぁ、疑い合ってるのはここの連中も同じようだな。ホントか嘘かは知らねぇが、とりわけ多かったのは・・・」
と、ミアが口にしようとしたところで、何を言おうとしているのか予測してツクヨが言葉を挟み込む。
「上司への不満!でしょ?」
「何だよ、そっちも同じ感じか?この機に乗じて消えてほしいみたいだな。こういう華やかな街でも、そういうのはあるんだな」
シンとツクヨの会話と同じようなことを口走るミア。このまま情報を集めても埒が開かないと、他の者達の聞き込みの様子を見る一行。
ケヴィンは興味深そうにスタッフ達の話を聞き、マティアスの周りには向こうから人が集まり、各々聞いて欲しい話を次から次へとしている。これなら彼らに任せておいても問題なさそうだと判断したシン達は、一旦厨房で使われていた植物やジークベルトの持ち込んだ茶葉を調べるアカリの元へ戻ってみる事にした。
彼女のいるテーブルには、様々な更に乗せられた食用の植物や香り用のハーブなど、よりどりみどりな植物が並べられている。それを手袋をしたアカリが一つ一つ手に取り、葉の様子や香りなどを調べその特徴を、何やらメモ帳ら悪しきものと照らし合わせている。
「アカリ、ずっと調べっぱなしだっただろ。少し休憩でもしたらどうだ?」
「ミアさん。いえ、私なら大丈夫です。それより聞いて下さい!大司教様の持ち込んだ茶葉から、トリカブトと呼ばれる植物の毒に似た毒素があることがわかったんです」
どうやら彼女の方では、ジークベルトの死因に繋がる情報を掴んでいたらしい。事件の解決と、仲間達へ向けられる疑いの目を晴らせるかもしれない情報に、彼女は嬉しそうに語っていた。
「トリカブトって・・・あのトリカブトか?」
「あの・・・?ミアさんはご存じだったのですか?」
「え?・・・あぁ、まぁな。これでも錬金術を齧ってるからな。調合の本で読んだことがあるんだよ」
「流石、ミアさんは博識ですね!」
アカリはミアに尊敬の眼差しを向けるが、実際のところトリカブトが猛毒を持っているということは、ミア達の暮らしていた現実の世界では広く知れ渡っていたのだ。
それこそ様々な物語やドラマ、ゲームなどでも用いられる定番のものとして有名だった。だがアカリの反応を見る限り、この世界ではそれほどポピュラーなものではないらしい。
咄嗟に錬金術や調合の知識で知ったものだと説明できたのは、ミアだったから乗り切れたことで、シンやツクヨだったら誤魔化しきれなかったかもしれないと、内心二人はトリカブトという言葉に反応しなくてよかったと、ほっと胸を撫で下ろしていた。
「何だよ、じゃぁ大司教様とやらの死因はそのトリカブトっていう植物の毒で決まりじゃねぇか」
「正確には、それによく似た毒素ですね。トリカブトの毒は舌や身体に麻痺を起こす症状が出ます。ですが護衛をしていた方々は部屋から物音もしなかったと言っていました・・・。痺れはあれど、トリカブトの毒が死因であるのなら、倒れた時の音や声で誰かが気がつくと思うのですが・・・」
アカリの言うように、護衛のオイゲンらの証言によると、ジークベルトのいる室内からそのような変わった物音などは一切しなかったと聞いている。それに彼が就寝する寸前まで、彼とやり取りを交わしていたことが確認されている。
扉越しのやりとりであったが、実際にジークベルトの声で様々な指示が出されていた。そこで次に気になるのは、その毒が検出された茶葉がどこで採れたものなのか、あるいはその毒がどこで混入したのかと言うことだった。
「この茶葉はアルバでも使われるようなものなのか?」
ミアがアカリと共に厨房で調査に協力していたシェフに尋ねてみるが、そもそもその茶葉自体がこの世界では珍しい物らしく、シェフも実物を目にするのは初めてだったらしい。
紅茶の淹れ方自体は知識として知っていたようだが、実際に紅茶を淹れたのは別のスタッフだったようで、その人物は毒を盛った疑いで今も取り調べ中らしい。
「彼はこの厨房でも唯一その茶葉を取り扱ったことのあるスタッフでして、その事もあって真っ先に疑われていました・・・」
「その紅茶を淹れたスタッフは今どこに?」
「教団の護衛の方々が、調べがつくまで他の協力者との関係性が疑われる以上、他者との接触を避けるように取り調べを行なっているそうですよ?」
するとそんな一行の元へ、同じく聞き込みをしていたケヴィンが訪れ、それならその取り調べを受ける人物に直接話を聞いてみようと提案してきた。しかし、取り調べはまだ教団の預かりとなっていて、部外者は立ち入りを禁止されているのだとシェフは語る。
それなら丁度いい人物がいると、ケヴィンはとある人物の方へ視線を送る。その方向に一行が顔を向けると、そこには多くのスタッフに囲まれるマティアス司祭の姿があった。
確かに彼の立場であれば、取り調べに立ち会うことが可能かもしれない。
だがその殆どは個人的な感情が多く、エリアマネージャーやシェフへの不満をここぞとばかりに語っているものが多く、犯行に直接関係あるかはさておき、あまり円満な職場というわけでもないようだった。
「どうだった?シン。犯人に繋がりそうな話は聞けた?」
聞き込みをしていたツクヨが、同じく聞き込みで疲れたのか、椅子に座り一息ついているシンの元へとやって来る。
「どうだろうなぁ・・・。なんかいろんな話を聞いてるうちに、さっきのシェフとか怪しく思える人物が増えてきちゃった印象かな」
「こっちも同じ感じかぁ。私の方もそうだったよ。みんなストレスを抱えながら働いていたみたいだね。こういう話を聞くと、正直現実の世界との境がわからなくなってくるよ・・・。どこの世界も同じなんだなってさ・・・」
休みながら情報交換を行なっていると、サボっている二人を見つけてツバキと共に行動をしていたミアもやって来た。
「おいおい、もうサボってるのか?」
「人聞きが悪いよ、ミア。君達の方はどうだったんだい?」
すると、質問をされたミアよりも先にツバキがウンザリとした様子で口を開く。
「有力そうな情報はなかったな。ただ愚痴を聞かされてただけだったぜ・・・」
「あぁ、疑い合ってるのはここの連中も同じようだな。ホントか嘘かは知らねぇが、とりわけ多かったのは・・・」
と、ミアが口にしようとしたところで、何を言おうとしているのか予測してツクヨが言葉を挟み込む。
「上司への不満!でしょ?」
「何だよ、そっちも同じ感じか?この機に乗じて消えてほしいみたいだな。こういう華やかな街でも、そういうのはあるんだな」
シンとツクヨの会話と同じようなことを口走るミア。このまま情報を集めても埒が開かないと、他の者達の聞き込みの様子を見る一行。
ケヴィンは興味深そうにスタッフ達の話を聞き、マティアスの周りには向こうから人が集まり、各々聞いて欲しい話を次から次へとしている。これなら彼らに任せておいても問題なさそうだと判断したシン達は、一旦厨房で使われていた植物やジークベルトの持ち込んだ茶葉を調べるアカリの元へ戻ってみる事にした。
彼女のいるテーブルには、様々な更に乗せられた食用の植物や香り用のハーブなど、よりどりみどりな植物が並べられている。それを手袋をしたアカリが一つ一つ手に取り、葉の様子や香りなどを調べその特徴を、何やらメモ帳ら悪しきものと照らし合わせている。
「アカリ、ずっと調べっぱなしだっただろ。少し休憩でもしたらどうだ?」
「ミアさん。いえ、私なら大丈夫です。それより聞いて下さい!大司教様の持ち込んだ茶葉から、トリカブトと呼ばれる植物の毒に似た毒素があることがわかったんです」
どうやら彼女の方では、ジークベルトの死因に繋がる情報を掴んでいたらしい。事件の解決と、仲間達へ向けられる疑いの目を晴らせるかもしれない情報に、彼女は嬉しそうに語っていた。
「トリカブトって・・・あのトリカブトか?」
「あの・・・?ミアさんはご存じだったのですか?」
「え?・・・あぁ、まぁな。これでも錬金術を齧ってるからな。調合の本で読んだことがあるんだよ」
「流石、ミアさんは博識ですね!」
アカリはミアに尊敬の眼差しを向けるが、実際のところトリカブトが猛毒を持っているということは、ミア達の暮らしていた現実の世界では広く知れ渡っていたのだ。
それこそ様々な物語やドラマ、ゲームなどでも用いられる定番のものとして有名だった。だがアカリの反応を見る限り、この世界ではそれほどポピュラーなものではないらしい。
咄嗟に錬金術や調合の知識で知ったものだと説明できたのは、ミアだったから乗り切れたことで、シンやツクヨだったら誤魔化しきれなかったかもしれないと、内心二人はトリカブトという言葉に反応しなくてよかったと、ほっと胸を撫で下ろしていた。
「何だよ、じゃぁ大司教様とやらの死因はそのトリカブトっていう植物の毒で決まりじゃねぇか」
「正確には、それによく似た毒素ですね。トリカブトの毒は舌や身体に麻痺を起こす症状が出ます。ですが護衛をしていた方々は部屋から物音もしなかったと言っていました・・・。痺れはあれど、トリカブトの毒が死因であるのなら、倒れた時の音や声で誰かが気がつくと思うのですが・・・」
アカリの言うように、護衛のオイゲンらの証言によると、ジークベルトのいる室内からそのような変わった物音などは一切しなかったと聞いている。それに彼が就寝する寸前まで、彼とやり取りを交わしていたことが確認されている。
扉越しのやりとりであったが、実際にジークベルトの声で様々な指示が出されていた。そこで次に気になるのは、その毒が検出された茶葉がどこで採れたものなのか、あるいはその毒がどこで混入したのかと言うことだった。
「この茶葉はアルバでも使われるようなものなのか?」
ミアがアカリと共に厨房で調査に協力していたシェフに尋ねてみるが、そもそもその茶葉自体がこの世界では珍しい物らしく、シェフも実物を目にするのは初めてだったらしい。
紅茶の淹れ方自体は知識として知っていたようだが、実際に紅茶を淹れたのは別のスタッフだったようで、その人物は毒を盛った疑いで今も取り調べ中らしい。
「彼はこの厨房でも唯一その茶葉を取り扱ったことのあるスタッフでして、その事もあって真っ先に疑われていました・・・」
「その紅茶を淹れたスタッフは今どこに?」
「教団の護衛の方々が、調べがつくまで他の協力者との関係性が疑われる以上、他者との接触を避けるように取り調べを行なっているそうですよ?」
するとそんな一行の元へ、同じく聞き込みをしていたケヴィンが訪れ、それならその取り調べを受ける人物に直接話を聞いてみようと提案してきた。しかし、取り調べはまだ教団の預かりとなっていて、部外者は立ち入りを禁止されているのだとシェフは語る。
それなら丁度いい人物がいると、ケヴィンはとある人物の方へ視線を送る。その方向に一行が顔を向けると、そこには多くのスタッフに囲まれるマティアス司祭の姿があった。
確かに彼の立場であれば、取り調べに立ち会うことが可能かもしれない。
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