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血濡れの身体
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ツクヨの一撃を首に受けた大型モンスターは、その場で膝をつき崩れ落ちる。目は白目を剥き意識を失っているようだ。無理もない、それ程凄まじいいちげきだったのだから。
「すげぇ・・・ツクヨ、アンタいつの間にこんなッ・・・!?」
シンがツクヨの一撃に目を奪われている間に、何と意識を失っていた筈のモンスターが片膝を立てて立ち上がろうとしていたのだ。着地したツクヨはまだそれに気がついていない。
そもそもモンスター自体も、自身が立ちあがろうとしているのに気が付いているのだろうか。モンスターからは生命の気配が感じられない。まるで何者かに突き動かされているかのように、無機質なソレは意識のないままその足でツクヨのいる方へ駆け出し、丸太のように強靭な腕で周囲を薙ぎ払おうとする。
「馬鹿なッ・・・ツクヨッ!まだ意識があるぞ!!」
「えっ・・・?」
シンの言葉で振り返るツクヨだったが、その時には既にモンスターの腕が彼のすぐ横に差し迫っていた。ツクヨの華奢な肉体では到底受け止めきれない。だが躱すにはもう間に合わない。
ツクヨは歯を食いしばり覚悟を決めると、モンスターの強烈な一撃を手にした刀で受け止める。刃を突き立て反対の腕で刀身を支える。地面に転がる石や草木がモンスターの振るう腕の勢いで巻き起こる風で吹き飛ばされて行く。
そしてその腕がツクヨの刀の刃に触れた瞬間、モンスターの丸太のように太い腕が宙を舞う。その場にいた全員が一瞬、何が起こったのか理解出来なかった。
絶対に防げぬと思っていた一撃を受けた筈のツクヨは、その一撃を受ける瞬間に閉じた目をゆっくりと開く。すると目の前にはモンスターの鮮血が飛び散る景色が広がっていたのだ。
「えッ!?そんなまさか・・・。刀に衝撃すら伝わって無いのにッ!?」
ツクヨは助かった。だがモンスターを傷付けずに追い返すという約束が果たせなかった。血の匂いを嗅ぎ付け、他のモンスター達がやって来る。これ程までに凄まじい肉体と生命力を兼ね揃えたモンスターに囲まれれば、シンとツクヨでも全てから逃れることは出来なくなってしまう。
しかし血の匂いは、ツクヨの刀と服にも付いてしまっている。このままここを離れても、逃げた先にもモンスターの脅威が降り掛かる結果となってしまう。
それを察したツクヨは、このまま野営には戻れぬとせめてシンだけでもこの場を離れるように言う。
「馬鹿な真似はよせ!あんなのと連戦になれば、いくらツクヨでも・・・!」
「私なら大丈夫だ!当初の予定とは違っちゃったけど、これでモンスター達の気を私に向けることが出来る。君は野営へ戻っててくれ」
「どうする気だ!?血の匂いが付いてる限り狙われ続けるんだぞ?」
「何とかするさ。いいかい?もう時間がない、君は今すぐ私から離れるんだ。決して野営までの道程でモンスターに見つかってはいけないよ?」
ツクヨは一人でモンスターを請け負う覚悟を決めていた。シンの身を案じる言葉は優しく、まるで儚いもののようにツクヨの存在を危うくさせるものだった。
「ツクヨッ!!」
シンの声にこれ以上ツクヨが応えることはなかった。ただ笑みを浮かべてシンに安心を与えようとしながら、彼は野営とは反対の方角へと駆け抜けて行った。
ツクヨの身を案じる気持ちと、彼の言葉を尊重すべきという気持ちがシンの身体をその場に止め、前へ向かうか後ろへ下がるか決め兼ねさせる。
片腕を失った大型のモンスターが意識を取り戻す。白目に瞳が戻って来てモンスターは、腕の痛みに悲痛な声を上げながらも、血の匂いを身に纏ったツクヨの後を追い、地面を蹴り上げ同じ道程を駆け抜けて行った。
大地を揺らす程の勢いで地を蹴ったモンスターの振動で我に帰ったシンは、やはりツクヨを一人で向かわせることが出来ず、彼の覚悟を無碍にしようとも彼を失うという方がシンにとっては何よりも耐え難く、申し訳なく思いながらも駆け抜けて行ったモンスターの後を追い掛ける。
モンスター逃れる巨体が駆け抜ける風に巻かれ、周囲の風が後を追うシンの追い風となる。シンの側を舞う木の葉に導かれ、片腕のモンスターを視界に捉えたシンは影を使いモンスターの向かう先の地面に転移の影の沼を展開する。
モンスターはツクヨの後を追うのに夢中で、向かう先の地面に影が集まっている事にも気付かず、力強くシンの仕掛けた罠を踏み抜いた。大きな身体はバランスを崩し前屈みに倒れる。
地面についた手と膝も、影に飲まれた足と同様に地中へと沈んで行く。その横を追いついたシンが通り過ぎる。互いの姿を視界に捉えたシンとモンスター。だがシンの意思は既に片腕のモンスターには無く、ツクヨの方へと向いていた。
視線を先へと向けたシンを追い掛けようとする片腕のモンスターだったが、既に身体は影へと飲み込まれ、気づいた時には既に遅く、片腕のモンスターは影の中に全身を落とし込み、別の場所へと姿を消した。
追い掛けるツクヨの気配を探すと、彼の周りには既に数体のモンスターの気配がやって来ていた。
「マズイぞツクヨ。もう既にモンスター達が寄って来てる・・・。早くその血の匂いをどうにかしないと・・・!」
「すげぇ・・・ツクヨ、アンタいつの間にこんなッ・・・!?」
シンがツクヨの一撃に目を奪われている間に、何と意識を失っていた筈のモンスターが片膝を立てて立ち上がろうとしていたのだ。着地したツクヨはまだそれに気がついていない。
そもそもモンスター自体も、自身が立ちあがろうとしているのに気が付いているのだろうか。モンスターからは生命の気配が感じられない。まるで何者かに突き動かされているかのように、無機質なソレは意識のないままその足でツクヨのいる方へ駆け出し、丸太のように強靭な腕で周囲を薙ぎ払おうとする。
「馬鹿なッ・・・ツクヨッ!まだ意識があるぞ!!」
「えっ・・・?」
シンの言葉で振り返るツクヨだったが、その時には既にモンスターの腕が彼のすぐ横に差し迫っていた。ツクヨの華奢な肉体では到底受け止めきれない。だが躱すにはもう間に合わない。
ツクヨは歯を食いしばり覚悟を決めると、モンスターの強烈な一撃を手にした刀で受け止める。刃を突き立て反対の腕で刀身を支える。地面に転がる石や草木がモンスターの振るう腕の勢いで巻き起こる風で吹き飛ばされて行く。
そしてその腕がツクヨの刀の刃に触れた瞬間、モンスターの丸太のように太い腕が宙を舞う。その場にいた全員が一瞬、何が起こったのか理解出来なかった。
絶対に防げぬと思っていた一撃を受けた筈のツクヨは、その一撃を受ける瞬間に閉じた目をゆっくりと開く。すると目の前にはモンスターの鮮血が飛び散る景色が広がっていたのだ。
「えッ!?そんなまさか・・・。刀に衝撃すら伝わって無いのにッ!?」
ツクヨは助かった。だがモンスターを傷付けずに追い返すという約束が果たせなかった。血の匂いを嗅ぎ付け、他のモンスター達がやって来る。これ程までに凄まじい肉体と生命力を兼ね揃えたモンスターに囲まれれば、シンとツクヨでも全てから逃れることは出来なくなってしまう。
しかし血の匂いは、ツクヨの刀と服にも付いてしまっている。このままここを離れても、逃げた先にもモンスターの脅威が降り掛かる結果となってしまう。
それを察したツクヨは、このまま野営には戻れぬとせめてシンだけでもこの場を離れるように言う。
「馬鹿な真似はよせ!あんなのと連戦になれば、いくらツクヨでも・・・!」
「私なら大丈夫だ!当初の予定とは違っちゃったけど、これでモンスター達の気を私に向けることが出来る。君は野営へ戻っててくれ」
「どうする気だ!?血の匂いが付いてる限り狙われ続けるんだぞ?」
「何とかするさ。いいかい?もう時間がない、君は今すぐ私から離れるんだ。決して野営までの道程でモンスターに見つかってはいけないよ?」
ツクヨは一人でモンスターを請け負う覚悟を決めていた。シンの身を案じる言葉は優しく、まるで儚いもののようにツクヨの存在を危うくさせるものだった。
「ツクヨッ!!」
シンの声にこれ以上ツクヨが応えることはなかった。ただ笑みを浮かべてシンに安心を与えようとしながら、彼は野営とは反対の方角へと駆け抜けて行った。
ツクヨの身を案じる気持ちと、彼の言葉を尊重すべきという気持ちがシンの身体をその場に止め、前へ向かうか後ろへ下がるか決め兼ねさせる。
片腕を失った大型のモンスターが意識を取り戻す。白目に瞳が戻って来てモンスターは、腕の痛みに悲痛な声を上げながらも、血の匂いを身に纏ったツクヨの後を追い、地面を蹴り上げ同じ道程を駆け抜けて行った。
大地を揺らす程の勢いで地を蹴ったモンスターの振動で我に帰ったシンは、やはりツクヨを一人で向かわせることが出来ず、彼の覚悟を無碍にしようとも彼を失うという方がシンにとっては何よりも耐え難く、申し訳なく思いながらも駆け抜けて行ったモンスターの後を追い掛ける。
モンスター逃れる巨体が駆け抜ける風に巻かれ、周囲の風が後を追うシンの追い風となる。シンの側を舞う木の葉に導かれ、片腕のモンスターを視界に捉えたシンは影を使いモンスターの向かう先の地面に転移の影の沼を展開する。
モンスターはツクヨの後を追うのに夢中で、向かう先の地面に影が集まっている事にも気付かず、力強くシンの仕掛けた罠を踏み抜いた。大きな身体はバランスを崩し前屈みに倒れる。
地面についた手と膝も、影に飲まれた足と同様に地中へと沈んで行く。その横を追いついたシンが通り過ぎる。互いの姿を視界に捉えたシンとモンスター。だがシンの意思は既に片腕のモンスターには無く、ツクヨの方へと向いていた。
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追い掛けるツクヨの気配を探すと、彼の周りには既に数体のモンスターの気配がやって来ていた。
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