機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

文字の大きさ
33 / 146
第二章 復讐その二 ジェームズ=ゴドウィン

ハンナの口づけ

しおりを挟む
 伯爵邸に帰って来た僕達は、またそれぞれの仕事に戻る。

 ライラ様は相当嫌がっていたが、もう“カートレット伯爵”となったのだから仕方ないです……。

 ハンナさんも他の侍女や使用人達に次々と指示を出しながら、ハンナさん自身も仕事に精を出す。
 ライラ様のスケジュール管理や身の回りのお世話、屋敷内のチェック等々……。

 うん。この屋敷はハンナさんがいなければ三日とかからずに全てが崩壊しそうだ。

 で、僕はというと。

「ふう……湿地帯、か……」

 大きく息を吐くと、僕は眉根を寄せてポツリ、と呟く。

 前々から懸念していたことだけど、ライラ様の義手、義足、そしてそれを支えるための補助骨格など、全て鋼とミスリルで構成されており、ライラ様の身体は非常に重くなっている。

 これは、僕の【設計デザイン】が導き出した、ライラ様の復讐を果たすための最適解であるため、他の素材に代えるという選択肢もない。

 そこにきて、今回の湿地帯横断だ。
 今回みたいな単純な移動の問題だけでなく、万が一その重量が仇となる環境……今回の湿地帯や水中、砂漠地帯だと、身動きが取れず明らかに不利になってしまう。

「何か対策を考えないと……」

 そう考えた僕は。

「……【設計デザイン】」

 発動した瞬間、無数に展開される図面と共に、頭が割れそうな程の激痛が僕を襲う。

「ぐ……あ……!」

 く、くそ……これ、以上……は……!

 ——ドサッ。

「ハアッ……ハアッ……!」

 僕は【設計デザイン】を止め、そのまま床に倒れ込む。

 あー……武器や防具を作った時は大丈夫だったから、いけるかと思ったんだけど……。
 やっぱりここまで複雑な構造になってしまうと、僕の身体じゃ何のダメージも負わずに処理することはできないのか……。

 息を整え、僕は立ち上がると。

「あ……鼻血……」

 まあ、これも仕方ないか。

「でも、必要な材料は確認したし、まずはハンナさんに伝えて材料の調達をしないと」

 僕はグイ、と腕で鼻をぬぐうと、部屋を出てハンナさんの元へと向かった。

 ◇

「……こちらが、アデル様がお求めになられた素材一式です」

 ハンナさんが悲し気な表情を浮かべながら、ずらり、と並べられた素材の前で一礼した。
 僕がハンナさんにお願いしたものは、木箱一箱分の魔石、前回の余りである鉄とミスリル、そして……大量の炭と近くの山の火口付近にある灰色の岩石、さらには、小さな炎と風を起こすための魔法陣も。

「ありがとうございます。これがあれば、ライラ様の重量の問題が解決できる筈です」
「そして……アデル様はまた、そのお身体を犠牲になさるのですね……」

 そう言うと、ハンナさんがそっと顔を伏せた。

「それで、ライラ様には……」
「……お伝えしておりません」
「ありがとうございます」

 唇を噛むハンナさんに、僕は軽く会釈した。

「……やはり、おやめになるおつもりはございませんか……?」

 ハンナさんの問い掛けに、僕は静かにかぶりを振る。
 だって、これはライラ様が復讐を果たすために、絶対に必要なことだから。
  
「……僕の命は、ライラ様とハンナ様、お二人のためだけにありますから」
「っ! ……そんなの、嬉しくありません……」
「あはは……すいません……」

 泣きそうになるハンナさんに、僕は苦笑するしかなかった。
 でも、ライラ様の非願成就のためには……ライラ様を守るためには、絶対に避けられないんだ。

 僕はあえてハンナさんを見ないようにして、用意された素材に手をかざした。

「——【設計デザイン】!【加工キャスト】!【製作クラフト】!」

 僕は能力を全て同時に発動する。
 ライラ様の身体を作ったあの時と同じように。

「グ……ググ……ガア……!」

 やはり、僕の頭に激痛が走り、全身がきしむ。
 ガキン、と歯が割れる程食いしばりながら耐えつつ、頭に浮かぶ無数の図面に沿って僕の両手が目の前の素材を加工していく。

 大量の炭と岩石から余計なものを取り除き、二つの素材に空気を加えて圧縮すると、灰がかった白の素材に変化した。

 それを様々な形状の部品に変えつつ、一辺三センチ程の正方形の板にしたものに炎と風の魔法陣を転写トレースする。

 それらの部品を組み上げ……。

「あ……ありがとうございます……」
「…………………………」

 ハンナさんが涙を零しながら、僕の目や鼻から流れる血をき取ってくれた。

 僕は軽く会釈をすると、さらに、ライラ様の脚の防具を再度加工して組み込む。

「さ……いご、は……」

 木箱の中の魔石に両手をかざし、直径五センチ、厚さ一センチの魔石のプレートを二つ製作して……防具に組み込んだ。

「……お、わり……ました……」
「アデル様!」

 ハンナさんが床に崩れ落ちそうになる僕の身体を支えると、あらかじめ用意してあったポーションを全身にふりかける。
 そして、ハンナさんがぐい、と口に含んだかと思うと……僕に口づけをして流し込んだ。

「……ん……ぷは……」
「ハ……ンナ……さ……」

 その後も、ハンナさんは何度も何度も口移しで僕にポーションを注ぎ込んでくれた。

 あ、はは……ハンナ、さんの唇……温かくて、柔らかい……。

「絶対に……絶対に、あなたを死なせません! もし……もし、死んでしまったら……私は、あなたを追って死にますからね……!」

 ……ハンナさん……そんな、の……反則、です……よ……。
 だけ、ど……これじゃ、死ね……ないや……。

 そして……僕は、意識を失った。
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

処理中です...