機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

文字の大きさ
34 / 146
第二章 復讐その二 ジェームズ=ゴドウィン

新たな力

しおりを挟む
「う……ん……」

 目が覚めると、部屋の天井が視界に入る。
 どうやら、今回も僕は生き永らえたようだ。

 だけど、前回と違うのは……。

「アデル様!」

 無表情で僕の顔をのぞき込む、ライラ様の姿があったからだ。

「おはようございます、ライラ様……」
「『おはよう』じゃありません! あなたは……あなたって人は……!」

 表情は変わらないが、ライラ様は明らかに怒っていた。
 僕が、勝手にこんな真似をしたことに対して。

「はは……ですがこれで、ライラ様はさらにお強く……「そんなの!」」

 僕の言葉を遮り、ライラ様は強く叫ぶ。

「……そんなの、嬉しく……ありません……」

 そして、その綺麗な右の瞳から、大粒の涙を零した。

「申し訳……ありません……」

 僕は声を絞り出し、そう答えた。

 でも……僕はまた同じことを繰り返すだろう。

 この、ライラ様のために。

「あっ! まだ起き上がっては!」

 僕はライラ様の制止も聞かず、上体を起こした。
 周りを見ると……部屋の入口で、ハンナさんが俯いて立っていた。

「ハンナさん……」
「アデル様……申し訳、ありませんでした……」

 そして、ハンナさんが深々と頭を下げる。
 なんで……? なんで、ハンナさんが謝るんだ……?

「……アデル様がお倒れになった後、ハンナは私の元にやって来て、全てを話してくれました。そして、今回の件について罰を受けたい、と」
「っ!? なんで! なんでハンナさんがそんなことを!」

 だって、これは僕が勝手にしたことで、ハンナさんに無理やりお願いしただけなのに……!

「そして、私はハンナが罰を受けるべきと判断し、アデル様が目を覚まされたら、その沙汰を下すことにしました」
「そんな……! ハンナさんは何も悪くない! お願いです! そのようなことは止めてください!」

 僕はライラ様の肩をつかんで必死に訴えるけど、ライラ様は静かにかぶりを振るのみ。
 ハンナさんも、頭を下げたまま一切動こうともしない。

「……ハンナ」
「はい」
「あなたには、一切の罰を与えません」
「っ! そ、そんな……!」

 ライラ様の言葉に、ハンナさんが驚愕の表情を浮かべる。

「お、お願いします! 私に……私に罰を!」
「いいえ……罰を受けて楽に逃げようだなんて、そうはいきません。今回のこと、永遠に胸に刻んでおきなさい。それが……あなたへの罰です」

 二人の状況に困惑する僕。

 すると……ライラ様が、キュ、と僕を優しく抱き締めた。

「アデル様……あなたは、もはや私とハンナにとって、かけがえのない存在なのです……」
「…………………………」
「ですから、あなたが傷ついたり、苦しんだりすれば、それだけで胸が張り裂けそうになってしまいます」
「ライラ様……」

 ライラ様の想いが、くるおしい程伝わってくる。
 それは、頭を下げたまま、床にぽたぽたと雫を落とすハンナさんからも。

「申し訳、ありませんでした……」

 僕はライラ様を抱き締め返し、圧縮した魔石が埋め込まれた背中をさすった。

 “役立たず”だった僕を、ここまで想ってくださるライラ様に応えるように。

 ライラ様からそっと離れると、僕はベッドから降りて未だ頭を下げたままのハンナさんの元へと向かう。

「ハンナさん……」
「アデル様……」

 僕はハンナさんの身体を起こすと、その顔がくしゃくしゃになっていた。

 そして。

「っ! ア、アデル様……」
「ハンナさん……ありがとう、ございます……」
「はい……はい……!」

 そっとハンナさんを抱き締めると、彼女は僕の肩に顔を乗せ、嗚咽を漏らした。

 ◇

 それから僕達は食事をした後、敷地のあの壁・・・が見える庭に来ていた。

 食事中に聞いた話だと、今回僕が眠っていたのは一週間程度だったらしい。
 ポーションだけで一命もとりとめたし、やっぱり僕の身体は能力への耐性ができているようだ。
 そしてその間、ライラ様もハンナさんも、僕に付きっきりで見守ってくれていたらしい。

 本当に……僕なんかにはもったいない。

 そんなことを考えながら、僕は右手を握ったり開いたりして状態を確認した後、甲冑を身につけたライラ様に向き直った。

「では、今回僕が作ったものについて説明します」
「はい!」

 ライラ様が勢いよく手を挙げて返事をする。
 そんな仕草に、僕は不覚にも可愛いと思ってしまった。

「それで……」

 僕は今回作った……というより、甲冑に加えた新たな機能について説明を始める。

 そもそも製作のコンセプトは、ライラ様の重量過多の問題を解決し、環境に影響されずに戦闘を可能にすることだ。

 だけど、軽い素材を使えば義手、義足と甲冑の防御力が落ちてしまう。
 そこで、防御力を落とさずに全環境に適応する方法について僕は一つの方法にたどり着いた。

「……それが、この甲冑のふくらはぎ部分に取り付けた新機能です。これは、ライラ様の身体を浮かせるもの、と言ったほうが正しいかもですね」
「「“身体を浮かせる”、ですか?」」

 ライラ様もハンナさんも、僕の言っている意味が分からずにキョトン、としている。

「あはは、まずは実際に使っていただいたほうが分かりやすいかもですね」
「は、はあ……」
「では、その左眼を通じて起動してみてください。そうですね……自分が地面の上を滑るようなイメージを思い浮かべるんです」
「地面を滑るイメージ……」

 ライラ様はそっと目を閉じ、すう、と息を吸うと。

「行きます!」

 その宣言とともに、甲冑のふくらはぎ部分が展開し、筒状のものが露わになる。

 そして。

 ——キイイイイイイイイイン……!

 筒状のものから青白い炎が勢いよく噴き出すと。

「キャアアアアアアアアア!」

 耳をつんざく音と共に、ライラ様がものすごい速さで文字通り地面を滑る。
 すると、一気に敷地の壁にまで到達……っ!?

「まずいっ!? ライラ様! その左眼を介せばライラ様の思い通りに動ける筈です! すぐに曲がってください!」
「わわ、分かりました!」

 僕が慌てて叫ぶと、ライラ様が身体を傾け、それに合わせるように壁に激突する直前で急旋回した。
 あ、危なかった……。

「アデル様! これ、すごいです!」
「あはは……そ、そうですか……」

 それから、あっという間に操作方法を身につけたライラ様は、嬉しそうな声で楽しそうに敷地内を縦横無尽に滑った。
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

処理中です...