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第二章 復讐その二 ジェームズ=ゴドウィン
絶望的
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ゴドウィン卿……いや、ゴドウィンとの会談という名の一方的な要求を断り、僕達はすぐさまゴドウィン邸を後にした。
「……これからどうしますか?」
「とにかく、まずはこの街を離れ、アイザックに急いで戻りましょう」
少し不安そうな声でハンナさんが尋ねるけど、僕にはそう答えるのが精一杯だった。
だけど……五千人もの軍勢を相手に、僕達でどうやって戦えっていうんだ……。
「……その後は?」
「……できる限り兵士を確保するのと、住民の避難……でしょうか」
「ですね……」
僕とハンナさんは視線を落とす。
すると。
「大丈夫です。たかだか五千人程度、この私が皆殺しにしてみせます」
そう言うと、ライラ様は口の端を吊り上げ、「あは♪」と嗤った。
だけど……。
「……僕も、ライラ様とご一緒します」
「お嬢様、私もです」
「あは……」
僕達には分かっている。
これは、ライラ様の強がりであると。
僕はライラ様にこの“役立たず”の命を捧げると誓ったんだ。
なら、“役立たず”なりに最後まで、ライラ様と共に……。
宿に到着すると、それぞれ自分の部屋に戻る。
僕はいつもの服に着替えると。
——コンコン。
「アデル様……よろしいですか……?」
僕は急いでドアを開けると、そこには既に甲冑を身にまとっていたライラ様とメイド服を着たハンナさんがいた。
「お二人共、どうなさったんですか?」
「実は、アデル様に折り入ってお願いがあって参りました」
「お願い……?」
僕は二人の悲痛な様子を見て、思わず聞き返す。
「……アデル様今までお世話になりました。ここからは、別々の道を行きましょう」
「はあ!?」
ライラ様の言葉に、僕は思わず叫んだ。
今、ライラ様は何て言った!? 別々の道!? 僕と二人が!?
「ど、どうしてですか……?」
「「…………………………」」
僕は尋ねるけど、二人は何も答えずにただ俯いていた。
本当は僕も分かっている。
二人は、僕だけでも逃がすつもりなんだ。
だけど……だけど……!
「……嫌です」
「っ!? ですが!」
「絶対に嫌だ! 僕は……僕は、最後までお二人と共にいます! 僕のこの命は、お二人がいて初めて意味があるんだ! 二人が傍にいないなら……僕は、死んでいるのと同じなんだ……!」
「「ア、アデル様っ!」」
そう叫ぶと、僕は二人に抱きついた。
絶対に二人から離れまいと、強く、強く。
「「アデル様……アデル様あ……!」」
すると、二人も僕を抱き締め返してくれた。
離れたくないと、願うように。
「……もう、二度とこんなこと、言わないでください……」
「「はい……」
僕達は大粒の涙を零しながら、その場で抱き合った。
◇
——ガタ、ガタ。
夜の街道を、鋼鉄の馬車が荒っぽい音を立ててアイザックの街へと突き進む。
急いで戻り、戦の準備をするために。
「……とりあえず、追手が来ていないのは幸いですね」
「はい……」
僕は御者席から中にいる二人に声を掛けると、ライラ様が弱々しい声で返事した。
「この速さで行けば、明け方には湿地帯へとたどり着きそうですね。そこからは徒歩に切り替えて横断することになりますが……」
「だとすると、アイザックの街に着くまでに追いつかれる可能性もありますね……」
「いえ、それはないでしょう。さすがに湿地帯を抜けるには、橋を渡るしかない訳ですし、橋自体は一度に大勢渡れる幅ではないですからね」
不安そうに話すハンナさんを少しでも安心させようと、僕はあえて前向きにそう言った。
本当は、追いつかれるかどうかは五分五分といったところだけど……。
それから、僕は無言のまま馬車を走らせ、夜明けよりほんの少し前に湿地帯の入口へと到着した。
「さあ、ここからは徒歩ですね」
「「はい」」
僕達は橋に乗り、先を目指す。
夜が明けると、朝日が僕達や湿地帯を照らし始め、幻想的な風景が目の前に広がった。
「綺麗……」
ライラ様がポツリ、と呟く。
そして僕は、そんなライラ様がまるで儚げな天使に見え、思わず見惚れてしまった。
「? アデル様?」
「へ? あ、ああ、いえ……と、ところでこの湿地帯は、底って深いんですかね」
僕の視線に気づいたライラ様に声を掛けられ、僕は恥ずかしくなって誤魔化すようにそんなことを尋ねてしまった。
「ええと、どうなんでしょうか? ねえ、ハンナ」
「そうですね……ですが、どちらかといえば、深くはないですが底が非常にぬかるんでいる様に見えます」
「へえ……」
底がぬかるんでいる……か……。
……まてよ?
僕は立ち止まり、足元の橋をジッと見つめる。
「アデル様、どうしました?」
「……僕達は、勝てるかもしれません」
「「ええ!?」」
ポツリ、と呟いた僕の言葉に、二人が驚きの声を上げる。
「そうだ、そうだよ! これならいける!」
僕は嬉しくなり、二人の手を取ってはしゃいでしまった。
「「そ、それで、どうやって?」」
二人が期待に満ちた瞳で僕を見つめる。
だから、僕はその方法を二人に説明すると。
「「す、すごい……!」」
二人が感嘆の声を漏らす。
後は僕が“どこまでやれるか”だけど……そんなの、やるしか生き残る方法が見つからないんだ。
だったら、やるしかないだろう。
僕は振り返り、その先にいるゴドウィンへ向けて、ただ睨んでいた。
「……これからどうしますか?」
「とにかく、まずはこの街を離れ、アイザックに急いで戻りましょう」
少し不安そうな声でハンナさんが尋ねるけど、僕にはそう答えるのが精一杯だった。
だけど……五千人もの軍勢を相手に、僕達でどうやって戦えっていうんだ……。
「……その後は?」
「……できる限り兵士を確保するのと、住民の避難……でしょうか」
「ですね……」
僕とハンナさんは視線を落とす。
すると。
「大丈夫です。たかだか五千人程度、この私が皆殺しにしてみせます」
そう言うと、ライラ様は口の端を吊り上げ、「あは♪」と嗤った。
だけど……。
「……僕も、ライラ様とご一緒します」
「お嬢様、私もです」
「あは……」
僕達には分かっている。
これは、ライラ様の強がりであると。
僕はライラ様にこの“役立たず”の命を捧げると誓ったんだ。
なら、“役立たず”なりに最後まで、ライラ様と共に……。
宿に到着すると、それぞれ自分の部屋に戻る。
僕はいつもの服に着替えると。
——コンコン。
「アデル様……よろしいですか……?」
僕は急いでドアを開けると、そこには既に甲冑を身にまとっていたライラ様とメイド服を着たハンナさんがいた。
「お二人共、どうなさったんですか?」
「実は、アデル様に折り入ってお願いがあって参りました」
「お願い……?」
僕は二人の悲痛な様子を見て、思わず聞き返す。
「……アデル様今までお世話になりました。ここからは、別々の道を行きましょう」
「はあ!?」
ライラ様の言葉に、僕は思わず叫んだ。
今、ライラ様は何て言った!? 別々の道!? 僕と二人が!?
「ど、どうしてですか……?」
「「…………………………」」
僕は尋ねるけど、二人は何も答えずにただ俯いていた。
本当は僕も分かっている。
二人は、僕だけでも逃がすつもりなんだ。
だけど……だけど……!
「……嫌です」
「っ!? ですが!」
「絶対に嫌だ! 僕は……僕は、最後までお二人と共にいます! 僕のこの命は、お二人がいて初めて意味があるんだ! 二人が傍にいないなら……僕は、死んでいるのと同じなんだ……!」
「「ア、アデル様っ!」」
そう叫ぶと、僕は二人に抱きついた。
絶対に二人から離れまいと、強く、強く。
「「アデル様……アデル様あ……!」」
すると、二人も僕を抱き締め返してくれた。
離れたくないと、願うように。
「……もう、二度とこんなこと、言わないでください……」
「「はい……」
僕達は大粒の涙を零しながら、その場で抱き合った。
◇
——ガタ、ガタ。
夜の街道を、鋼鉄の馬車が荒っぽい音を立ててアイザックの街へと突き進む。
急いで戻り、戦の準備をするために。
「……とりあえず、追手が来ていないのは幸いですね」
「はい……」
僕は御者席から中にいる二人に声を掛けると、ライラ様が弱々しい声で返事した。
「この速さで行けば、明け方には湿地帯へとたどり着きそうですね。そこからは徒歩に切り替えて横断することになりますが……」
「だとすると、アイザックの街に着くまでに追いつかれる可能性もありますね……」
「いえ、それはないでしょう。さすがに湿地帯を抜けるには、橋を渡るしかない訳ですし、橋自体は一度に大勢渡れる幅ではないですからね」
不安そうに話すハンナさんを少しでも安心させようと、僕はあえて前向きにそう言った。
本当は、追いつかれるかどうかは五分五分といったところだけど……。
それから、僕は無言のまま馬車を走らせ、夜明けよりほんの少し前に湿地帯の入口へと到着した。
「さあ、ここからは徒歩ですね」
「「はい」」
僕達は橋に乗り、先を目指す。
夜が明けると、朝日が僕達や湿地帯を照らし始め、幻想的な風景が目の前に広がった。
「綺麗……」
ライラ様がポツリ、と呟く。
そして僕は、そんなライラ様がまるで儚げな天使に見え、思わず見惚れてしまった。
「? アデル様?」
「へ? あ、ああ、いえ……と、ところでこの湿地帯は、底って深いんですかね」
僕の視線に気づいたライラ様に声を掛けられ、僕は恥ずかしくなって誤魔化すようにそんなことを尋ねてしまった。
「ええと、どうなんでしょうか? ねえ、ハンナ」
「そうですね……ですが、どちらかといえば、深くはないですが底が非常にぬかるんでいる様に見えます」
「へえ……」
底がぬかるんでいる……か……。
……まてよ?
僕は立ち止まり、足元の橋をジッと見つめる。
「アデル様、どうしました?」
「……僕達は、勝てるかもしれません」
「「ええ!?」」
ポツリ、と呟いた僕の言葉に、二人が驚きの声を上げる。
「そうだ、そうだよ! これならいける!」
僕は嬉しくなり、二人の手を取ってはしゃいでしまった。
「「そ、それで、どうやって?」」
二人が期待に満ちた瞳で僕を見つめる。
だから、僕はその方法を二人に説明すると。
「「す、すごい……!」」
二人が感嘆の声を漏らす。
後は僕が“どこまでやれるか”だけど……そんなの、やるしか生き残る方法が見つからないんだ。
だったら、やるしかないだろう。
僕は振り返り、その先にいるゴドウィンへ向けて、ただ睨んでいた。
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