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第二十九話 ギリギリの攻防
しおりを挟む「はい、じゃあここまででいいわね? もう次からは絶対に送ってあげないからもうエルフの森にこようなんて思わないでね? じゃあ」
そういってエルフの姉と弟は去っていた。
そう、結局俺は街まで送ってもらったんだ! これで、これで俺はようやくあの宿に泊まれる、野宿をしないで済むんだ!
因みに、弟エルフは一人だと迷うからとついてきたらしい。……もう、彼もエルフの森に行かない方がいいんじゃ無いだろうか?
まあ何はともあれ宿に帰るとしますか。早く体を洗ってぐっすり寝たい。日本人に野宿はハードルが高い。日本人じゃなくても地球人にはハードルがたかいだろうが。
「ん、待てよ」
俺、お金あったっけな? いや、ある訳ないよな。だってもう泊まれなくなったから出かけたんだし。
ってことは、今日も野宿か? 不味い、それだけは避けなければ、もう俺の気持ちが保たない。
まずは受けていた依頼を確認する。薬草千本の納品、うん、知ってた。知ってた上で二、三本少なくなってないかなと思って確認した。
そして、重要なのはここらからだ。今持っている薬草の本数確認だ。もしかしたら千本もっているかもしれない。
百本毎にまとめているから数えるのは簡単だった。全部で988本、988本だった。998本ではない、988本だ。つまり、残り12本今から探してこないといけない。
正直今すぐにでも寝たいのだが、最後の気力を振り絞って後12本を獲得しなければ俺はまた野宿になってしまう。それだけは避けなければ……
❇︎
「これで千、本、目っ!」
遂に、遂に俺は成し遂げたのだ! はち切れそうな頭を無理やり動かして鑑定し、なんとか薬草12本を見つけることができた。
後はこれをギルドに持っていくだけ。はぁ、はぁ、これでやっと、なんだな。
俺は這々の体でギルドに着き、受付の人に言った。
「依頼を達成しました。確認してください」
「あ、タロウさん! って、え!? 大丈夫ですか?」
「は、はい。それより先に依頼の確認を……」
「か、かしこまりました。え、えーっと薬草採取の指名依頼でしたよね。ただいま確認いたします。……確認できました。依頼達成です、こちらが報酬金になります」
「あ、ありがとうございます」
眠い疲れた早く寝たい。でもこれでようやくあの宿へ行ける。
「も、もしかして一日で薬草千本を集めたのですか?」
この状況を見たら誰でも分かるだろ。いいなら早く帰らせてくれ。
俺は喋る気力も惜しくなんとか頷いた。
「さ、流石ですね! あ、それと今回の依頼主からなんですが、この依頼を達成したら是非ともウチへ来て欲しいと言っておりました。地図を用意しているので時間がある時にでも寄ってみてはいかがですか?」
「は、はぁ」
正直疲れすぎて頭が働いていない。受付の人が何いってるかもあんまりよく分かってない。いいから寝させてくれ、もう限界なんだ。
「では、こちらが地図になります。依頼達成お疲れ様でした!」
パシッ
俺は引ったくるように提示された物を受け取り、眠るように歩いた。
そして、視界の中にあのフカフカのベッドが見えた時にはもう夢の中だった。
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