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第16話「元最強陰陽師、風水について検討する」
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「アツヤ、風水って何なの?」
実家との交信を終えて一息ついている俺に、カナデが訪ねてきた。
その口ぶりからすると、カナデは風水という言葉自体を知らないようである。風水は陰陽道の要素の一部であり、カナデは陰陽師見習なのだが、どうやらこの世界の陰陽道には風水についての概念が無いようである。
「いいかい。風水ってのは地形や家とかの位置で吉凶を占ったり、気の流れを制御する魔術の一種なんだ」
カナデに風水についての大まかな説明をすることにした。
風水は古代中国で生まれた魔術であり、陰陽道にも取り入れられている。これは都市計画等にも取り入れられ、例えば平安京や江戸の建設場所の検討にも大きな影響を与えている。
京の都や江戸から東京にかけての繁栄は良く知られている通りであり、これは風水の力も大きな役割を果たしていると言えるだろう。
現代日本では家具や小物の配置などで金運アップとかの、おまじないレベルの話が良く知られているのだが、魔術の専門家的に言えばこれは少し眉唾物である。
しかし、魔術師の扱う本格的な風水は、魔術に重要な影響を与えるものであり、風水を活用することで魔術師同士の戦いで有利に事を進めることが出来る。
「という訳で、星の配置も重要だけど、風水で地の配置も考慮すると、陰陽道がさらに力を増すかもしれないんだ」
「なるほどね。しかもその風水っていうのには魔力そのものは使わないから、魔力が枯渇しているアツヤに丁度いいってことね」
「その通りだよ」
という事で、この世界における風水の解明のため、図書館に行くことにした。目的は地図を見ることである。
風水では山や川などの位置関係が重要であるため、地図がとても重要である。
「あれ? この世界の地図の精度ってどうなってるんだろう?」
この世界の文明レベルはこれまでの暮らしで見てきたところ、中世から近世といったあたりである。魔術が元の世界に比べて一般的であるためか、かなり進んでいる面もあるが地図の精度までは分からない。
「それなら大丈夫だと思うわよ」
地図を司書から受け取ってこちらに持ってくる途中のカナデが、俺の言葉を聞きつけていたようで自信がありそうな雰囲気で答えた。カナデはエルフなだけあって耳が良いようだ。
「見て」
「おお! これは凄い」
カナデが見せてくれたこの世界地図は、見たところかなり正確な物であった。
カナデが持ってきた地図は、世界地図やこの地方らしき地図、更にはメルカトル図法や正距方位図法らしき投影法など、様々な種類である。
これらには縮尺や緯度経度らしき線が記されており、地図の作製技術はかなり進んでいるようだ。
この世界の技術が意外と進んでいるのは、天体観測の時にこの世界の天文学を確認した時にも感じた事である。
「これ、どうやって作ったんだ?」
地図の作製技術は別に風水とは関係ないのだが、好奇心からなんとなく疑問が口をついて出た。
「確か、現代の地図作成の根本は、300年前に大空の魔術師の異名を持つシルフォード=マグナスが開発したらしいわね」
意外にもカナデは俺のどうでも良い疑問に答えてくれた。地図についてはカナデの専門外なので、そういった事にも通暁しているらしいことからカナデは学業一般の成績が良いようである。
まさか、その300年前にも生きていたんじゃないよね?
「シルフォードは飛行の魔法で空高く舞い上がり、そこから見た地上の風景を紙に記したのよ。その地図は、それまで歩いたり、船で移動したりして感覚的にでしか記してこなかった地図とは、格段に上の精度を誇ったらしいわね」
なるほど、やはり魔術が一般的な事が技術の発展に影響を与えているようだ。
「そして200年前、反響の魔術師の異名を持つリフラント=ハンガーが、反応石という鉱石に魔術的な細工をすることで、対象の反応石の方向や距離が分かる魔術が開発されたの。これを地図に応用したことによって、それまで視覚的に捉えたものでしかなく、しかも魔術師の絵画能力に大きな影響を受けていた地図の精度が更に向上したのよ」
それは凄い。元の世界には反応石とかいう鉱物が無いのもあるが、そのような魔術は開発されてこなかった。カナデが教えてくれた反応石を使った方向や距離を正確に測る魔術は、元の世界では科学的な測量で光の反射等を用いてやっているのと同じ原理である。
となれば、この世界の地図は精度にかなりの期待が持てるので、風水の活用もかなり楽になるかもしれない。
「よし、じゃあ見せてもらおうかな。えーと、これがこの学院だよね……」
この地域の地図を広げて、地形の把握を開始した。この世界では、漢字など元の世界で使われていた文字も使われており、この世界固有の文字もある程度同部屋のクロニコフに教わっているため地図を読むくらい苦にならない。
「んー、この学院の北には……お、このアストラ山っていい場所にあるな。他には……」
俺が今探しているのは、風水における四神相応というやつである。四神、つまり青竜、朱雀、白虎、玄武の加護を受ける地形というのは、北に山、西に道、東に川、南に池や海等があるということである。ちなみに今日の都も江戸の町も四神相応を考慮して位置が選定されている。
「西にはデルモンド街道っていうのがあるし、南は海が広がっているな。後は東だけど……ん?」
「どうしたの?」
東以外が丁度風水的に良い地形となっているのだが、東だけ判断がつかない描かれ方をしているのでカナデに聞くことにした。何せ俺はこの世界の地図記号は良く知らないのだ。
「この水色の点線って何だ? 特に注釈が無いんだけど」
「えーと確かそこは、運河の流れる予定地域のはずよ。10年前くらいから工事していたとか」
川が人工的に作られること自体は問題がない。問題なのは何時運河が開通するかだ。
「工事っていつ終わるの?」
「もう掘削工事自体は完成しているはずよ。開通の記念式典の手伝い募集の案内が掲示板に貼ってあったから」
「おお! 記念式典で水を流すってことだな。式典っていつ?」
「皇帝月の8日だから、明後日ね。もうすぐよ」
明後日ならば、カナデの言う通りすぐである。
明後日以降は風水的に、このバナード魔術学院は魔術を行使しやすい環境になり、俺の弱体化した陰陽道を復活させる重要な要素になるだろう。
天体観測による星宿の解明は、自分で何とかしなければならないが、風水は時が経てば自動的に有利な状況に変わる。だから放っておいても良い。
この時はうかつにも、そう考えていたのだ。
実家との交信を終えて一息ついている俺に、カナデが訪ねてきた。
その口ぶりからすると、カナデは風水という言葉自体を知らないようである。風水は陰陽道の要素の一部であり、カナデは陰陽師見習なのだが、どうやらこの世界の陰陽道には風水についての概念が無いようである。
「いいかい。風水ってのは地形や家とかの位置で吉凶を占ったり、気の流れを制御する魔術の一種なんだ」
カナデに風水についての大まかな説明をすることにした。
風水は古代中国で生まれた魔術であり、陰陽道にも取り入れられている。これは都市計画等にも取り入れられ、例えば平安京や江戸の建設場所の検討にも大きな影響を与えている。
京の都や江戸から東京にかけての繁栄は良く知られている通りであり、これは風水の力も大きな役割を果たしていると言えるだろう。
現代日本では家具や小物の配置などで金運アップとかの、おまじないレベルの話が良く知られているのだが、魔術の専門家的に言えばこれは少し眉唾物である。
しかし、魔術師の扱う本格的な風水は、魔術に重要な影響を与えるものであり、風水を活用することで魔術師同士の戦いで有利に事を進めることが出来る。
「という訳で、星の配置も重要だけど、風水で地の配置も考慮すると、陰陽道がさらに力を増すかもしれないんだ」
「なるほどね。しかもその風水っていうのには魔力そのものは使わないから、魔力が枯渇しているアツヤに丁度いいってことね」
「その通りだよ」
という事で、この世界における風水の解明のため、図書館に行くことにした。目的は地図を見ることである。
風水では山や川などの位置関係が重要であるため、地図がとても重要である。
「あれ? この世界の地図の精度ってどうなってるんだろう?」
この世界の文明レベルはこれまでの暮らしで見てきたところ、中世から近世といったあたりである。魔術が元の世界に比べて一般的であるためか、かなり進んでいる面もあるが地図の精度までは分からない。
「それなら大丈夫だと思うわよ」
地図を司書から受け取ってこちらに持ってくる途中のカナデが、俺の言葉を聞きつけていたようで自信がありそうな雰囲気で答えた。カナデはエルフなだけあって耳が良いようだ。
「見て」
「おお! これは凄い」
カナデが見せてくれたこの世界地図は、見たところかなり正確な物であった。
カナデが持ってきた地図は、世界地図やこの地方らしき地図、更にはメルカトル図法や正距方位図法らしき投影法など、様々な種類である。
これらには縮尺や緯度経度らしき線が記されており、地図の作製技術はかなり進んでいるようだ。
この世界の技術が意外と進んでいるのは、天体観測の時にこの世界の天文学を確認した時にも感じた事である。
「これ、どうやって作ったんだ?」
地図の作製技術は別に風水とは関係ないのだが、好奇心からなんとなく疑問が口をついて出た。
「確か、現代の地図作成の根本は、300年前に大空の魔術師の異名を持つシルフォード=マグナスが開発したらしいわね」
意外にもカナデは俺のどうでも良い疑問に答えてくれた。地図についてはカナデの専門外なので、そういった事にも通暁しているらしいことからカナデは学業一般の成績が良いようである。
まさか、その300年前にも生きていたんじゃないよね?
「シルフォードは飛行の魔法で空高く舞い上がり、そこから見た地上の風景を紙に記したのよ。その地図は、それまで歩いたり、船で移動したりして感覚的にでしか記してこなかった地図とは、格段に上の精度を誇ったらしいわね」
なるほど、やはり魔術が一般的な事が技術の発展に影響を与えているようだ。
「そして200年前、反響の魔術師の異名を持つリフラント=ハンガーが、反応石という鉱石に魔術的な細工をすることで、対象の反応石の方向や距離が分かる魔術が開発されたの。これを地図に応用したことによって、それまで視覚的に捉えたものでしかなく、しかも魔術師の絵画能力に大きな影響を受けていた地図の精度が更に向上したのよ」
それは凄い。元の世界には反応石とかいう鉱物が無いのもあるが、そのような魔術は開発されてこなかった。カナデが教えてくれた反応石を使った方向や距離を正確に測る魔術は、元の世界では科学的な測量で光の反射等を用いてやっているのと同じ原理である。
となれば、この世界の地図は精度にかなりの期待が持てるので、風水の活用もかなり楽になるかもしれない。
「よし、じゃあ見せてもらおうかな。えーと、これがこの学院だよね……」
この地域の地図を広げて、地形の把握を開始した。この世界では、漢字など元の世界で使われていた文字も使われており、この世界固有の文字もある程度同部屋のクロニコフに教わっているため地図を読むくらい苦にならない。
「んー、この学院の北には……お、このアストラ山っていい場所にあるな。他には……」
俺が今探しているのは、風水における四神相応というやつである。四神、つまり青竜、朱雀、白虎、玄武の加護を受ける地形というのは、北に山、西に道、東に川、南に池や海等があるということである。ちなみに今日の都も江戸の町も四神相応を考慮して位置が選定されている。
「西にはデルモンド街道っていうのがあるし、南は海が広がっているな。後は東だけど……ん?」
「どうしたの?」
東以外が丁度風水的に良い地形となっているのだが、東だけ判断がつかない描かれ方をしているのでカナデに聞くことにした。何せ俺はこの世界の地図記号は良く知らないのだ。
「この水色の点線って何だ? 特に注釈が無いんだけど」
「えーと確かそこは、運河の流れる予定地域のはずよ。10年前くらいから工事していたとか」
川が人工的に作られること自体は問題がない。問題なのは何時運河が開通するかだ。
「工事っていつ終わるの?」
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「おお! 記念式典で水を流すってことだな。式典っていつ?」
「皇帝月の8日だから、明後日ね。もうすぐよ」
明後日ならば、カナデの言う通りすぐである。
明後日以降は風水的に、このバナード魔術学院は魔術を行使しやすい環境になり、俺の弱体化した陰陽道を復活させる重要な要素になるだろう。
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