悪役令嬢の兄に転生した俺、なぜか現実世界の義弟にプロポーズされてます。

ちんすこう

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34【弟は兄に愛を奏でる】※

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「バカ、お前でかすぎ! きつ……っ」
「ごめん、ちょっと興奮しすぎて加減できない、かも」

 奏の質量がぐんと増し、中を擦る速度も上がっていく。突かれる震動に合わせて上擦った声が漏れ、奏の背中に爪を立ててしまう。

「っ」
「奏、怖い、激し……っからぁ……!」
「ごめんね、俺に掴まってていいから」

 それでも動くのをやめてはくれず、ズンッと奥を抉じ開けられる。

「~~あぁっ……!」

 ひゅ、と呼吸ができなくなる。
 その状態でぐりぐりと腰を回されて、一番もろい部分を肉茎の先端で擦られた。そこは突かれると常に微電流を当てられているように痺れて、全身の毛が逆立つ。
 頭の処理範囲を越えて目が潤み、視界がぶわ、と歪んでいく。

 身体が掻き混ぜられる。
 混ぜられて、ぐちゃぐちゃにされて、溶けてしまいそうになる。

 そうしてほしい。
 何も分からなくなるまで、俺の中を掻き回して、めちゃくちゃにして。

「かなで、すきぃ……」
「っゆう」

 とろんとした目で縋ると、奏の瞳にぎらりと野性がちらつく。このまま食べ尽くされてしまいそうだと思うと、幸福感に包まれる。

「もっと、して……っぐちゃぐちゃにしてぇ」
「や……っば」

 ぐ、と喉を鳴らした奏は、一度俺の横に手をついて動きを止める。そして何かに耐える素振りを見せたあとで、俺の唇を食べるように覆った。

「んっ」

 ひとしきり舐めて、啜って、ぷは、と唇が離れていく。

「はぁ……ゆう。俺、今日のこと死ぬ直前になっても覚えてるから。
 こんな可愛いひとと結婚できて、俺幸せすぎ……っ」

「ぁっ」

 ずちゅ、とまた動きが再開して、一心不乱に腰が打ち付けられる。
 一擦りされるたびに軽い絶頂を味わわせられながら、俺は奏を思うさま動かせた。自分は奏の体を愛撫していつくしむだけで、全てを委ねたかった。
 あいされたい。

「ゆう、愛してるっ」

 弾む呼吸の合間に囁かれる愛が、脳に沁み渡っていく。

「ずっと一緒だからね……っ俺が、ゆうの傍に、」
「うん、居て……お前だけは、離れないで」

 涙がこみ上げてくる。
 実の親にすらまともに愛された記憶が薄い。
 学校じゃ普通の人間のふりをしていたけれど、ほんとうはずっと埋まらない空虚さを感じながら生きていた。
 消えてしまいたかった。あんなことになる前からずっと。

「奏。俺も、愛してる……っ」

 まなじりからぬるい雫が滑り落ちる。

 ――それでも、お前だけは俺に変わらない愛を与えてくれたから。

「離さないでいて」

 囁くように請うと、奏も瞳に水分の膜を浮かべながら、俺を抱き締めた。

「離してくれって言われても、もう一生離してあげない」

 絶頂に向けて、抽挿の間隔が狭まっていく。からだを打ち付ける音が止み、俺を抱く腕に力がこもった。

「ゆう、イく……っ!」
「ん、俺ももう、んぅ……っ」

 中に埋まっていたものがびくんと震えて、熱い飛沫を放つ。

「熱……っ」

 はらでその飛沫を受け止め、自分も体の奥底から燃えるような快楽に浸る。

「ぁあ……っ!」

 奏の性器はいまだに快感を吐き出し続けている。
 奏の放ったもので体の中がじんわりと満たされていくのを感じながら、しっかり抱き合って、余韻に浸った。


 ――朝陽が射し込む頃。

 いつの間にか意識を落としていた俺は、まどろみの中で奏の姿を探した。
 探すまでもなくすぐ目の前に裸の胸がある。そこに頬を寄せて、くっつけてみた。
 あたたかい。
 心臓の音がする。

「ん……ゆう……?」
「奏」

 上から掠れた声が降ってきて、そっと視線だけ上げる。
 奏は髪と同じ色のまつげを緩く瞬き、ひまわりのまんなかに似た瞳を俺に向けた。
 目が合った瞬間ぽ、と血が通う頬に、俺は笑って口付ける。

「俺、もう消えたいなんて思わない」
「……ゆう」

 奏は俺の顔を掌で包みながら、額にキスを落とした。

「俺も、ゆうと一緒ならどこまででもいけるよ」


 俺は奏と、ここにいたい。


◇◇◇


「以上をもって、議会を閉会とす」

 音楽室のバッハみたいなかつらを被ったおじさんが言って、会議終了を意味する木槌を叩いた。
 コンコン、と小気味のいい音が響くと、広い会議場に歓声が轟く。

「ウィングフィールド伯爵、貴公のスピーチには感動いたしましたぞ!」
「ありがとうございます」
「ウィングフィールド公、これで晴れて子爵と正式な婚姻関係になれますな! おめでとう!」
「心待ちにしていた日ですよ、ありがとうございます」

 議会の中心に立ち、貴族議員たちに囲まれているのは、モスグリーンのコートを羽織って正装した奏だ。
 今回は議員以外の貴族にも傍聴が認められていたので、俺は傍聴席から会議の様子を見守っていた。

 議題は同性婚の可否について。

 デイビッドを打ち倒し、フレデリックの追放が決まってから半月後。
 奏はこれまで以上に入念な根回しや準備を行って、万全の姿勢で今日の議会に臨んだ。

 ――結果は、満場一致の賛成。

 議場の演壇で議員たちに持て囃されていた奏が、傍聴席のほうを振り返る。
 満面の笑みで手を振ってみせる奏に、傍聴席からも声援が飛び交った。
 隣にいたお姉さんに肩を叩かれて「応援していますわ」とにっこり微笑まれる。
 俺まですっかり注目の的にされていて、苦笑した。

「やりやがったな……」

 昔から演説の類はうまい奴だったけれど。
 ここまで完璧にやられると、見事すぎていっそ笑えてくる。
 俺は小さく笑いながら、夫となる人の功績を称えて、自分も拍手した。


 その議決からさらに二週間後。


 どんな手を使ったのか並々ならない速さで法整備が整えられると、とうとう同性婚の許可が公式発表された。
 対象は貴族も庶民も関係なく、特別な申請も必要ない。
 男女カップルと同じように婚姻届を書いて役所に提出すれば、正式に夫婦(希望により夫夫、妻妻と表記)になれる。

 奏の意見ゴリ押し法案かと思いきや、認可された当日から結婚するカップルが続出した。案外いろんな人が求めていた法改正だったらしい。

 俺と奏も例に漏れず初日の朝から役場に赴いて、さっそく届けを提出したのだった。

 入籍手続きを終えると、俺たちは他のカップルたちの横を抜け、建物の外に出る。
 石造りの街は昼に向けて徐々に活気づいてきていて、市民や馬車がさかんに行き交っている。

「兄ちゃん」
「ん。行こうか」

 奏に手を握られて、俺も握り返す。
 夫夫ふうふになって初めて見る景色は、嘘みたいに色鮮やかなものだった。




《次回最終回》
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