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第六章 誤解が解け…かけ

2 将生の活躍

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 晴斗をオモチャで遊ばせてる間に、携帯を取りに自室へ戻ると、まだまみがいた。

「まだここに居たんですね…。」

 将生の声で振り向いたまみの顔が赤いことに、ただでさえ驚いたのに、そのまみの左目から涙がポロリ、と一粒落ちたのを見た時には、驚き過ぎて声が出なかった。

「っっっ!?」

 一度、唾を飲み込んでから、聞いてみる。

「…だっ…どっ…どうしう…たの?」

 焦りすぎて『だいじょうぶ?』と『どうしたの?』が混ざった。

 訊きながら、今までのどこに泣くような要素があったのか、将生は頭をフル回転させて考える。

 そういえば、電話に出るのに桁違いに緊張していたような気がする。そんなに嫌だったのだろうか…。
 黙り込んでしまった将生を見ながら、まみが呟く。

「……れしくて…。」

「……えっ?」

 将生が聞き返す。

 すると、まみは

「嬉しくて!」

 と本当に嬉しそうに笑いながら答えた。

 まみは『何が』とは言わなかった。

 でも、きっと『晴斗の両親が無事に回復している』ことを喜んでくれているのだろう。
 その返事を聞いて、将生は安堵のため息をついた。

「心配してくれていたんだね。ありがとう。2人とも、着実に元気になってきているよ。」

 2人の無事を泣くほどに喜んでくれるとは。
 そのことに嬉しくも感じるが、

(まみさんて、けっこう涙腺弱いんだな。)

 と、思う。

 きっと、この前の日曜日の件も、何か悲しい本か映画でも観たのかもしれない。
 感情豊かなことは、悪いことでは無い。

 …こちらが勝手に振り回されてるだけで。

 まみは多くは語らず、涙を拭うと、気を取り直して晴斗の元へ行く。
 将生も将生で、朝の支度に取り掛かる。

 リビングにはあゆみと瑛斗がいて、朝食を食べていた。

 ダラダラ食べていて、なかなか食べ切らない瑛斗を、あゆみが注意する。

「食べないなら食べないで良いから。残すなら残しなさい。ダラダラしないの。」

 瑛斗はあゆみと違って、登園まで時間があるので、早く食べなくても良い。

 だが、食べる気がないのに、食べ物をいじくりまわすのはマナーが悪い。
 そこへ、まみが晴斗を抱いて現れる。

「まみ、目が赤いね、どうしたの?」

 あゆみがすぐに気付いて指摘する。

「…えっと…晴斗くんのご両親と…電話…でご挨拶してて…。」

 まみが何と説明しようか考えていると、

「けっこう回復してきてて、電話できるようにまでなったんですよ。それが、嬉しかったみたいで。」

 まみの後ろから来た将生が、ネクタイを締めながら代わりに説明してくれた。

 まみは、その言葉に曖昧に頷く。

「へぇ!それは良かった。リハビリが始まってるのかな。頑張って欲しいね。」

 あゆみが笑顔で返す。

 その発言を聞いて、まみは少し意外に思う。

(あれ?晴斗くんのお父さんのこと、お姉ちゃん知ってたんだ?っていうか、伊藤さんが晴斗くんのお父さんじゃ無いこと、知らなかったのって、私だけ…?)

 まみは恥ずかしくなった。

(私、どれだけ人の話を聞いてないんだろ…。)

 ちょっと反省しないといけないな、と考える。

 でも、今は、

(スーツ姿の伊藤さん、やっぱりカッコいい…。)

 と、のんきに思っていた。

 そして、その考えを自身の中で、否定することなく、ただそう思っていてもゆるされるという状況に、言いようもないくらいの幸福を感じていた。




 まみは、ニコニコしながら、将生やあゆみを送り出す。
 瑛斗も同じように、いつも通りにバスに乗せた。そして、その日の日中は、フワフワした気持ちで過ごしていたことしか覚えていない。

 フワフワしすぎていて、柱だかドアだかに肩をぶつけたけれど、全く痛くなくて、お風呂に入った時に肩がなぜ青くなっているのか、なかなか思い出せないくらいだった。

 ただ、夕飯を食べる17時半くらいになって、やっぱり食が進まない様子の瑛斗をみた時に、なんとなく違和感を感じた。

「瑛斗、どうしたの?ご飯美味しくない?」

 まみがきくと、瑛斗は首を振る。

 美味しくないわけではないようだが、食欲はないようだ。

「…トイレ。」

 瑛斗は、そう一言だけ言うと、一人でトイレに向かう。

 オシッコの時は『オシッコ』というので、『トイレ』と言う時は、うんちの時だ。

 そして、瑛斗はまだ一人で後始末ができるわけではない。そこで、まみは

「終わったら呼んでね。」

 と声をかけ、晴斗のご飯にかかりきりになる。

 しばらくして、晴斗が食べ終わっても、瑛斗はまみを呼ばない。ちょっと長すぎな気がして、まみは晴斗を安全な床に下ろして、瑛斗の様子を見に行く。

「瑛斗、まだ終わらないの?」

 まみがドアの外から声をかける。

「……うー……。」

 瑛斗が声を発するが、よく聞こえないので

「ごめん、入るよ。」

 と断ってから、中に入る。

 すると、お腹を押さえて痛がっている瑛斗が座っていた。

「瑛斗?お腹痛いの?」

 まみが慌てて近付くと、瑛斗は顔を上げて

「…うん。いたい。」

 と答える。

「いつから?いつから痛いの?」

 まみが慌てて聴くと

「…じゅっと…。お(よ)うちえんから。」

 と答える。

 よくよく聞くと、トイレの回数も、朝から6回は行っているようだ。

「それは…大変だったねぇ。今はまだ出そう?」

 まみが瑛斗の背中を撫でながらきくと

「…わかんにゃい。でと(そ)うででない。」

 と答える。

 これは、ちょっとお腹を壊してるかな、と思い、

「瑛斗、ちょっとオムツつけようか。そしたら、ずっとトイレに居なくても、大丈夫になるよ。」

 オムツを卒業出来た瑛斗のプライドを傷つけるのは気が引けたが、漏らしてしまうよりはずっと良いと判断した。
 瑛斗も、トイレから離れたいと思っていたようで、まみの提案を素直に受け入れてくれた。

 幸いにも、晴斗がいるので、オムツには困らない。晴斗のサイズは少し小さいが、テープ式なので、ゆるめに締めれば、瑛斗が入らないわけではなかった。

 オムツをして、トイレから離れる時に、トイレの中を覗き込むと、瑛斗がひどい下痢をしていることがわかった。まみは蓋を閉めてから流す。

 そして、トイレから出る時は、入念に手を洗い、トイレ周りも軽く消毒してから出る。瑛斗の顔をよくよく見れば、唇がカサカサしているし、顔色も良いとは言えない。

(こんな状態なのに、私なんで瑛斗の異変に気付かなかったんだろ!)

 まみは自分が色ボケしていたことに、腹を立てながら、まずはあゆみに電話する。

 瑛斗のお腹の痛み、それから幼稚園でもすでに4回以上はトイレに行っていることから、ちょっとひどい下痢だと考える。
 こちらは、日本よりも衛生面で心配があるうえ、日本にはない病気もある。

 これは、一度病院へ行った方が良い、とあゆみが言うので、多くの日本人がよく使っている病院へ行くこととする。急患は24時間対応だが、一般診療も19時まで受け付けている、というので、急いで運転手さんに連絡し、連れて行ってもらうことになった。

 異国での初めての病院、ということで、まみはかなり緊張していた。
 小児科の先生はいるのか、何と言って病状を説明して良いのか、入院になったらどうするのか…。
 いつものマザーズバックのほかに、和英辞典を鞄に入れてきた。インドネシア語辞典の方が良かっただろうか…。

 そして何より、ずっと黙ってお腹を押さえている瑛斗の様子が心配だ。
 晴斗を抱っこ紐に入れているので、瑛斗を抱っこしてあげることができない。
 できるのは、せいぜい背中を撫でてあげることだけだ。

 一応ベビーカーを積んでは来たが、院内はベビーカーが使えるのだろうか…。
 
 と、その時、将生からLINEが入る。

『今から帰ります。夕飯無ければ、買ってから帰ります。』

 用件のみの簡素なLINEだ。

 そういえば、将生に連絡するのを忘れていた。

『瑛斗がひどい下痢で、今、南にある○○病院に向かっています。夕飯は用意できないので、買ってきてください』

 こちらも、簡素な内容で返す。それに対して

『わかりました。』

 というLINEが届く。
 将生の夕飯の心配をしなくて済んだのでホッとする。

 車は相変わらず渋滞しているが、少しずつ進んではいるので、19時までには着くだろう。どんどん暗くなっていく空に、まみの心も暗くなっていった。


 病院に着いて、車から降りる時に、運転手さんがベビーカーを下ろして、その上に瑛斗を乗せてくれた。

 入り口から見た限り、それなりに広い廊下の病院なので、ベビーカーは大丈夫そうだ。

「テリマカシ。」

 とお礼を言うと、またジェスチャーで、『終わったら、電話します』と伝える。


 瑛斗の乗ったベビーカーを押しながら、入り口を入ると、明るい室内に、いくつか机が並んでいる。とりあえず1番近くの受け付けらしき机へ行くと、車の中で必死に覚えた『Pediatrics(小児科)』と発音しようとした。すると、先に

「Are you Japanese?」

 と聞かれる。

 驚きながら、

「い…いえす。」

 と答えると、受け付けの人がにっこり笑って左側を指す。

 指さされた先を見ると、『Japanese』と書かれた受け付けが目に入った。

「テ…テリマカシ!」

 お礼もそこそこに、日本人用受け付けの前までベビーカーを押しながら小走りし、受け付け前の椅子に座る。

「ハイ、コンバンワ。」

 たどたどしいけれど、日本語を話す受け付け嬢に大きな安堵を感じて、まみは一息に話し始める。

「子どもが!昼から6回以上下痢していて。食欲もないみたいなんです。熱はないんですけど!」

 早口だったからか、受け付けのお姉さんは慌てて

「おかさん、おちついて。マズ、なまえとレンラクサキ かいてください。」

 と紙とボールペンを渡される。


「コチラ わ はじめてデスカ?」

 名前を書きながら、質問に『はい。』と答える。

「きょワ、おこさん ということで、ショニカがいいとおもんですが、 イマ、ニホンゴできる せんせ いないので、インドネシアご でいですか? ワタシ、ツヤク はいります。」

 通訳さん入ってくれるなら、何でも良いと思った。

「はい。お願いします。」

 まみが頭を下げると

「わかりました。チョト まてください。」

 と言われ、まみ達の後ろにある待合用の椅子へ移るよう促される。

 まみは、言われたとおりに椅子へ、瑛斗のベビーカーと共に移動する。
 日本語が通じそうなことにホッとする。

(和英辞典、いらなかったな…)
 
 そんなことを思っていた。

 『少し待て』と言われたが、それからかなり待たされた。20分は経った頃だろうか。


「まみさん。」

 知った声に呼ばれて、なんとなく空中を彷徨っていた視線をふと上げると、目の前に将生が立っていた。

「えっ…。」

 まみはポカンと、口を空けてしまった。

「お疲れ様です。瑛斗くんはどうですか?」

 将生は言いながら、まみの隣の席にポスンと座ると、ネクタイを緩め始める。

「えっと…5時半頃にトイレに行ってから、今はちょっと落ち着いているんですけど…。」

「そうですか。お医者さんは、日本語わかる方ですか?僕、間に入りましょうか。」

 将生がまみの懸念事項をすぐに察して、提案してくれる。

「…ありがとうございます!日本語のわかる先生が、今不在で…。インドネシア語でも良いですか?って聞かれたんです。通訳の方が入ってくれるみたいで…。」

 まみの話を聞くと、

「そうですか。どちらの言葉でも、だいたいはわかるので、言葉のことは気にしないでください。では、僕がお医者さんに説明するので、瑛斗くんの状態を教えてもらえますか?」

 と穏やかに言ってくれた。

「………っっっ!」

 言葉にできないくらいの大きな感謝の気持ちが、まみの体を震わせる。

 安堵で涙が出そうなくらいだ。

 でも、今は泣いている場合ではない。まみは一度息を吸って吐くと、

「ありがとうございます!瑛斗は、思えば朝から……。」

 と、冷静に説明を始める。
 将生はそれを黙って聞いていた。

「わかりました。今後、もし瑛斗くんがトイレに行きたいと言ったら、受付の方に申し出て、容器を受け取ってください。たいてい下痢の時は、検査のために便を取ります。」

 将生が落ち着いて話してくれるので、まみもだいぶ落ち着いてきた。

「そうします。」

 2人で瑛斗の症状を共有していると、瑛斗が呼ばれる。まみが立ち上がって、ベビーカーを押そうとすると、

「まみさん、僕がベビーカーを押します。まみさんは晴斗を抱っこしているので。瑛斗くんの診察が終わったら、晴斗の抱っこも僕が代わりますね。」

 と言いながら、将生が瑛斗を連れて行ってくれた。
 
 途中で瑛斗の体重と体温を測る。
 診察室に入ろうとした時、通訳さんも一緒に入ろうとしてくれたが、将生がインドネシア語で断ってくれたようだ。

「おとさん、インドネシア語ワカルなら、ダイジョブですね。」

 去り際に通訳さんがニッコリ笑ってまみに言った。

 『私たちはお父さんでもお母さんでもないんです』

 と、思ったけれど、言っても仕方のないことなので、まみは会釈してすれ違うだけにとどめた。

 診察室では、瑛斗のお腹を触ったり、将生から症状の説明を聞いたりしながら、お医者さんが時折り何か書き付けていた。

 インドネシア語でのやりとりなので、まみには全くわからなかったが、将生がたまにまみの方を向きながら、お医者さんの言葉を訳してくれたので、理解しながらそこにいることができた。

 最終的に、『アメーバ赤痢』が疑わしいが、便をとっていないので、ハッキリとは言えない。
 ただ、だいぶ衰弱しているので、水分補給の点滴をしていった方が良い。とのことだった。

 診察が終わると、何かしたわけでもないのに、まみはどっと疲れを感じた。
 ちょっとふらつきそうになったところを、将生がすかさず支えてくれて、すぐに晴斗の抱っこも代わってくれた。

「…ありがとうございます。」

 まみがお礼を言うと、将生はまみを見下ろして

「どういたしまして。」

 と、ニッコリ笑ってくれた。
 その笑顔に、まみは瑛斗の件で心配して凝り固まっていた心が、フワッと和らぐのを感じた。

(あぁ、伊藤さんが来てくれて、本当に良かった…。) 

 まみは心から思った。

 その後、瑛斗はまたベビーカーに乗せられて、診察室から、院内の中心部である、治療室へ移動する。

 10台くらいのベッドがあり、空いているところへベビーカーから降りて移った。

 インドネシア人の看護師さんがテキパキと動いてくれて、瑛斗は左腕に点滴をされる。瑛斗の顔色はまだまだ悪いが、水分が補給されるのなら、少し安心できる。

 ふと気付くと、将生がいない。不在に気付かなければ何ともないのに、意識してしまうと、途端に心もとない気持ちになる。キョロキョロとしているまみに気付いた瑛斗が、

「まみ、どちたの?」

 と聞いてくる。

 今1番不安なはずの瑛斗に、自分の心配をさせてはいけない。まみはニッコリすると、瑛斗の右手を握る。

「何でもないよ。それより瑛斗、何かほしいものない?」

 まみが聞くと、瑛斗は少し遠慮しながら、

「……まま…。」

 と小さな声で呟いた。

 瑛斗は、体調が悪い時ほどママにくっつきたがる。
 寂しかったり、不安だったりすると、特にそうだ。

「…そうだよね。ママ、きっともうすぐ来るよ。瑛斗、良い子にしてるんだから、絶対来るよ。」

 あゆみは『仕事が終わりしだい行く』とは言っていたが、それきり連絡はない。

 きっとこちらに向かっているだろうとは思うが、『もうすぐ来る』なんて根拠の無いことを言ってしまって、無責任な気はした。
 しかし、『来れない』と言って悲しませるよりは、期待をもって待っていた方が良いような気がしたのだ。

 すると、近くで

「瑛斗っ!」

 と、瑛斗を呼ぶ声が聞こえた。

 まみは瑛斗の周りに引かれていたカーテンをパッと開くとあゆみがまみを見つけるより先に、あゆみを見つけ、

「おねーちゃん。こっちだよ。」

 と手を振った。

 あまり大きな声を出してはいけないかな、と思ったけれど、今この治療室にいるのは瑛斗だけのようなので、そこまで迷惑にはなってないようだ。

 あゆみは、まみと横になっている瑛斗の顔を見ると、明らかに息を吐いて、肩の力を抜いたのがわかった。また、あゆみの後ろから、将生が晴斗を抱っこ紐に入れたままやって来たのも見えた。
 どうやら、入り口からあゆみを案内してきてくれたらしい。

「ママ!」

 瑛斗の顔がきらめいた。

「瑛斗、遅くなってごめんね。もう今からはママがずっと一緒にいられるから。点滴痛いね。よく頑張ってるね。」

 あゆみはまみとは反対側から瑛斗に寄り添い、優しく頭を撫でた。

「まみ、ありがとうね。あとは私がみてるから、先に帰ってゆっくり休んでてちょうだい。きっと明日もバタバタすると思うから、その時にまた力を貸してほしいな。」

 あゆみが瑛斗を挟んでまみに向かい合うと、少し微笑んで言った。

 確かに、2人でここに居て消耗するよりは、片方は休んだ方が良いかもしなれない。

「わかった。…お姉ちゃん、ごめんね。こんなになるまで、瑛斗の不調に気付かなくて…。」

 まみがあゆみに謝ると、

「ううん。朝から食欲無いの気付いてたのに、何もしなかった私に責任があるから。まみは気にしなくて良いよ。」

 あゆみがまみに答えた。

 『瑛斗に関して、全責任は私にある』という、あゆみの断固たるプライドでもある。

「…うん。じゃあ、先に帰るね。瑛斗、またね。」

 まみの去り際の挨拶に、瑛斗は右手で軽く手を振ってくれた。




「まみさん、僕の車で帰りましょう。」

 将生が、共に治療室を後にしながらまみに声をかける。
 将生によると、もうまみの運転手さんと車は、マンションに帰してあり、今は将生とあゆみの車しかないそうだ。

「お願いします。いろいろと手配していただき、ありがとうございます。」

 まみが、ペコリと頭を下げる。

「いえいえっ。お役に立てたなら、嬉しいです。」

 と、将生は恐縮しながら答えた。

 将生とまみは、入り組んだ廊下をしばらく歩き、最初に入ってきた病院の入り口まで出て来る。そこで、将生は運転手のエディさんに電話をかけた。

 そんな将生をまみはじっと見上げる。

 やっぱり、今日の将生もカッコ良かった。

 とても頼りになる、素敵な男性だ、と改めて思う。

 そして、そう思うことを否定しなくて済むことに、まみはとても幸せな気持ちになった。

「とってもお役に立ちましたし、とっても頼りになりました。伊藤さんが来てくれて、本当に本当に嬉しかったです。ありがとうございました。」

 まみは、思ったことを素直に将生に伝えてみた。
 将生はちょっとビックリして、そして少し照れたように笑うと

「それなら良かったです。」

 と言った。

 その返事を聞けて、まみは思っていた以上に満足して微笑んだ。
 その笑顔を見た晴斗も、キャキャっと良い声で笑った。

 
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