40 / 554
Part1
Б.а ブレッカの地にて - 07
しおりを挟む
「我々は、ノーウッド王国からやって来た者です。ブレッカの戦が勃発したと聞き、その戦で影響が出てくるかもしれない南方地方からの調査と、確認で飛ばされてきました。ここの指揮官に、面会を要請したい」
「ノーウッド王国?」
そして、さっきとまた同じ反応である。
「我々は、ノーウッド王国ヘルバート伯爵家代行だ。ダーマン中尉に面会したい。中に入ってもいいだろうか?」
もう、社交辞令もすっ飛ばして、セシルは用件だけを(丁寧に) 叩きつけていた。
「え?」
「伯爵? ――貴族っ!? なんでこんな場所に――?!」
「用件は話したはずだが? ダーマン中尉に面会を要請したい」
「え? 中尉? なんで――?」
「早くしてくれないか?」
セシルの迫力に気圧されたのか、二人の兵士達が顔を見合わせる。
「早くしてもらいたい」
「あ、ああ、わかった。ちょっと待ってくれ……」
それは、貴族に対しての適切な言葉遣いではありませんね。
兵士全員、躾もなっていないなんて、言いませんよね。
セシルのイライラバロメーターが、止まることもなく、真っ直ぐに上昇しているのだけが感じられる。
普段、この程度のことで感情的になるようなセシルでもないし、冷静沈着で落ち着いているだけに、この手のくだらない反応も、態度も、完全無視する傾向にある。
だが、今日は、バロメーターが順調に上がっていますねえ。
もうそろそろ、沸騰点に達してもおかしくはないのではないでしょうか?
「δ、εは私と共に。残りは、ここで待っていてください」
「わかりました」
館の奥に入っていた兵士の返事を待ち、セシル達は後ろのメンバーに馬を預け、入り口付近で立っている。
「入っていいぞ」
「そう」
ズカズカとも言えなくはない足並みで、セシルを含めた三人が、館の中に足を踏み入れた。
廊下には、すすけてはいるが、赤いカーペットが長く敷かれ、一応、飾り程度の装飾品は、壁側に並べられている。
掃除はされているようだが、殺伐とした感じが否めない。
コンコンと、ある部屋のドアの前で、兵士が扉をノックする。
「失礼します」
兵士はドアを開けただけで、扉のすぐ横で待っているので、微かに眉間を寄せたままのセシルは、勝手に部屋の中に入っていった。
かなり広い部屋が広がっていて、その中央に大きな机がある。その後ろに一人の男がいた。
濃紺の軍隊の制服だろうか――を着て(かなり偉そうにふんぞり返って)、椅子に座っている男が、部屋に入って来たセシル達をジロジロと値踏みする。
「なんだ?」
「我々は、ノーウッド王国からやって来た者です。ブレッカの戦が勃発したことにより、これから予想される流通の不備、または、流通の遮断で影響が出てしまう南方地帯から、確認の為、飛ばされてきました。事情の確認をさせていただきたい」
「はあ? 確認? そんなもん、必要ないだろ」
だから、影響が出るかどうか確認しにきたと言っているのに、なぜ、お前ごときが、その判断を勝手に決めると言うのだ?
「では、ブレッカでの戦はなかった、と?」
「あるに決まってるだろーが」
「その状況は、どうなっているのですか?」
「別に、いつもと変わらん。部族連合が押し寄せて来て、それで追い払えばいいだけだ」
「かなりの数――ではないのですか?」
「さあな」
え? マジですか?!
それ、本気で言ってるんですか?
ブレッカなど、そんなに土地的にも地理的にも言って大きな町ではない。
そこでの両端で、軍隊は国境を護る責任を任されているのに、すぐ側の反対側で勃発した戦の情報も確認していないなんて、職務怠慢だけで済まされる問題じゃないでしょう?
役に立たない男を前にして、セシルも、この場で完全に確信していた。
――ブレッカが、部族連合の手に落ちるのも、時間の問題ですね。
それも、早ければ、次の数週間でその決着が着いたとしても、セシルは驚きはしない。
そうなると、コロッカルの行き来は完全封鎖されて、コロッカルの注意は、完全に自治の防衛に注がれるであろうから、ノーウッド王国や、隣国の商隊や物流の出入れに気を取られている暇などなくなってしまう。
ノーウッド王国の南方は、貧乏で小さな農村地帯が多い。自給自足が多くても、ほとんどが、日々の暮らしを細々と暮らしているような農村ばかりだ。
小麦などが回されないと、特に、今は春にもなっていない冬の終わりで、気候も寒く、冬越えで残っている食糧を頼りにしても、それが長くは続かない。
これから、困窮して餓死したくない農村からの農民たちが、ドッと、コトレアの領地近辺に勝手に座り込んでしまったら――その対応に、コトレアの領地でも、余計な仕事に、人員を割かなければならなくなってしまう。
近年、コトレアの発展を知って、宿場町にしている大通りには、かなりの数の商隊が通り過ぎていく。
コトレアの領境で、乞食まがいの農民たちが大人しくしているのであれば良いが、手頃な商隊を狙い始めて、コトレア近辺で、野盗やら盗賊まがいの悪事を重ねられたら、コトレア領の信用もガタ落ちである。
コトレアを避けて、南方での取引・商業を控え、人が寄り付かなくなってしまったら――コトレアは大打撃を受けてしまう。
なんて……面倒ごとを押し付けてくれるのかしら。
「ノーウッド王国?」
そして、さっきとまた同じ反応である。
「我々は、ノーウッド王国ヘルバート伯爵家代行だ。ダーマン中尉に面会したい。中に入ってもいいだろうか?」
もう、社交辞令もすっ飛ばして、セシルは用件だけを(丁寧に) 叩きつけていた。
「え?」
「伯爵? ――貴族っ!? なんでこんな場所に――?!」
「用件は話したはずだが? ダーマン中尉に面会を要請したい」
「え? 中尉? なんで――?」
「早くしてくれないか?」
セシルの迫力に気圧されたのか、二人の兵士達が顔を見合わせる。
「早くしてもらいたい」
「あ、ああ、わかった。ちょっと待ってくれ……」
それは、貴族に対しての適切な言葉遣いではありませんね。
兵士全員、躾もなっていないなんて、言いませんよね。
セシルのイライラバロメーターが、止まることもなく、真っ直ぐに上昇しているのだけが感じられる。
普段、この程度のことで感情的になるようなセシルでもないし、冷静沈着で落ち着いているだけに、この手のくだらない反応も、態度も、完全無視する傾向にある。
だが、今日は、バロメーターが順調に上がっていますねえ。
もうそろそろ、沸騰点に達してもおかしくはないのではないでしょうか?
「δ、εは私と共に。残りは、ここで待っていてください」
「わかりました」
館の奥に入っていた兵士の返事を待ち、セシル達は後ろのメンバーに馬を預け、入り口付近で立っている。
「入っていいぞ」
「そう」
ズカズカとも言えなくはない足並みで、セシルを含めた三人が、館の中に足を踏み入れた。
廊下には、すすけてはいるが、赤いカーペットが長く敷かれ、一応、飾り程度の装飾品は、壁側に並べられている。
掃除はされているようだが、殺伐とした感じが否めない。
コンコンと、ある部屋のドアの前で、兵士が扉をノックする。
「失礼します」
兵士はドアを開けただけで、扉のすぐ横で待っているので、微かに眉間を寄せたままのセシルは、勝手に部屋の中に入っていった。
かなり広い部屋が広がっていて、その中央に大きな机がある。その後ろに一人の男がいた。
濃紺の軍隊の制服だろうか――を着て(かなり偉そうにふんぞり返って)、椅子に座っている男が、部屋に入って来たセシル達をジロジロと値踏みする。
「なんだ?」
「我々は、ノーウッド王国からやって来た者です。ブレッカの戦が勃発したことにより、これから予想される流通の不備、または、流通の遮断で影響が出てしまう南方地帯から、確認の為、飛ばされてきました。事情の確認をさせていただきたい」
「はあ? 確認? そんなもん、必要ないだろ」
だから、影響が出るかどうか確認しにきたと言っているのに、なぜ、お前ごときが、その判断を勝手に決めると言うのだ?
「では、ブレッカでの戦はなかった、と?」
「あるに決まってるだろーが」
「その状況は、どうなっているのですか?」
「別に、いつもと変わらん。部族連合が押し寄せて来て、それで追い払えばいいだけだ」
「かなりの数――ではないのですか?」
「さあな」
え? マジですか?!
それ、本気で言ってるんですか?
ブレッカなど、そんなに土地的にも地理的にも言って大きな町ではない。
そこでの両端で、軍隊は国境を護る責任を任されているのに、すぐ側の反対側で勃発した戦の情報も確認していないなんて、職務怠慢だけで済まされる問題じゃないでしょう?
役に立たない男を前にして、セシルも、この場で完全に確信していた。
――ブレッカが、部族連合の手に落ちるのも、時間の問題ですね。
それも、早ければ、次の数週間でその決着が着いたとしても、セシルは驚きはしない。
そうなると、コロッカルの行き来は完全封鎖されて、コロッカルの注意は、完全に自治の防衛に注がれるであろうから、ノーウッド王国や、隣国の商隊や物流の出入れに気を取られている暇などなくなってしまう。
ノーウッド王国の南方は、貧乏で小さな農村地帯が多い。自給自足が多くても、ほとんどが、日々の暮らしを細々と暮らしているような農村ばかりだ。
小麦などが回されないと、特に、今は春にもなっていない冬の終わりで、気候も寒く、冬越えで残っている食糧を頼りにしても、それが長くは続かない。
これから、困窮して餓死したくない農村からの農民たちが、ドッと、コトレアの領地近辺に勝手に座り込んでしまったら――その対応に、コトレアの領地でも、余計な仕事に、人員を割かなければならなくなってしまう。
近年、コトレアの発展を知って、宿場町にしている大通りには、かなりの数の商隊が通り過ぎていく。
コトレアの領境で、乞食まがいの農民たちが大人しくしているのであれば良いが、手頃な商隊を狙い始めて、コトレア近辺で、野盗やら盗賊まがいの悪事を重ねられたら、コトレア領の信用もガタ落ちである。
コトレアを避けて、南方での取引・商業を控え、人が寄り付かなくなってしまったら――コトレアは大打撃を受けてしまう。
なんて……面倒ごとを押し付けてくれるのかしら。
12
あなたにおすすめの小説
転生令嬢はやんちゃする
ナギ
恋愛
【完結しました!】
猫を助けてぐしゃっといって。
そして私はどこぞのファンタジー世界の令嬢でした。
木登り落下事件から蘇えった前世の記憶。
でも私は私、まいぺぇす。
2017年5月18日 完結しました。
わぁいながい!
お付き合いいただきありがとうございました!
でもまだちょっとばかり、与太話でおまけを書くと思います。
いえ、やっぱりちょっとじゃないかもしれない。
【感謝】
感想ありがとうございます!
楽しんでいただけてたんだなぁとほっこり。
完結後に頂いた感想は、全部ネタバリ有りにさせていただいてます。
与太話、中身なくて、楽しい。
最近息子ちゃんをいじってます。
息子ちゃん編は、まとめてちゃんと書くことにしました。
が、大まかな、美味しいとこどりの流れはこちらにひとまず。
ひとくぎりがつくまでは。
【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
逢生ありす
ファンタジー
女性向け異世界ファンタジー(逆ハーレム)です。ヤンデレ、ツンデレ、溺愛、嫉妬etc……。乙女ゲームのような恋物語をテーマに偉大な"五大国の王"や"人型聖獣"、"謎の美青年"たちと織り成す極甘長編ストーリー。ラストに待ち受ける物語の真実と彼女が選ぶ道は――?
――すべての女性に捧げる乙女ゲームのような恋物語――
『狂気の王と永遠の愛(接吻)を』
五大国から成る異世界の王と
たった一人の少女の織り成す恋愛ファンタジー
――この世界は強大な五大国と、各国に君臨する絶対的な『王』が存在している。彼らにはそれぞれを象徴する<力>と<神具>が授けられており、その生命も人間を遥かに凌駕するほど長いものだった。
この物語は悠久の王・キュリオの前に現れた幼い少女が主人公である。
――世界が"何か"を望んだ時、必ずその力を持った人物が生み出され……すべてが大きく変わるだろう。そして……
その"世界"自体が一個人の"誰か"かもしれない――
出会うはずのない者たちが出揃うとき……その先に待ち受けるものは?
最後に待つのは幸せか、残酷な運命か――
そして次第に明らかになる彼女の正体とは……?
私、竜人の国で寵妃にされました!?
星宮歌
恋愛
『わたくし、異世界で婚約破棄されました!?』の番外編として作っていた、シェイラちゃんのお話を移しています。
この作品だけでも読めるように工夫はしていきますので、よかったら読んでみてください。
あらすじ
お姉様が婚約破棄されたことで端を発した私の婚約話。それも、お姉様を裏切った第一王子との婚約の打診に、私は何としてでも逃げることを決意する。そして、それは色々とあって叶ったものの……なぜか、私はお姉様の提案でドラグニル竜国という竜人の国へ行くことに。
そして、これまたなぜか、私の立場はドラグニル竜国国王陛下の寵妃という立場に。
私、この先やっていけるのでしょうか?
今回は溺愛ではなく、すれ違いがメインになりそうなお話です。
【完結】ケーキの為にと頑張っていたらこうなりました
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
前世持ちのファビアは、ちょっと変わった子爵令嬢に育っていた。その彼女の望みは、一生ケーキを食べて暮らす事! その為に彼女は魔法学園に通う事にした。
継母の策略を蹴散らし、非常識な義妹に振り回されつつも、ケーキの為に頑張ります!
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
異世界転移したと思ったら、実は乙女ゲームの住人でした
冬野月子
恋愛
自分によく似た攻略対象がいるからと、親友に勧められて始めた乙女ゲームの世界に転移してしまった雫。
けれど実は、自分はそのゲームの世界の住人で攻略対象の妹「ロゼ」だったことを思い出した。
その世界でロゼは他の攻略対象、そしてヒロインと出会うが、そのヒロインは……。
※小説家になろうにも投稿しています
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる