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Part1
Б.а ブレッカの地にて - 08
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「我々は、正確な情報を持ち帰り、報告する義務があります。この駐屯地で、しばらく滞在させてもらいたい」
「ああ? そんな面倒なこと、誰が許すか。それでなくとも、俺は忙しいんだ」
「邪魔はしませんよ。それに、この駐屯地にいる間、ブレッカの戦で影響を受けた領民がいれば、手当て位の手伝いはしましょう、隣国からの義勇軍として」
「ほう? まあ、それならいいが。食糧だって、やらんぞ」
「構いません。では、滞在の許可を?」
「ああ、いいだろう」
「わかりました。では、この地にいる条件は――」
ノーウッド王国への正確な情報確認の為、我々は義勇軍として、この地に留まること。どの状況でも戦への参戦はなし。
戦への介入もなし。
もし、兵士でない領民などの被害が出た場合、怪我の手当てや世話をすることを約束する。
アトレシア大王国、または、アトレシア大王国の王国軍からの、我々への介入や干渉は避けること。
互いに互いの領分を尊重すること。
もし、我々に危害を加える事態、状況が起きた場合、または、我々が防衛を余儀なくされた場合、我々は、武力行使もその状況次第で考慮される。
「これで、構いませんか?」
「ああ、構わん」
長々と面倒なことを説明されて、座っている男は、どうでもいい、と言った風に手を払う。
「では、署名を」
セシルが机の前まで歩いていき、マントの中から持っていた書類を、トン、と机の上に置いてみせた。
その紙に目を向けて、仕方なさそうに男が目を通す。
「署名をお願いします」
「ああ、わかった」
うるさいな――と、絶対に口にしていたであろう態度で、男がサラサラと書類にサインをする。
「――伯爵?」
だが、最後の署名が伯爵家の名前がでてきて、その丸い顔を倒して、セシルをジロジロと見上げだす。
「そうです。我々は、ヘルバート伯爵家代行の者です」
それで、不躾に、失礼極まりない下品な目つきで、ジロジロ、ジロジロと、セシルの頭の天辺から胴体を確認しだす。
「伯爵家の癖に、随分、みすぼらしい」
「格好は関係ありませんが」
「ふん。まあ、いい」
「もう一枚に、署名を」
「ああ、わかった」
書類内容も確認せず、男が、また、サラサラとサインをする。
セシルが一枚を取り上げた。
「では」
「待て。この紙を持っていけ」
後ろを振り向きかけたセシルの足が止まる。
「契約書を保管しないのですか?」
「そんなもの、する必要がない」
「なるほど」
それなら、一々、口論しているだけ無駄だ。
セシルがもう一枚の控えを取り上げ、マントの下にしまいこむ。
「では」
「もう、さっさと出てけ」
挨拶をせず、礼も取らず、セシルは男に背を向ける。
イシュトールとユーリカも動き、ドアを開けた。
それで、三人がその部屋をあとにしていた。
* * *
司令塔である館を後にし、そこから少し移動した一行は、宿舎として使用される家屋の裏側で、一度、足を止めていた。
「それで、承諾は得たのかよ」
「そうですね。ここの滞在は許可をもらいました。ですが、この地も絶望的ですね」
「どういう意味だ?」
「役立たずの無能揃いで、敵にこの地を占領されるのも、時間の問題でしょう」
それを聞いて、全員が怖いほど真剣な顔つきになった。
ジャールが鋭く目を光らせ、
「なぜそう言える?」
「無能ばかりだからですよ」
今回のブレッカの戦は――噂だけで判断すると、敵方は、かなりの策略を張らしているように聞こえる。
夜襲で、王国軍は大打撃を受けるなど、徹底して叩き潰すことが最初の目的で、侵略は、まだその時点での目的ではなかったのだろう。
まだ、陣地を広げていないのが、まず、一番の理由に繋がるものだ。
「大量の兵士をつぎ込んで戦を起こし、大打撃を与えることが目的だったのかしら?」
そうなると、王国軍の兵士達の人数を減らすことが目的なのか、役立たずに恐怖を与えることが目的なのか、どちらにしても、あれだけの無能揃い。
「あの様子では、この地の王国軍は、抵抗どころか、反撃もできないでしょう。王宮まで援軍を呼んだ理由が、何となく解りました」
うーんと唸って、ジャールが腕を組みだした。
「お前さんの言い分は、かなり筋が通って聞こえるな。もし、それが本当だったとしたら、この場所も安全じゃない。まだ残るのか?」
「数日だけ確認の為に。ですが、いつでも、合図一つでこの場を立ち去れるよう、全員、気を抜かないように」
「いいだろう」
「ζ、θ、κは、ここら一体の地理の確認を。今は、ただ、私達の陣を張る場所の確認と、大体の地理的な構造を知りたいだけです」
「わかりました」
「おい。子供だけで行かせるのか?」
「今はまだ、それほど危険ではありませんから。それに、子供だからこそ、駐屯地内をうろついても、警戒はされないでしょう。なんだこいつらは? ――程度の興味で、見過ごされるでしょうから」
「まあ、そうだろうけどよ」
「三人共、取り掛かってください」
「わかりました」
呼ばれた子供達は態度も変わらず、あっさりと返事を返し、荷馬車から降りて、駆け出していく。
「戦場が近いっていうのに、随分、胆の据わったガキ共なんだな」
皮肉で言われたのではないが、ジャールの呟きに、
「ええ、そうですね。とても頼りになります」
それからしばらくして、ジャンとフィロとトムソーヤの三人が戻って来た。
「どうでした?」
「あちらの端に、小高い崖が連なっています。あちらに移動すべきかと」
「そうですか。では、行きましょう」
全員が騎乗し、子供達は、荷馬車で荷台を引く準備をする。
来た時はフィロが一人で騎馬だったが、今回は、ジャンが手綱を引き、その後ろに、相乗りでトムソーヤが乘っていた。
それで、ジャンの誘導で全員が移動していく。
何軒かある宿舎のような建物を通り過ぎ、外に出ていた兵士達も通り過ぎていく。
兵士達、全員が全員、一体この黒い塊はなんなんだ? ――との疑わしそうな視線を向けてきたが、それらを無視して、セシル達は進んでいく。
報告通り、宿舎から少し離れた奥の場所は、崖がでていた。その下なら、背後から襲われる心配もないだろう。
「では、今夜は、この場に陣を張りましょう」
「わかりました」
五人の子供達が身軽に荷馬車や馬から降りて来て、その場に整列した。
ジャンが前に出て来て、
「δとεは背が高いので、対策本部のテントをお願いします。αも、手伝いをよろしくお願いします。私とηの二人は、残りのテントを二台。残り三人は、残りの物資を」
「了解」
「じゃあ、取りかかって」
その合図で、全員がバラバラと動き出し、荷台の積み荷に手を伸ばす。
イシュトールとユーリカも混ざり、すぐに大きな荷台の縄が解かれていた。
「俺は、その訓練受けてないから知らないんだよな。手伝い必要なら、その都度、呼んで」
「ああ、分かっているよ」
その間にも、セシルの護衛の二人も、子供達も、たくさん積み上げられた木材を地面に並べていく。
フィロがファイルのようなものを取り上げ、中にある書類なのか紙なのか――それを読み上げだした。
「対策本部用テントの柱6本。土台6個。棟木2本――」
何かの名称が言われる度に、そこにいる全員が木材を取り上げ、了解、と適切に、テキパキと動いていく。
全員が全員、木材の扱いになれているようで、それで、驚くことに、全員が木と木を組み合わせるようにして、テントの枠組みや、おまけに、椅子やら、机やらと、ものすごい早さで、ものすごい正確さで、次々に組み立てていく。
ジャールとリエフは、あまりに信じられない光景を目にして、完全に唖然としている。
「ああ? そんな面倒なこと、誰が許すか。それでなくとも、俺は忙しいんだ」
「邪魔はしませんよ。それに、この駐屯地にいる間、ブレッカの戦で影響を受けた領民がいれば、手当て位の手伝いはしましょう、隣国からの義勇軍として」
「ほう? まあ、それならいいが。食糧だって、やらんぞ」
「構いません。では、滞在の許可を?」
「ああ、いいだろう」
「わかりました。では、この地にいる条件は――」
ノーウッド王国への正確な情報確認の為、我々は義勇軍として、この地に留まること。どの状況でも戦への参戦はなし。
戦への介入もなし。
もし、兵士でない領民などの被害が出た場合、怪我の手当てや世話をすることを約束する。
アトレシア大王国、または、アトレシア大王国の王国軍からの、我々への介入や干渉は避けること。
互いに互いの領分を尊重すること。
もし、我々に危害を加える事態、状況が起きた場合、または、我々が防衛を余儀なくされた場合、我々は、武力行使もその状況次第で考慮される。
「これで、構いませんか?」
「ああ、構わん」
長々と面倒なことを説明されて、座っている男は、どうでもいい、と言った風に手を払う。
「では、署名を」
セシルが机の前まで歩いていき、マントの中から持っていた書類を、トン、と机の上に置いてみせた。
その紙に目を向けて、仕方なさそうに男が目を通す。
「署名をお願いします」
「ああ、わかった」
うるさいな――と、絶対に口にしていたであろう態度で、男がサラサラと書類にサインをする。
「――伯爵?」
だが、最後の署名が伯爵家の名前がでてきて、その丸い顔を倒して、セシルをジロジロと見上げだす。
「そうです。我々は、ヘルバート伯爵家代行の者です」
それで、不躾に、失礼極まりない下品な目つきで、ジロジロ、ジロジロと、セシルの頭の天辺から胴体を確認しだす。
「伯爵家の癖に、随分、みすぼらしい」
「格好は関係ありませんが」
「ふん。まあ、いい」
「もう一枚に、署名を」
「ああ、わかった」
書類内容も確認せず、男が、また、サラサラとサインをする。
セシルが一枚を取り上げた。
「では」
「待て。この紙を持っていけ」
後ろを振り向きかけたセシルの足が止まる。
「契約書を保管しないのですか?」
「そんなもの、する必要がない」
「なるほど」
それなら、一々、口論しているだけ無駄だ。
セシルがもう一枚の控えを取り上げ、マントの下にしまいこむ。
「では」
「もう、さっさと出てけ」
挨拶をせず、礼も取らず、セシルは男に背を向ける。
イシュトールとユーリカも動き、ドアを開けた。
それで、三人がその部屋をあとにしていた。
* * *
司令塔である館を後にし、そこから少し移動した一行は、宿舎として使用される家屋の裏側で、一度、足を止めていた。
「それで、承諾は得たのかよ」
「そうですね。ここの滞在は許可をもらいました。ですが、この地も絶望的ですね」
「どういう意味だ?」
「役立たずの無能揃いで、敵にこの地を占領されるのも、時間の問題でしょう」
それを聞いて、全員が怖いほど真剣な顔つきになった。
ジャールが鋭く目を光らせ、
「なぜそう言える?」
「無能ばかりだからですよ」
今回のブレッカの戦は――噂だけで判断すると、敵方は、かなりの策略を張らしているように聞こえる。
夜襲で、王国軍は大打撃を受けるなど、徹底して叩き潰すことが最初の目的で、侵略は、まだその時点での目的ではなかったのだろう。
まだ、陣地を広げていないのが、まず、一番の理由に繋がるものだ。
「大量の兵士をつぎ込んで戦を起こし、大打撃を与えることが目的だったのかしら?」
そうなると、王国軍の兵士達の人数を減らすことが目的なのか、役立たずに恐怖を与えることが目的なのか、どちらにしても、あれだけの無能揃い。
「あの様子では、この地の王国軍は、抵抗どころか、反撃もできないでしょう。王宮まで援軍を呼んだ理由が、何となく解りました」
うーんと唸って、ジャールが腕を組みだした。
「お前さんの言い分は、かなり筋が通って聞こえるな。もし、それが本当だったとしたら、この場所も安全じゃない。まだ残るのか?」
「数日だけ確認の為に。ですが、いつでも、合図一つでこの場を立ち去れるよう、全員、気を抜かないように」
「いいだろう」
「ζ、θ、κは、ここら一体の地理の確認を。今は、ただ、私達の陣を張る場所の確認と、大体の地理的な構造を知りたいだけです」
「わかりました」
「おい。子供だけで行かせるのか?」
「今はまだ、それほど危険ではありませんから。それに、子供だからこそ、駐屯地内をうろついても、警戒はされないでしょう。なんだこいつらは? ――程度の興味で、見過ごされるでしょうから」
「まあ、そうだろうけどよ」
「三人共、取り掛かってください」
「わかりました」
呼ばれた子供達は態度も変わらず、あっさりと返事を返し、荷馬車から降りて、駆け出していく。
「戦場が近いっていうのに、随分、胆の据わったガキ共なんだな」
皮肉で言われたのではないが、ジャールの呟きに、
「ええ、そうですね。とても頼りになります」
それからしばらくして、ジャンとフィロとトムソーヤの三人が戻って来た。
「どうでした?」
「あちらの端に、小高い崖が連なっています。あちらに移動すべきかと」
「そうですか。では、行きましょう」
全員が騎乗し、子供達は、荷馬車で荷台を引く準備をする。
来た時はフィロが一人で騎馬だったが、今回は、ジャンが手綱を引き、その後ろに、相乗りでトムソーヤが乘っていた。
それで、ジャンの誘導で全員が移動していく。
何軒かある宿舎のような建物を通り過ぎ、外に出ていた兵士達も通り過ぎていく。
兵士達、全員が全員、一体この黒い塊はなんなんだ? ――との疑わしそうな視線を向けてきたが、それらを無視して、セシル達は進んでいく。
報告通り、宿舎から少し離れた奥の場所は、崖がでていた。その下なら、背後から襲われる心配もないだろう。
「では、今夜は、この場に陣を張りましょう」
「わかりました」
五人の子供達が身軽に荷馬車や馬から降りて来て、その場に整列した。
ジャンが前に出て来て、
「δとεは背が高いので、対策本部のテントをお願いします。αも、手伝いをよろしくお願いします。私とηの二人は、残りのテントを二台。残り三人は、残りの物資を」
「了解」
「じゃあ、取りかかって」
その合図で、全員がバラバラと動き出し、荷台の積み荷に手を伸ばす。
イシュトールとユーリカも混ざり、すぐに大きな荷台の縄が解かれていた。
「俺は、その訓練受けてないから知らないんだよな。手伝い必要なら、その都度、呼んで」
「ああ、分かっているよ」
その間にも、セシルの護衛の二人も、子供達も、たくさん積み上げられた木材を地面に並べていく。
フィロがファイルのようなものを取り上げ、中にある書類なのか紙なのか――それを読み上げだした。
「対策本部用テントの柱6本。土台6個。棟木2本――」
何かの名称が言われる度に、そこにいる全員が木材を取り上げ、了解、と適切に、テキパキと動いていく。
全員が全員、木材の扱いになれているようで、それで、驚くことに、全員が木と木を組み合わせるようにして、テントの枠組みや、おまけに、椅子やら、机やらと、ものすごい早さで、ものすごい正確さで、次々に組み立てていく。
ジャールとリエフは、あまりに信じられない光景を目にして、完全に唖然としている。
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