奮闘記などと呼ばない (王道外れた異世界転生)

Anastasia

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Part2

* А.а 始まり *

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 確か、ほんの数か月前に、


「私も、お会いできて光栄でした。皆様、どうか、道中お気をつけて」


 その最後の挨拶を交わした記憶は、まだ新しい。

 なのに、一体、なぜ、セシルの目の前に、また、隣国アトレシア大王国の王国騎士団の制服を着た――第三王子ギルバートがいるのだろうか。

「お久しぶりです。お変わりなく、ご壮健そうけんとお見受けいたします」

 以前と全く変わらぬ挨拶の言葉を、ギルバートが口にする。

「ありがとうございます。副団長様も、ご健勝けんしょうとお見受けいたしますわ」
「ありがとうございます。今日は、王国の使者として、こちらに伺わせていただきました。これを」

 ギルバートが、一冊の封筒を取り出してみせた。

 手渡された封筒を受け取って、セシルは、テーブルの上のペーパーナイフを手に取った。

 現代のペン立てのアイディアで、丸い筒を飾り付け、テーブルの上に置いてあるものだ。
 今の所、ペーパーナイフと鉛筆(原版に近い)程度しか入ってはいなかったが。

 封筒を開け中から手紙を――招待状らしきカードを取り出してみた。

「――――――――――」

 またも、夜会への招待状である。

 もう、セシルに恩義があるだとか、礼をしたいだとか、そんなことは、一切、忘れてもらいたいのだ。
 セシルなど、一度として、恩着せがましく礼をしろ、などと言いつけたことだってない。

 毎回、毎回、断り続けるのも、向こうの誠意に対して、失礼になってきてしまう。

 もしかして、それが分かっていて、こう、何度も繰り返し、セシルを王国に招待しているのだろうか。

 自分の嫌な予感と言うものは、どうも外れないものなのだ。

「皆様には、このようにお気遣いいただき、光栄に存じます」

 きっとそう思っていないだろうな――とは、ギルバートも、セシルの言葉に出さない気配で、なんとなく感じている。

 だが、ギルバートだって、今回は(かなり個人的な私情が入っているので)、簡単に引き下がるわけにはいかないのだ。

「今回は、身内だけの集まりですので、堅苦しいものでもございません」
「身内、とおっしゃいますと?」

「以前の夜会は――戦勝祝い、及び、騎士達への慰労をねぎらっての夜会でしたが、あの場では問題が起きてしまいまして……。その埋め合わせというものではございませんが、これからも王国騎士団の結束を図り、そして強め、新年を祝いたいという集まりなのです」

 これが、クリストフと真剣に話し合った結果、一番、セシルに受け入れてもらえそうな案になったのだ。

 あれこれと、ギルバートだって、真剣に招待する理由を考えた。
 初っ端から、セシルに拒絶されたり、断られない為に。

「ですから、護衛を任される下級騎士達以外は、全員、参加できますし、その家族、身内も招待されている――まあ、そうですね、家族会のパーティーのようなものなのです」

「まあ……、そうでしたか。騎士団には、そのような、新年のお祝いや式典などございますの?」

「いいえ。通例は、騎士達の家族や身内を招待したパーティーはございませんが、今回は、年を明けての王国の式典がございます。その準備でも、多忙になる騎士達への感謝も含まれているのです」

「新年に、なにかございますの?」
「はい」

 それで、ギルバートは、サッと、扉の方に視線を向け、周囲に気配がないことを確認する。

「王太子殿下の新国王即位が決まりまして」
「――――まあっ……」

 どうやら、とうとう、あの王太子殿下が国王の地位にくらしい。

 セシルの予想では、現国王だって現存で、健康で、王宮と国政の問題を除けば、軽く、あと数年は王位にいたままと考えていたのだが。

「それは、おめでとうございます」
「ありがとうございます」

「私になど、お話になってよろしいのですか?」

 まだ王国内では緘口令かんこうれいを敷いているのか、隣国の王位交代などという大事で、そんな噂などコトレアにも挙がってきていない。

 ギルバートは、ふっと、表情を緩め、
「もちろんです。ご令嬢に話したからと言って、ご令嬢が、その事実を言い触らすようなことは、到底、想像できませんから」

 確かに、そんな無駄な時間を費やしているのなら、さっさと、年末調整も済ませなければならないし、新年の予算企画だって立てなくてはならないのだ。

 セシルは多忙で、仕事など山ほどあるのだ。

「今回は、徹底して警備を強化致しますので、前回の二の舞――という醜態しゅうたいにはさせないと、お約束致します」
「いえ、そのようなことは……私が、口を挟むことではございませんので……」

 前回の夜会には賊が侵入したが、来年は新国王陛下を伴ってのパーティーだ。

 そんな大切な場所で、警備の穴など作って、賊の侵入など許せるはずもないだろう。

 だから、前回のように、賊に夜会を滅茶苦茶にされるかもしれないという問題は、さすがに、セシルも心配はしていない。

 だが、身内だけのパーティーとは言え、騎士達全員が参加し、新国王陛下への結束と、新たな忠誠を誓うような集まりだ。

 他にも騎士達の家族がいようが、セシル一人だけ他国の令嬢で、知り合いもいない、頼れる誰かもいない場で、ポツンと一人、パーティーで、一体、なにをしろと言っているのだろうか。

 新国王陛下への挨拶を済ませば、セシルには、全くパーティーなどには用がなくなってしまう。

 まさか、一人で出された食事を満喫することもできるはずはないし、ダンスとて、(踊る気はないのだが) 相手だっていないではないか。

 どうしようか…………。

 本当に、困りものである。

「――お身内のパーティーとのことでしたが、私のような者が参加させていただくなど、あまりに恐縮でございます……」
「なぜ、でしょう?」

「私は、ただの田舎貴族ですし――」
「えっ? 田舎、貴族……?!」

 さすがに、その単語を聞いて、ギルバートが珍しく話に割って入っていた。

 ギルバートとクリストフだって、今回は、セシルがどんな理由や言い訳で、パーティー出席を断ってくるだろうかと、二人で色々な案は出し合ってみた。

 だが、まさか、“田舎貴族”などという単語がでてくるとは全く予想していず、それで、驚いて、ギルバートが、珍しく、相手の会話を遮ってしまっていたのだった。

「あなたが……?! ――いや、それは絶対にないでしょう……」

「そのようなことはございません。きっと、王宮でのマナーもなっておらず、皆様に恥をかかせてしまうのではと……、とても恐縮でございます」

「いえ……、そのようなご心配は、なさらないでください。騎士達の家族や身内も参加するものですから、まだ、子供もいるでしょうし、その全員に、王宮でのマナーなど、強いるつもりはございませんので」

「そうですか……。ですが――お恥ずかしいお話なのですが……、私は、王宮で開かれる、夜会やパーティーに着ていけるような、ドレスも持っておりませんので……」
「えっ……?!」

 さすがに、次の発言も全く予想していなくて、ギルバートが驚いている。

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