奮闘記などと呼ばない (王道外れた異世界転生)

Anastasia

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Part2

А.а 始まり - 02

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「ドレス、って……あの豊穣祭で着ていらっしゃったドレスでは、いけないのですか?」
「あれは――この領地では着ているだけでして、王宮などでは……」

「問題、があるのですか? 門外不出など?」
「いいえ、そのようなことではございません。ただ――あの手のドレスは、隣国でも、きっと、今流行はやりのドレスの型ではございませんから」

 確かに、セシルのドレスの形は、ギルバートもあまり目にした型ではなかった。
 むしろ、王国内でも、初めて見るようなドレスだった。

 だが、あまりにセシルに良く似合っていた。

 似合い過ぎていた。

 とてもでないが、ドレスの型が王国で流行っていないから野暮ったい、などと思えるようなドレスではないはずだ。

 形が違っていようと、あのドレスは、まさに、セシルに着られる為に作られたようなドレスで、それで――ギルバートは、我も忘れても、見惚れてしまっていたくらいである。

 あのドレスを着たセシルが笑いものになるなど、絶対にあり得ないだろう。

「あの……、私は、貴婦人のドレスのことは良く分かりませんが――それでも、ご令嬢が豊穣祭で着られていたドレスは、とても素敵なドレスだったと、私も思っております」

「ありがとうございます」
「差し支えなければ――あのドレスで、パーティーに参加していただく、というのは?」

 やっぱり、そうなりますよねぇ……。

 今の所、もうこれ以上の言い訳があるのでもない。

 これ以上引き伸ばしても、ただ単に、セシルの我儘だけで、誠意を仇で返すような失礼な令嬢になってしまう……。

「――本当に、あの手のドレスで、よろしいんでしょうか……」

「もちろんです。男の私がこのようなことを申し上げても、あまり……真実味に欠けているかもしれませんが、豊穣祭に着ていらっしゃったドレスは、とてもよくお似合いでした。ドレスの形が違っていたとしても、ご令嬢は隣国の方ですから、「隣国ではああいった形のドレスなのだろうか?」 と、受け止められるのではないでしょうか」

「そう、かもしれませんわね……」

 はあぁ……。

 本当に、胸内で溜息がこぼれてしまう。

「この度は、このようにご招待いただきまして、ありがとうございます。私も、パーティーへのご招待、快く受け賜わりたくございます」
「ありがとうございます」

 まずは、難関の第一段階はクリアしたようで、ギルバートもホッとしてしまう。

「移動や護衛の件なのですが――」
「さすがに、年を明けてから新国王践祚ともなれば、国中で、警戒なさっていることでしょう?」

 さすが、セシルだけあって、話が早い。

「パーティーが開かれる二月には、王国の出入りは、そこまで厳しくはならないだろうとは思うのですが、王都、または王宮内は――申し訳ありません。新国王陛下即位のすぐ後ですので、警備も厳重になると思われます。王都への出入りも、厳しく取り締まられるはずです」

「わかりました……」

 そうなると、やはり、セシルの領地の騎士達は、連れて行くことは難しいようである。

「せめて――ご令嬢個人の付き人が数人、お付きの者、または、護衛が数人なら、たぶん、何とかなると思いますが」
「わかりました」

「では、二月の初めに、我々の護衛をこちらに送ります。移動は六日、もしくは、ゆっくりしても、七日で王都に到着できますので、ご令嬢は、一日前に到着なされるように、こちらで手配いたします」

「わかりました」
「滞在は――一週間ほど予定しておりますが、いかがでしょうか?」

 六日もかけて移動しなければならないのに、まさか、パーティーの翌日帰ります――などと、そんな失礼なことは言えないだろう。

 セシルを迎えにくる騎士達は、王都からの往復で、優に十二日は費やしてしまうのだ。

「いえ……、問題はございません」

 あぁ……、もう、段々と足を掴まれたまま、ズルズルと、あの王国に引っ張り込まれている気がするのは、セシルの気のせいなのだろうか。

 今まで、自国での社交界を一切すっぽかしていたツケが、一気に回って来たわけでもあるまいに……。

「あの……」
「なんでしょう?」

「護衛の帯刀は、許されておりますか?」
「もちろんです。ただ、王宮内を護衛だけでの移動、または、動くことは無理ですが」

「いいえ、そういったことはさせませんので。私が移動する時に、もし、護衛が付いてくる場合は、どうしたら良いのかと、思いまして」

「ご令嬢がご一緒であれば、問題ではありません」
「そうですか……。ありがとうございます」

「他に、なにか質問はございませんか?」
「今日は、どちらにお泊りですか?」

「これから宿場町の方で、宿を探させていただこうかと」
「それなら、お部屋を用意させますね」

「いえっ――そのようなお気遣いはどうか。このように、先触れもなく、こちらに伺ってしまったのは、我々の方ですので」

「いいえ。遠路より、わざわざ、このようにお越しいただきましたので、せめて、できることと言えば、お部屋を用意することくらいですので」

 セシルがギルバート達を呼びつけたのではない。
 はっきり言って、ギルバート達の方が、連絡もなく、勝手に押しかけて来た方だ。

 だが、騎士団がわざわざ招待状を届けに来てくれた誠意は、礼儀で返さないといけないと思っているのか、律儀なセシルの好意に、ギルバートも甘えることにした。

「そのようなお心遣い、感謝いたします」
「皆様は、何人でいらっしゃったのですか?」

「私を含め四人です」
「――随分、少ないのですのね」

「そうでしょうか?」
「こう――申しては失礼かと存じますが――」

「なんでしょうか?」
「新国王陛下の践祚がお決まりになったのでしたら、副団長様のお身も、そう、安全ではございませんのでは?」

 今までは第三王子殿下であっても、騎士団の方が優先されていたので、ギルバートが狙われるより、まず、第一、第二王子殿下のアルデーラや、レイフが狙われる確率が高かった。

 アルデーラの身に何かあったとしたら、レイフが、次の王太子殿下としての後継者となるからだ。

 まつりごとから離れ、騎士団に所属しているギルバートは、余程のことがなければ(レイフの身まで危険にさらされたのなら)、ギルバートは、あの時点では、王家に呼び戻される可能性は低かった。

 だが、アルデーラが新国王陛下として即位したなら、今までの後継者の立ち位置が、変わってくるはずだろう。

 噂では、アルデーラには後継者となる王子殿下がいるそうだが、まだ幼く、王太子殿下として即位させるとは、まだ考えられない。

 最低最悪でも、あと数年は待つはずだ。

「その可能性は、出てくるかもしれませんが、今はまだ、そこまでひどい状態ではないと、判断しております」

「お帰りの際に――我が領地の騎士を、国境側まで護衛につけることはできますが――失礼になってしまいますか?」

「いいえ。そのようなことはございません。お気遣いに感謝いたします」

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