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第三章
王太子妃に選ばれたベニタ・グラセリ
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祝祭日最終日を迎えた港町は大変な賑わいをみせていた。街全体がお祭りムードに溢れ、行き交う人々の顔も生き生きと輝いており、質の良い品が店頭に溢れかえっている。
ベニタ・グラセリが王太子妃に選ばれてからはや十か月。
王太子妃選からそのままお妃教育に入ったベニタは、これまでずっと王宮で過ごしてきた。
望んで手に入れた地位だったはずだ。父からは
「あれは出来レースだ。アルモンテ公爵の娘が通ることは決まっている。そんな選考会に出る必要はない」
そう言われた。でも男爵家の娘として生まれ、王太子妃、ひいては未来の王妃になることは最大の誉れだ。可能性が少しでもあるのなら、挑戦してみたい。
父に無理やり頼み込み、王太子妃選に出た。
選ばれることが決まっているというアルモンテ公爵の令嬢エステルは選考会で初めて見た。
これまでエステルは社交場に顔を出すことがなかったので、おそらく他の八人の参加者もベニタ同様初めてエステルのことを見たはずだ。
第一印象ははっとするほどの美人、だろうか。悔しいほどにエステルは美しかった。少しのほほんとした表情で、他の参加者たちがぴりぴりしている中、一人だけ余裕の顔だ。
そう見えたのは、もしかしたら彼女が選ばれるとわかっている出来レースだったから、勝手にそう思っただけかもしれないが、ほかの参加者もそう思ったのは間違いない。
ベニタとしては、エステルの足を引っ張りまくってやると心に決め参加したのだが、やはりそう考えたのもベニタ一人ではなかったようだ。
結果は上々。元々社交場で場数を踏んでいないエステルの足を引っ張ることなど造作もないことだった。
おもしろいほどにエステルは失敗した。ここで一言言っておかねばならないが、エステルのダンス用の靴を隠したのはベニタだが、他の件はあずかり知らぬことだ。
エステル以外の参加者の間でも、小さな足の引っ張り合いは行われていたし、ベニタだってお茶会で出された紅茶が酸っぱくて吐きそうだった。誰かがお酢を投入したに違いない。それでも最後までそ知らぬふりで飲んで見せたのだ。
選考会だけの結果を見ればエステルが選ばれるはずはないと思ったが、これは出来レース。結果の良し悪しは関係がない。ベニタとしてはやれるだけのことはやったのだ。悔しいけれど、本当に悔しいれけど落ちても仕方がない。そう思っていたところ、明日は選考結果が発表されるという前夜、突然父が王宮にやって来た。
「おまえが王太子妃に選ばれることが決まったぞ」
「え?」
思わぬことを聞かされ、ベニタはぽかんと父の顔を見つめ返した。
「いま、なんと?」
「おまえが王太子妃だ。ベニタ。よくやったな。さきほどオラシオ殿下に呼び出され、おまえが内定したことを伝えられた」
「本当ですか? お父様」
ベニタは嬉しさのあまりその場でくるりと一回転した。
「わたしの選考会での出来栄えが認められたのですね? エステルは失敗ばかりしていましたもの。あれでは未来の王妃は務まりませんものね」
「そうではない、ベニタ」
父は首を振り、「おまえはゆくゆくはこの国の王妃。裏の事情もしっかりと知っておくといい」とベニタが選ばれた理由を話した。
「オラシオ殿下としては、選考会がどんな結果であろうと、当初の予定通りアルモンテ公のご息女を選ばれるおつもりだったようだ。が、上から横槍が入った」
「上? と申しますと?」
この国で王太子オラシオ殿下より上と言えば国王ということになる。
「国王陛下がエステル以外の者を選ぶようにとおっしゃられたのですか?」
「オラシオ殿下にアルモンテ公のご息女を外すよう言ったのは国王陛下だが、うわさでは更に上、バラカルド帝国の宰相から注文があったようだ」
「バラカルド帝国、ですか……」
普段あまり意識することはないが、レウス王国はバラカルド帝国の属国だ。
大陸の覇者として君臨する大帝国の宰相ともなれば、属国の国王をも従わせる力がある。
「けれどなぜ帝国がそのような注文を?」
「わからん。詳しい内情は私の耳にまで入ってはこんからな。とにかくバラカルド帝国からの注文でアルモンテ公のご息女は外され、代わりにおまえが選ばれたのだ。喜べ」
喜べと言われても今一つ素直に喜べない。
結局ベニタはエステルの身代わりでしかないということだ。
「けれどわたしが選ばれたのは、選考会での出来が良かったからなのでしょう?」
残り八人の内から選ばれたのだから、ベニタはその中では一番だったということだ。八人の中には自分より地位の高い女性もいたし、見目の良い女性もいた。それでもベニタが選ばれたのだ。
けれど父は「そうではない」と言った。
「ではなぜ?」
「当たり障りのない、ということらしい。他の八人の令嬢は、その父がお互い牽制しあっている者たちでその中の誰か一人を選ぶととうが立つということのようだ。その点私は中枢にはいないからな」
父はここで初めて自嘲的な笑みを浮かべた。
ではベニタが選ばれたのは、選考会云々ではなく、ただ父の王宮での立ち位置が当たり障りなかったからということなのか……。
選ばれた経緯は残念だったが、けれどベニタはいずれ王妃になれる。その事実は変わらない。
そう気を取り直し、そういえば王太子妃に選ばれればこのままお妃教育に入り、家には戻れないのかと寂しく思ったものだ。
でも夢にまで見た王宮での暮らしだ。
朝から豪華な食事が供され、ドレスに宝石は好きなように買えて、オラシオ殿下の脇花として控えていればいいのだ。こんな楽しいことはない。
そう思っていたのに―――。
選考会の時からうすうす感じてはいたけれど、王宮での食事はひどいものだった。
これなら貧乏貴族だった我が家の食事の方がまだましだ。しかも調理場から部屋までの距離が長いせいで料理はいつも冷めている。オラシオ殿下と食事を共にすることもあるのだが、これがまたつまらない。オラシオ殿下は口下手で会話が続かない。社交界でのしゃれた会話の飛び交う場を経験したベニタとしては物足りないことこの上ない。
それにドレスも宝石も前王太子妃、つまり今の王妃からのお下がり品ばかりで新しい品は一切購入してくれない。しかも現王妃からのお下がり品はそのまた前王妃からのお下がり品でもあり、すでに三代に渡って使いまわされているので生地は黄ばんでいるし、サイズ直しを三度もしているのでどこか歪だ。
もう我慢ならない。
ベニタはオラシオ殿下に直接申し出て、一旦実家に帰ることを許可してもらった。
王宮にいてはストレスばかり溜まる。新しいドレスも欲しいし靴も欲しい。実家に帰ったついでに父に頼んで買ってもらおう。
そんな算段をして実家帰りをしたのが三日ほど前のことだ。
帰ると早速ベニタは父に王宮での不満をぶつけ、それならと連れてこられたのが、祝祭日の祭り中であるこの港町だった。
ベニタはお忍びで街に繰り出し、宝飾の類が店頭で破格値で売られているのを父にねだって買ってもらった。
久しぶりの外に気分はよくなり、次は何を見ようかと中央広場を通りかかったときだった。
「美人コンテスト……?」
中央広場に設けられた舞台に横断幕がかかっている。舞台を取り囲むように多くの見物客が集まっていた。
「祝祭日最終日の名物コンテストですよ、ベニタ様」
この街出身だという荷物持ちの侍女が、わくわくした様子で教えてくれた。
「ふーん」
美人コンテストなんてどうでもよかったが、何気なく視線をやった先、舞台袖に並んだ出場待ちと思われるドレス姿の女性たちの中に、見知った顔を見つけた。
「……エステルだわ…」
あの白金の髪は見間違いようがない。
エステルは緊張した面持ちで舞台袖に控えていた。
ベニタ・グラセリが王太子妃に選ばれてからはや十か月。
王太子妃選からそのままお妃教育に入ったベニタは、これまでずっと王宮で過ごしてきた。
望んで手に入れた地位だったはずだ。父からは
「あれは出来レースだ。アルモンテ公爵の娘が通ることは決まっている。そんな選考会に出る必要はない」
そう言われた。でも男爵家の娘として生まれ、王太子妃、ひいては未来の王妃になることは最大の誉れだ。可能性が少しでもあるのなら、挑戦してみたい。
父に無理やり頼み込み、王太子妃選に出た。
選ばれることが決まっているというアルモンテ公爵の令嬢エステルは選考会で初めて見た。
これまでエステルは社交場に顔を出すことがなかったので、おそらく他の八人の参加者もベニタ同様初めてエステルのことを見たはずだ。
第一印象ははっとするほどの美人、だろうか。悔しいほどにエステルは美しかった。少しのほほんとした表情で、他の参加者たちがぴりぴりしている中、一人だけ余裕の顔だ。
そう見えたのは、もしかしたら彼女が選ばれるとわかっている出来レースだったから、勝手にそう思っただけかもしれないが、ほかの参加者もそう思ったのは間違いない。
ベニタとしては、エステルの足を引っ張りまくってやると心に決め参加したのだが、やはりそう考えたのもベニタ一人ではなかったようだ。
結果は上々。元々社交場で場数を踏んでいないエステルの足を引っ張ることなど造作もないことだった。
おもしろいほどにエステルは失敗した。ここで一言言っておかねばならないが、エステルのダンス用の靴を隠したのはベニタだが、他の件はあずかり知らぬことだ。
エステル以外の参加者の間でも、小さな足の引っ張り合いは行われていたし、ベニタだってお茶会で出された紅茶が酸っぱくて吐きそうだった。誰かがお酢を投入したに違いない。それでも最後までそ知らぬふりで飲んで見せたのだ。
選考会だけの結果を見ればエステルが選ばれるはずはないと思ったが、これは出来レース。結果の良し悪しは関係がない。ベニタとしてはやれるだけのことはやったのだ。悔しいけれど、本当に悔しいれけど落ちても仕方がない。そう思っていたところ、明日は選考結果が発表されるという前夜、突然父が王宮にやって来た。
「おまえが王太子妃に選ばれることが決まったぞ」
「え?」
思わぬことを聞かされ、ベニタはぽかんと父の顔を見つめ返した。
「いま、なんと?」
「おまえが王太子妃だ。ベニタ。よくやったな。さきほどオラシオ殿下に呼び出され、おまえが内定したことを伝えられた」
「本当ですか? お父様」
ベニタは嬉しさのあまりその場でくるりと一回転した。
「わたしの選考会での出来栄えが認められたのですね? エステルは失敗ばかりしていましたもの。あれでは未来の王妃は務まりませんものね」
「そうではない、ベニタ」
父は首を振り、「おまえはゆくゆくはこの国の王妃。裏の事情もしっかりと知っておくといい」とベニタが選ばれた理由を話した。
「オラシオ殿下としては、選考会がどんな結果であろうと、当初の予定通りアルモンテ公のご息女を選ばれるおつもりだったようだ。が、上から横槍が入った」
「上? と申しますと?」
この国で王太子オラシオ殿下より上と言えば国王ということになる。
「国王陛下がエステル以外の者を選ぶようにとおっしゃられたのですか?」
「オラシオ殿下にアルモンテ公のご息女を外すよう言ったのは国王陛下だが、うわさでは更に上、バラカルド帝国の宰相から注文があったようだ」
「バラカルド帝国、ですか……」
普段あまり意識することはないが、レウス王国はバラカルド帝国の属国だ。
大陸の覇者として君臨する大帝国の宰相ともなれば、属国の国王をも従わせる力がある。
「けれどなぜ帝国がそのような注文を?」
「わからん。詳しい内情は私の耳にまで入ってはこんからな。とにかくバラカルド帝国からの注文でアルモンテ公のご息女は外され、代わりにおまえが選ばれたのだ。喜べ」
喜べと言われても今一つ素直に喜べない。
結局ベニタはエステルの身代わりでしかないということだ。
「けれどわたしが選ばれたのは、選考会での出来が良かったからなのでしょう?」
残り八人の内から選ばれたのだから、ベニタはその中では一番だったということだ。八人の中には自分より地位の高い女性もいたし、見目の良い女性もいた。それでもベニタが選ばれたのだ。
けれど父は「そうではない」と言った。
「ではなぜ?」
「当たり障りのない、ということらしい。他の八人の令嬢は、その父がお互い牽制しあっている者たちでその中の誰か一人を選ぶととうが立つということのようだ。その点私は中枢にはいないからな」
父はここで初めて自嘲的な笑みを浮かべた。
ではベニタが選ばれたのは、選考会云々ではなく、ただ父の王宮での立ち位置が当たり障りなかったからということなのか……。
選ばれた経緯は残念だったが、けれどベニタはいずれ王妃になれる。その事実は変わらない。
そう気を取り直し、そういえば王太子妃に選ばれればこのままお妃教育に入り、家には戻れないのかと寂しく思ったものだ。
でも夢にまで見た王宮での暮らしだ。
朝から豪華な食事が供され、ドレスに宝石は好きなように買えて、オラシオ殿下の脇花として控えていればいいのだ。こんな楽しいことはない。
そう思っていたのに―――。
選考会の時からうすうす感じてはいたけれど、王宮での食事はひどいものだった。
これなら貧乏貴族だった我が家の食事の方がまだましだ。しかも調理場から部屋までの距離が長いせいで料理はいつも冷めている。オラシオ殿下と食事を共にすることもあるのだが、これがまたつまらない。オラシオ殿下は口下手で会話が続かない。社交界でのしゃれた会話の飛び交う場を経験したベニタとしては物足りないことこの上ない。
それにドレスも宝石も前王太子妃、つまり今の王妃からのお下がり品ばかりで新しい品は一切購入してくれない。しかも現王妃からのお下がり品はそのまた前王妃からのお下がり品でもあり、すでに三代に渡って使いまわされているので生地は黄ばんでいるし、サイズ直しを三度もしているのでどこか歪だ。
もう我慢ならない。
ベニタはオラシオ殿下に直接申し出て、一旦実家に帰ることを許可してもらった。
王宮にいてはストレスばかり溜まる。新しいドレスも欲しいし靴も欲しい。実家に帰ったついでに父に頼んで買ってもらおう。
そんな算段をして実家帰りをしたのが三日ほど前のことだ。
帰ると早速ベニタは父に王宮での不満をぶつけ、それならと連れてこられたのが、祝祭日の祭り中であるこの港町だった。
ベニタはお忍びで街に繰り出し、宝飾の類が店頭で破格値で売られているのを父にねだって買ってもらった。
久しぶりの外に気分はよくなり、次は何を見ようかと中央広場を通りかかったときだった。
「美人コンテスト……?」
中央広場に設けられた舞台に横断幕がかかっている。舞台を取り囲むように多くの見物客が集まっていた。
「祝祭日最終日の名物コンテストですよ、ベニタ様」
この街出身だという荷物持ちの侍女が、わくわくした様子で教えてくれた。
「ふーん」
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