皇弟が冷淡って本当ですか⁉ どうやらわたしにだけ激甘のようです

流空サキ

文字の大きさ
46 / 70
第五章

過去との遭遇1

しおりを挟む
 泊まっていけと言う焔将を振り切り、未令は卓水の水晶邸へと戻ってきた。
 四日後の祖父と父の救出、それと同時に康夜を日本へ連れ戻るつもりであることを、叔父に報告したかった。

 卓水は不在だったが、水晶邸の者たちは未令を紫壇の扉がある部屋へと案内してくれた。

 今頃康夜は火の屋敷で過ごしているのかと思うと、やはり焔将の側妃として自由を与えられたことの大きさを感じる。

 焔将はなぜ初めて会ったばかりの未令のことを、こんなふうに受け入れてくれるのだろう……。

 どうしてもその疑問が頭から離れない。

「行ってらっしゃいませ」

 水晶邸の女官たちに送り出され、考え事をしながら紫壇の扉をくぐった。
 
 さきほど平安国へ来たとき、日本は土曜日の朝だった。
 今回はどれほど平安国での時間が過ぎたのか定かではないが、おそらく四五時間ほどだったろう。
 とすれば日本は土曜日の夜中。

 そう計算し、マンションの一室へと戻ったが、開口窓から差し込む日の光は燦燦と輝いている。

「あれ……?」

 思った以上に平安国への滞在時間が長く、すでにこちらでは翌日の昼間になっているのだろうか。

 ソファの側に置いてきたカバンからスマホを取り出そうとしたが、なぜかカバンがなくなっている。
 
 カバン、どこ行ったんだろう―――。

 きょろきょろと辺りを見回していると、ローテーブルの上に置かれたデジタル時計が目に入った。

「水曜日の、午後二時……?」

 その日付は、まさに夕方部活帰りに卓水が現れた日だ。

「…時間が戻ってる……。なんで…?」

 水曜日の今頃、未令は学校で授業を受けていた。

「え……?」

 紫檀の扉を振り返った。
 話では平安国と日本との時間差は三倍ほどだと聞いた。
 この紫檀の扉は日本と平安国とをつなぐもので、タイムスリップする装置ではないはずだ。

「どういうこと?」

 時間が戻るなんて聞いていない。
 数日先の自分が過去に戻ってきたことで、今現在、ここにいる自分と、学校で授業を受けている自分と、二人の未令が同時に存在していることになってしまう……。

「なんかやばい気がする」

 あと何時間かすれば、卓水に連れられた未令が、ここへやってくる。
 鉢合わせすればどんなことになるのか…。
 想像もつかないが、卓水に連れられここへやって来る水曜日の未令は、未来の未令を見て驚くに違いない。

 ともかくももう一度平安国へ戻って、入り直すしか方法はないだろう。

 今の叔父に、祖父と父の救出と康夜のことを話しても、叔父には何の話かわからないのだ。
 それに、過去の自分と遭遇することは、避けた方が良いような気もする。

 そう思い、未令は今しがた通ってきたばかりの扉を再びくぐり抜けた―――。









 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お飾り王妃のはずなのに、黒い魔法を使ったら溺愛されてます

りんりん
恋愛
特産物のないポプリ国で、唯一有名なのは魔法だ。  初代女王は、歴史に名を残すほどの魔法使い。 それから数千年、高い魔力を引き継いだ女王の子孫達がこの国をおさめてきた。 時はアンバー女王の時代。 アンバー女王の夫シュリ王婿は、他国の第八王子であった。 どこか影の薄い王婿は、三女ローズウッドを不義の子ではと疑っている。 なぜなら、ローズウッドだけが 自分と同じ金髪碧眼でなかったからだ。 ローズウッドの薄いピンク色の髪と瞳は宰相ククスにそっくりなのも、気にいらない。 アンバー女王の子供は四人で、すべて女の子だった。 なかでもローズウッドは、女王の悩みの種だ。 ローズウッドは、現在14才。 誰に似たのか、呑気で魔力も乏しい。 ある日ストーン国のレオ王から、ローズウッド王女を妻にしたいとうい申し出が届いた。 ポプリ国は、ストーン国から魔法石の原料になる石を輸入している。 その石はストーン国からしか採れない。 そんな関係にある国の申し出を、断ることはできなかった。 しかし、レオ王に愛人がいるという噂を気にしたアンバー女王は悩む。 しかし、ローズウッド王女は嫁ぐことにする。 そして。 異国で使い魔のブーニャンや、チューちゃんと暮らしているうちに、ローズウッドはレオ王にひかれていってしまう。 ある日、偶然ローズウッドは、レオ王に呪いがかけられていることを知る。 ローズウッドは、王にかけられた呪いをとこうと行動をおこすのだった。  

せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?

志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。 父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。 多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。 オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。 それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。 この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました

ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」 政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。 妻カレンの反応は—— 「それ、契約不履行ですよね?」 「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」 泣き落としは通じない。 そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。 逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。 これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。

実家を追い出され、薬草売りをして糊口をしのいでいた私は、薬草摘みが趣味の公爵様に見初められ、毎日二人でハーブティーを楽しんでいます

さら
恋愛
実家を追い出され、わずかな薬草を売って糊口をしのいでいた私。 生きるだけで精一杯だったはずが――ある日、薬草摘みが趣味という変わり者の公爵様に出会ってしまいました。 「君の草は、人を救う力を持っている」 そう言って見初められた私は、公爵様の屋敷で毎日一緒に薬草を摘み、ハーブティーを淹れる日々を送ることに。 不思議と気持ちが通じ合い、いつしか心も温められていく……。 華やかな社交界も、危険な戦いもないけれど、 薬草の香りに包まれて、ゆるやかに育まれるふたりの時間。 町の人々や子どもたちとの出会いを重ね、気づけば「薬草師リオナ」の名は、遠い土地へと広がっていき――。

婚約破棄されましたが、辺境で最強の旦那様に溺愛されています

鷹 綾
恋愛
婚約者である王太子ユリウスに、 「完璧すぎて可愛げがない」という理不尽な理由で婚約破棄を告げられた 公爵令嬢アイシス・フローレス。 ――しかし本人は、内心大喜びしていた。 「これで、自由な生活ができますわ!」 ところが王都を離れた彼女を待っていたのは、 “冷酷”と噂される辺境伯ライナルトとの 契約結婚 だった。 ところがこの旦那様、噂とは真逆で—— 誰より不器用で、誰よりまっすぐ、そして圧倒的に強い男で……? 静かな辺境で始まったふたりの共同生活は、 やがて互いの心を少しずつ近づけていく。 そんな中、王太子が突然辺境へ乱入。 「君こそ私の真実の愛だ!」と勝手な宣言をし、 平民少女エミーラまで巻き込み、事態は大混乱に。 しかしアイシスは毅然と言い放つ。 「殿下、わたくしはもう“あなたの舞台装置”ではございません」 ――婚約破棄のざまぁはここからが本番。 王都から逃げる王太子、 彼を裁く新王、 そして辺境で絆を深めるアイシスとライナルト。 契約から始まった関係は、 やがて“本物の夫婦”へと変わっていく――。 婚約破棄から始まる、 辺境スローライフ×最強旦那様の溺愛ラブストーリー!

最後の魔法は、ひとを待つための魔法だった

まるねこ
恋愛
「忌み子」として忌避された少女クロエを拾い、大魔法使いユーグは『次代の魔法使い』として育てる。 ユーグはクロエが最愛の人の生まれ変わりだということを告げぬまま、次の生へと旅立った。 残されたクロエは、ユーグが遺した記憶の断片から自分が最愛の人の生まれ変わりであることを知る。 師への恋心を抱くことはないと自らを戒めながらも、やがて再び生まれ変わってくるユーグを待つ決意を固める。 何百年もの時を経てついにユーグは転生する。 その時、クロエは……。 Copyright©︎2025-まるねこ

処理中です...