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15 配達ミスのこと

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 「以前、私は、。」
 「配達先を間違って荷物を届けた事があります。」
 
 新米ネズミは、はたとみずむし先輩の顔を見つめる。
 「届け先を間違った、、って」
 「どういう事ですか?」

 場所を間違って配達して、違う誰かが受け取ったなら恐らく荷物は開かない構造になっている。
 どういう状況だったのかよく飲み込めずに新米ネズミは聞き返した。


 「恋人からの返事を待っている、姉妹のネズミがいたのですが、」
 「どちらもどんぐり村に住んでいました。、、、そして、私がお姉さん宛の荷物を妹さんに届けに行ってしまったんです。」


 話を聞いている新米ネズミはあまり話が掴めず、すぐに配達し直せばいいのでは?、、と思ったが次の瞬間はっとして(まさか!)と先輩ネズミの方を見やった。

 先輩は静かに頷くと話を続けた。
 「悪い事にその恋人さんはお姉さんと妹さんの二匹とお付き合いをしていて、お姉さんの方だけに返事を出したのです。」

 「妹さんは二匹が知り合いなのを知らなかったので、差出しの名前を知って初めて恋人さんがお姉さんとお付き合いしている事を知ってしまったんです。」

 「私はとっさに誤魔化そうとしましたがもう遅く、後は大変にこじれてしまった、、、」


 「結局3匹が仲違いをしてしまったのは、全部私の配達間違いのせいなんです。」


 先輩はコーヒーをごくっと飲んでから深い溜め息をついた。



 新米ネズミはその話を聞いて、よそ事ながら恐ろしさにゴクリとツバを飲み込んだ。


 先輩は続ける。

 「私はこの事で一度してしまった事は、二度と無かった事には出来ないんだなと痛感しました。」

 「だから言葉にしても行動にしても、実行する時にはよくよく考えてから表に出さなくてはいけない。」

 先輩は自分に言い聞かせるみたいに静かに言葉を噛みしめていた。

 
 「気持ちが届くと、いいですね。」
と、先輩は少しだけ口元を緩ませてそう言うと、
 「休憩の邪魔をしてしまって、すみません。」
と言ってまた真面目な顔に戻り、休憩所を出ていった。



 『無かった事には出来ない、、、』
 新米ネズミは先輩のその言葉を何度も思い返すのだった。


 
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