夜明けの月★

天仕事屋(てしごとや)

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v 01 夜明けの月

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 月夜に照らされた2つの影は、激しく熱をおびていた。
 男の熱い背中にまわした細く白い腕。
 何度も振動を感じて耐えきれず一瞬、歯を立てようとして女は唇を噛む。そのまま快楽に身を委ねたままぎゅっと男に抱きついて女は男の首筋を舐めた。

 何度も打ち付けられる腰で汗ばんでくる二人の肌に月明かりがまた白く光る。

 二人は激しくお互いを求めて悶え合った。



『 夜明けの月はうっすらと白く
  空高くから見下ろして、
  人はそれに気が付いたときには
  その静けさを認めるが、
  そのあとは月がまた輝くまで
  在ることを忘れてしまう。 』




1999年6月19日   11:39

 今日も何も代わり映えのない毎日だ。 
 俺、 広田剣士35歳は結婚を機にリサイクルの仕事を始めてもうかれこれ15年になる。 
 何か手に職を付けたくて若い頃は色んな仕事を転々としてきたけれど、結局幼馴染みの父親に声をかけられて今の仕事に至っている。
 特にやりたい仕事でもないが、他にしたい事も無かった。紹介でなんとなくで結婚もした。

 けれどだだこのままでいいのだろうかと釈然としない、ぼんやりとした不安だけがある毎日だった。

 何か回収できそうな物を探して車を走らせるけれど、 今日はもう当てのある家は周り尽くしてしまっていた。
 今はあても無くただ車を走らせているだけだった。

 
  ラジオからはお昼時に毎日やっているグルメのお取り寄せコーナー。
 
 (今日は鴨の薫製と十割そばのセットか)

 パーソナリティーのリアクションに空腹が反応してくる。 そろそろどこかで腹ごしらえをしないとな、そう思って目線を左の脇道にやると、一瞬開けた丘が見えたような気がした。

 今まで気が付かなかった風景に多少の商売根性が湧き、車をUターンさせて通りから脇道に入ってみることにした。

 コンビニで何か買おうと思っていたのに何故か探求心の方が勝って車を丘へと登らせる。


 丘を登りきった所に木が繁り、その影にひっそりと古い民家があった。 
 壁はくすんだモスグリーンで塗られている。
  門扉やドア、窓枠は白く、どこか洋館を思わせるようなレトロな小さな家である。

 周りにはしばらく民家も無い。 剣士は木の側に車を停めると、降りて家を観察してみることにした。


 庭の草は生い茂っているが二階の窓が開いているようだった。


 興味本意で家の裏手を覗きに周ろうとすると、目の前の塀の向こうで ガサッと草の音がした。
  油断していたからか音に驚いて一歩下がると、剣士の足元の小枝がパキッと音を立てた。 


 心臓を落ち着けるだけの少しの沈黙の後、塀のむこうの主がこわごわと顔を覗かせる。

 つばの広めの薄紫色の帽子、黒い露かな髪の毛に目尻は切れ長だが丸みのある瞳、白い肌で通った鼻筋に小さめな鼻、うるおった唇。 
 華奢な体格でワンピースに白いブラウスを羽織った女の子がこちらを凝視していた。

  歳にして17、8ぐらいだろうか。黒髪にきわだって首筋が抜けるように白い。


 家主が出てくるぐらいは想定していたが、予想外の光景に今、目の前にいるのが人間では無いのではとさえ感じて剣士は息を飲んで動けずにいた。

「あ、あの、、、なにか」
 その子は恐恐と口を開いて尋ねる。

 彼女の声に我にかえると剣士は
「あ、あぁ、あの、この辺りで廃品を集めている者で、、」
「もう着けないアクセサリーなんかでも良いです。ええと、、、何でもいいので要らないものはありますか?」と動揺しながらも尋ねる。
 
 少女は少し困惑した表情で帽子のつばを握って答える
 「あの、祖父の物なら、、何かあるかも知れません。私の物は、、あまり無くって。」

 祖父の~というワードに剣士の心は踊る。
 「あの、少し、見せてもらってもいいですか?」
 と彼女に尋ねると

 「はい、、。」
 と、手に持っていたスコップを花壇の隅に挿した。

 庭の花壇の草抜きをしていたようで、塵取りと箒が置いてある。

 彼女の生活感を目の当たりにして剣士は少しほっとしていた。


 少女に案内されて家の中へと進む。
 部屋の天井は思ったより高くなく、外観よりも奥行きのある建物だなと感じる。

 剣士は廊下の奥のだだっ広い部屋に通された。

 そこにはホコリを被った家具や絵画、コーヒーカップなどが飾られた食器棚、沢山の古い物が集められた部屋だった。

 「つかぬことをお伺いしますがお祖父様は、、」
剣士が尋ねた。

 「訳あって今は離れて暮らしています。」
 広い家に女の子一人で住んでるなんて物騒だなと思ったが、そんな家に自分もズカズカ上がり込んでしまっている事に気まずさを感じてしまう。

 剣士は室内のあちこちに目をやり、値が付きそうな物は説明をしていく。
 「家具やティーカップは取り扱ってますので、こちらでよく見せてもらってからお値段付くと思います。」
 「ここら辺の物を全て出されますか?」

 少女はこくりと頷く。
 「はい、、一人では使わない物ばかりなので。」
 
 これは久々のいい仕事だと期待に胸が膨らむ。

 だが未成年からの買取は出来ない。
 「申し訳ないのですが、未成年のお客様の買取は出来ないので、どなたか、、、いらっしゃいませんか?」
剣士がそう言うと、

 「あ、ちょっと待って下さい。」
 そう言って少女は二階へ行き、戻ってくると手には免許証を持っていた。
 差し出されたそれの生年月日を見て驚く。

 「、、、25歳!?」
 写真と見比べても確かに彼女だった。

 「すみません!てっきり学生さんかと、。」
 免許証も偽装では無さそうだし、、、。
 (マジかよ、、)動揺を隠しきれない。
 
 キョトンとしている彼女に言葉を返す。
 「成人なら問題はありません。いや~、ホント若く見られるでしょう?君、可愛いから。」
 誤魔化すように出た、セクハラ発言。

 剣士が笑って見せると彼女も安心したような顔で微笑んだ。

 とにかく、時間がかかる事を伝えると彼女は「構いません」と言ってお茶を出してくれた。

 

 


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