夜明けの月★

天仕事屋(てしごとや)

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v 02 衝動

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 ハァ、、、ハァ、、、ハァ、、、

 薄暗い部屋の中で女の苦しそうな息使いが響く。
 俯いた額からは汗が滴り、胸を抑えて肩で息をしている。

 その目は真っ赤に見開かれ、空気を見つめながら衝動が収まるのを待っているようだ。

 キィ、、、、、。

 鳴き声を立てた主は小さなネズミだった。
 少女は視線をネズミから離せない。

 胸の奥が益々高鳴っていくのを感じても、抑えることが出来なかった。
 ハァハァと息を切らしてネズミに飛びついて両手で捕らえた。
 
 強く握りしめる手にネズミは身動きも取れないままキィーと呻く。

 女は衝動のままにネズミに牙を向いた。

 ギィギィといううめき声と手から滴り落ちる血で床は真っ赤に染まっていく。


 『 毎日燃え盛るような衝動に支配される
   必死で抑えようとするけれど
   喉の乾きと体が求めるものとで
   胸が張り裂けそうになる
   途切れる記憶と
   抑えられない自我で
   また罪を犯してしまった 
   自分の中にある激しい血の性を呪う 』
 

1999年6月19日 13:36

 「この量では数日かかるかもしれません。」
 剣士は家主にそう告げた。

 「数日、、お願い、出来ますか?」
 彼女は飲み物のお替りとお菓子を持って来た。

 「こちらは構いません。むしろ有り難うございます。」
 グーーゥーゥー 、、、。

 言い終わると同時に剣士のお腹が鳴る。

 「お菓子より、何かお食事の方が良いですね。」
 彼女がクスリと微笑んで言った。

 「すいません、、。」
 (そう言えば飯、、、食っとけば良かった~)
 恥ずかしさで死にそう。
 でも彼女の外見とは違う温かさに触れて、剣士は胸が一瞬高鳴るのを感じた。





 しばらくすると楕円のお皿におにぎりが3つ。
 丁寧に海苔が巻いてあり、端にはたくあん。お椀に味噌汁まで添えられている。

 剣士があんぐりと口を開けて固まっていると、

 「こんな物しかありませんが、、。」
 申し訳なさそうに彼女が言う。

 剣士はハッとしてブンブンと首を横に振りながら
 「いえ!!あまりに理想的な食事にびっくりで。い、いただきます!」
 家でもこんな古風でシンプルなメニューは出たことがなく、剣士のテンションは上がっていた。
 興奮しておにぎりに食らいつく男の姿は、尻尾を振ってエサにありつく犬のようだった。

 彼女もそれを見て嬉しそうに微笑んだ。

 彼女は歳の割にはとても落ち着いた雰囲気を持っていて、顔色はコロコロ変わるのにふっとこちらを見据えるような瞬間があり、その瞳には心を奪われるようだった。

 


 
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