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v 08 戸惑
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薄い雲が月を僅かに隠して、ぼんやりとほのぐらい部屋に女が横たわっているのが見える。
月明かりが当たらないベッドで彼女はまだ寝息をたてていた。
椅子に腰掛けて服を着る男はその後、静かに部屋を後にした。
玄関の扉が静かにしまる音と、鍵をかけてそれが玄関に落ちる音が遠くで聞こえる。
部屋にはまだ、微かに熱の香りが残っているかのように、男が出ていく時の塵が、うっすらと明かりに照らされて小さく輝いては消えていくのだった。
『月の見えない昼間の空は
まるでそんなものは
そこに無かったかのように
穏やかに ゆっくり
時間だけ過ぎていく
けれど ぽっかりと空いた穴に
熱く潜む感情は
じっと身を屈め
ひっそりと
息を潜めて 今にも
その時を 待っているようだ』
1999年6月20日 17:20
「わざわざ送ってくれなくても良かったのに。」
と陽介がバックミラーを眺めながら呟く。
「わざわざじゃねぇよ。一旦高峰に寄るついでだって。」トラックのハンドルを切りながら剣士は言う。
「ふーん、、、。でも、まぁ、お前が飲まれるのもわかるかも、、、。」陽介が分からない言い方をする。
「、、、飲まれる、、って、なんだよ。」
腑に落ちない剣士が陽介に尋ねる。
「だって、あんな美少女が一人暮らしだぞ!」
「絶対やばいって、訳ありな感じ!肌も白いし、バケモンなのか精神的に何かあるとか、、、!」
「、、、はぁ?」
陽介の突然のハイテンションに呆れた顔になる。
「兎に角、、、俺にはああいう不思議物件は手に負えない。、、逆におまえは、スゲえ!」
そう言うと、陽介は(まぁ、頑張れ)と言わんばかりに肩を叩いた。
(なんなんだよ、、いったい、、)
剣士は、陽介の言っている事がさっぱり理解出来なかった。
トラックから荷物を降ろし終えると、
「じゃあな、俺はもう一回行ってくる。」と運転席に乗り込みながら、剣士は陽介に言った。
「おーぅ、じゃあ、またな。、、、」
そう言いながら陽介は、上げた右手を降ろさずにぼんやりとすると、
「剣士、、。」と声をかけた。
どうしたのかと剣士は陽介が話始めるのを待った。
「あの、、若菜がさ、、、」
「?、、、若菜が、、何だよ。」剣士は聞き返した。不意に出てきた嫁の名前に少しだけ驚く。
「、、、いや、、やっぱ何でもねーわ。」
陽介はそう言うと、すぐに背中を向けて剣士に手を振りながら立ち去って行く。
(なんだよ、、煮え切らねー。)
剣士は陽介の態度に不満を覚えながらもトラックのエンジンをかけるのだった。
月明かりが当たらないベッドで彼女はまだ寝息をたてていた。
椅子に腰掛けて服を着る男はその後、静かに部屋を後にした。
玄関の扉が静かにしまる音と、鍵をかけてそれが玄関に落ちる音が遠くで聞こえる。
部屋にはまだ、微かに熱の香りが残っているかのように、男が出ていく時の塵が、うっすらと明かりに照らされて小さく輝いては消えていくのだった。
『月の見えない昼間の空は
まるでそんなものは
そこに無かったかのように
穏やかに ゆっくり
時間だけ過ぎていく
けれど ぽっかりと空いた穴に
熱く潜む感情は
じっと身を屈め
ひっそりと
息を潜めて 今にも
その時を 待っているようだ』
1999年6月20日 17:20
「わざわざ送ってくれなくても良かったのに。」
と陽介がバックミラーを眺めながら呟く。
「わざわざじゃねぇよ。一旦高峰に寄るついでだって。」トラックのハンドルを切りながら剣士は言う。
「ふーん、、、。でも、まぁ、お前が飲まれるのもわかるかも、、、。」陽介が分からない言い方をする。
「、、、飲まれる、、って、なんだよ。」
腑に落ちない剣士が陽介に尋ねる。
「だって、あんな美少女が一人暮らしだぞ!」
「絶対やばいって、訳ありな感じ!肌も白いし、バケモンなのか精神的に何かあるとか、、、!」
「、、、はぁ?」
陽介の突然のハイテンションに呆れた顔になる。
「兎に角、、、俺にはああいう不思議物件は手に負えない。、、逆におまえは、スゲえ!」
そう言うと、陽介は(まぁ、頑張れ)と言わんばかりに肩を叩いた。
(なんなんだよ、、いったい、、)
剣士は、陽介の言っている事がさっぱり理解出来なかった。
トラックから荷物を降ろし終えると、
「じゃあな、俺はもう一回行ってくる。」と運転席に乗り込みながら、剣士は陽介に言った。
「おーぅ、じゃあ、またな。、、、」
そう言いながら陽介は、上げた右手を降ろさずにぼんやりとすると、
「剣士、、。」と声をかけた。
どうしたのかと剣士は陽介が話始めるのを待った。
「あの、、若菜がさ、、、」
「?、、、若菜が、、何だよ。」剣士は聞き返した。不意に出てきた嫁の名前に少しだけ驚く。
「、、、いや、、やっぱ何でもねーわ。」
陽介はそう言うと、すぐに背中を向けて剣士に手を振りながら立ち去って行く。
(なんだよ、、煮え切らねー。)
剣士は陽介の態度に不満を覚えながらもトラックのエンジンをかけるのだった。
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