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親子の絆
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逢坂城での絶体絶命の窮地を乗り切るために過去へと飛ばされてしまった事実を知った俺は、天下を統一するための第一歩を踏み出そうとしていた。
なぜ時間をさかのぼる事が出来たのかなどと、凡庸な悩みを持つ必要はない。
なぜなら!
俺が天下人だからだ!
天下人たるもの、パンをくわえた転校生にぶつかったりなど日常茶飯事、ティーカップを持った転校生にぶつかった時も、そっと胸元から取り出した砂糖壺を差し出して「おいくつですか?」と言えるほどの余裕を持っているものだ。
当然、天下統一の足がかりに近隣の大名を屈服させ領地を広げるなど、凡庸な策を用意るはずもない。
小さな勝利を積み重ねた所で何になる、戦に勝つには総大将の首をとる、他に道はないのだ。
俺のやるべきは、逢坂城に攻め込んだ徳川家康の首を取る事だ!
あの煮ても焼いても食えない狸爺もこの時代なら、ただの子供、竹千代!
竹千代ってなんやねん、竹やで?
松竹梅の真ん中とか中途半端すぎてめちゃうける、なんで竹やねん!
青臭い竹など一刀のもとに切り裂いて中からかぐや姫を出して月までふっ飛ばしてやる。
という意気込みで、尾張へ向かう旅に出たのであった。
「秀頼様~。待ってください~」
「何だ千絵か、お前もついて来る気か? 今回の旅は危険だぞ、いつ命を落としてもおかしくはない、お前にその覚悟があるのか?」
「はい! この命に代えましても秀頼様をお守りいたします」
「その心意気やよし! ならば、俺をおぶって参れ!」
「はい! それは出来ません」
「その心意気や……、いや、なんで?」
「秀頼様、急ぎましょう! 早く行かないと今川家に人質として送られる竹千代様一行に追いつけなくなってしまいますよ」
「俺、天下人だから長旅とか足痛くなるやん? 駕籠とか馬とかないと遠くまで行けないやん?」
「さぁ、旅の始まりですよ!」
「いや、ほんま無理やねんって、足痛いねんって」
やはり京より東など人の住むところではない、蛮族と物の怪の住む魔境だった。
何度あきらめようかと思った事か。
大きすぎた夢など忘れて引き返せば、何の苦労もなく穏やかな朝を迎えられたと言うものを。
繰り返し訪れる同じ朝を……。
だが、天下人たる俺の血がそれを許さなかった!
どんな困難も乗り越え、天下を統一しなければならないのだ!
険しい山道を登り衰弱していく俺の側で、日増しにテンションの上がる千絵に、生命力を吸い取られているのではないのかと危惧しながらも、切り立った崖を越え、ついに尾張へとたどり着いた。
「秀頼様、そろそろお昼にしましょうか~」
「おー、やっと飯か。永劫の旅路もついに終焉の時を迎えるか……」
「今朝出発したとこなのに、大袈裟ですよ~」
「いや、それぐらい疲れてんって。ほんまずっと歩きだとは思わんかったわ。おっ? にぎり飯か」
「はい、梅と昆布がありますよ~」
「ほぅ、どれどれ……」
――無い?
一体何が起こったのだ?
にぎり飯に手を伸ばし掴もうとした瞬間、それは忽然と手の中から消え去っていた。
そんな事が起こる筈が無い。
確かにつかんだ、この手につかみ取ったのだ!
俺が手にしようとしたにぎり飯を、木の上のサルが食っていた。
「おのれ、サルが、にぎり飯を返せ!」
「ウキー!」
「うおっ、いてぇ、何だ今のは」
「秀頼様、これは梅の種です。あのサルが食べたのは梅の方のにぎり飯です」
「まさか一発で梅を引き当て、にぎり飯を食うと同時に攻撃に転じるとは、……まさかこのサル……父上では!」
「ウキ?」
「間違いない、父上だ! 在野に臥している場合ではありませぬぞ父上、信長公に仕官して、天下統一への第一歩を踏み出すのです!」
「ウキッキ?」
「秀頼様、千絵にはそれはただのサルにしか見えませぬが……」
「いや、父上だ! 父上に違いないのだ!」
「ウキー!」
「父上ー!」
なぜ時間をさかのぼる事が出来たのかなどと、凡庸な悩みを持つ必要はない。
なぜなら!
俺が天下人だからだ!
天下人たるもの、パンをくわえた転校生にぶつかったりなど日常茶飯事、ティーカップを持った転校生にぶつかった時も、そっと胸元から取り出した砂糖壺を差し出して「おいくつですか?」と言えるほどの余裕を持っているものだ。
当然、天下統一の足がかりに近隣の大名を屈服させ領地を広げるなど、凡庸な策を用意るはずもない。
小さな勝利を積み重ねた所で何になる、戦に勝つには総大将の首をとる、他に道はないのだ。
俺のやるべきは、逢坂城に攻め込んだ徳川家康の首を取る事だ!
あの煮ても焼いても食えない狸爺もこの時代なら、ただの子供、竹千代!
竹千代ってなんやねん、竹やで?
松竹梅の真ん中とか中途半端すぎてめちゃうける、なんで竹やねん!
青臭い竹など一刀のもとに切り裂いて中からかぐや姫を出して月までふっ飛ばしてやる。
という意気込みで、尾張へ向かう旅に出たのであった。
「秀頼様~。待ってください~」
「何だ千絵か、お前もついて来る気か? 今回の旅は危険だぞ、いつ命を落としてもおかしくはない、お前にその覚悟があるのか?」
「はい! この命に代えましても秀頼様をお守りいたします」
「その心意気やよし! ならば、俺をおぶって参れ!」
「はい! それは出来ません」
「その心意気や……、いや、なんで?」
「秀頼様、急ぎましょう! 早く行かないと今川家に人質として送られる竹千代様一行に追いつけなくなってしまいますよ」
「俺、天下人だから長旅とか足痛くなるやん? 駕籠とか馬とかないと遠くまで行けないやん?」
「さぁ、旅の始まりですよ!」
「いや、ほんま無理やねんって、足痛いねんって」
やはり京より東など人の住むところではない、蛮族と物の怪の住む魔境だった。
何度あきらめようかと思った事か。
大きすぎた夢など忘れて引き返せば、何の苦労もなく穏やかな朝を迎えられたと言うものを。
繰り返し訪れる同じ朝を……。
だが、天下人たる俺の血がそれを許さなかった!
どんな困難も乗り越え、天下を統一しなければならないのだ!
険しい山道を登り衰弱していく俺の側で、日増しにテンションの上がる千絵に、生命力を吸い取られているのではないのかと危惧しながらも、切り立った崖を越え、ついに尾張へとたどり着いた。
「秀頼様、そろそろお昼にしましょうか~」
「おー、やっと飯か。永劫の旅路もついに終焉の時を迎えるか……」
「今朝出発したとこなのに、大袈裟ですよ~」
「いや、それぐらい疲れてんって。ほんまずっと歩きだとは思わんかったわ。おっ? にぎり飯か」
「はい、梅と昆布がありますよ~」
「ほぅ、どれどれ……」
――無い?
一体何が起こったのだ?
にぎり飯に手を伸ばし掴もうとした瞬間、それは忽然と手の中から消え去っていた。
そんな事が起こる筈が無い。
確かにつかんだ、この手につかみ取ったのだ!
俺が手にしようとしたにぎり飯を、木の上のサルが食っていた。
「おのれ、サルが、にぎり飯を返せ!」
「ウキー!」
「うおっ、いてぇ、何だ今のは」
「秀頼様、これは梅の種です。あのサルが食べたのは梅の方のにぎり飯です」
「まさか一発で梅を引き当て、にぎり飯を食うと同時に攻撃に転じるとは、……まさかこのサル……父上では!」
「ウキ?」
「間違いない、父上だ! 在野に臥している場合ではありませぬぞ父上、信長公に仕官して、天下統一への第一歩を踏み出すのです!」
「ウキッキ?」
「秀頼様、千絵にはそれはただのサルにしか見えませぬが……」
「いや、父上だ! 父上に違いないのだ!」
「ウキー!」
「父上ー!」
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