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第六天魔王・信長!
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何とかサルを、もとい父上を織田信長に仕官させる事が出来た。
流石は第六天魔王と名乗るだけはあって、自分の部下にサルが混ざっていても眉一つ動かさない器のデカさは、歴戦の武将たちが「信長公さえ生きていれば」と、言うだけはある。
しかし、感心している場合ではない。
今やるべきは! 竹千代を始末する事だ!
それも父上に出世してもらい、織田家で自由に行動が出来るようになれば容易い事だ。
(ふっふっふ……待っておれ徳川家康。)
豊臣秀吉の出世の第一歩と言えば、やはり草鞋のエピソードだ!
寒い冬の日に信長公の草鞋を懐で温めて、取り立てられたと良く自慢していた。
「父上! 信長公の草鞋を……」
「ウキッ?」
食っている! 行き成り草鞋を食っている!
こいつやっぱ、ただのサルなんじゃないのか?
草鞋を食うサルが武士になど成れるものか、まして太閤なんかになれるわけがねぇ。
一介の素浪人が天下人になるなど誇張された夢物語、父上のハッタリでしかない。
天下人とは生まれた時すでに天下人なのだ!
この俺のように!
……だが、それではこのサルはどうやって出世したのだ?
草履を懐どころか腹の中に入れてしまったサルは信長公の問いに何と答える?……。
「むっ、この草履、温かい! 貴様、尻に敷いておったな!」
「ウキッ、極寒の地に住む者たちは凍傷になった時アザラシの体の中に入って、その傷をいやしたと言います。故に! 腹を掻っ捌いて草履を温めておりました!」
これだ! なんか、かっこいい!
草履を差し出す時に浮かべる笑みも心なしかイケメンに見える!
サルなのに!
……いや、冷静に考えると、一生に一回しか使えないネタだし、血まみれの草履をはかされる方もどうなんだ?
草鞋を履く度に一人死ぬ、第六天魔王に相応しいエピソードにはなるかもしれないが、ここで父上に死なれてしまっては元も子もない、何かいい方法はないのか……。
「出かけるぞ! わしの草鞋を持ってこい」
「しまった、信長公が来たぞ! 父上、早く草鞋を……そうだ、草鞋は食ってしまっていたんだった!」
どうするんだ、このサル!
草鞋を食ったなど知られれば、確実に打ち首!
やはり腹を掻っ捌いて取り出すしかあるまい。
俺の名刀ヨシミツで一刀両断にしてくれよう……。
「ウキッ!」
だが! その時サルのとった行動は俺が予想だにしないものだった!
間違いなくサルは草履を食っていたはずだった。
だが、サルは食ったはずの草履を懐から取り出したのだ!
自分でも何を言っているのか分からねぇ!
サルは草履を食ったのか食っていないのか、どうやって腹の中から草履を取り出したのか!
その時になって、俺は初めて気が付いた。
奴はただのサルではない。
ただのサルは、草履など食わないのだ!
よく見ろ! よく見ろ! よく見ろ!
サルが懐から取り出したものをよく見るんだ!
あれは、草履ではない!
よく見ろ! よく見ろ!
――毛だ!
腹毛を毟って、丸めたものだ!
「むっこの草履……、ふわふわで、毛皮のような履き心地! 是非も無し!」
履きやがった。
毛皮というか、毛玉だが!
毛を丸めたものを履きやがった。
――だが、どうやって?
分からぬ、天下人であるこの俺が握りしめた手のひらに汗をかくほどに。
これが第六天魔王の実力なのか?
これが、神も仏も恐れぬ、魔王信長なのか!
流石は第六天魔王と名乗るだけはあって、自分の部下にサルが混ざっていても眉一つ動かさない器のデカさは、歴戦の武将たちが「信長公さえ生きていれば」と、言うだけはある。
しかし、感心している場合ではない。
今やるべきは! 竹千代を始末する事だ!
それも父上に出世してもらい、織田家で自由に行動が出来るようになれば容易い事だ。
(ふっふっふ……待っておれ徳川家康。)
豊臣秀吉の出世の第一歩と言えば、やはり草鞋のエピソードだ!
寒い冬の日に信長公の草鞋を懐で温めて、取り立てられたと良く自慢していた。
「父上! 信長公の草鞋を……」
「ウキッ?」
食っている! 行き成り草鞋を食っている!
こいつやっぱ、ただのサルなんじゃないのか?
草鞋を食うサルが武士になど成れるものか、まして太閤なんかになれるわけがねぇ。
一介の素浪人が天下人になるなど誇張された夢物語、父上のハッタリでしかない。
天下人とは生まれた時すでに天下人なのだ!
この俺のように!
……だが、それではこのサルはどうやって出世したのだ?
草履を懐どころか腹の中に入れてしまったサルは信長公の問いに何と答える?……。
「むっ、この草履、温かい! 貴様、尻に敷いておったな!」
「ウキッ、極寒の地に住む者たちは凍傷になった時アザラシの体の中に入って、その傷をいやしたと言います。故に! 腹を掻っ捌いて草履を温めておりました!」
これだ! なんか、かっこいい!
草履を差し出す時に浮かべる笑みも心なしかイケメンに見える!
サルなのに!
……いや、冷静に考えると、一生に一回しか使えないネタだし、血まみれの草履をはかされる方もどうなんだ?
草鞋を履く度に一人死ぬ、第六天魔王に相応しいエピソードにはなるかもしれないが、ここで父上に死なれてしまっては元も子もない、何かいい方法はないのか……。
「出かけるぞ! わしの草鞋を持ってこい」
「しまった、信長公が来たぞ! 父上、早く草鞋を……そうだ、草鞋は食ってしまっていたんだった!」
どうするんだ、このサル!
草鞋を食ったなど知られれば、確実に打ち首!
やはり腹を掻っ捌いて取り出すしかあるまい。
俺の名刀ヨシミツで一刀両断にしてくれよう……。
「ウキッ!」
だが! その時サルのとった行動は俺が予想だにしないものだった!
間違いなくサルは草履を食っていたはずだった。
だが、サルは食ったはずの草履を懐から取り出したのだ!
自分でも何を言っているのか分からねぇ!
サルは草履を食ったのか食っていないのか、どうやって腹の中から草履を取り出したのか!
その時になって、俺は初めて気が付いた。
奴はただのサルではない。
ただのサルは、草履など食わないのだ!
よく見ろ! よく見ろ! よく見ろ!
サルが懐から取り出したものをよく見るんだ!
あれは、草履ではない!
よく見ろ! よく見ろ!
――毛だ!
腹毛を毟って、丸めたものだ!
「むっこの草履……、ふわふわで、毛皮のような履き心地! 是非も無し!」
履きやがった。
毛皮というか、毛玉だが!
毛を丸めたものを履きやがった。
――だが、どうやって?
分からぬ、天下人であるこの俺が握りしめた手のひらに汗をかくほどに。
これが第六天魔王の実力なのか?
これが、神も仏も恐れぬ、魔王信長なのか!
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