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ゲーム前には説明が必要です①
しおりを挟む景品としてマスターから現実の優飛若菜の元にメールが届いた( 連絡先を随分前に教えてはいた )
数日後、僕は添付さられた地図を片手に電車に揺られていた。メールの概要は、地図上の場所に指定された日時に行く事と、説明は当日行われる事が書かれていた。
近郊に程近い緑が映える車窓を眺め、例の話の信憑性にますます胡散臭さが募る。
勝手なイメージだが、情報漏洩防止に人里離れてはいるがネット環境が完備された別荘に集められると思っていた。
それが電車を降り、古い木造建築が並ぶ(文化財に指定されているらしい...)
街道を歩く。観光地として有名で、ちょくちょく巨大なふ菓子を持った人達とすれ違う。地図に従いパン屋の角を曲がり、ありふれた一棟のビルが目にはいる。
「ここ?」
地図が指し示した目的地は、やはりイメージからかけ離れてたビルの二階。
一階の蕎麦屋は暖簾が風に揺れ、外階段手前に置かれた台上のメニューは美味しそうな写真が輝いてた。
そそられる美味しそうな匂いを断腸な思いで断ち切り、異様に古びた外階段を上りはじめる。
所々に塗装された白いペンキが剥がれ、錆が浮かぶ。スマホを握りったまま目当ての部屋前に立ち、インターホンを鳴らしたら男とも女とも判断できない声が返ってきた。
「こんにちは、えっと~『まいど、ほんじつはげーむをひきとりにきました。』だったかなぁ~」
「あぁ、待って」
スマホを見ながら、入り口前で告げる暗号を口にした。いやはや、巫山戯過ぎではなかろうかと思うほど適当な暗号だ。
「やぁ、どうも宜しく。」
「あの...」
扉を開け出て来た人は、ウエーブが効いた髪が肩までの整った中性的な浅黒い色合いな顔立ちの人。
声と同じで男女の区別が付かなかった。メガネと前髪で顔を隠す僕とは真逆の性質の人種に値踏みされるような視線が居心地悪い......
メガネと前髪で視線を遮るも、落ち着かないからうつ向いたままやり過ごす。
初対面にも関わらず服装のセンスが悪いと言われるのだろうか
(確かに、母さんから『新聞売りの青年?』と言われた事があるが...)
ジーンズ生地のカボチャ帽と、色違いの同一生地で作ったショルダーは気に入ってたのだが受け入れられないのか。
「ごめんよ、中に入ってくれて構わないよ。コートはそこに掛けてくれるかな」
「はい......」
言われるまま玄関横にダッフルコートを描ける。
室内は外観とは裏腹に意外と綺麗なモダン風オフィス、人影はこの性別不明のイケメン一人だけ。
プログラマーだとは思うが、試験管を持った迷子の科学者だと聞かされれば、そっちの方がまだ頷ける感じがする人だ。
心なしか、右手と右足が一緒に動いている?
落ち着け、落ち着くのだ......ヒッヒッフゥー
応接室らしい室内で勧められた席に腰を掛け、テーブルに置かれたアンケートの記入を促される。初めはスラスラだったが、簡単な質問の途中で思わず手が止る。
④ 現実を生きるのは辛いですか?.........イエス。
⑤ ゲームが現実ならと夢見たことはありますか?.........イエス。
⑥ 仮に現実で魔法が使えたら使ってみたいですか?........
答えは決まって『イエス』なのだろう。
それが『現実』と考えたら、ただ『怖い』の一言に尽きなかった。
僕は、イエスとノーの二つしかない解答欄横に『どちらともない』と書き足した。
⑧ プレイヤーは期間中常にモニタリンクされますが許可されますか?......イエス。
⑨ プレイヤーはプレイ中の身体異常は自己責任とし弊社は関与いたしませんが宜しいですか?......イエス
⑩ ゲーム内容は機密事項であり、第三者に口外する事は固く禁じます。宜しければ署名をお願いします。
最後の方はアンケートよりも誓約書に近い気がしたが、特別不審な点も見つからなかったのを良いことに『優飛若菜』と署名した。
書けたかい?ありがと。自己紹介がまだだったね。私は、鰒田猯夢だ。君のサポーターだと思っていてくれ」
フグタマミユと名乗ったイケメンは人の良さそうな笑みを僕に向けてくれたが、新たな疑惑 (国民的一家から取った偽名 )を抱いた僕には胡散臭く見えてしまった。
まぁ、胡散臭げではあるが悪人ではないと僕の勘が告げたので警戒心を解く。
社会人を目指す普通の高校生がいつまでもゲーム内に逃げている訳にはいかないし現実を真っ当に生きると決め第一歩としてゲームテスターとして来たよな。
深呼吸して......ヒッヒッフゥー......よし、自己紹介だ!
「は......はじめまして......優飛若菜......です......」
「うん、宜しく若菜君」
ここに来て一時間、真面な会話が成立した瞬間だ。暗号以外には「あの」と「はい」しか喋っていなかった僕が、初対面の相手と会話を交わせたのだ我ながら進歩した。
簡単な挨拶を交わし、本題に入る為に場所を変えると言われマミユさんの後をついていく。
応接室を出て、廊下先には階段があり下る......途中、体感的に一階の蕎麦屋よりも低いだろうと僕の脳内が混乱する。
薄暗い間接的な照明が最早ダンジョンのようでワクワクしていると、階段の終点に頑丈な扉が進行を妨げる。
「開けるから待ってね」
扉のが開かれる向こう側、床をさ迷う配線に繋がれた無機質な機械が圧巻な存在感を示す。
しかも、ゲーマーの憧れなチェアが異質な空気を増益させる。
「チェアに座ってくれるかな?準備するから」
「はい......あの~僕以外にテスターの人とかは?」
誰かしら居るであろうと考えていた僕を裏切り、中は機械音のみ規則正しく響いていた。
チェアに腰掛け、マミユさんの様子を盗み見る。
「あぁ、拠点には私と君の二人しか居ないよ。残念ながら、他のテスターさんは、別の場所だが教えられない」
謎のプラグに繋がれたままのヘルメットを被せられつつ、今更ながら美人と二人だけの事実に頬が熱くなる......
いや、変な妄想なんてしてないから!!
近くで直視出来ないほどの距離で顔を覗かれ、前髪の隙間から見えた視線が合って息が止まるかと......なんて思ってもないからな!!
「準備は宜しいか?」
深く深呼吸をし瞼を閉じて頷く。雑念を振り払い、新しいゲームに思いを馳せる。
頭にジリジリと痺れにも似た刺激と、鼻腔を擽る柔らかな花のような甘さ。
「目をか開けて下さい。痛くはないですか?」
導く声に乗せられ目を開く。浮かれる僕を横目にマミユさんは奥から持って来た姿見を前にかざす。
目下は、ゲームらしからぬ現実と一寸の違いが無いチェアに座っている僕。
手のひらを眺め、開け閉めする......心なしか、一回り小さいく感じる手と、胸元が重く肩が凝る。
「!?」
違和感を探す内に戸惑う。柔らかな膨らみ、着た覚えの無い優美なエメラルド-キャッツアイなワンピースを纏う。
あれ?アバターが女子キャラ?
リアルなできだな......
現実だと言われても頷ける出来に自分の体を躊躇いながらも触ってしまう......
「すごいですね......本物みたいだ」
「うん、本物だからな」
うん?本物?
言われた言葉がはっきりとわからない......
いや、意味は理解しているのだが、何に対してなのかがわからない。
チェアの後ろからガタンと音がし、状況が掴めず立ち上がって周りを見回す。僕が座っていたチェアの後ろにも同様の椅子......それにもたれ掛かかった黒い影に目が引く。
「......僕?」
「安心したまえ。精神をデータ化し、ホムンクルスに移してあるだけだ。本体には無害さ」
ホムンクルス?移した?
マミユさん、何言ってるんだ?
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