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胸の高鳴り
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「─────てな感じかなぁ。ここまでの経緯?つまりは君が遭難したの、私のせいなんだよね。……ごめんね?」
彼女は少し顔色を伺いながら謝ってきた。沈黙が二人の間を包む。なんだか沈黙に耐えられなくなった俺は、思わず吹き出してしまった。
「ふはっ!」
「!?!?なんで笑うの!!」
「いや、なんかさ……君出会った時すごい明るかったのに妙に話がシリアスだったから、なんかなんて言えばいいのかわかんなくなっちゃって」
「あっ……」
「うん、信じるよ。そんなリアルに作り話即興でできたらとんだ才能だからね。君は妖精なんでしょ?」
「あ、うん!そっか信じてくれるんだ、やっぱり君悪い人じゃないね!」
「結構安直な考えだね」
「いいの!そんな事言ったらいじわる!」
なんだか困ってしまった。遭難した先で出会ったのは妖精……?それでさえもう夢みたいでわけわかんないのに、その上…………かわいい。
とりあえず信じてもらったみたいでよかった。というより初めてこんなに誰かと楽しく話した気がする。おばあちゃんは年上だったし、楽しかったけどなんか今のこれとは違った。この人、面白い。もっと話してみたいかも。
「そうだ、あなた名前なんていうの?」
「俺?俺は柊二、春山柊二だよ」
「はるやま……しゅうじ」
「うん。君はセツナちゃんだっけ?」
「……そう」
「じゃあ君は、セッちゃんだね!」
「……!?」
ドキッとした。心臓が跳ねた。いや、本当に。なんでだかはわからないけど、すごく驚いた。
彼女が急に飛び跳ねた。
「じゃあ君はセッちゃんだね!」
なんとはなしにそう言うと、彼女は真っ白な顔を一瞬にして赤くし、飛び跳ねた。それはもう豪快に。どうしたどうした、俺なんかしたか……?それから怪訝な顔をして俺を見る。自分でもわかっていないみたいだ。
よく見ると、コロコロと変わる彼女の表情の奥には、小さな悲しみが混ざっているようだった。それは話にあったように、誰からもしっかりと愛されていなかった……愛されていると感じることが出来なかったからだろう。おばあちゃんとも毎日一緒にいたわけじゃない。きっと彼女は俺が想像する以上に苦しい思いをしてきたんだ。そう考えたら俺なんかよりもずっと大人に見えた。小さな少女のように笑って、憂いを隠していたんだな。そう思うと、この子と一緒にいたいと思った。それがたった数日間でもいい。もっと話を聞いてあげたい、と。
彼は静かに私を見つめてくる。なんだかむずがゆい。どうしたらいいかわからなくなって、視線を落とす。私の白い髪が、小さく揺れた。ふと彼が息を吸いこんだ。
「俺さ、」
驚いて彼を見る。彼は、私が自分自身の話をしたように、彼の話をしてくれた。
何を言っていいのかわからず、とりあえず彼女がいろんなことを教えてくれたことのお返しとして、できるだけ短く、それでいてわかりやすく、彼女に俺のことを伝えようと思った。それは立場の違う彼女に対しての、自己紹介のようなものだった。
「俺さ、」
彼女が俺を見る。
「夢が、あるんだ。」
「……夢?」
「そう。大学に通って勉強してたんだ。教師になりたいんだよな。……ほら、俺が一緒に来てた3人、見たんだろ?あれさ、同じ学部の友達なんだ。坊主が岡野陸人。背が低いのが山部潤。俺といちばん仲がいいのが七島芳樹。みんな同じ夢追ってんだ。セッちゃんはさ、なんかやりたいことないの?」
「んっ……と、よくわかんない。とりあえず里から出て、おばあちゃんみたいに自由に生きたいって思ってたから。」
「あ、そっか。セッちゃんの里って、俺でも行けんの?」
「行けるんじゃないかなぁ……。私でも歩いてここまで来れたんだし。でもあの里、妖精以外入ってこないの。だからその場所までは行けても、入れないかもしれない」
「そうなんだ……だったら人間と接したことない妖精とかいっぱいいるんだよね。セッちゃんレアじゃん」
「あっ……ほんとだっ、私レア!」
二人で笑いあった。
柊二君はなんだか人の心を開くのがうまいのかもしれない。話していてすごく落ち着いた。でも、1つ問題がある。私は……彼の言っていることが、わからない。大学?教師??なんのことやらさっぱりだ。人間の世界ってどんなものなんだろう、ふと知りたくなった。
「ねぇ、柊二君?」
「ん?」
「私に人間の世界のことを教えて」
彼は目を見開いて、何度か瞬きした。
「セッちゃん、興味あるの?」
「うん。あのね、柊二君の話聞いてたら、なんだかわかんない言葉ばっかりで、すごく……知りたいと思ったの」
「そっかそっか、それがセッちゃんの挑戦だね、狭い世界を抜け出して、広い世界に飛び出すっていう。…そうだよ、そしたらセッちゃん羽も生えるかもだね!」
「あ、うん……そうか、そうだね!私ね、羽が生えたら自由に空を飛び回りたいの!!で、里に帰ったらいろんな人に自慢するんだ!誰よりもうまく飛べるようになるんだっ!」
「セッちゃんならできるよ!俺も応援する!」
どきん。……あ、まただ。どきん、どきんと胸が高なっている。なんだか気づかれたくなくて、
「えへへ、ありがとう」
照れ笑いをして、下を向いた。
彼女は少し顔色を伺いながら謝ってきた。沈黙が二人の間を包む。なんだか沈黙に耐えられなくなった俺は、思わず吹き出してしまった。
「ふはっ!」
「!?!?なんで笑うの!!」
「いや、なんかさ……君出会った時すごい明るかったのに妙に話がシリアスだったから、なんかなんて言えばいいのかわかんなくなっちゃって」
「あっ……」
「うん、信じるよ。そんなリアルに作り話即興でできたらとんだ才能だからね。君は妖精なんでしょ?」
「あ、うん!そっか信じてくれるんだ、やっぱり君悪い人じゃないね!」
「結構安直な考えだね」
「いいの!そんな事言ったらいじわる!」
なんだか困ってしまった。遭難した先で出会ったのは妖精……?それでさえもう夢みたいでわけわかんないのに、その上…………かわいい。
とりあえず信じてもらったみたいでよかった。というより初めてこんなに誰かと楽しく話した気がする。おばあちゃんは年上だったし、楽しかったけどなんか今のこれとは違った。この人、面白い。もっと話してみたいかも。
「そうだ、あなた名前なんていうの?」
「俺?俺は柊二、春山柊二だよ」
「はるやま……しゅうじ」
「うん。君はセツナちゃんだっけ?」
「……そう」
「じゃあ君は、セッちゃんだね!」
「……!?」
ドキッとした。心臓が跳ねた。いや、本当に。なんでだかはわからないけど、すごく驚いた。
彼女が急に飛び跳ねた。
「じゃあ君はセッちゃんだね!」
なんとはなしにそう言うと、彼女は真っ白な顔を一瞬にして赤くし、飛び跳ねた。それはもう豪快に。どうしたどうした、俺なんかしたか……?それから怪訝な顔をして俺を見る。自分でもわかっていないみたいだ。
よく見ると、コロコロと変わる彼女の表情の奥には、小さな悲しみが混ざっているようだった。それは話にあったように、誰からもしっかりと愛されていなかった……愛されていると感じることが出来なかったからだろう。おばあちゃんとも毎日一緒にいたわけじゃない。きっと彼女は俺が想像する以上に苦しい思いをしてきたんだ。そう考えたら俺なんかよりもずっと大人に見えた。小さな少女のように笑って、憂いを隠していたんだな。そう思うと、この子と一緒にいたいと思った。それがたった数日間でもいい。もっと話を聞いてあげたい、と。
彼は静かに私を見つめてくる。なんだかむずがゆい。どうしたらいいかわからなくなって、視線を落とす。私の白い髪が、小さく揺れた。ふと彼が息を吸いこんだ。
「俺さ、」
驚いて彼を見る。彼は、私が自分自身の話をしたように、彼の話をしてくれた。
何を言っていいのかわからず、とりあえず彼女がいろんなことを教えてくれたことのお返しとして、できるだけ短く、それでいてわかりやすく、彼女に俺のことを伝えようと思った。それは立場の違う彼女に対しての、自己紹介のようなものだった。
「俺さ、」
彼女が俺を見る。
「夢が、あるんだ。」
「……夢?」
「そう。大学に通って勉強してたんだ。教師になりたいんだよな。……ほら、俺が一緒に来てた3人、見たんだろ?あれさ、同じ学部の友達なんだ。坊主が岡野陸人。背が低いのが山部潤。俺といちばん仲がいいのが七島芳樹。みんな同じ夢追ってんだ。セッちゃんはさ、なんかやりたいことないの?」
「んっ……と、よくわかんない。とりあえず里から出て、おばあちゃんみたいに自由に生きたいって思ってたから。」
「あ、そっか。セッちゃんの里って、俺でも行けんの?」
「行けるんじゃないかなぁ……。私でも歩いてここまで来れたんだし。でもあの里、妖精以外入ってこないの。だからその場所までは行けても、入れないかもしれない」
「そうなんだ……だったら人間と接したことない妖精とかいっぱいいるんだよね。セッちゃんレアじゃん」
「あっ……ほんとだっ、私レア!」
二人で笑いあった。
柊二君はなんだか人の心を開くのがうまいのかもしれない。話していてすごく落ち着いた。でも、1つ問題がある。私は……彼の言っていることが、わからない。大学?教師??なんのことやらさっぱりだ。人間の世界ってどんなものなんだろう、ふと知りたくなった。
「ねぇ、柊二君?」
「ん?」
「私に人間の世界のことを教えて」
彼は目を見開いて、何度か瞬きした。
「セッちゃん、興味あるの?」
「うん。あのね、柊二君の話聞いてたら、なんだかわかんない言葉ばっかりで、すごく……知りたいと思ったの」
「そっかそっか、それがセッちゃんの挑戦だね、狭い世界を抜け出して、広い世界に飛び出すっていう。…そうだよ、そしたらセッちゃん羽も生えるかもだね!」
「あ、うん……そうか、そうだね!私ね、羽が生えたら自由に空を飛び回りたいの!!で、里に帰ったらいろんな人に自慢するんだ!誰よりもうまく飛べるようになるんだっ!」
「セッちゃんならできるよ!俺も応援する!」
どきん。……あ、まただ。どきん、どきんと胸が高なっている。なんだか気づかれたくなくて、
「えへへ、ありがとう」
照れ笑いをして、下を向いた。
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