俺に7人の伴侶が出来るまで

太郎月

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再会編

歯車の軋み1

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ザアザアと雨が降る。

東部渓谷の狩場にジンは降り立った。討伐依頼があったからだ。魔物はヘラジカに似た魔物、アクアクリス。

ここの個体は急激な巨大化、そして凶暴化により、ランクがSに引き上げられていた。更に元々住んでいた湿地帯のあらゆる場所に深い池を作り出し、地形を変えてしまったそうだ。おかげで地図も役には立たない。

ドラゴは小さくなり、フードを被ったジンの頭の隣を飛び、フィルも足元に立っている。

「ジン、やっつけられてる」

ドラゴが指を差すのは、魔物達の死骸だ。この辺りに棲息していた様々な魔物が、雨晒しの中、浅く地面を浸す水に転がったり、池に浮いたりしている。

近場に転がる蛙型魔物のそばにしゃがみ込んだ。綺麗好きではあるが、狩場では汚れる事を厭わないジンは、マントが地面についても気にしない。このマントは水をあまり吸わないし、汚れが染み込むこともないから尚更だ。

「頭ないぞ!」

「そうだな、それ以外も随分と切り刻まれてる」

蛙型魔物の体長はジンの膝程度だ。それほど強い種族ではなく、吐き出される水鉄砲さえ気をつければ無視しても良いレベルの魔物。
雨で血が流れ出たのか、傷痕はいずれも丸見えだった。

「蛙嫌いでもいたのかな…」

「ジン!見ろ!ウデだ!」

「て、訳でもなさそうだな」

ドラゴが拾って来た腕は、蛙型の腕ではなかった。

「食って良いか?」

「良いよ、もったいねぇしな」

魔力が残った状態では魔物の死骸は残ってしまう。他の魔物達が食べに来るか、勝手に自然に還るか、どちらにしても時間が掛かるだろうし、何より死臭を嗅ぎ付け別のテリトリーから厄介な魔物が入り込んだら面倒だ。

素材として採取出来そうな部分も傷付けられ破壊されているし、放置するよりはドラゴ達に食べて貰った方が良いだろう。

ドラゴが欲しがると言う事は、鮮度が高いと言う事だし。

「フィル!肉だ!!」

ドラゴは腕を口に放り込み、フィルも蛙型の魔物に噛み付いた。

本当はアクアクリスの為に、2頭には腹を空かせていて欲しかったが、まあ良いだろう。

食事に入った2頭は好きにさせ、ジンはある方向へ顔を向けた。先程から聞こえてくる戦闘の音と、強い気配の数々。

(……一応見ておくか)

「ドラゴ、フィル。少し離れる。俺が戻る前に食べ終わったら来てくれ」

「分かった」
「わふっ!!」

2頭の雨にも負けない良いお返事に笑顔を見せ、ジンは音の源へと向かった。




ーーーヴオォオォオオォ!!




木が軒並み薙ぎ倒され、池と地面の境も分からない水浸しの地面。その中央で暴れ回るのは、ジンが討伐する予定だったアクアクリスだ。

全貌が見える位置に残る高い木の上でジンは止まった。
アクアクリスは水に入った生物を感知出来るからだ。

頭より何倍も大きく幾重にも枝分かれしている、水を固めたような特徴的な透明な角。激しく波打つその角から、アクアクリスの怒りと警戒が伝わって来る。

アクアクリスが前足で地面を叩きつけた。泥と草と水が混ざった水飛沫と共に、人影が飛び出す。


「ヒャッホウ!!ンな攻撃当たらねぇよ!!」


オレンジのバンダナを巻いた男が軽やかに空中へと飛び出す。その手にはダガーが握られている。強い風が彼をアクアクリスの頭上へと押し上げた。

「ッッッラァ!!」

回転と共に、振り下ろされたダガーからも風魔術の気配がした。雨足まで切れた一刀。アクアクリスの水の角が剣筋で上下に分かれた。

(あー…)とジンが心の中で同情を示した時、アクアクリスの目線がバンダナの彼へと鋭く向けられた。
切れた角は瞬時に水と水が引き合うように元に戻り、オレンジバンダナの彼を襲う。

「アイザック!!」

ヤマトの声が響くと同時に、バンダナの彼は光に包まれ、光ごと角で叩き落とされた。

光属性の結界だ。水飛沫を上げて地面を滑った光の塊(inバンダナ)と交差するように前へと出たのは、場にそぐわないドレスに身を包んだ、ハイヒールの令嬢だ。彼女も光属性に守られている。

「考えなしに突っ込むからですわ」

冷たく言い放ち、右手に握る扇子をアクアクリスへと向け、紫の髪を靡かせた。

「あなたも優雅でありません事よ、お鹿様」

腕を伝って植物が伸びる。荊の蔓だ。アクアクリスの水の脚へと絡み付き、髪色と同じ紫の薔薇が花開く。

そして、アクアクリスの脚が凍り出す。氷と木の属性持ちか。闇も混じっていそうだ。


「動きを止めましたわ、ーーーーっっ!!」


紫髪の彼女の声に被る、アクアクリスの大地を震わす咆哮。雨が四散する程の勢いは、空気も肌もヒリつかせる。魔力干渉で紫髪の令嬢の薔薇は、荊と共にガラス細工のように粉々になった。

砕ける荊は火のついた導火線のように令嬢の元に辿り着き、目に見えない何かに弾ける令嬢の身体。
その背中が地面に落ちる前に受け止めたのは、灰褐色の髪色をした細身の男だ。かなりの軽装で、白シャツに胸当てをしているだけの装備。おまけに力がないのか、彼女を抱き止めたは良いが支え切れずにしゃがみ込んだ。

「ミラージ!」

令嬢を胸に、男は叫んだ。と言っても困って縋るような声の出し方だ。一瞬令嬢を呼んだのかと思ったが、違う。

男の足元で何かが動く。雨がその何かにぶつかって、その何かの輪郭をぼんやりと描いている。見えやしないが、ジンにはそれが何か分かる。

(…珍しいもんを連れてるな)

ヤマト達一行の中で、ジンが唯一興味を引かれたのは、この灰褐色の髪をした男だ。正確に言うと、この男が連れている従魔達だが。

この透明な何かも、魔物の一種だ。

ミラージと呼ばれた姿のない魔物が吠えた。犬の声が響き、2人の前に半透明の黒い壁が現れる。恐らく魔力遮断と防音壁の役割をしているのだろう。

「ローザ大丈夫か!!」

「大丈夫…かな、意識を失ってるだけみたい」

ヤマトがバシャバシャと2人に近付き、男が答える。ホッとするヤマトだが、片足を凍らされ怒り狂ったアクアクリスが、今まさに踏みつけようとしていた。

気付くのが遅れたヤマト達だが、彼らの後ろで既に構えている男がいる。金髪赤目の騎士だ。
その手に握るスピアの穂先から炎が巻き付くように現れ、スピアは炎のランスへと変貌した。

投げ付けられた炎のランスが、まだ凍っていたアクアクリスの足を貫く。そのまま脚の中に収まると、爆発した。衝撃にアクアクリスが悲鳴のような一声を上げ、体勢を崩す。

「油断大敵ってね」

パチンと騎士がヤマトにウインクをする。

「オーウェン悪い!ありがと!」

「愛するリーダーの為ならお安いご用さ。ノア、オルティス嬢 「ローザ」 じゃなく、ローザは俺が」

騎士の言葉にヤマトが訂正を入れた。ジンに意図は分からなかったが、ヤマトは言い直した騎士に向かって嬉しそうに笑っている。

「そうそう、俺たちは仲間なんだから名前で呼び合わないと」

だそうだ。

「心得ているよ、マイロード」

令嬢を抱きかかえながらも、騎士はヤマトに一礼する仕草を見せた。照れながらも力強く頷き、「ローザを頼む」と告げるとヤマトは片手を前に突き出した。
騎士は駆け出し、死角になっている場所にいる聖女の元へと向かったようだ。

ヤマトの翳した手に剣が現れる。
『空間収納』から出したのか。

「よし、終わらせるぞ!!」

起き上がろうとするアクアクリスの足元だけが地震でも起こったように激しく揺れ出し、アクアクリスは再び横転する。
ヤマトが身を低くしたと思ったら、次の瞬間には倒れたアクアクリスの頭の上に現れた。
アクアクリスは首を振り回し、ヤマトを追い払おうとするが、ジグザグと空中で移動する彼には当たらない。

(良い動きだな)

正直、こんなにも動ける奴とは思っていなかった。スピードだけなら良い勝負になるかもしれない。しかも滞空時間が長い。恐らく、死角に待機しているハイエルフの術だろう。正確ではないが、そんな気がした。

(なのに…何やってんだ?)

折角攻撃を躱しているのに、ヤマトはダメージの通りにくい角を切り刻んでいる。邪魔なのは分かるが、さっさとそのスピードで頭に降りて、直接攻撃すれば良いのに。

剣の持ち方も、姿勢も、反射も、玄人っぽく見えるのに、どこか戦い慣れていないチグハグさをヤマトから感じてしまう。

「援護してあげるよ」

スッと木の影から現れた黒いフードマント、遠目から見ているジンでも彼は分かる。ヴァレリオだ。
ヴァレリオが手を翳すと、アクアクリスが横倒れになっている地面から植物が生えた。先程の紫髪の令嬢とは違う蔓や枝で、アクアクリスの首が固定された。

「ナイスヴァレリオ!」

「世話が焼けるね」

ヤマトは落下するような姿勢で、ヴァレリオを見下ろし破顔する。ふん、と鼻を鳴らしたヴァレリオの横に、「許しませんわよ!」と紫髪の令嬢が躍り出て来た。

「ヤマトの前でよくも無様な姿を晒してくれましたわね…!」

令嬢の周りの温度が急激に下がったのか、雨が凍りつき、足元にバチャバチャと音を立てて落ちる。冷気を漂わせ、両手をアクアクリスに向け突き出す。

アクアクリスの水角が先の方から凍り付き、あっという間に根元まで凍らせた。アクアクリスが悲鳴のような鳴き声を上げ、更に泥や水を撒き散らしながら起き上がろうと暴れ出す。
固定されてしまった頭にヤマトは一度足をつけ、すぐに飛び上がる。



「うおおおおおおお!!」



ヤマトの剣に魔力が集まり、光輝く大剣になり角を切り刻んだ。片側の角が砕け散る。

(な……)

ジンは驚いた。

(なんで角ばっか狙うんだ…?角そんな大事か??)

アクアクリスの角は水が近場にあれば、いくらでも再生出来るのだ。痛覚があると言う事もない。確かに最も目立つ部分ではあるが、弱点でもないのだ。

ジンの疑問をよそにアクアクリスの角は再生されなかった。よく見ると、アクアクリスの目が真っ黒になっている。

呪術だ。

魔力経路に何らかの影響を受けたのだろう。残る片側の水角も濁って来た。唸ってはいるが、アクアクリスはもう抵抗出来ないだろう。


「みんな!トドメだ!!」


ヤマトの剣が再び魔力を帯び、振り下ろされた。合わせるように騎士とオレンジバンダナが飛び出し、ヴァレリオ、ハイエルフ、令嬢が攻撃魔術を放つ。





派手な衝撃音と共に、アクアクリスの断末魔が雨空へ響いた。





ズゥンッと地面が重く揺れた。水飛沫が雨と混ざり、沈黙したアクアクリスの身体を濡らす。

「うわあああ!!」

剣を振り抜いたヤマトが落下していた。先程の俊敏な動きが嘘のように、空中でジタバタと手足を動かす。アクアクリスに一度ぶつかって跳ね、そのまま地面へとぶつかる直前に淡い光に包まれて止まった。

「はあー!落ちるかと思った!ありがとうリィン、助かったぜ」

浮いた状態で体勢を変え、ヤマトはゆっくりと着地した。光が消え、死角になっていた木々の間から、見えていなかったメンバーが現れた。

「スキルが消えたあと油断してる、課題」

白いフードマントのハイエルフ。

「ヤマトさま、みなさま、おケガはありませんか?」

同じく白い衣装に身を包む聖女。

雨の中、足首まで浸かるほど水嵩があると言うのに、2人は濡れていない。先程、ヤマトを包んだ光と同じ光を纏っている所を見ると、恐らくハイエルフか聖女の術なんだろう。

そんなハイエルフが手を翳すと、アクアクリスの身体の一部に小さな光がぽつりと灯り、その光がハイエルフの手の中へと飛んでいく。

距離があるジンからでは、その手の中の物がはっきり見えなかったが、全員が「カケラ」がどうのと言っているので、例の魔王のカケラなのだろう。

「なあリィン、これさァ魔物が生きている内に出せねぇの?」

オレンジバンダナがダガーを拭きながらハイエルフへと尋ねた。

「出せない。魔王の力は生きてる魔力とくっついてる」

「マジか…王国の魔物っていちいちツエーし、どんどんデカくなっていっててダリィんだけど」

「強くなるのも、デカくなるのも、魔王の力を借りているから。魔物が強いのは、魔王の力も強くなってる証拠」

「カケラを集めれば魔王の力は弱まると仰ってませんでした?なのに強くなっていますの?」

令嬢が扇子で口元を隠し、訝しそうに言う。

「これで4個目。カケラはまだまだある。さっさと行こう」

雨音が邪魔しそうなものだが、ジンの聴覚はドラゴとフィルの特性を付随されていた。五感のほとんどを補って貰えているのだと知って、2頭には心から感謝している。

おかげで、魔王のカケラを探すと言う言葉の意味がようやく理解出来た。直接尋ねれば良いのだろうが、そもそも年始のパーティー以来はじめて会うのだ。
何より興味がないので顔を合わせていたとしても、ジンから尋ねることはなかっただろう。

ヤマト達は狩猟ギルドと、魔塔がしっかりと管理しているし。

(見る限り実力もある。8人の中には聖女までいる。まあ、死にはしねぇだろうし、コイツらはほっといて良いが……どうすっかな…)

ヤマト達は移動するようだ。
ジンは悩んだが、彼らの元へ行く事にした。

アクアクリスの死骸をそのままにするつもりのようだったから。
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