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『狼』こいつは俺を守るのか?①
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こうして俺と西条は一緒に住み始めた。
と言ってもやることは二人とも昼間に起きて、俺が飯を作り二人で食う。洗濯や洗い物をした後、西条の「戦え! それが君の使命だ! 」という話を聞き流しつつ、古本屋で買ってきた薄汚い漫画本を読み耽る。夜には酒を酌み交わし、得体の知れない料理を食う。こうして奇妙な共同生活が始まり三日が過ぎ、第一話冒頭へと話が戻る。
未だ俺が提示した条件である様々な問には答えてくれていない。つまり、宿代をまだ貰っていない。
読者諸君には長い前置きに付き合ってもらって感謝する。
「ところで君の作る飯は美味いなぁ。結婚してくれ」
俺が温めた昨日の残りの汁に米をぶち込んで頬張りつつ可愛らしいことを言ってきた。しかし、こいつがそんなことを言っても何も可愛くない。万死に値するキモさと言っても過言ではない。
「なら良かった」
「本当は思ってないくせに」
本当にここまでは何も無かった。正直しばらくの間このままでも楽しかった。そう、ここまでは
その日の夜。いつも通りに俺と西条は安い酒をちびちび呑んでいた。
「でも、人成くん。今はこのままでいいけろ、本当に敵が来た時にはたのむよ」
「いやだね。お前がやれ」
「そろそろ。奴らが来る気がする。気をつけないとなぁ」
そう言ったこいつの勘はたった今当たることになる。この部屋が一気にたくさんのライトで照らされたように光輝き始めたのだ。
「なにこれ、やばいんじゃ……」
その瞬間。部屋の壁がバリバリ音を立てて穴が空いた。いや、空いたというか開けられた。そこに立っていたのは虎と呼ぶには小さくて、猫と呼ぶには大き過ぎる。そしてなんと二足歩行の虎だった。
さすがにやばそうなので一気に酔いが冷め、西条の方に目をやると、かつてない程に慌てた顔をして俺の肩をガっと掴んだ。
「頼む。今回だけでいい。何とか戦ってくれないか? 」
さすがに何かヤバそうだ。こいつの言う通りあの刀が俺にしか使えないならば、俺がやるしかない。
『がルルル……! 』
虎は俺たちの方に飛び掛ってきた。動きは素早いが大雑把なので何とか避けられたが、こんなの心臓と体力が持たない。
「わかった。その代わり条件がある」
「なんだい? 一応聞いておこう」
「これが終わったら『宿代』払って貰うぞ」
西条は少し考えた素振りをすると、「まぁ、いいよ。そのくらい」と言ってアタッシュケースを渡してきた。俺はその中から封刀 人刃を取り出す。
『ガルルルルルルァ! 』
虎はこの刀を見た瞬間更に殺気を放つようになった。正直足がすくんで動かない。でもこんな時、やることやれるなら、それはとても
「ちょっと待ったァ!!!」
壊れた窓の外から大きな声が飛んできて、俺も西条も虎もそちらに注目した。そこに居たのは人だった。ビリビリに破れたTシャツに小汚いジーンズとサンダルを履いている。そして何より背中に背負ってる長い刀。太刀ってやつだろうか?
「やぁやぁ我こそは牙吠々々丸 狼!心に獣を宿しつつ!強く!逞しく!正々堂々敵を狩る!牙吠々々丸はここに居る!!!」
牙吠々々丸と名乗ったその男は、「とぉ!」と言って俺たちのいる部屋に着地した。
「唯野 人成!俺は君を護りに来た!!!」
と言ってもやることは二人とも昼間に起きて、俺が飯を作り二人で食う。洗濯や洗い物をした後、西条の「戦え! それが君の使命だ! 」という話を聞き流しつつ、古本屋で買ってきた薄汚い漫画本を読み耽る。夜には酒を酌み交わし、得体の知れない料理を食う。こうして奇妙な共同生活が始まり三日が過ぎ、第一話冒頭へと話が戻る。
未だ俺が提示した条件である様々な問には答えてくれていない。つまり、宿代をまだ貰っていない。
読者諸君には長い前置きに付き合ってもらって感謝する。
「ところで君の作る飯は美味いなぁ。結婚してくれ」
俺が温めた昨日の残りの汁に米をぶち込んで頬張りつつ可愛らしいことを言ってきた。しかし、こいつがそんなことを言っても何も可愛くない。万死に値するキモさと言っても過言ではない。
「なら良かった」
「本当は思ってないくせに」
本当にここまでは何も無かった。正直しばらくの間このままでも楽しかった。そう、ここまでは
その日の夜。いつも通りに俺と西条は安い酒をちびちび呑んでいた。
「でも、人成くん。今はこのままでいいけろ、本当に敵が来た時にはたのむよ」
「いやだね。お前がやれ」
「そろそろ。奴らが来る気がする。気をつけないとなぁ」
そう言ったこいつの勘はたった今当たることになる。この部屋が一気にたくさんのライトで照らされたように光輝き始めたのだ。
「なにこれ、やばいんじゃ……」
その瞬間。部屋の壁がバリバリ音を立てて穴が空いた。いや、空いたというか開けられた。そこに立っていたのは虎と呼ぶには小さくて、猫と呼ぶには大き過ぎる。そしてなんと二足歩行の虎だった。
さすがにやばそうなので一気に酔いが冷め、西条の方に目をやると、かつてない程に慌てた顔をして俺の肩をガっと掴んだ。
「頼む。今回だけでいい。何とか戦ってくれないか? 」
さすがに何かヤバそうだ。こいつの言う通りあの刀が俺にしか使えないならば、俺がやるしかない。
『がルルル……! 』
虎は俺たちの方に飛び掛ってきた。動きは素早いが大雑把なので何とか避けられたが、こんなの心臓と体力が持たない。
「わかった。その代わり条件がある」
「なんだい? 一応聞いておこう」
「これが終わったら『宿代』払って貰うぞ」
西条は少し考えた素振りをすると、「まぁ、いいよ。そのくらい」と言ってアタッシュケースを渡してきた。俺はその中から封刀 人刃を取り出す。
『ガルルルルルルァ! 』
虎はこの刀を見た瞬間更に殺気を放つようになった。正直足がすくんで動かない。でもこんな時、やることやれるなら、それはとても
「ちょっと待ったァ!!!」
壊れた窓の外から大きな声が飛んできて、俺も西条も虎もそちらに注目した。そこに居たのは人だった。ビリビリに破れたTシャツに小汚いジーンズとサンダルを履いている。そして何より背中に背負ってる長い刀。太刀ってやつだろうか?
「やぁやぁ我こそは牙吠々々丸 狼!心に獣を宿しつつ!強く!逞しく!正々堂々敵を狩る!牙吠々々丸はここに居る!!!」
牙吠々々丸と名乗ったその男は、「とぉ!」と言って俺たちのいる部屋に着地した。
「唯野 人成!俺は君を護りに来た!!!」
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