たそがれ色の恋心

空居アオ

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東京公演編

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 トージはベッドに寝転がり、目を閉じた。
 今日も全力投球。
 いつも精一杯、めいっぱい。
 クタクタになって、だけどどんなときでも楽しくて、仲間と笑い合って、バカ話して、ときにはマジトークもして…
 一度演じた役だからといって、手を抜くようなことは一切ない。
 稽古で二百パーセントの力を尽くして、本番では七十~八十パーセントの力を出すのがプロだとよく耳にするが、そんなものはもっと芸歴の長い人間に適用される。

 自分はまだちゃんと舞台に出るようになって、たかだか二年。
 今の事務所に入って、本格的に演技の勉強をはじめた時間を含めても、精々五~六年くらいでしかない。
 もちろん舞台に出ている以上、プロとしてのプライドを持って挑んでいる。
 観客にチケット代がもったいないと思わせるような芝居は見せない。
 だがそうは言っても、自分がまだまだ半人前なのはトージ自身、一番よくわかっている。
 そして今は「プロとはなんぞや」なんて理論よりも、とにかく全力を尽くし、なんでも吸収しなければいけない時期なのである。
 それが青臭いと言うのなら、それでもいい。
 少なくとも自分という人間はそうやって歩いていくしかないのだ。

 心地よい疲労感がじわりと体の奥から這い上がってくる。
 この感じもトージには愛しいものだ。
 どんな感覚だろうと充足感につながる。
 大げさに言えば、生きているという実感が湧くのだ。

(気持ちいい……)

 心なしかふっと口もとの力が抜ける。
 本当は風呂に入り、翌日に備えて早く寝なければいけないのだが、気持ちよすぎて、なんだか動く気がしない。

 ――いや。違う。

 気持ちがいいというのは本当だ。
 しかしそればかりとは言えない。
 目を逸らしたい事実があるから、この心地よさに沈んでいたいだけなのではないかと思う。
 きっとそうだ。
 そうに違いない。


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