たそがれ色の恋心

空居アオ

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神戸公演編

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 ……今夜も、変わったところがなかったように思う。
 同じ部屋の中で、ケイはみんなとゲームをやって、トージは雑誌を読む。
 仲間たちもわかっているので、トージをゲームに誘ったりしない。
 トージも快く部屋を貸してくれた。騒がしさにうんざりするというようなこともない。

 途中、ケイは電話のためゲームを抜け出し、みんなの邪魔になることを嫌がって、場所を移動した。
 電話の相手が事務所の先輩であり、兄貴分でもある佐野孝也だったので、ついつい長話してしまい、現在もまだつながったままだ。

 …………ひょっとして、これか?

 ここでようやっとケイはひとつの可能性に思い当たる。
 ゲームが終了し、みんながそれぞれの部屋に帰って行ったあとも、少なくとも十分は話していた。
 ようするに、せっかく地方公演で二人っきりになったのに、自分が電話ばかりしているから、トージはヘソを曲げた――?

 そう考えた次の瞬間、しかしケイは自ら否定した。
 まさかあのトージが? と。
 ケイの知っているトージはこんなことを気にしない。
 だいたいこれくらいのことをいちいちつまみ上げていては、恋人としてのこれまでの月日を過ごせるわけがない。トージはとうに神経過敏で病んでしまっていなければ、それこそ変だ。
 もちろん、この件に関してはお互い様なのだが。

 じゃあ百歩譲って、今回は珍しく気にしてくれちゃったのだとする。
 答えは、やっぱり変だということだった。
 ケイにはトージの表情の意味がわからないからだ。
 目の前のこれは「電話をするなら自分の部屋に帰れ」と仲間に向ける表情ではなく、明らかに恋人と相対するときのものだった。

 本当に意味がわからない。

 仕事に対してはストイックなほど真面目なトージ。
 職場で自ら進んで恋人の顔を見せたことは一度としてないトージ。
 そりゃあケイがじゃれついても振り払ったりしないし、軽いキスを仕掛けよとも、二人っきりなら応じたりもする。
 だけど、それだけだ。
 良く言えば自分の信念を相手に強要しない人格者。悪く言えば相手に委ねることで責任を免れようとする卑怯者。
 トージの場合は、どちらかといえば前者寄りの性格であることを、もちろんケイはわかっていた。
 だからいくら部屋に二人っきりとはいえ、露骨に恋人の顔になっているトージに、ケイは驚いて息を呑んだ。そして言葉を見つけられない自分に、途方に暮れた。

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