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東京公演編
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しおりを挟む「お疲れ」
同じセリフを返して、トージは心のもやもやを誤魔化すように、ケイにペットボトルを渡した。
「最高だな」
「何言ってんの、トージ」
ケイは目を丸くして、大げさに驚いてみせた。
トージがあえて言わなかった主語を難なく読み取って、あながち演技でもない口調で、笑いながら隣に腰を下ろした。
「そんなの、みんなわかってるし、改めて言うこともないじゃん」
「まあ、そうなんだけどね」
トージは照れたように相槌を打ってみたものの、これが演技だと、きっとケイにバレているだろうことはわかっていた。
何せあっちは子役上がりの芸歴十六年。トージも日々精進してはいるけれど、謙遜抜きで演技力はまだまだケイにかなわない。
それなのにケイは何も言わない。
トージの嘘を見抜いているはずなのに、気づかないふりをしてくれる。
「それよりさぁ……」
と、あっさり話題を変えてくる。
業界では先輩でも、年齢は二歳年下の同性からの気遣いは、この場合、トージの自尊心をちくりと刺激せずにはいられなかった。
そんな自分が情けなくて、トージは今日も、けっきょく何も言えなかった。
言えない。
二十二歳にもなって、恋人の仕事仲間に嫉妬しているなんて。
口が裂けても言えるわけがなかった。
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