貧乏男爵家から公爵家に嫁ぐことになりました。

SUZU

文字の大きさ
7 / 37

庭師のお祖父様

しおりを挟む
庭に出るため玄関ホールへ向かう。

「そういえば、このお屋敷にはウィリアム様と使用人の皆さんが住んでいるのですか?」

「そうだよ、ハーロック公爵家に仕える騎士団の宿舎は別で訓練所や厩舎と同じ敷地にあるからね。といっても非常時に直ぐに駆けつけられるよう公爵家を出て直ぐ隣だがね。」

「ウィリアム様のお父様はお亡くなりになったのだと伺いました。他のご家族の方は一緒に住まれてないのですか?」

使用人達への挨拶ばかりに気を取られており、肝心の家族への挨拶をしていないことに気がついたジュリエットは疑問を口にした。

「ああ、そのことか。母上は父上が死んでから気を病んでしまってね、後を追うようにして病気にかかって死んでしまった。祖父や祖母も私が幼い頃に亡くなっていた。後は叔父夫婦だが、彼らは自分達の領地があるからそっちにいるよ。といっても結婚式の時に会うくらいで関わりはないと思うが。」

「そんな事だとは知らずに無神経に聞いてしまってすみません。」

申し訳なさそうに謝るジュリエットに気にしなくていいと笑うウィリアム。

「叔父夫婦とは上手くやれなくてね、もしかしたら結婚式で何か言われるかもしれないが何かあったら直ぐにいってくれ。」

「わかりましたわ、お気遣いありがとうございます!」

「気にしなくていい、私達は夫婦になるのだからお互いに遠慮なしで行こう。」

そう言いながら玄関ホールの扉をあけ、庭に出る。

「そういえば、もう1人。今は別件でこの屋敷にはいないが弟が結婚式までには帰ってくる。」

「まあ、それでは私の弟になるのですね!お会いするのが楽しみすわ!」

「ああ、弟も君に会えるのを楽しみにしていたよ。急な事で残念がっていたよ。」

そう言いながら庭の奥にある小屋へ誘導するウィリアム。

ジュリエットも庭に咲く花を見ながら後へ続く。

「また時間のある時にゆっくり見て回ろう。」

言いながら小屋の戸を開け中にいる人を呼ぶ。

「紹介しよう、この家の庭師のトーマスだ。私が幼い頃からこの屋敷で庭師をやっていて、今では彼が1番長く仕えてくれている。」

その言葉の直ぐ後にその人物は姿を現した。

60代ほどの彼は白髪の髪を一つに縛り丸い眼鏡をつけている。
腰が曲がっており小さく見え、庭仕事をしている手は土で汚れゴツゴツしている。

「こんにちは、若奥様。お会いできて光栄です。」

ニッコリと笑うトーマスは暖かく、故郷の祖父の姿を思い起こす。

「こちらこそ、お会いできて嬉しいですわ。想像通りお優しそうな方でよかったですわ。」

ニッコリと笑うジュリエット、場を和ませるような雰囲気に好感を持った。

「おやおや、そう言って頂けて良かったです。若旦那様は勝手に孫のように思っていたので、穏やかそうな方で安心しました。」

それを聞いたウィリアムは嬉しそうに顔を綻ばせる。

「ウィリアム様もトーマスさんのことを祖父のようだと言ってましたわ。そう思い合える関係を築けるのは素晴らしいことですわね!」

悪戯げに笑うジュリエットはどこか寂しげに見える。

「若旦那様にそう思って頂けていたとは光栄です。」

そう言いウィリアムに目配せするトーマス。

「私がトーマスの孫ならばその妻になる君も同じく孫になるな。」

ウィリアムもジュリエットに小さく笑いかける。

「嬉しいです!私もお祖父様おじいさまと思ってもよろしいですか?」

「勿論です。こんな老いぼれが若奥様のような方にお祖父様と思っていただけるとは、みんなに嫉妬されてしまいますね。」

そう言い優しく笑うトーマス。

ジュリエットは遠く離れた故郷にいる家族を思い出す。
ハーロック公爵家で会った人はみんな優しくしてくれるし、ウィリアムも会ったばかりとは思えないほどジュリエットを思いやってくれる。
だが父や母、祖父母のようなこちらを無条件で愛してくれる、包み込んでくれる者達と気軽に会うことのできなくなってしまったことに寂しさを感じていた。
トーマスを祖父と慕い、トーマスも孫と言う関係が素直に羨ましく思ったのだ。

そんなジュリエットの気持ちもウィリアムとトーマスにはお見通しだったようだ。

「お二人とも、ありがとうございます!」

そうお礼を言うジュリエットに2人は何のことだ?と首を傾げる。

そんな2人を見て優しい人達だわと心の中で思った。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

氷の宰相補佐と押しつけられた厄災の花嫁

瑞原唯子
恋愛
王命により、アイザックはまだ十歳の少女を妻として娶ることになった。 彼女は生後まもなく始末されたはずの『厄災の姫』である。最近になって生存が判明したが、いまさら王家に迎え入れることも始末することもできない——悩んだ末、国王は序列一位のシェフィールド公爵家に押しつけたのだ。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

処理中です...