【完結】最初で最後の男が、地味で平凡な俺でいいんですか?

古井重箱

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 時間が遅かったので、俺は自分のアパートに戻った。
 園部さんに電話をかける。

「大丈夫でしたか? ウジョウ先生……」
「喝を入れてきた」

 俺は園部さんに謝った。

「いい雰囲気だったのに、いきなり部屋から飛び出してごめん」
「いえ、大丈夫です。ウジョウ先生のピンチに駆けつける仲野さん、ヒーローだなって思いました」
「世界で一番地味なヒーローかもな」

 しばし談笑したのち、俺は園部さんに言った。

「パンフレットの件、オファーを受けようと思う」
「やった! そう来なくっちゃ」
「しばらく会えなくなるかも……」
「いつまでも待ちます」
「ありがとう。園部さんの優しさにいつも救われるよ」

 園部さんとの通話を切った俺は、美鈴の電話番号をタップした。

「晴久? 元気だった?」
「あのさ、パンフレットの話だけど、俺に任せてくれ」
「えっ、いいの!? 嬉しい!」

 美鈴は喜びを爆発させたあと、俺に訊ねた。

「なんか心境の変化でもあったの?」
「俺にとって無難に生きることが一番大切だった。でも、100点満点を目指してがむしゃらに頑張ってみるのも悪くないんじゃないかなって、美鈴と園部さん、そして雨情を見てて思ったんだ」
「じゃあ、早速だけど仕様を盛り込んだ発注依頼書をメールで送ってもいい?」
「うん」

 通話を終えた俺は、美鈴から届いた発注依頼書に目を通した。
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