【完結】ツンデレ妖精王が、獅子だけど大型ワンコな獣人王にとろとろに愛される話

古井重箱

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 道中、深い森の中で迷いそうになった。
 険しい山脈に行く手を阻まれそうになった。
 有翼獣に襲われそうになり、命からがら逃げ出した。
 かなりの疲労を感じていたが、レクシェールは月明かりを頼りに夜空を飛び続けた。
 獣人国に入ってから、だいぶ高度が下がってしまった。予想以上に魔力を使っている。
 でも、今ここで諦めてしまったら、レクシェールはいつまで経っても冷たい玉座にしがみつく、無様な人形のままだ。

——私は人形ではない。心がある……!

 レクシェールはガルトゥスの名を胸に刻みながら、王都の上空を突っ切った。へろへろになりながらも王宮を目指す。
 しかし願いはむなしく、レクシェールは王宮の高い屋根が見えてきたところで力尽きてしまった。
 王都のど真ん中にある広場にかろうじて着陸する。
 夜遊びの最中だった獣人たちが、地べたにへたり込むレクシェールを見るなり歓声を上げた。

「ガルトゥス様! 想いびとが飛んで来ましたぜ!」
「本当か!?」

 酒杯を片手にガルトゥスが近くの酒場から出てきたので、レクシェールは目を見開いた。

「王宮にいたのではないのか?」
「俺は民の声を聞くために、定期的に街に出るようにしてるんだ。あんた、ふらふらじゃないか」
「宮殿から飛んできた」
「はあ!? 妖精国からってことか? なんだってそんな無茶な真似を……」
「これが宿題の答えだよ」

 レクシェールはガルトゥスの唇にちゅっと口づけた。

「ふふっ。酒くさいぞ」
「……あんた、可愛いことをするのはいいが、小出しにしてくれないか? いきなり駆けつけてきた上に、そっちからキス? 俺は明日死ぬのかな」
「告死天使の気配はしない。私たちが寿命を迎えるのは、まだまだ先のことだ」
「そういう物言い。いつものあんただな」
「私はシラフだぞ、きみと違って」
「もう貴君とは呼ばないのか」
「……ガルトゥス。きみと、ふたりきりになりたい」

 妖精王が甘い声で囁いたおねだりを獣人王が無視するわけがない。
 黄金色に輝く獅子がレクシェールの細い体をのせて、王宮へとひた走った。
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