【完結】悪妻オメガの俺、離縁されたいんだけど旦那様が溺愛してくる

古井重箱

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第1話 俺は人形

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 神様は天に星、地に花を授けたという。
 じゃあ、俺たちオメガには? 一体、何をくれた?
 苦しくてたまらないヒート。能力でアルファやベータに勝てないという劣等感。か弱い力。劣情を誘う容姿。
 そんなロクでもないものしか与えてくれなかった。

「ちくしょう……っ」

 抑制剤と手淫によってヒートをやり過ごした俺は、ベッドに身を投げ出した。全身が汗や淫液でベタベタしているが、動く気力が湧かない。
 寝落ちしかけたところで、メイドたちが俺の部屋にやって来た。

「レムート様。お水をどうぞ」
「すまない……」
「お体をお清め致しますね」
「……ありがとう」

 メイドたちが俺を浴室に連れて行く。
 オメガである俺は小柄で、ベータの女性より華奢である。
 花のようなレムート様。
 メイドたちはそう言うけれども、俺はオメガになど生まれたくなかった。蜂蜜色の髪? 菫色の瞳? そんなものは生きていくうえで、なんの役にも立たない。
 こんな体は今すぐに捨てて、神話に出てくる英雄、ヴァイゼンのような偉丈夫に生まれ変わりたい。

「お湯加減はよろしいですか」
「ああ。ちょうどいい」

 メイドたちが俺の体を、泡立てた石鹸で清めていく。丁寧な仕事ぶりに頭が下がる。彼女たちはオメガの俺を気味が悪いと思ってはいないだろうか。
 ここラガーディア王国は、オメガに対する偏見が色濃く残っている。歴史上、最悪の毒夫どくふとして語られるレオニエがオメガだったからだ。レオニエは贅沢を好み、その色香で王を惑わして民に重税を強いたらしい。
 レオニエめ。
 あんたのせいで、俺たちオメガは肩身の狭い思いをしてるんだよ。
 レオニエは断頭台送りになったが、地獄でも男を手玉にとっているに違いない。

「もうこのぐらいで充分だ」
「はい……」

 湯浴みを終えた俺はドレスシャツに着替えた。父母はアーデル公爵家の子息として恥ずかしくないよう、きらびやかに装うことを俺に求めてくる。
 ヒートでグチャグチャになるオメガに、品位も何もあるものか。
 俺は人形だ。
 父は今日も、俺がどこに嫁げばアーデル公爵家にとって有利になるのか、策を巡らせていることだろう。
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