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第14話 あなたに謝りたい
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俺は夢の世界をたゆたっていた。
周囲には花畑が広がっている。どこだろう、ここは。アーデル領とは咲いている花の種類が違う。色が濃く、艶やかな花が多い。
そうか。俺は南域にいるんだ。
俺の手元には花冠があった。南国の鮮やかな花で作った花冠だ。
ああ、向こうにヴァイゼンがいる。
俺はあの人に謝らないといけない。昨晩、酔いに任せてひどいことを言ってしまったから。
前に進もうとする俺に気づいて、ヴァイゼンが両腕を広げる。優しい微笑みが浮かんでいる。
悪妻の俺を包み込んでくれる優しさに頭が下がる。
俺はヴァイゼンがいる方へ手を伸ばした。花冠を手渡そうとした時、足元が揺らいだ。
花畑は消え去った。
代わりに現れたのは、荒々しく波立つ海。
ヴァイゼンの姿が波に呑まれていく。
待ってくれ! 俺はまだごめんなさいを言えていない。行かないでくれ、ヴァイゼン。
「ヴァイゼン……!」
目が覚めた。
俺はびっしょりと汗をかいていた。
頭痛はないものの、体が重たい。食欲はあまりなかった。
喉の渇きを覚えた俺が、天蓋付きのベッドから出て呼び鈴を鳴らそうとすると、扉をノックする音が聞こえた。
「レムート様、お目覚めですか。入室してもよろしいですか」
初めて聞く声だった。俺の母と同じぐらいの年齢の女性だろうか。落ち着きのある、温かな声だ。
「どうぞ」
「失礼致します」
俺の居室に現れたのは、ふっくらとした顔に微笑みを浮かべた優しそうな女性だった。白衣を着ており、お粥と水差しがのったお盆を手に持っている。
「お初にお目にかかります。私はアンナ。こちらのお屋敷で家庭医を務めております」
「レムートです。アンナ先生、初めまして」
「お加減はいかがですか? 昨晩、強いお酒を召し上がったと聞いております」
「……食欲があまりないです。でも喉は乾いています」
「ではお水をどうぞ」
アンナ先生は俺に水を勧めてくれた。
ひと口含んだだけで、体が甦える。俺はコップの中の水をすべて飲み干した。
「この感じだと……お粥も食べられそうです」
「それはよかった。少しでいいですから、召し上がった方がいいですよ」
「美味しい……」
だしがきいたお粥が、するするとお腹に収まっていく。
俺の食べっぷりを見て、アンナ先生が目を細めた。
「お風呂のご用意もできておりますよ。食休みのあと、汗を流してさっぱりなさるといいですわ」
「何から何までありがとうございます」
「レムート様。オメガのみなさんはヒートもあり、心が乱れやすいものです。昨夜のことに関して、あまりご自分を責めないでくださいね」
「……いえ、ダメです。俺はヴァイゼン様にひどいことを……」
時刻は正午、ヴァイゼンはすでに公務に出かけているという。
「今日は港の視察ですって。海賊の襲来に備えて、武装船を増やしたいのだけれど、中央政府に止められているのです。どうにか既存の戦力で戦える方法を考えたいのだとおっしゃっておりました」
「南域は自治領ではないですか? 中央政府のお伺いを立てなくても……」
「名目上はそうなっておりますが、実際は違います。中央政府は南域が軍備拡張をすることを望ましく思っていないのです。独立の機運が高まったら困ると言って」
「難しいお立場に置かれているのですね、ヴァイゼン様は」
それなのに俺はあの人に意地悪やワガママばかり言って困らせてしまった。
俺はお粥を食べ終えると、「ごちそうさまでした」と手を合わせた。湯浴みをして、まずはさっぱりとした姿になろう。
アンナ先生が広い邸宅の中を案内してくれた。
「こちらが浴室ですよ」
「えっ。温泉?」
岩造りの浴槽に満ちたお湯から微香が漂っている。露天風呂からは海が一望できた。
「源泉掛け流しになっております。髪を洗う時は沸かした井戸水をお使いになって。そうしないと髪がパサついてしまいますから」
「ありがとうございます」
俺は風呂にとぷんと浸かった。
大人ふたりが同時に入っても余裕なほど広い。
俺とヴァイゼンが仲良し夫婦だったら、一緒に湯浴みをしたりするのかな。
……ヴァイゼン。
あなたに会いたい。
会って、昨日の非礼を詫びたい。
「お待たせしてしまいましたね」
ゆったりとしたローブに着替えた俺を、アンナ先生が廊下で待っていてくれた。
「ご体調のことなどお伺いしたいので、私の部屋に来ていただいてもよろしいですか?」
「はい」
俺はアンナ先生の部屋に招かれた。
さすがはお医者様の部屋である。立派な薬箪笥が置かれている。そして、薬草のものとおぼしき香りが俺の鼻先をくすぐった。
「抑制剤は今まで、どのようなものをお使いになっていたのかしら?」
「薬草を煎じたものです」
「北域とは植生が違うので、少し調合が変わることになるかと思います。飲み心地がよくなかったらすぐに教えてくださいね」
「アンナ先生、あの。先生はどのぐらい前からヴァイゼン様の家庭医として働いていらっしゃるのですか」
「そうね、もう15年になるかしら」
「長いんですね。ヴァイゼン様って、どんな方ですか? あの人、俺のやることをすべて肯定するんです。どんなワガママを言っても、おおらかに笑ってる。俺はまだ、あの人のことを全然知らない……」
アンナ先生は柔らかく微笑んだ。
「ヴァイゼン様はそれはやんちゃなお子さんでしたよ。洞窟に探検に出かけたり、遠泳に挑んだり。巨鯨との戦いにも、15歳の時から参加しております」
「名前からして、伝説の英雄ですからね」
「……ヴァイゼン様のお名前は中央政府より賜ったのです。有事の際は、英雄ヴァイゼンのように先陣を切って戦えというお達しとともに」
「え……? ご両親がつけたんじゃないんですか」
「南域は微妙な立場に置かれております。独自の力をつければ中央政府に睨まれ、土地の開発を進めなければどやされる。ヴァイゼン様のお名前は中央政府への服従を示すため、先代様が泣く泣くおつけになったのです」
俺が知るヴァイゼンは豪放磊落で、泰然自若としていて。俺のワガママをすべて受け入れてくれる懐の広い男だ。
でもそんな彼が中央政府とのしがらみのなかで生きてきたなんて知らなかった。
「……アンナ先生。もっとヴァイゼン様のことを教えてください! 俺、悪い嫁なんです。旦那様を困らせるだけで、尽くしたりしない」
「ふふっ。尽くすと言っても、まだ結婚して一日目じゃないですか」
「あの人の役に立ちたいんです!」
「レムート様のお気持ち、確かに受け止めました。でも無理は禁物ですよ。まずはこのお屋敷に慣れるのがよろしいかと存じます」
「そうですね。どこに何があるのか、全然分からない……」
「お庭をご覧になります?」
「はい!」
アンナ先生は、俺を庭へと連れていった。
ヴァイゼンの邸宅は四方を緑によって囲まれていた。北域では見られなかった花に、俺は思わず手を伸ばした。
「綺麗ですね」
「それはブーゲンビリアよ。華やかでしょう」
「そうだ。お花を生けて、ヴァイゼン様のお部屋に飾ってもらったらどうかな。俺、生け花は結構得意なんです」
「まあ。きっと喜びますわ」
「どの花がいいだろう……」
色とりどりの花を見渡していると、アンナ先生が俺の足元を指差した。菫が咲いている。
「こちらのお花。ヴァイゼン様のお気に入りですよ」
「へえ。素朴な花が好きなのかな?」
「菫がお好きな理由は、ご本人に聞いてくださいな」
俺は菫の花をいくつか手折った。紫色の花に合うよう、白い花も摘む。
「花瓶は小さなものがよさそうですね。私の部屋のものをお貸ししますよ」
「ありがとうございます。アンナ先生って、なんだかお母さんみたいだ」
「ふふっ。母のように思っていただけたら光栄ですわ。先代の奥様はお亡くなりになっておりますから、レムート様に家庭のことを教える方がいないですものね」
「領主の奥さんって、何をしたらいいんでしょう?」
「旦那様を優しい笑顔で包み込んであげてください」
「……うぅっ。俺、悪い嫁なのに。できるかな」
それから俺は、アンナ先生の部屋で花を生けた。
アンナ先生が用意してくれた小さな花瓶の中で、菫の花が慎ましく咲いている。野の花のように謙虚になれば、俺は悪妻じゃなくなるのかな。
ううん、でも俺は……この家から出ていった方がいい。
ヴァイゼンにひどいことを言ってしまったし、情緒不安定な俺に育児なんて大役が務まるとは思えない。
やっぱり寺院に入って、修道士になるしかない。
俺が思いつめた表情になると、アンナ先生が薬湯を用意してくれた。
「この薬湯には、気持ちが休まる効果がありますよ」
「ありがとうございます」
「レムート様。この国にはびこるオメガ差別によって、ずいぶんと辛い思いをされてきたでしょう」
「……俺はベータに生まれたかったです。それで、ヒートのない体で自由に生きたかった」
「ノノネ様が経営されている作業所に行ってみるといいですわ。そこではオメガのみなさんがお仕事をしておりますの。同じ気持ちを分かち合える仲間がいるだけで違うと思いますわ」
「作業所かあ。俺も仕事が欲しいな……」
「ふふっ。素敵な生け花を作って、ヴァイゼン様のお部屋を飾るのも大事なお仕事じゃないですか」
この素朴な生け花をヴァイゼンは気に入ってくれるだろうか。
アンナ先生の薬湯を飲んだら、体がポカポカになった。ポーッと頬が上気している。
ヴァイゼンに謝罪する際には、もっとシャキッとした姿を見せないと。
そう思った時、庭先が騒がしくなった。
「ヴァイゼン様のお帰りです」
家令のザンダーの声が鳴り響く。
俺は小さな花瓶を懐に抱くと、アンナ先生の部屋を辞した。
早くヴァイゼンに会いたい。会って、ちゃんと謝りたい!
俺は早足になって庭へと向かった。
周囲には花畑が広がっている。どこだろう、ここは。アーデル領とは咲いている花の種類が違う。色が濃く、艶やかな花が多い。
そうか。俺は南域にいるんだ。
俺の手元には花冠があった。南国の鮮やかな花で作った花冠だ。
ああ、向こうにヴァイゼンがいる。
俺はあの人に謝らないといけない。昨晩、酔いに任せてひどいことを言ってしまったから。
前に進もうとする俺に気づいて、ヴァイゼンが両腕を広げる。優しい微笑みが浮かんでいる。
悪妻の俺を包み込んでくれる優しさに頭が下がる。
俺はヴァイゼンがいる方へ手を伸ばした。花冠を手渡そうとした時、足元が揺らいだ。
花畑は消え去った。
代わりに現れたのは、荒々しく波立つ海。
ヴァイゼンの姿が波に呑まれていく。
待ってくれ! 俺はまだごめんなさいを言えていない。行かないでくれ、ヴァイゼン。
「ヴァイゼン……!」
目が覚めた。
俺はびっしょりと汗をかいていた。
頭痛はないものの、体が重たい。食欲はあまりなかった。
喉の渇きを覚えた俺が、天蓋付きのベッドから出て呼び鈴を鳴らそうとすると、扉をノックする音が聞こえた。
「レムート様、お目覚めですか。入室してもよろしいですか」
初めて聞く声だった。俺の母と同じぐらいの年齢の女性だろうか。落ち着きのある、温かな声だ。
「どうぞ」
「失礼致します」
俺の居室に現れたのは、ふっくらとした顔に微笑みを浮かべた優しそうな女性だった。白衣を着ており、お粥と水差しがのったお盆を手に持っている。
「お初にお目にかかります。私はアンナ。こちらのお屋敷で家庭医を務めております」
「レムートです。アンナ先生、初めまして」
「お加減はいかがですか? 昨晩、強いお酒を召し上がったと聞いております」
「……食欲があまりないです。でも喉は乾いています」
「ではお水をどうぞ」
アンナ先生は俺に水を勧めてくれた。
ひと口含んだだけで、体が甦える。俺はコップの中の水をすべて飲み干した。
「この感じだと……お粥も食べられそうです」
「それはよかった。少しでいいですから、召し上がった方がいいですよ」
「美味しい……」
だしがきいたお粥が、するするとお腹に収まっていく。
俺の食べっぷりを見て、アンナ先生が目を細めた。
「お風呂のご用意もできておりますよ。食休みのあと、汗を流してさっぱりなさるといいですわ」
「何から何までありがとうございます」
「レムート様。オメガのみなさんはヒートもあり、心が乱れやすいものです。昨夜のことに関して、あまりご自分を責めないでくださいね」
「……いえ、ダメです。俺はヴァイゼン様にひどいことを……」
時刻は正午、ヴァイゼンはすでに公務に出かけているという。
「今日は港の視察ですって。海賊の襲来に備えて、武装船を増やしたいのだけれど、中央政府に止められているのです。どうにか既存の戦力で戦える方法を考えたいのだとおっしゃっておりました」
「南域は自治領ではないですか? 中央政府のお伺いを立てなくても……」
「名目上はそうなっておりますが、実際は違います。中央政府は南域が軍備拡張をすることを望ましく思っていないのです。独立の機運が高まったら困ると言って」
「難しいお立場に置かれているのですね、ヴァイゼン様は」
それなのに俺はあの人に意地悪やワガママばかり言って困らせてしまった。
俺はお粥を食べ終えると、「ごちそうさまでした」と手を合わせた。湯浴みをして、まずはさっぱりとした姿になろう。
アンナ先生が広い邸宅の中を案内してくれた。
「こちらが浴室ですよ」
「えっ。温泉?」
岩造りの浴槽に満ちたお湯から微香が漂っている。露天風呂からは海が一望できた。
「源泉掛け流しになっております。髪を洗う時は沸かした井戸水をお使いになって。そうしないと髪がパサついてしまいますから」
「ありがとうございます」
俺は風呂にとぷんと浸かった。
大人ふたりが同時に入っても余裕なほど広い。
俺とヴァイゼンが仲良し夫婦だったら、一緒に湯浴みをしたりするのかな。
……ヴァイゼン。
あなたに会いたい。
会って、昨日の非礼を詫びたい。
「お待たせしてしまいましたね」
ゆったりとしたローブに着替えた俺を、アンナ先生が廊下で待っていてくれた。
「ご体調のことなどお伺いしたいので、私の部屋に来ていただいてもよろしいですか?」
「はい」
俺はアンナ先生の部屋に招かれた。
さすがはお医者様の部屋である。立派な薬箪笥が置かれている。そして、薬草のものとおぼしき香りが俺の鼻先をくすぐった。
「抑制剤は今まで、どのようなものをお使いになっていたのかしら?」
「薬草を煎じたものです」
「北域とは植生が違うので、少し調合が変わることになるかと思います。飲み心地がよくなかったらすぐに教えてくださいね」
「アンナ先生、あの。先生はどのぐらい前からヴァイゼン様の家庭医として働いていらっしゃるのですか」
「そうね、もう15年になるかしら」
「長いんですね。ヴァイゼン様って、どんな方ですか? あの人、俺のやることをすべて肯定するんです。どんなワガママを言っても、おおらかに笑ってる。俺はまだ、あの人のことを全然知らない……」
アンナ先生は柔らかく微笑んだ。
「ヴァイゼン様はそれはやんちゃなお子さんでしたよ。洞窟に探検に出かけたり、遠泳に挑んだり。巨鯨との戦いにも、15歳の時から参加しております」
「名前からして、伝説の英雄ですからね」
「……ヴァイゼン様のお名前は中央政府より賜ったのです。有事の際は、英雄ヴァイゼンのように先陣を切って戦えというお達しとともに」
「え……? ご両親がつけたんじゃないんですか」
「南域は微妙な立場に置かれております。独自の力をつければ中央政府に睨まれ、土地の開発を進めなければどやされる。ヴァイゼン様のお名前は中央政府への服従を示すため、先代様が泣く泣くおつけになったのです」
俺が知るヴァイゼンは豪放磊落で、泰然自若としていて。俺のワガママをすべて受け入れてくれる懐の広い男だ。
でもそんな彼が中央政府とのしがらみのなかで生きてきたなんて知らなかった。
「……アンナ先生。もっとヴァイゼン様のことを教えてください! 俺、悪い嫁なんです。旦那様を困らせるだけで、尽くしたりしない」
「ふふっ。尽くすと言っても、まだ結婚して一日目じゃないですか」
「あの人の役に立ちたいんです!」
「レムート様のお気持ち、確かに受け止めました。でも無理は禁物ですよ。まずはこのお屋敷に慣れるのがよろしいかと存じます」
「そうですね。どこに何があるのか、全然分からない……」
「お庭をご覧になります?」
「はい!」
アンナ先生は、俺を庭へと連れていった。
ヴァイゼンの邸宅は四方を緑によって囲まれていた。北域では見られなかった花に、俺は思わず手を伸ばした。
「綺麗ですね」
「それはブーゲンビリアよ。華やかでしょう」
「そうだ。お花を生けて、ヴァイゼン様のお部屋に飾ってもらったらどうかな。俺、生け花は結構得意なんです」
「まあ。きっと喜びますわ」
「どの花がいいだろう……」
色とりどりの花を見渡していると、アンナ先生が俺の足元を指差した。菫が咲いている。
「こちらのお花。ヴァイゼン様のお気に入りですよ」
「へえ。素朴な花が好きなのかな?」
「菫がお好きな理由は、ご本人に聞いてくださいな」
俺は菫の花をいくつか手折った。紫色の花に合うよう、白い花も摘む。
「花瓶は小さなものがよさそうですね。私の部屋のものをお貸ししますよ」
「ありがとうございます。アンナ先生って、なんだかお母さんみたいだ」
「ふふっ。母のように思っていただけたら光栄ですわ。先代の奥様はお亡くなりになっておりますから、レムート様に家庭のことを教える方がいないですものね」
「領主の奥さんって、何をしたらいいんでしょう?」
「旦那様を優しい笑顔で包み込んであげてください」
「……うぅっ。俺、悪い嫁なのに。できるかな」
それから俺は、アンナ先生の部屋で花を生けた。
アンナ先生が用意してくれた小さな花瓶の中で、菫の花が慎ましく咲いている。野の花のように謙虚になれば、俺は悪妻じゃなくなるのかな。
ううん、でも俺は……この家から出ていった方がいい。
ヴァイゼンにひどいことを言ってしまったし、情緒不安定な俺に育児なんて大役が務まるとは思えない。
やっぱり寺院に入って、修道士になるしかない。
俺が思いつめた表情になると、アンナ先生が薬湯を用意してくれた。
「この薬湯には、気持ちが休まる効果がありますよ」
「ありがとうございます」
「レムート様。この国にはびこるオメガ差別によって、ずいぶんと辛い思いをされてきたでしょう」
「……俺はベータに生まれたかったです。それで、ヒートのない体で自由に生きたかった」
「ノノネ様が経営されている作業所に行ってみるといいですわ。そこではオメガのみなさんがお仕事をしておりますの。同じ気持ちを分かち合える仲間がいるだけで違うと思いますわ」
「作業所かあ。俺も仕事が欲しいな……」
「ふふっ。素敵な生け花を作って、ヴァイゼン様のお部屋を飾るのも大事なお仕事じゃないですか」
この素朴な生け花をヴァイゼンは気に入ってくれるだろうか。
アンナ先生の薬湯を飲んだら、体がポカポカになった。ポーッと頬が上気している。
ヴァイゼンに謝罪する際には、もっとシャキッとした姿を見せないと。
そう思った時、庭先が騒がしくなった。
「ヴァイゼン様のお帰りです」
家令のザンダーの声が鳴り響く。
俺は小さな花瓶を懐に抱くと、アンナ先生の部屋を辞した。
早くヴァイゼンに会いたい。会って、ちゃんと謝りたい!
俺は早足になって庭へと向かった。
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