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4、魔物狩りだああああ!
しおりを挟む「この肉結構美味しいねー。」
火魔法でこんがり焼き上げられた魔物の肉にかぶりつくリグ達の後ろには、
積み上げられた強力な魔物達の死体。
リグの横に座り込むドラさんの瞳には、最早、生気を感じられない。
「どうしたの?ドラさん。
美味しいよ?
食べようよ。」
促されたドラさんは、まるで脅されたかのように、顔の色を真っ青に変えて、急いで肉にかぶりつき始めた。
(あんなに一生懸命かぶりついて、お腹空いてたのかな?
取り敢えず食べれるようで安心したけど、これからは気に掛けないとな。)
「焼いただけだけど、結構いけるでしょ?
強い奴の方がなんか美味しいんだよね~」
ドラさんは、取れそうなほどに勢いよく首を縦に振る。
「そっか、よかったよ~」
そう言って、リグは指でドラさんの頭を撫でる。
ドラさんは身動き一つせずに、無抵抗に撫でられていた。
というか、放心状態であった。
(あー、可愛いっ!
無抵抗だし、今後も触っていって大丈夫そうだな~
無事に距離を詰められているようで一安心。
やっぱり、ドラさんは魔物の肉好きなのかな?
一息ついたら、もっと強い魔物狩りに行っても良いかもな。
美味しいやつ。
でも、調理できないんだよな~
予定的にもそんな魔物の肉を調理人に見せる訳にもいかないし。
…覚えようかな)
リグは、立ち上がって、軽く手で土を払う。
それから、丁寧にドラさんを手のひらで持ち上げて、鞄の中に入れる。
(まあ、どちらにせよ、一通り終わらないと話にならないよね。
腹ごしらえも済んだし、急ぎますか!)
「ドラさん、スピード上げるから揺れるかも知れないけど、ちょっと我慢してね。」
鞄にそう投げかけて、リグは走り出した。
残ったのは、積み上げられた死体と、火が消された焚き火の後だけ。
様子を遠巻きに見ていた魔物達が(速すぎだろ…)と、思ったとか思ってないとか。
森を抜けて、人目を避けて少し遠回りをしながら目的地へ向かった。
目的地は、『バーバード』の巣。
大陸に広く存在し、山の上などに巣を作るバーバードは、ランクでいうとCの魔物だ。
ただ、ランクCの中では、強い部類に属し、一部のはぐれを除いては山の上などの高所にしか存在しない。
素材などとして優秀ではあるものの、他にもっと弱くて割のいい魔物は沢山存在するため、街からの討伐依頼以外ではなく討伐に向かう者はほとんどおらず、遭遇する確率は極めて低い。
そして、「優秀なスキルを授かったそこそこ強い若者」であれば、「一人で倒しても、不自然というほどではない」。
これらの条件が、リグがバーバードを選んだ条件であった。
ある程度走れば、バーバードの巣がある山へとたどり着く。
人目がない事を確認して、速度を上げて、山を駆け登った。
巣のすぐ近くまで来て、身を隠すような格好で木の隙間を縫うように静かに歩いて行くと、一匹のバーバードが視界に入ってきた。
周りに人の気配は無い。
未だに気付かないバーバードに、後ろから静かに近づいた。
(入手するのは、一匹だけでいいから、
叫んで仲間を呼ばれないように。)
あらかじめ、斬れ味を上げるように強化魔法をかけておいた初期装備の剣で、バーバードの首を後ろから一突きで絶命させる。
血飛沫が巻き上がって、バーバードは声も出さずに倒れ込んだ。
(切断しちゃったら、武器性能を疑われそうだし、ちゃんと突きで殺さないといけないんだよね。
後、戦ったように傷も付けとかないと。)
リグは、手に持った剣で羽に数カ所傷をつけて、自分の服にもいくつか切れ込みを入れる。
少し服に血を滲ませるのも忘れない。
死体を空間魔法で収納して、素早くその場所から離れた。
行きと同じ通路で通って、森の中へと急ぐ。
血の匂いを嗅がれないように、行きの倍近いスピードで走る。
(今気付いたけど、これって森に着いてから血をつければ良かったじゃん!
失敗した…)
反省して更にスピードを上げる彼は、人の目には、しっかり人間と認識出来ない程だ。
結果として、森に着いた時には…
ドラさんは燃え尽きた灰になっていた。
「ごめん…ドラさん
街行くから、もっと良い鞄買おうね!
僕もスピード考えるし!」
そんなリグの問いかけにも、ドラさんが反応することはない。
(あ~、ちょっと休憩して行こうかな…)
森には、燃え尽きて灰になった小さなドラゴと、反省して頭を地面に打ち付けるチート性能の青年と、それを遠巻きに眺める魔物達という摩訶不思議な状況が作り出されていた。
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