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6、交渉しよう!
しおりを挟む問題の馬車が通り過ぎて、1時間程。
やって来た馬車に、リグは腰を浮かせた。
(交渉か~。
あんまり得意じゃないんだけど、台本通りにやれば、大丈夫かな。
お相手も来たみたいだし、準備しますかね。)
まだ遠くにある馬車に、目線をやって、リグは木から降りていった。
ドラさんを気にかけながらも、スピードは上げていく。
それから、馬車が通るであろう道筋に移動して、道端に座り込んだ。
そして、空間魔法で、狩って来たバーバードを取り出し、状態まで良く見える様にする。
街へ行くための、最後の関門だ。
ーーーーーーー
荷物を運ぶ道すがら、不思議な少年に声をかけられた。
これをかけられて窓から道端を見てみれば、掴みどころの無い雰囲気の少年が座り込んでいた。
その隣には、バーバードの死体が転がっている。
「お兄さん、これ、買う気ない?」
そう話しかけて来た少年に、思わず息を詰まらせる。
幼い顔立ちから発せられる言葉には、どこか威厳があるように感じさせられた。
「所々羽に傷が付いているけど、概ね状態はいいね…
これは、君が一人で倒したの?」
そう問いかけると、少年は、僅かに茶色の瞳を揺らしながら、呟くように答えた。
「うん…
ここまで来る途中に、はぐれに会ったんだ。
僕一人で倒したよ。」
今一度少年の姿を確認してみれば、服にはいくつか切れ込みが入っており、血の染みも出来ている。
(はぐれといえど、一人でバーバードを相手に出来るという事は、見かけによらず、相当の実力があるに違いない。
良いスキルを授かったのだろうか。
バーバードとの戦いで、服もボロボロになってしまっているようだ。
今のバーバードの素材の需要から考えても、充分利益は出るだろう。
出来れば買ってあげたかったが…)
考え込んだ仕草から、少年へと目を合わせる様に変える。
「恥ずかしい話なんだけど…
僕は今、金が無いんだ。
冒険者の傭兵を雇う事も出来ないくらいにね。
だから、そのバーバードを買うことは、出来ないよ。」
申し訳無い気持ちを抱きながら、少年に頭を下げて、立ち去ろうと背を向けようとした。
しかし、それを拒む様に少年は声を上げる。
「別に、お金は何日か過ごせる程度貰えれば良いんだ。
その代わりといってはなんだけど、僕を商人の、あなたの弟子として、街に入らせてくれない?」
何日か過ごせる程度のお金というのは、このバーバードを買い取る金額としては破格だ。
その交換条件として、街に入る時の紹介だなんて、いくらなんでもおかし過ぎる。
(条件をのんで良いものか…
少年の反応からしても、何か事情があるんだろう。
見た限りでは、悪人の様には感じないが…)
「一つだけ、聞かせてくれるか?」
少年は神妙な面持ちで頷いた。
「それは、誰かを傷つけるような結果になるか?」
少年は、少し驚いたような顔をした後、ゆっくりと口を開いた。
「そんな事は無いよ。
そんな事には、ならないよ。」
真っ直ぐこちらを見つめる瞳は、あの時とは違って、綺麗にこちらを捉えていた。
「そうか、じゃあ、このバーバードはこちらで頂こう。
これが、料金だ。」
少年に手を出させて、数枚の硬貨をその上に乗せる。
そして、バーバードの死体を荷台へと積み込んだ。
「それじゃあ、行こうか。
後ろに乗り込め。
ちょっと狭いけど、我慢しろよ。」
そう投げかけたにもかかわらず、少年は戸惑った様子で動かない。
「お金、こんなに貰えないよ。
乗せてって貰えるだけでありがたいのに。」
そう言って、少年はお金を戻そうとする。
「良いんだよ、これは傭兵代だ。
若いのに、強いんだろう?
それより、早く乗り込め。
出発するぞ。」
その言葉で、少年は俯きながらも、馬車に乗り込んだ。
「結構揺れるからな、気を付けろよ。」
「うん…」
後ろで、少年の小さな返事が聞こえた。
街に入るのは、簡単だった。
門兵に、少年の服が何故ボロボロなのか聞かれた時は焦ったが、商品を勝手に漁ってこうなったのだと答えれば、首を傾げながらも納得してくれた。
街に入れば、少年はお礼を言って去っていった。
あの強さだ。
冒険者ギルドにでも登録するのだろう。
「今度見かけたら、声をかけておいてやろう。
…ってあれ、どんな容姿だっけ…」
立ち止まって思い出そうとしても、ちっとも、思い出す事は出来なかった。
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