「チートでも目立たずにスローライフを送るための」実践講座

蛍さん

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7、交渉しよう!2

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リグは、街の中心の噴水に座って、手に持った硬貨を太陽の光を遮るように上に掲げた。
そして、それをじっと眺める。

(良い人、だったな…)

少しの間手の中で硬化を弄って、それをポケットの中に入れた。

(あんまり見てる訳にもいかないか。

街の中心部とはいえ、子供が一人でいて、金を持っていると分かれば騙そうとする人が来る。
誰が見てるか分からないし。)

リグは立ち上がって、ポケットに手を入れて歩き出した。
周囲から、小さな舌打ちの声が漏れてくる。

(ドラさんの為の鞄もそうだけど、財布とかも揃えなきゃな。
人目のあるところじゃ空間魔法なんか使えないし。

まあ取り敢えず、宿探ししますかね。)

リグは、そう思って案内の看板を探し始めた。

ーー

リグが、あの商人を選んだ理由はいくつかあった。


一つ目は、年齢。


成人して直ぐのような人でも、何十年も商人をやっている人でもいけない。
成人してすぐの人が、馬車を構えて街へ向かっているとすれば、それは十中八九親の職業が商人だ。
今まで修行として親の元で学び、成人と共に独り立ちするものは珍しくない。
しっかりとしたコネを持っている商人には、路上で販売する、更に街の事を交渉するなんてことは、不可能に近いことであった。
故に、年齢は、ある程度修行を積んでから独り立ちして直ぐといった、18~20歳当たりが一番好ましかった。


二つ目は、傭兵を雇っていない事。


あの街道は、比較的安全とはいえ、先の馬車であったように、強めの魔物が出現する可能性も十分あり得る。
冒険者を雇う事は定石であった。
それをしないということから分かる情報は2つ。

野心家である事。
そして、金が無い事。

命の危険があるような行動を取って行くのは、それなりの利益があるから。
有名になりたいのか、金が欲しいのか、目的は分からない。
彼にも安定した商売先はあったのだろう。
それを変えてまで動く事は、よく言えば野心家。
悪く言えば命知らず、といっても差し支えないものであった。

そして、その利益を確かなものにしたいなら、尚更護衛を雇うべきだ。
それをしないということは、金が無いことの裏返しだ。

野心家であるなら、利益が出ると分かれば、怪しげな少年からであっても商売に乗ってくる可能性はある。
金が無い事も好条件だ。
バーバードを買い取れない程なのかどうかはわからないが、そうであるなら、街に入る為の交渉を進めやすくなる。


最後に…正義感が強い人であるかどうか。


これに関しては、正直判断材料は無いに等しい。
完全に印象の問題だ。

正義感が強い人なら、ぼろぼろで訳ありそうな少年という印象も、商売、交渉には有利に働く要素になり得る。


これらが、リグがあの商人を選んだ理由であった。



(って言っても、なにかと疑われる場面も多かったし、殆ど賭けみたいな所はあったよな。

あの人がいい人で良かったってことか。)


案内図を確認して、宿の場所を見た後で、リグは屋台を見回っていた。

(宿の人とは、あんまり仲良くなる訳にもいかないし、出来れば食事も全てこっちで用意したい。

予想外にお金も手に入ったし。

…けど、ドラさんが何食べるか分かんないだよね、

まあ、肉系を多めに、野菜とかも色々買っていったら大丈夫だよな。)

活気づいた街の中で、淡々と欲しい食材や料理を揃えていく。
目立たない為にも、過度な値切りもしない。

そうやって、何軒か行った頃には、両手は完全に塞がってしまっていた。

(あー、ちょっと買いすぎちゃったかな。

どうやって言い訳しよう…)

両手一杯に買い物袋をぶら下げて、リグは宿へと向かった。
怪しまれない言い訳を、必死に考えながら。


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