「チートでも目立たずにスローライフを送るための」実践講座

蛍さん

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24、エルフの商会。3

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(どうする、どうするべきか。

騙す…いや、騙せるのか?
明らかにさっきと雰囲気が違う…どんな言葉を並べても無駄…

全てを話すのか?

流石にリスクがでか過ぎるだろ!

一部の真実を織り交ぜる…結局は騙す事と同じ結果だ。)

苦笑を貼り付けたリグの頰に、一筋の汗が伝う。

シルビアはその様子を黙って見つめた。
その冷徹にも感じられる雰囲気は、まさに指導者のそれと言ったものであった。

(………話すしか無いって事か。

でも、『今じゃない』。)

リグは、両手を上げて苦し紛れに笑ってみせる。

「降参です。

騙せる気がしませんからね。
正直に話しますよ。

…ただ、時間を下さい。

このままじゃ、交渉材料が少な過ぎる。」

「その情報には、待って釣り合うだけの価値があると?」

その問いに対して、リグはおどけた様子で答える。

「そんなのわかりませんよ。

僕のさっきの質問の答えが自分に有益なものになるかなんて、最初から確定しているわけでは無いですしね。

…それに、あなたは答え合わせをしたいだけでしょう?」

「…どうだろうな。

…一週間後、もう一度、ここに来て貰おうか。」

リグは一つ安堵の息を落として、ニヤリと笑った。

「一週間後は、ただの答え合わせにはしないよう、努力します。」

「…ああ。」

シルビアが詰まった息を大きく吐いて、場の空気が緩まった。

「じゃあ、もう良いぞ。」

その言葉と共に、扉が開く音が部屋に響いた。
リグが首を回すと、そこには案内してくれた男性が立っている。

「空いている家に住まわして貰える様に手配しておいたから。

そいつに案内してもらうといい。」

してやったりといった顔のシルビアに、思わず頰が引きつる。

(…そういう事ね。

それにしても、ちょっとこのままやられっぱなしって言うのも癪だな。)

「ああ、それと敬語とか使わなくて良いし、呼び捨てでいいぞ。

私もリグと呼ぶから。」

その言葉を聞いて、今度はリグが不敵に笑った。

「そうだね。

こんなおこちゃまには、敬語なんて、必要無いか。」

少し不機嫌になりながら、シルビアは言う。

「おこちゃまって、年齢も詳しく知らない癖に。」

「年齢とか、そういうのじゃ無いんだけど。

さっき、シルビアは『答え合わせがしたいだけだろう?』って質問に、『どうだろうな』って答えたよね。」

「確かにそうだが。」

「そのくせ、今、リグって呼んだよね。

僕、自己紹介して無いのに。」

横に置いてある棚の『リグ・アドバースの伝記』を見やって、リグは続ける。

「まあ、答え合わせっていうか、もう確信ってところだったんだろうけど。

勿体振るんだったら、しっかり隠しとかないといけないでしょ。」

俯いたシルビアを見て、満足そうに笑ったリグは、それじゃあ、と言って部屋を出た。

廊下で、部屋から漏れる破壊音を聞いたのは、言うまでも無い。


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