『ペガサスが舞い降りる日』“僕の人生を変えた恋人”

大輝

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第25章 白毛馬って…

僕の人生を変えた恋人25

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凛ちゃんからメールが来た。

「こっちは雪だよ」

そう言えば、雪深い北海道には、まだ行った事が無いな。

初めて行った時は、少し残っていたけどね。

コユキが生まれた時もチラチラしてたよな。

あの仔が生まれたのは、3年前のお雛様の日だ。

生まれた時は、黒っぽかったんだよな。

それが段々白くなってきたんだ。

お父さんのキングカメハメハは鹿毛。

芦毛と芦毛でも違う毛色の仔が生まれたりするんだよね。

春風牧場には昔白毛馬が居たらしいけど、白毛のお母さんでも、中々真っ白の仔ばかりは産まないみたいだね。

僕の好きだった仔で、ユキチャンと言う白毛の女の子が居たけど、お母さんのシラユキヒメは白毛で、お父さんのクロフネは芦毛。

ユキチャンは、白毛では初めて地方の重賞を勝った馬だ。

兄弟には、白毛も何頭か居るけど、芦毛、白毛(ブチ)鹿毛などが居る。

お母さんになったユキチャンは、白毛の仔を産んでいるんだ。

シラユキヒメの母ウェイブウインドは鹿毛でノーザンダンサー系。

父は、青鹿毛のサンデーサイレンス。

シラユキヒメは青鹿毛と鹿毛から突然変異で白毛に生まれたんだ。

コユキがお母さんになるのはまだ先だけど、どんな仔を産んでくれるか楽しみだね。

あ、凛ちゃんにメール返さなきゃ。

やっぱり、秋華賞の日は会えなくて寂しかったよな。

今度会えるのは女王杯だ。

早く会いたい。

いつの間にか、僕もそう思うようになっていた。

ここは素直にそう言っておこう。

「11月16日は女王杯だね。来るんだよね?早く会いたいな」と送った。

「本当にそう思ってる?」と返って来た。

「秋華賞の時、来なくて寂しかった」と送った。

「あの日は、春風牧場の主役は華ちゃんだからね。ママが一緒の方が良いと思ったの。薫さんも、たまには行かせてあげたかったし」と返って来た。

優しいね、凛ちゃんは。

【凛の部屋】

でも…

本当は、菱さんと会いたくなかった。

会いたいけど、会いたくなかったの。

だって、本当に私の事思ってくれているか、わからないから。

さあ、アクセ作らなくちゃ。

「あ、ぶーニャン。それ、おもちゃにしちゃダメよ」

「ニャー」

「抱っこね」

ぶーニャン抱っこしてると、やりにくいけど、可愛いからしょうがなか。

「甘えん坊ね、ぶーニャンは」

「ゴロゴロ」


【雑貨屋】

ここは輸入雑貨の店なんだけど、コユキの縫いぐるみなんかは、こっちの店に置いているんだ。

可愛い、って、結構売れている。

赤いメンコ(覆面)してるのとしてないの。

どっちも人気だね。

足にはバンテージを巻いてる。

最近は、メンコしないで走るようになったんだ。

アドマイヤグルーヴの厩務員さんが「美人だから、顔をお見せしたい」って言っていたけど、気持ちわかるよね。

彼女は顔が小さくて、本当に美人だった。

まあ、ママが美人だからね。

コユキだって、白くなる途中はともかく、ちゃんと白くなったら、結構可愛い顔してるんだよ。

だから、皆んなに見てもらいたい。

さて、fleurに行くか。

【アクセサリーショップfleur】

凛ちゃんのハンドメイドアクセが届いていた。

手紙が入ってる。

綺麗な字だな。

綺麗だけど、キツくなくて優しい字だ。

ああ、これは僕にじゃなくて、店長にだね。

「クリスマスシーズンには、また手伝いに来てくれるんでしょうか?」

「どうだろう?」

今の状態では、何とも言えないね。

【葉月家】

「ねえ、菱ちゃん。コユキが女王杯勝ったら、何開ける?」

「うーん…モンラッシェは、海外で勝った時?じゃあ、シャトー・ペトリュスが良いかな」

「え?それは、ジャパンカップでも勝ったら開けてあげるわよ」

お姉さんも、段々競馬の事わかってきたね。

シャトー・ペトリュスは、JC勝つまでお預けか。

僕は、メルローが好きなんだよね。

そうだな…そしたら…

シャトー・ラ・フルール・ペトリュスかな?

メルロー80%、カベルネ・フラン20%。

シャトー・ペトリュスと同じ経営なんだよな。

ワインは値段と美味しさは比例しないからね。

まあ、何を呑むかより、コユキが勝ってくれるのが一番。

それより、無事に帰って来てくれるのがもっと大事だよね。

あ、メールだ。

「凛がなんだか元気無いけど、あなた達上手くいってるの?」って、舞ちゃんからだ。

「元気無いって、どうしたんだろう?」と返した。


どうして元気無いんだろう?

いつもの明るい凛ちゃんに戻ってほしいな。

僕のせいなのかな?

上手くいってるかと言えば、あの交際宣言の日から会ってないよな。

しばらく気まずくて、メールも来なくて…

でも、駿さんのおかげで、またメールするようになったけどね。

「菱ちゃん、凛の事好きなのよね?」と送って来た。

好き…なのかな?

これは、どうしよう?

何て答えたら良いんだろう?

確かに好きな事は好きなんだけど…

恋愛感情なのかどうか、自分でもわからないんだ。

だけど、秋華賞の日、会えなくて凄く寂しかった。

やっぱり好きなんだよね、凛ちゃんの事。

「今迄の好きという気持ちと、少し変わってきてるのは本当だよ」と返した。

「そうなのね…もう少し時間がかかりそうね」と返って来た。

舞ちゃんも凛ちゃんも、好きだったけど、恋愛感情ではなかった。

でも、確かに少しずつ変わってきている。

あの人の時みたいに、一瞬で燃え上がるような恋じゃないけどね。

ゆっくりとlikeからloveに変わって行くから、もう少し待っていてほしいんだ。

11月16日京都競馬場。

いよいよエリザベス女王杯だ。

晴れ、良馬場。

コユキの切れ味が活かせる馬場だと良いね。

【馬主席】

「おや、まあ、葉月さん。あんたんとこの馬は安い馬やけど、よう走りますな」

「ええ、頑張ってくれてます(安いはよけいだけど)」

「今日は、うっとこの馬は、2頭出しやさかい、勝たせてもいらまっせ」

金成オーナー、秋華賞の時は、トーンダウンしてたけど、今日は元に戻ってるね。

いつもの感じだな。

2頭出しって…

ああ、カネノカンムリと、もう1頭4歳馬のカネノホマレが居るのか。

「この馬上がり馬で、重賞勝ってる」

「上がり馬って?」

「急激に力をつけて、条件戦から格上に勝ち上がって来た馬の事だよ」

「そういう事ね」

「勢いが有るから、ちょっと怖いかもね」

「新聞は黒三角。どう言う意味?」

「ちょっと待って」

実は僕、馬券買わないから、わからないんだ。

検索、検索…

「単穴」

「って?」

「1着に来る可能性を秘めた馬だって」

この馬も、追い込みみたいだな。


【パドック】

今日は、凛ちゃん来てるかな?

何も言ってなかったけど…

あれ?

僕…ドキドキしてるのか?

何でだ?

「おーい、菱!こっち、こっち!」

慎二だ。

凛ちゃんと、舞ちゃんも居る。

今日は、来たんだね。

あれ?

何か…ソッポ向いてる?

あ、桜ちゃんが、僕の服を引っ張ってるぞ。

「抱っこ」

「はいはい」

凛ちゃん、何で暗い顔してるんだ?

「コユキ来たよ」

「え?あ、本当だ」

「コユキ、1番人気だな」

「秋華賞も勝ってるからなー」

「何か、今日は大人しくないか?」

「大丈夫よね?ローズの時もそうだったもん」

あの時は休み明けだったし、あんなに大人しくしてたの初めて見たから心配したけど、強い勝ち方してくれたよな。

コユキは、確かに強い。

でも、古馬との対戦は今日が初めてだ。

どんな競馬を見せてくれるんだろう?

これから男馬相手に戦う事になる。

ここで通用しなければ、この先厳しいぞ。

周回を重ねても、いつものようにチャカついて見せないな。

止まれがかかって、ジョッキーが乗った。

「コユキ、随分落ち着いてるんでないかい」

【スタンド】

いつものように、桜ちゃんを抱っこして座った。

僕の隣りはお姉さんで、反対側は駿さんだ。

そして、舞ちゃんとさつきさん。

その向こうに凛ちゃんが座った。

何で、今日はそんなに遠くに居るんだろう?

まだ凛ちゃんと一言も話してない。

凛ちゃんの隣りに、慎二。

2人で、楽しそうに話してるな。

何か…ちょっと…妬けるのかな?

「本馬場入場だ。今日も、最後に入って来るのかな?」

「18番だから、どっちみち最後よ」

「ハハハ、そうだな」

やっぱり、凛ちゃんおかしいよ。

何か、僕の事避けてるみたいだ。

「コユキ、コユキ」

「さあ、来たぞ。今年の3歳クラシック二冠馬がやって来ました。今日は、捲りましょうか?直線一気に抜き去りましょうか?3つ目のG1タイトルは貰った。コユキです」


すんなりキャンターにおりて、馬場に出ても落ち着いている。

コユキは1番人気。

2番人気は、オークス馬のカミノクイン。

3番人気は、4歳馬の上がり馬カネノホマレだ。

女王杯は、京都競馬芝外回り2200mで行われる。

競馬新聞では、相変わらずコユキの距離不安説が囁かれていた。

他の2頭は、2200m以上で勝ち星が有るけど、コユキは、200m迄しか勝っていない。

でも、オークスを走ってみて、負けはしたけど、距離が持たなかったわけではないと思うんだ。

「コユキが勝ったら、今日も旨いワインで乾杯だってか?」

「持って来たわよ。ラ・フルール・ペトリュス」

「その、ラ、何ちゃら言うやつ、旨いのか?俺も最近ワインの味わかって来たぞ。北海道にも旨いの有るからなー」

「安いワインでも、美味しいの有るわよね」

舞ちゃんも、最近ワインを呑むって、言ってたな。

「俺、すっげー高いの呑んでみてえなー」

「菱ちゃんが結婚する時は、ロマネでも開けましょうかね」

「ロマネ?」

「ロマネ・コンティ。ブルゴーニュの赤よ」

「つまみは何だ?」

「お料理は、ジビエが良いわね」

「何じゃそりゃ?」

「狩猟で捕獲された、野生の鳥獣よ」

「菱、早く凛と結婚しろ。旨いワインと野生の鳥獣食わせろ」

「もう、お兄ちゃん。また始まった。やめてよね」

結婚か…

まだ交際宣言したばかりだ。

しかも、駿さんに言われて「付き合ってください」って言ったんだ。

それで気まずかったんだよな。

何だか凛ちゃんが、僕を避けてるみたいなのは、それでなの?

ファンファーレが鳴った。

西のファンファーレって、明るくて良いな。

ウキウキする。

出走馬がゲートに引かれて行った。

コユキのメンコを外したぞ。

奇数番からゲート入り。

コユキは少し離れた所で待っている。

「何度経験してもドキドキするわね」

殆どの馬が収まったな。

コユキが引かれて行った。

ゲート前で少し立ち止まっている。

久々にゲート入りを嫌ってるか?

ジョッキーが促すけど、入ろうとしないな。

一旦下がって、回してゲートに連れて行くと、また止まって入らない。

「おいおいコユキ。あんまり嫌がると、ゲート審査されちゃうぞ」

あ、入った入った。

皆んな無事に帰っておいで。

きっと皆んな良いお母さんになるんだからね。

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