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第5章 魔族侵入?!
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【優里花先生の部屋】
《荷物を持ったままへたへたと座り込む優里花先生》
「(もう、大河君たら…まだドキドキしてるわ。でも何でドキドキ?こんな事初めてじゃないのに?それに相手は子供…生徒なのよ)」
【ダイニング】
「あー、腹減った」
「まあ、待ちなさいって、今優里花が作ってるわよー」
「沙羅ちゃんは作らねえのかよ?」
「おや、司。私の料理食べたいー?」
「まあな、っていつの間にか司って呼び捨てか」
「あら、嫌なのー?」
「別に、そんな事より沙羅ちゃんの料理食ってみたいぞ」
「僕はやめておこう。沙羅先生の料理では魔物か何かが出て来そうだからな」
「言ったわねイヤミ。今度本当に魔物を料理してあげるわよー」
「早く飯ー。大河手伝って来いよ」
「うん…」
《大河は重い腰を上げてキッチンに向かう》
「早くしてくれよ。いつもなら言われなくたって手伝いに行くのによ」
【キッチン】
《優里花先生がお皿を並べている》
「手伝うよ」
「あっ」
《ガチャン》
「わっ、ごめんなさい」
突然声をかけたから、びっくりさせちゃった。
「私がやるから」
「危ないから僕が片付けるよ」
「危ないから私がやるんじゃない」
「大丈夫だから、僕がやるよ」
《割れたお皿を片付ける2人。優里花先生の手に大河の手が重なる。一瞬止まる2人》
何だかちょっと気まずかったけど、お皿が割れたおかげで普通に出来る感じだな。
「(嫌だわ、ちょっと手が触れただけでこんなにドキドキするなんて…)」
《割れたお皿を片付けながら、ふと大河の顔を見る優里花先生》
「(平気な顔をしてるのね…良いわ、私も平常心よ)」
【ダイニング】
《優里花先生と大河が料理を運んで来る》
「お待たせ」
「美味そうだ。俺もう腹減って死にそうだぜ」
「アハハ、そのぐらいの事で死なないわよー」
「餓死するだろ?」
「大袈裟な奴ー」
【劇場】
《日曜日。劇場のロビーに優里花先生と沙羅先生が入って来る》
「優里花、楽屋行く?」
「大河君の踊りが終わってからの方が良いんじゃないかしら?」
「そっか、じゃ後にしよー」
【会場】
《優里花先生と沙羅先生は席に着く》
「何番目かなあ?大河」
「序開きって言ってたから、一番最初ね。口上の後かしら?」
「あ、出て来た。紋付袴のあれ、大河じゃない?」
「ええ、そうね」
《口上が終わり大河の踊りが始まる。常磐津の千代の友鶴》
「派手な衣装じゃないんだねー」
《紋付袴で踊る大河。優里花先生は解説を読む》
「(御祝儀舞…素踊り…)素踊りだからでしょう?」
「終わったらお花渡そー」
「(何だか不思議だわ。あの大河君が、今舞台の上で舞っている…いつもの大河君からは想像のつかない姿…でも、日本舞踊の家元の家に生まれたのだから、これがあの子の本当の姿なのかも知れないわね)」
《大河の踊りが終わって緞帳が下りる》
「お花、直接渡せないんだー」
「花道の所に人が出て来た。あの人に渡すみたいね」
「良いやー。楽屋に持って行こう」
【楽屋】
「あ、居た居た。大河ー」
「あ、来てくれたんだ」
「はい、お花ー」
「ありがとう」
「大河だけ楽屋一人?何か偉そうだねー」
「偉くなんかないよ。男は僕だけたから、仕方ないんだ」
「大河さー。もう踊っちゃったんだから、暇なんでしょう?」
「えっ?手ぬぐい投げたりするんだけど…」
「何それ?手ぬぐい?投げるのー?」
「うん。名披露目の人とか、手ぬぐいを撒くからね。僕がやるんだ」
「撒いてどうするの?」
「会場のお客様に差し上げるんだよ」
「へー、楽しそーう。私達も貰って良いのー?」
「うん、勿論」
「良ーし、手ぬぐい貰って帰るわよー」
「上手く取れたら良いね」
「そっか、皆で取り合う感じー?」
「それも一つの楽しみだからね。取れなかったらあげるよ」
「絶ーっ対取ってやるー」
「フッ、僕の手ぬぐいで良かったらどうぞ」
《大河は自分の芸名と紋を染め抜いた手ぬぐいを渡す》
「わあ、ありがとう」
「ほうほう、大河のも貰っとくわー」
「僕のはついで?フッ」
沙羅先生は、飛んで来る手ぬぐいを取るのを楽しみにしているみたいだね。
【客席】
「手ぬぐいいつ投げるのかなー?」
「次の踊りは、藤娘…名披露目だから投げるんじゃないかしら?」
《藤娘が始まる。途中衣装替えで引っ込むと大河が出てくるむ》
「あ、大河だ。いよいよかー?」
《大河が手ぬぐいを投げると観客は手を伸ばしてキャッチする》
「こら大河!こっち、こっちー!こっちにも投げろー!」
【ロビー】
《会場から人々が出て来る》
「あー楽しかったー」
「フフフ、ちゃんと踊り観てた?沙羅ちゃんは手ぬぐい取るのが楽しかったんでしょう?」
「まあねー。踊りも観てたよ」
「(観てたのは大河君のだけね。あとは居眠り)」
【聖フェアリー学園特別クラス学生寮】
《大河は部屋の鍵を開けて中に入り荷物を置く》
はあ、終わった、終わった。
明日は学校だから、打ち上げの途中で帰してもらったのは良いけど、ちゃんと食べないで出て来ちゃったからお腹空いたな。
作るエネルギー残ってないし、たまには外に出るか。
【並木道】
《門へ向かう大河の前をサッと何かが横切る》
何だ?今の…
あの動きは動物?
犬や猫にしては大きいな。
人間ぐらいの大きさだったぞ。
でも、あの動き…
あれは人間じゃないよ、絶対。
まさか、魔族?
魔族がこんな所まで入り込んでたとしたら、大変な事だぞ。
でも…何か違う…?
そんなに嫌な感じがしなかった。
山が近いから、野生動物が下りて来たのかな?
「大河じゃねえか?何やってんだよ?」
「翔。今何かそこを横切ったんだ」
「どこ…?」
《翔は辺りを探す》
「おっ、居た居た!コイツ!」
「放せよぉ」
「あれ?喋った。人間?」
「はあん?あ、コイツ、尻尾が付いてやがる!良く見ると耳もだ!」
《翔はそいつを引きずって来る》
「お前、魔族か?!。魔族がこんな所まで入り込んで来やがって!許さねえぞ!」
《拳を振り上げる翔。そいつは怖がって小さくなり目を瞑る》
「待って!まだ子供だよ」
「子供だって、魔族なら生かしておいちゃ危ねぇだろ?」
「ち、違うもん」
「嘘つくな!」
「何か猫っぽい?」
「猫じゃないやい、虎だよ!」
「魔族じゃないんだね?」
「違う」
「翔。この子嘘を言ってるようには思えないよ。それに、虎?フッ猫っぽくて可愛い」
「だから猫じゃないって言ってるだろ。虎だもん。痛い、尻尾を引っ張るなよ!」
「着ぐるみじゃねえみてえだな」
「耳を触るなって」
「どうすんだ?コイツ」
「怪我をしてるみたいだから、とにかく優里花先生の所へ連れて行こう」
「俺、コンビニ行く途中だったんだよな」
「僕も何か食べ物買いに行こうと思ってたんだけど…」
【旧校舎の保健室】
《優里花先生がその子供を治療している》
「優里花何してんの?あら、可愛い。ビーストの子ねー?」
「山で怪我をしたらしいの」
「どっから来たのよー?まあさ、どっかに目に見えない入り口が有ってその向こうに獣人族や魚人族の住む世界が有るって聞いた事は有るけどさー。まさかあの山ー?本当に居たんだー。じゃあ、エルフも居るかもー?」
獣人族の子供らしい。
そんな生き物が居たなんて僕は全然知らなかった。
「長老が「洞窟の向こうは絶対に行っちゃいけない」って言うんだけど…」
「来ちゃったのね?」
「うん」
「いけない子ね」
「「人間は怖い生き物だ」って、皆んな言ってる「洞窟の向こうには人間が居るから、行っちゃいけない」って」
「はい、これで良いわ。大した怪我じゃなくて良かったわね。それで?人間は怖い?」
「…や…優しい」
《翔がコンビニから戻って来る》
「適当に買って来たぜ」
「ありがとう。この子のは?」
「んあ、コレ」
「猫缶?」
「だって、猫っぽいだろ?虎の餌なんか売ってねえし」
「猫じゃないもん」
「あとコレ」
「マタタビだ。ネコ科だからきっと好きだよ」
「うはっ、たまんない」
やっぱりだね。
すっかり猫になっちゃってる。
それからしばらくマタタビで遊んで、その後猫缶を美味しそうに食べた。
洞窟を抜けて出た所が山の中で、廃屋のような物が有ったって…
そこって、立ち入り禁止区域じゃないかな?
危ないから近づいちゃいけないって言われてるけど、洞窟?
その向こうに獣人族が住んでいるなんて知らなかったよな。
「あそこに洞窟なんて有ったっけー?」
「洞窟を抜けたらいきなり何かに吸い込まれたんだ。それで気がついたら壊れた建物の中に居て…」
「見えない入り口ー?」
「わかんない。怖くなって走って逃げたら崖から落ちちゃった」
「その時に怪我をしたのね?」
「うん」
「崖から落ちたら普通大怪我するだろ?」
「さすがネコ科だね」
「猫ちゃんお名前は?」
「だから虎だって言ってるのに」
「あら、失礼。虎ちゃん、お名前教えてくれる?」
「そんなもん無いよ」
「名前がねえなんて事ぁねえだろう?」
「俺、親無しっ子なんだ。村の皆んなは親から名前を貰ってるけど、俺に親は居ないから…」
「んじゃあ何て呼ばれてんだよ?」
「「おい」とか「ぼうず」とか言われてる」
「親が居なくてどうしてんだ?」
「長老の家で面倒見てもらってるんだ」
「きっと心配してるわね」
「明日行ってみようよ。虎の坊や」
「名前がねえなんてよ、不便だよな」
「俺だって本当は名前欲しいけど…」
「小虎ちゃん」
「え?」
「嫌?」
《キョトンとして優里花先生を見る獣人族の子供。微笑む優里花先生》
「小虎ちゃんて名前、可愛くないかしら?」
「それが…俺の名前?」
《ポカンと開いた口が段々笑顔になる》
気に入ったみたいだね。
【山道】
《翌日》
「どこまで行くんだよ?だりぃな」
「この先の廃屋だよ」
「ずっと先じゃねえか、だりぃ」
「あの廃屋って、神社かなんかみたいじゃなかったー?」
「あの立ち入り禁止区域のですか?それなら家の親戚の土地ですが」
「ふーん、イヤミ家の土地だったんだー」
「井山家です」
「どっちでも良いじゃーん」
「確か大昔あそこで神事が行われていたと聞いてますが」
それからしばらく奥へと歩いて行くと、やっと廃屋らしい物が見えて来た。
「あれがそうです。近づかないように言われていて、小さい頃行ったきりですが間違い無い」
【廃屋】
「ここか?」
「うん、気がついたらここに居た」
「この辺り何だか変じゃない?見てー」
「歪み…かしら?」
《優里花先生は大河に手を掴まれてビクッとする》
「気をつけて。向こうへ行くなら皆んな一緒じゃないと危ないよ」
「大河の言う通りひと塊になるとしょう」
「ラジャー」
「だりぃ」
「ちょっと、イヤミ。そんなにくっつかなでよー」
「仕方ないでしょう、狭いんだから」
「くっつきたいんでしょうー?」
「ち、違いますっ!」
「うわっ、バカヤロー押すな!」
「うわぁー」
「キャー」
《ドスン!》
「痛えなったあく」
あれ?
ここは…
「小虎君。洞窟ってここ?」
《辺りを見回す小虎》
「あ…うん、そうだよ…たぶん」
「何でたぶんなのよー?」
「だって長老に近づくなって言われてるから、昨日初めて来たんだもん」
「んじゃあ、一人で帰れるな」
「待て、何だかきな臭いと思わないか?」
「んだよイヤミ」
「僕は異常に鼻が良いんだ。これは何かが燃えてる臭い…間違い無い」
「え?まさか俺の村?」
「行ってみましょう」
【洞窟の出口】
《小虎が走る》
「小虎ちゃーん」
【獣人族の村】
《村が燃えている。小虎が走って洞窟から出て来る》
「嘘だ…俺の村が…」
「お前、何してる?!長老が探してたぞ」
「何で村が火事なの?」
「魔族の奴らにやられた。お前もぐずぐずしないで早く逃げろ」
《大河達が来る。獣人族は後ずさる》
「に、人間?!」
「この人達は怖くないよ。俺を助けてくれたんだ」
「エ、エルフの村に、急げ!お、俺は先に行くからな」
《少し後ずさってから走り去る獣人族》
「あれは、あたし達の事怖がってたわねー」
「逃げるように行ってしまったな」
《荷物を持ったままへたへたと座り込む優里花先生》
「(もう、大河君たら…まだドキドキしてるわ。でも何でドキドキ?こんな事初めてじゃないのに?それに相手は子供…生徒なのよ)」
【ダイニング】
「あー、腹減った」
「まあ、待ちなさいって、今優里花が作ってるわよー」
「沙羅ちゃんは作らねえのかよ?」
「おや、司。私の料理食べたいー?」
「まあな、っていつの間にか司って呼び捨てか」
「あら、嫌なのー?」
「別に、そんな事より沙羅ちゃんの料理食ってみたいぞ」
「僕はやめておこう。沙羅先生の料理では魔物か何かが出て来そうだからな」
「言ったわねイヤミ。今度本当に魔物を料理してあげるわよー」
「早く飯ー。大河手伝って来いよ」
「うん…」
《大河は重い腰を上げてキッチンに向かう》
「早くしてくれよ。いつもなら言われなくたって手伝いに行くのによ」
【キッチン】
《優里花先生がお皿を並べている》
「手伝うよ」
「あっ」
《ガチャン》
「わっ、ごめんなさい」
突然声をかけたから、びっくりさせちゃった。
「私がやるから」
「危ないから僕が片付けるよ」
「危ないから私がやるんじゃない」
「大丈夫だから、僕がやるよ」
《割れたお皿を片付ける2人。優里花先生の手に大河の手が重なる。一瞬止まる2人》
何だかちょっと気まずかったけど、お皿が割れたおかげで普通に出来る感じだな。
「(嫌だわ、ちょっと手が触れただけでこんなにドキドキするなんて…)」
《割れたお皿を片付けながら、ふと大河の顔を見る優里花先生》
「(平気な顔をしてるのね…良いわ、私も平常心よ)」
【ダイニング】
《優里花先生と大河が料理を運んで来る》
「お待たせ」
「美味そうだ。俺もう腹減って死にそうだぜ」
「アハハ、そのぐらいの事で死なないわよー」
「餓死するだろ?」
「大袈裟な奴ー」
【劇場】
《日曜日。劇場のロビーに優里花先生と沙羅先生が入って来る》
「優里花、楽屋行く?」
「大河君の踊りが終わってからの方が良いんじゃないかしら?」
「そっか、じゃ後にしよー」
【会場】
《優里花先生と沙羅先生は席に着く》
「何番目かなあ?大河」
「序開きって言ってたから、一番最初ね。口上の後かしら?」
「あ、出て来た。紋付袴のあれ、大河じゃない?」
「ええ、そうね」
《口上が終わり大河の踊りが始まる。常磐津の千代の友鶴》
「派手な衣装じゃないんだねー」
《紋付袴で踊る大河。優里花先生は解説を読む》
「(御祝儀舞…素踊り…)素踊りだからでしょう?」
「終わったらお花渡そー」
「(何だか不思議だわ。あの大河君が、今舞台の上で舞っている…いつもの大河君からは想像のつかない姿…でも、日本舞踊の家元の家に生まれたのだから、これがあの子の本当の姿なのかも知れないわね)」
《大河の踊りが終わって緞帳が下りる》
「お花、直接渡せないんだー」
「花道の所に人が出て来た。あの人に渡すみたいね」
「良いやー。楽屋に持って行こう」
【楽屋】
「あ、居た居た。大河ー」
「あ、来てくれたんだ」
「はい、お花ー」
「ありがとう」
「大河だけ楽屋一人?何か偉そうだねー」
「偉くなんかないよ。男は僕だけたから、仕方ないんだ」
「大河さー。もう踊っちゃったんだから、暇なんでしょう?」
「えっ?手ぬぐい投げたりするんだけど…」
「何それ?手ぬぐい?投げるのー?」
「うん。名披露目の人とか、手ぬぐいを撒くからね。僕がやるんだ」
「撒いてどうするの?」
「会場のお客様に差し上げるんだよ」
「へー、楽しそーう。私達も貰って良いのー?」
「うん、勿論」
「良ーし、手ぬぐい貰って帰るわよー」
「上手く取れたら良いね」
「そっか、皆で取り合う感じー?」
「それも一つの楽しみだからね。取れなかったらあげるよ」
「絶ーっ対取ってやるー」
「フッ、僕の手ぬぐいで良かったらどうぞ」
《大河は自分の芸名と紋を染め抜いた手ぬぐいを渡す》
「わあ、ありがとう」
「ほうほう、大河のも貰っとくわー」
「僕のはついで?フッ」
沙羅先生は、飛んで来る手ぬぐいを取るのを楽しみにしているみたいだね。
【客席】
「手ぬぐいいつ投げるのかなー?」
「次の踊りは、藤娘…名披露目だから投げるんじゃないかしら?」
《藤娘が始まる。途中衣装替えで引っ込むと大河が出てくるむ》
「あ、大河だ。いよいよかー?」
《大河が手ぬぐいを投げると観客は手を伸ばしてキャッチする》
「こら大河!こっち、こっちー!こっちにも投げろー!」
【ロビー】
《会場から人々が出て来る》
「あー楽しかったー」
「フフフ、ちゃんと踊り観てた?沙羅ちゃんは手ぬぐい取るのが楽しかったんでしょう?」
「まあねー。踊りも観てたよ」
「(観てたのは大河君のだけね。あとは居眠り)」
【聖フェアリー学園特別クラス学生寮】
《大河は部屋の鍵を開けて中に入り荷物を置く》
はあ、終わった、終わった。
明日は学校だから、打ち上げの途中で帰してもらったのは良いけど、ちゃんと食べないで出て来ちゃったからお腹空いたな。
作るエネルギー残ってないし、たまには外に出るか。
【並木道】
《門へ向かう大河の前をサッと何かが横切る》
何だ?今の…
あの動きは動物?
犬や猫にしては大きいな。
人間ぐらいの大きさだったぞ。
でも、あの動き…
あれは人間じゃないよ、絶対。
まさか、魔族?
魔族がこんな所まで入り込んでたとしたら、大変な事だぞ。
でも…何か違う…?
そんなに嫌な感じがしなかった。
山が近いから、野生動物が下りて来たのかな?
「大河じゃねえか?何やってんだよ?」
「翔。今何かそこを横切ったんだ」
「どこ…?」
《翔は辺りを探す》
「おっ、居た居た!コイツ!」
「放せよぉ」
「あれ?喋った。人間?」
「はあん?あ、コイツ、尻尾が付いてやがる!良く見ると耳もだ!」
《翔はそいつを引きずって来る》
「お前、魔族か?!。魔族がこんな所まで入り込んで来やがって!許さねえぞ!」
《拳を振り上げる翔。そいつは怖がって小さくなり目を瞑る》
「待って!まだ子供だよ」
「子供だって、魔族なら生かしておいちゃ危ねぇだろ?」
「ち、違うもん」
「嘘つくな!」
「何か猫っぽい?」
「猫じゃないやい、虎だよ!」
「魔族じゃないんだね?」
「違う」
「翔。この子嘘を言ってるようには思えないよ。それに、虎?フッ猫っぽくて可愛い」
「だから猫じゃないって言ってるだろ。虎だもん。痛い、尻尾を引っ張るなよ!」
「着ぐるみじゃねえみてえだな」
「耳を触るなって」
「どうすんだ?コイツ」
「怪我をしてるみたいだから、とにかく優里花先生の所へ連れて行こう」
「俺、コンビニ行く途中だったんだよな」
「僕も何か食べ物買いに行こうと思ってたんだけど…」
【旧校舎の保健室】
《優里花先生がその子供を治療している》
「優里花何してんの?あら、可愛い。ビーストの子ねー?」
「山で怪我をしたらしいの」
「どっから来たのよー?まあさ、どっかに目に見えない入り口が有ってその向こうに獣人族や魚人族の住む世界が有るって聞いた事は有るけどさー。まさかあの山ー?本当に居たんだー。じゃあ、エルフも居るかもー?」
獣人族の子供らしい。
そんな生き物が居たなんて僕は全然知らなかった。
「長老が「洞窟の向こうは絶対に行っちゃいけない」って言うんだけど…」
「来ちゃったのね?」
「うん」
「いけない子ね」
「「人間は怖い生き物だ」って、皆んな言ってる「洞窟の向こうには人間が居るから、行っちゃいけない」って」
「はい、これで良いわ。大した怪我じゃなくて良かったわね。それで?人間は怖い?」
「…や…優しい」
《翔がコンビニから戻って来る》
「適当に買って来たぜ」
「ありがとう。この子のは?」
「んあ、コレ」
「猫缶?」
「だって、猫っぽいだろ?虎の餌なんか売ってねえし」
「猫じゃないもん」
「あとコレ」
「マタタビだ。ネコ科だからきっと好きだよ」
「うはっ、たまんない」
やっぱりだね。
すっかり猫になっちゃってる。
それからしばらくマタタビで遊んで、その後猫缶を美味しそうに食べた。
洞窟を抜けて出た所が山の中で、廃屋のような物が有ったって…
そこって、立ち入り禁止区域じゃないかな?
危ないから近づいちゃいけないって言われてるけど、洞窟?
その向こうに獣人族が住んでいるなんて知らなかったよな。
「あそこに洞窟なんて有ったっけー?」
「洞窟を抜けたらいきなり何かに吸い込まれたんだ。それで気がついたら壊れた建物の中に居て…」
「見えない入り口ー?」
「わかんない。怖くなって走って逃げたら崖から落ちちゃった」
「その時に怪我をしたのね?」
「うん」
「崖から落ちたら普通大怪我するだろ?」
「さすがネコ科だね」
「猫ちゃんお名前は?」
「だから虎だって言ってるのに」
「あら、失礼。虎ちゃん、お名前教えてくれる?」
「そんなもん無いよ」
「名前がねえなんて事ぁねえだろう?」
「俺、親無しっ子なんだ。村の皆んなは親から名前を貰ってるけど、俺に親は居ないから…」
「んじゃあ何て呼ばれてんだよ?」
「「おい」とか「ぼうず」とか言われてる」
「親が居なくてどうしてんだ?」
「長老の家で面倒見てもらってるんだ」
「きっと心配してるわね」
「明日行ってみようよ。虎の坊や」
「名前がねえなんてよ、不便だよな」
「俺だって本当は名前欲しいけど…」
「小虎ちゃん」
「え?」
「嫌?」
《キョトンとして優里花先生を見る獣人族の子供。微笑む優里花先生》
「小虎ちゃんて名前、可愛くないかしら?」
「それが…俺の名前?」
《ポカンと開いた口が段々笑顔になる》
気に入ったみたいだね。
【山道】
《翌日》
「どこまで行くんだよ?だりぃな」
「この先の廃屋だよ」
「ずっと先じゃねえか、だりぃ」
「あの廃屋って、神社かなんかみたいじゃなかったー?」
「あの立ち入り禁止区域のですか?それなら家の親戚の土地ですが」
「ふーん、イヤミ家の土地だったんだー」
「井山家です」
「どっちでも良いじゃーん」
「確か大昔あそこで神事が行われていたと聞いてますが」
それからしばらく奥へと歩いて行くと、やっと廃屋らしい物が見えて来た。
「あれがそうです。近づかないように言われていて、小さい頃行ったきりですが間違い無い」
【廃屋】
「ここか?」
「うん、気がついたらここに居た」
「この辺り何だか変じゃない?見てー」
「歪み…かしら?」
《優里花先生は大河に手を掴まれてビクッとする》
「気をつけて。向こうへ行くなら皆んな一緒じゃないと危ないよ」
「大河の言う通りひと塊になるとしょう」
「ラジャー」
「だりぃ」
「ちょっと、イヤミ。そんなにくっつかなでよー」
「仕方ないでしょう、狭いんだから」
「くっつきたいんでしょうー?」
「ち、違いますっ!」
「うわっ、バカヤロー押すな!」
「うわぁー」
「キャー」
《ドスン!》
「痛えなったあく」
あれ?
ここは…
「小虎君。洞窟ってここ?」
《辺りを見回す小虎》
「あ…うん、そうだよ…たぶん」
「何でたぶんなのよー?」
「だって長老に近づくなって言われてるから、昨日初めて来たんだもん」
「んじゃあ、一人で帰れるな」
「待て、何だかきな臭いと思わないか?」
「んだよイヤミ」
「僕は異常に鼻が良いんだ。これは何かが燃えてる臭い…間違い無い」
「え?まさか俺の村?」
「行ってみましょう」
【洞窟の出口】
《小虎が走る》
「小虎ちゃーん」
【獣人族の村】
《村が燃えている。小虎が走って洞窟から出て来る》
「嘘だ…俺の村が…」
「お前、何してる?!長老が探してたぞ」
「何で村が火事なの?」
「魔族の奴らにやられた。お前もぐずぐずしないで早く逃げろ」
《大河達が来る。獣人族は後ずさる》
「に、人間?!」
「この人達は怖くないよ。俺を助けてくれたんだ」
「エ、エルフの村に、急げ!お、俺は先に行くからな」
《少し後ずさってから走り去る獣人族》
「あれは、あたし達の事怖がってたわねー」
「逃げるように行ってしまったな」
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