3 / 23
第3章 太陽と星
しおりを挟む
【レッスン室】
レッスン室に猫は入れないんだ。
グランドピアノの蓋は軽くて、猫が飛び乗ったりしたら危ないからね。
姉上の事だから「あら~」なんて言っている間に挟まれかねない。
手を怪我したりしたら、大変だ。
でも…「ピアニストだから、包丁は持たないの」なんて言わないよ。
料理もするし、掃除だってする。
「お洗濯は、洗濯機がやってくれるから~そんなに大変じゃないわ~」って家事は全部やる。
僕も手伝うけどね。
そろそろ始めるようだ。
邪魔をしてはいけないから、外に出よう。
アマデウスも、目が離せないしね。
「あら、星ちゃん。聞いてて良いのよ」
葵ちゃんは、そう言ってくれたけど、遠慮した。
葵ちゃんとの時は、時々聞かせて貰う事も有るけど、他の人の時はそうはいかない。
プロだから…邪魔をしてはいけないんだ。
もう既に2人とも物凄いオーラだ…
【オルフェウス学院】
この学校、元はオルフェウス音楽院だったところに普通科が設立されたので、普通科でも音楽教育が盛んなんだ。
普通科は小学校から有り、高校からはどちらか選べるようになっている。
姉上がこの学校に居たのは、小学校まで。
その後は、ザルツブルクやワルシャワに留学していた。
僕は、高校も普通科に通っているんだ。
どうして音楽院に行かないのか?と随分言われたけど、プロになれるのはほんの一握り…
姉上は宇宙 にたった一つの太陽だけど、僕は沢山有る星。
ヴァイオリンもチェロもピアノも弾くけど、これ、って言える物が無いんだ。
父が指揮者なので、棒振りの真似事ぐらいはするけどね。
「キャッ、城咲星君よ」
「どこどこ?」
「ほら、あそこ」
みんなが興味有るのは、僕ではなくて、城咲陽の弟の城咲星。
「キャーステキ」
「今こっち見た」
うるさいから、音楽院の方に行こう。
音楽院の生徒達は、そっとしておいてくれるんだ。
姉上が講師になってからは、尚更ね。
【裏庭】
「約束のお弁当、はい」
「ありがとう…家、洋食屋さんだったよね?」
「ああ、何ですか?その目は…ちゃんと自分で作りましたよ。お父さんに頼んだりしてませんからね」
それにしても…量が多いな…
〈星が卵焼きを口に運ぶと〉
「ど、どうですか?」
「待って、今から食べるところ」
「お口に合うと良いんだけど…」
「ああ、美味しい。甘いのより、こっちの方が好きだな」
「本当ですか?迷ったんだけど、甘い方にしなくて良かった。まあ、いつも店を手伝ってるし、料理ぐらいね。私が本気出せばこんなもんよ」
また、何かブツブツ言い出したぞ…
量が多いと心配したけど、美味しいので完食。
「あ!星何食ってるんだ?俺にもくれ」
「遅い」
「橘さんは、お弁当作ってくれる人居ないんですか?」
「残念ながら…って、2人は、もうそういう関係なのかぁ?!」
「違うって」
「違います」
「ハモってるし」
そういうって、どういうだよ?
「私、この春入学したばかりで、周りは皆んな下から上がって来た子ばっかりだし、まだ友達居なくて」
「そうなんだ…俺も高校からだよ。普通科だけどな。まあ2年にもなれば、友達の1人や2人居るけど」
「ピアノが大好きで、小さい頃から習ってて、ピアノ科に入ったけど、皆んな凄い人ばっかりで、私なんかーって…」
「私なんか、って思うの、良くないと思うよ」
「ああ、そうだよ、俺もそう思う」
「だって、どうやったって、城咲先生みたいに弾けないもん。私才能無いのかなぁ」
「あらあら、才能じゃないのよ。わたくしだって、努力してるんですよ~」
「うわっ、し、城咲陽さん」
〈後ろにひっくり返る健人〉
「い、いつの間に…痛てて」
「大丈夫~?」
「だ、大丈夫です」
「弟のお友達ね、今度うちに遊びにいらっしゃいね~」
「は、はい!」
〈微笑む陽〉
「星君。今日は寄り道しないでお家に帰るのよ。それじゃ、行くわね~」
「行っちゃった…初めて会ったけど…綺麗な人だなぁ…」
「学校で会うの、嫌だな…」
【ピアノ科のレッスン室】
〈扉の前、晴香が入ろうとすると、他の生徒がドン!と晴香にぶつかる〉
「あっ」
「退いてくれる?この部屋私が使うから」
「えー?だって、私が先に」
〈晴香にぶつかる様にして、中に入る女子生徒〉
「ああ、ちょっと、一条さん…酷いー」
「あらあら、朝美さん。こっちにいらっしゃい」
【第1ピアノ教室】
「え?ここ使って良いんですか?」
「時間空いてるから、見てあげます」
「わっ、ありがとうございます!」
〈ピアノの前に座る陽と晴香。楽譜を開く。曲はショパンのエチュードOp10-6〉
「皆んな親が音楽家だったり、凄い人ばっかりで…さっきの一条みやびさんのお母さんも声楽家だし…私のうちは洋食屋で、音楽とは全然関係無くて…」
「音楽家の居ない家から音楽家が出るなんて、良く有る事よ」
「一条さんには、負けたくないです」
「じゃあ、始めましょうか」
「はい!お願いします」
〈晴香はピアノを弾き始める〉
「ここから、もう一度」
〈同じ所を何度も繰り返し弾かされる〉
「もう一度」
「はい」
(普段は優しいけど、レッスンは厳しいのよね…でも、有難い)
「もう一度、ここからね、自分の音を良く聞いて」
レッスン室に猫は入れないんだ。
グランドピアノの蓋は軽くて、猫が飛び乗ったりしたら危ないからね。
姉上の事だから「あら~」なんて言っている間に挟まれかねない。
手を怪我したりしたら、大変だ。
でも…「ピアニストだから、包丁は持たないの」なんて言わないよ。
料理もするし、掃除だってする。
「お洗濯は、洗濯機がやってくれるから~そんなに大変じゃないわ~」って家事は全部やる。
僕も手伝うけどね。
そろそろ始めるようだ。
邪魔をしてはいけないから、外に出よう。
アマデウスも、目が離せないしね。
「あら、星ちゃん。聞いてて良いのよ」
葵ちゃんは、そう言ってくれたけど、遠慮した。
葵ちゃんとの時は、時々聞かせて貰う事も有るけど、他の人の時はそうはいかない。
プロだから…邪魔をしてはいけないんだ。
もう既に2人とも物凄いオーラだ…
【オルフェウス学院】
この学校、元はオルフェウス音楽院だったところに普通科が設立されたので、普通科でも音楽教育が盛んなんだ。
普通科は小学校から有り、高校からはどちらか選べるようになっている。
姉上がこの学校に居たのは、小学校まで。
その後は、ザルツブルクやワルシャワに留学していた。
僕は、高校も普通科に通っているんだ。
どうして音楽院に行かないのか?と随分言われたけど、プロになれるのはほんの一握り…
姉上は宇宙 にたった一つの太陽だけど、僕は沢山有る星。
ヴァイオリンもチェロもピアノも弾くけど、これ、って言える物が無いんだ。
父が指揮者なので、棒振りの真似事ぐらいはするけどね。
「キャッ、城咲星君よ」
「どこどこ?」
「ほら、あそこ」
みんなが興味有るのは、僕ではなくて、城咲陽の弟の城咲星。
「キャーステキ」
「今こっち見た」
うるさいから、音楽院の方に行こう。
音楽院の生徒達は、そっとしておいてくれるんだ。
姉上が講師になってからは、尚更ね。
【裏庭】
「約束のお弁当、はい」
「ありがとう…家、洋食屋さんだったよね?」
「ああ、何ですか?その目は…ちゃんと自分で作りましたよ。お父さんに頼んだりしてませんからね」
それにしても…量が多いな…
〈星が卵焼きを口に運ぶと〉
「ど、どうですか?」
「待って、今から食べるところ」
「お口に合うと良いんだけど…」
「ああ、美味しい。甘いのより、こっちの方が好きだな」
「本当ですか?迷ったんだけど、甘い方にしなくて良かった。まあ、いつも店を手伝ってるし、料理ぐらいね。私が本気出せばこんなもんよ」
また、何かブツブツ言い出したぞ…
量が多いと心配したけど、美味しいので完食。
「あ!星何食ってるんだ?俺にもくれ」
「遅い」
「橘さんは、お弁当作ってくれる人居ないんですか?」
「残念ながら…って、2人は、もうそういう関係なのかぁ?!」
「違うって」
「違います」
「ハモってるし」
そういうって、どういうだよ?
「私、この春入学したばかりで、周りは皆んな下から上がって来た子ばっかりだし、まだ友達居なくて」
「そうなんだ…俺も高校からだよ。普通科だけどな。まあ2年にもなれば、友達の1人や2人居るけど」
「ピアノが大好きで、小さい頃から習ってて、ピアノ科に入ったけど、皆んな凄い人ばっかりで、私なんかーって…」
「私なんか、って思うの、良くないと思うよ」
「ああ、そうだよ、俺もそう思う」
「だって、どうやったって、城咲先生みたいに弾けないもん。私才能無いのかなぁ」
「あらあら、才能じゃないのよ。わたくしだって、努力してるんですよ~」
「うわっ、し、城咲陽さん」
〈後ろにひっくり返る健人〉
「い、いつの間に…痛てて」
「大丈夫~?」
「だ、大丈夫です」
「弟のお友達ね、今度うちに遊びにいらっしゃいね~」
「は、はい!」
〈微笑む陽〉
「星君。今日は寄り道しないでお家に帰るのよ。それじゃ、行くわね~」
「行っちゃった…初めて会ったけど…綺麗な人だなぁ…」
「学校で会うの、嫌だな…」
【ピアノ科のレッスン室】
〈扉の前、晴香が入ろうとすると、他の生徒がドン!と晴香にぶつかる〉
「あっ」
「退いてくれる?この部屋私が使うから」
「えー?だって、私が先に」
〈晴香にぶつかる様にして、中に入る女子生徒〉
「ああ、ちょっと、一条さん…酷いー」
「あらあら、朝美さん。こっちにいらっしゃい」
【第1ピアノ教室】
「え?ここ使って良いんですか?」
「時間空いてるから、見てあげます」
「わっ、ありがとうございます!」
〈ピアノの前に座る陽と晴香。楽譜を開く。曲はショパンのエチュードOp10-6〉
「皆んな親が音楽家だったり、凄い人ばっかりで…さっきの一条みやびさんのお母さんも声楽家だし…私のうちは洋食屋で、音楽とは全然関係無くて…」
「音楽家の居ない家から音楽家が出るなんて、良く有る事よ」
「一条さんには、負けたくないです」
「じゃあ、始めましょうか」
「はい!お願いします」
〈晴香はピアノを弾き始める〉
「ここから、もう一度」
〈同じ所を何度も繰り返し弾かされる〉
「もう一度」
「はい」
(普段は優しいけど、レッスンは厳しいのよね…でも、有難い)
「もう一度、ここからね、自分の音を良く聞いて」
0
あなたにおすすめの小説
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる(イケメンエリートシリーズ第四弾)
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
そのイケメンエリート軍団のキャップ的存在
唯一の既婚者、中山トオルの意外なお話
中山加恋(20歳)
二十歳でトオルの妻になる
何不自由ない新婚生活だが若さゆえ好奇心旺盛
中山トオル(32歳)
17歳の加恋に一目ぼれ
加恋の二十歳の誕生日に強引に結婚する
加恋を愛し過ぎるあまりたまに壊れる
会社では群を抜くほどの超エリートが、
愛してやまない加恋ちゃんに
振り回されたり落ち込まされたり…
そんなイケメンエリートの
ちょっと切なくて笑えるお話
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
旅は道連れ、世は情け?と言われて訳あり伯爵家の子息のパートナーになりました
さこの
恋愛
両親を亡くし、遺品整理のため王都を訪れたブランシュ。
手放すはずだったアンティークをきっかけに、ひょんなことから伯爵家の跡取り・ユーゴと出会う。
無愛想で口が悪く、女性に冷たいその男は、なぜかブランシュの世話を焼き、面倒事にも付き合ってくれる。
王都ではかつて「親友に婚約者を奪われ、失恋して姿を消した男」と噂されていたユーゴ。
だがその噂は、誰かの悪意によって作られた嘘だった。
過去の誤解。すれ違い。
そして少しずつ見えてくる、本当の彼の姿。
気づけばブランシュは思ってしまう。
――この人は、優しすぎて損をしている。
面倒くさがりな伯爵子息と、無自覚な令嬢の、
すれ違いだらけの甘め異世界ラブコメディ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる