『ショパンへのオマージュ』“愛する姉上様”

大輝

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第18章 冬休み

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【城咲家 陽の部屋】

〈掃除をする陽〉

「窓の掃除は、僕がするからね」

「そのぐらい、わたくしだって出来るわよ~」

「ダメダメ、危ないから僕がやるよ」

「フフフ」

今日は、大掃除だ。

僕の部屋はもう終わったから、次は姉上の部屋。

「危ないから、ニコロ達連れて行って」

「は~い皆んな。こっちにいらっしゃ~い」

「ニャー」

「ミャー」

「ワンワーン」

「ニコロは、犬か」

「猫よね~」

【キッチン】

〈料理をする陽。星が来る〉

「ランラン、ランラン、フフ♪♪」

姉上は、鼻歌なんか歌って楽しそうに料理してる。

今日は12月28日、そろそろ御節の準備だ。

29日はしてはいけないから、今日出来なかったら明後日だな。

「黒豆って、シワにならないように煮るの、難しいのよね~」

僕は、サケの頭を切って昆布巻きを作っている。

御節なんて、切るだけの物が多いから準備は簡単だ。

「コラコラ、アマデウス。これは味がついてるから食べられないよ」

あれ?フレデリクが居ない。

【レッスン室】

〈ソファの上で眠るフレデリク〉

レッスン室には猫は入れないんだけど、扉が開いてたんだな。

「フレデリク。あっち行こうな」

「この子は、大人しく寝ているだけだから良いわよ」

起きてピアノに飛び乗ったりすると危ないから、僕が見てよう。


「良い子に寝んねしててね~」

〈微笑む陽。ピアノの前に座り弾き始める。曲はショパンのマズルカOp67-3〉

マズルカの中で、この曲が一番好きだな。

フレデリクも、気持ち良さそうに寝ている。

【ダイニング】

〈お蕎麦を食べる陽と星〉

「年越し蕎麦なんて、久しぶりでしょう」

「何年ぶりかしら?」

「ああ、眠くなってきちゃった」

「お行儀悪いわよ」

【神社】

元旦は、姉上と葵ちゃんと3人でお参り。

2人とも着物で綺麗だ。

僕も着物だけどね。

それにしても、この2人…

一緒に来る男って、僕の他に居ないのかな?

帰り道、開いてるのは喫茶と甘味屋さんぐらいなもんだ。

3人でぜんざいを食べて帰った。

【星の部屋】

2日は、掃除も洗濯もしちゃいけないから、何をしようかな…?

〈CDの棚を見る星〉

ああ、休みは暇だ…

〈CDをかける。曲はブルッフのヴァイオリンコンチェルト〉

ブルッフのコンチェルト好きだな…

美月さんが弾いてくれれば、何でも好きになるけど…

僕の憧れのヴァイオリニスト七瀬美月さんの演奏だ。

僕より2つ年上なんだけど、10才の時にアメリカに渡り、演奏活動をしていて、今は、ボランティアで世界中をまわっている。

祈るような表情で演奏する彼女の音楽は、ダイナミックで繊細で…

限りなく美しい。

映画を見ているようにストーリーを感じる。

楽しかったり、切なくなったり…

ときめくんだけど…

この気持ちって恋に似ているのかな?

恋って、まだ良くわからない。

僕は確かに彼女の演奏に恋してるけど…

彼女自身も、とっても魅力的な人で、彼女に恋してるような気持ちになってしまう。


「星君…あ、美月ちゃんのCDを聞いている時は、何を言ってもダメかしらね」

「え?大丈夫だよ。何?」

「別に大した事じゃないから、後で良いわ」

〈行きかけて戻って来る〉

「そう言えば…言って無かったかしら…?今年美月ちゃんの日本公演で共演するのよ」

「ふーん…って、え?本当?!」

「フフフ、喜ぶと思ったわ」

言って無かったかしら、って、いつもの事だけど、もう、お姉様、いい加減にして~

そういう事は、早く言ってよ。

「ヴァイオリン弾きたくなってきた?」

「ならない、ならない」

「は~い、ちょっといらっしゃ~い」

【レッスン室】

〈ヴァイオリンのチューニングをする星。ピアノの前に座る陽〉

聞いてる方が良いんだけどな…

「シュニトケのソナタ1番ね」

「はい」

〈演奏が始まる。曲はシュニトケのヴァイオリンソナタ第1番〉

僕は本当に練習嫌いだ。

これでは音楽家にはなれないよ。

「全ての音を、綺麗な音で弾こうと思わないと、ただ音を出しているだけではダメよ」

「はい」

「もう一度ね」

美月さんのような音を出せれば良いんだけど…

そうだよな、僕は小さい頃から本物の音を聞いて育ったんだから…

〈ピアノを弾く陽、少し微笑んで〉

(音が綺麗になってきたわ。でも、もう少し黙っていましょう)

(そうよ…最後までそういう音で弾くのよ…あ)

「待って、そこからもう一度」

1人で弾いている時と全然違うな。

やっぱり姉上のピアノに刺激されて変わっていくのが自分でもわかる。


【商店街】

御節料理にも飽きたし、今日は何食べようかな…

「城咲君」

あ、桜井さんだ。

あの日「好き」って言われちゃったけど…どうしよう…

「どこ行くの?」

「そこのスーパーだよ」

「私も一緒に行って良い?」

「良いけど」

わっ、腕を組まれてしまった。今の関係を壊したくないんだよな….どうしたら良いんだろう?

【スーパー】

コンニャクと蓮根は有るから、干し椎茸と絹さや…人参とゴボウ。

「何作るの?」

「筑前煮」

「美味しそうね。私は、何作ろうかしら…?」

「後は鶏肉だな」

「私は、ひき肉と干し椎茸と玉ねぎ」

「ハンバーグ?」

「当たり。今度、城咲君にも作ってあげるね」

彼女は、嬉しそうにそう言った。

「ヒラメの良いのが有るな」

「お魚も美味しそうね。1人だと、一度に買えないのよね」

「そうだね」

「賞味期限に追われて大変」

「僕も1人の時はそうだったよ」

「ご両親も、ウィーンでしょう?城咲先生が留学してた時は1人?」

「うん。ずっとじゃないけどね」

「子供なのに1人って…」

「中学生までは、母親が居たよ」

「じゃあ、高校から?」

「中学3年から。隣の家に叔母が居るからね」

「なるほどね。もっと早く会いたかったわ。そしたらお料理とか作ってあげたのに」

料理を作ってくれるのは、嬉しいよな、やっぱり。

そう言えば、美月さんも料理をするんだった。

共演者にお弁当を作る、って話を聞いた事が有る。

何だかちょっと焼けるぞ。


【城咲家のキッチン】

〈料理を作る星〉

今日の夕食は、ヒラメの刺身と筑前煮と大根の味噌汁に春菊のおひたしだ。

う、猫達の視線を感じる…

「お姉様。アマデウスがお刺身狙ってるから、気をつけて」

「星君助けて~」

しまった。

刺身は、最後に運ぶんだった。

【ダイニング】

〈陽の足元に、フレデリクとニコロ。膝の上でアマデウスが暴れる〉

「アッ君ダメよ~」

「アマデウスは、噛むからな」

僕は、姉上の膝で暴れるアマデウスを捕まえた。

姉上の手を噛んだら大変だ。

僕なんか、しょっちゅう噛まれて出血している。

「痛っ」

ほら、やられた。

「あらあら、星君。血が出てるわ」

姉上が、薬をつけて絆創膏を貼ってくれた。

噛まれたのが僕で良かったよ。

アマデウスが僕の手に頭を擦り擦りしたり、なめたりしている。

ゴメンゴメン、って言ってるんだ。

【レッスン室】

〈ピアノを弾く陽。フレデリクを抱いて聞いている星〉

何だろう…この曲…?

即興演奏…かな?

この頃フレデリクは、レッスン室の扉を開けて入って来るんだ。

大人しくしているから大丈夫、って姉上は言うけど、ピアノに飛び乗ったりするなよ。

わかっているみたいで、近づいたりしないんだけどね。

〈ピアノを弾く陽〉

今度は、ラフマニノフだ。

第2コンチェルト。

トゥッティの部分を弾いている。

今度は、ソロだ。

フレデリクは、眠ってしまった。

α波が出てるのかな?

僕も眠くなってきた…


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