『ショパンへのオマージュ』“愛する姉上様”

大輝

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第20章 風邪だけど何だか幸せ

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【城咲家のリビング】

どこだったかな…

薬箱…あ、有った。

えっと…

「ゴホッ、ゴホッ」

「あらあら、星君風邪?」

〈星の額に手を当てる陽〉

「少し熱いわ、熱が有るみたいよ」

「有った。漢方薬飲めば治るよ」

【キッチン】

〈漢方薬をお湯に溶いて飲む星〉

「病院に行った方が良いかしら?」

「大丈夫だよ。今薬飲んだし」

「ちゃんとお熱測ってみて」

〈体温計を渡す陽。星は体温を測る〉

「7度3分、微熱だよ」

「風邪には睡眠と栄養。それから水分もちゃんと取らないと」

「うん。紅茶に生姜を入れて飲むから」

「お夕食は、わたくしが作るわ。お買い物行って来るから、大人しくしてるのよ~」

って…行っちゃった。

大丈夫だろうか?

いや…僕の風邪より…姉上の買い物…

買い物は、いつも僕がしている。

また、持てないほど買って、電話がかかって来たりして…

まあ、病院に連れて行かれるのは嫌だし、ここは言う事を聞いて大人しくしてるか。

僕は、病院も薬も嫌いだ。

このぐらいの風邪なら、いつも漢方薬で治すんだけど、姉上が大げさなんだよな…

それにしても…姉上の買い物って…

〈紅茶に生姜とハチミツを入れる〉

シナモン有ったよな…

あ、ここだ。

〈シナモンを入れて飲む〉

ああ、温まるな…

【ドラッグストアー】

(熱を冷ますシートって、どこかしら…?)

〈通路をウロウロ…〉

(聞いた方が早いかしら…?)

〈ウロウロ〉


「こちらの棚にございます」

「あ…ありがとうございました」

(えっと…有ったわ。どれを買ったら良いのかしら…?聞けば良かったわ)

〈適当にカゴに入れてウロウロ〉

(それから…ビタミンCの入った飲み物ね…星君が好きそうなのは…)

【城咲家のリビング】

どこまで行ったんだろう?

ちゃんと冷蔵庫見て行ったのかな?

【スーパー】

(栄養の有る物…でも、胃に負担のかからない物が良いかしら?卵は…どこ?)

〈卵を探してウロウロ〉

(有ったわ。卵と…鶏肉と…おうどんはどこかしら…?あ…こっちね)

〈うどんをカゴに入れてウロウロ〉

(フルーツも買わないと)

〈ウロウロ〉

(キュウイ…バナナ…オレンジ…あの子メロンはあまり好きじゃないのよね…)

【城咲家のリビング】

いったい、どこまで行ったんだ?

養鶏場まで卵買いに行ったか?

産むの待ってたりして。

「新鮮なのが良いと思ったのよ~」って…姉上なら有り得るな。

〈窓の外を見る星。外は雪〉

じっとしてろって言うのか?

姉上の方が心配だよ。

僕は大丈夫なのに…

「ミャー」

「ニャー」

「ワンワーン」

だいたいスーパーに行った事なんて無いのに…

小さい頃から、一日中ピアノに向かってるんだから…

ああ、家で心配してる方が具合が悪くなるよ。

姉上が一人で買い物に行ってるなんて、考えただけで…コワイ。


【スーパーのレジ】

「大丈夫ですか?お持ちしますね」

「ありがとうございます」

「いえいえ」

【城咲家のダイニング】

うーん心配だ。

ピアニストだからとかじゃなくて…あのド天然の姉上だから…

だいたいスーパーのどこに何が有るかもわからないだろうし…

僕も初めはそうだったんだから。

〈車のライト。猫達が玄関に向かう〉

帰って来た…

ホッ…としてる場合じゃなかったりして…

〈玄関に向かう星〉

【玄関】

〈扉を開けると、陽が袋を持って来る〉

「あらあら、出て来なくても良いわよ。寒いから入ってなさい」

「大丈夫だよ」

〈車から荷物を運ぶ2人〉

「僕が運んだ方が早いから」

「軽いのは持てるわよ」

どこに軽い袋が有るんだ~

ハハ…

予想はしてたけどね…

はぁ…いったいどれだけ買ったんだよ…

【キッチン】

「家で心配してるより、一緒に行けば良かったよ。あー心配で風邪が悪化した」

「何をそんなに心配するのよ~失礼ね。一人でお買い物ぐらい行けるわ」

〈買って来た物を袋から出す陽。呆れて見ている星〉

「本当はね、何がどこに有るのかわからなかったの。でもお買い物って楽しいわね~」

って満面の笑みだけど…や・め・て…

「これ…全種類買ったの?」

「あ…それね、どれが良いのかわからなくて…」

で、全種類買ったのね…熱を冷ますヤツ…

あ…熱…出てきた…


「ジュースもこんなに沢山」

「星君、スポーツドリンク良く飲んでるでしょう?どれだかわからなくて」

って、嬉しそうに言うけどね…

色々有るぞ…ビタミンC入りのジュースも有る。

〈ジュースをしまう星〉

これは何だ?

生姜湯に葛湯…

〈キッチンには食材の山〉

いったい何を作る気だあ…

冷蔵庫見ないで行っただろ。

あ…頭痛くなってきた…

「スープにする?それともおうどんが良いかしら?」

嬉しそうだね、ハハ…

これだけ食材が有れば、何でも出来そうだぞ。

「鍋にする?うどん入れて」

「そうね、そうしましょうか」

待て待て、姉上が作ると闇鍋になりそうだぞ。

ま、まあ、大丈夫か。

切るだけだしね。

「切って~」

だから切るだけだから…

って…あ…

「サムゲタンを作ろうと思ったのよ~」

で、鶏肉…丸ごと一羽ね。

本当に、熱出そう。

はあ…高麗人参も有るしね…

結局僕が鶏肉切ってます。

「ニャー」

「はいはい、あなた達もご飯ね~」

「ミャー」

「ワーオン」

姉上は、猫達にご飯をあげたら、隣で野菜を切り始めた。

フッ…なんだかんだ言っても、2人で料理をするのは楽しいな。

切るだけだけどね~


【ダイニング】

〈鍋料理を食べる陽と星〉

「しっかり食べて、早く風邪を治しなさいね」

「うん」

「今日は、早めに休みなさい」

「ピアノ聞いたら治るから」

「え~?フフフ」

「後片付けは、わたくしがするわね」

「良いよ。手が荒れるから」

「良いわよ」

「良くない。ピアニストの手荒れなんて嫌だよ」

「手袋が有るもの」

「僕がやった方が早いから」

【キッチン】

良い、って言うのに、結局2人で洗ってる。

食洗機は使わないんだ。

手袋有って良かったよ。

姉上の手が荒れるなんて嫌だよな…

「お薬飲むの忘れないで」

「あ、そうだった」

「ほらほら」

【レッスン室】

〈ピアノを弾く陽。曲はドビュッシーの月の光〉

今日もフレデリクが来た。

「これを聞いたら寝るのよ」

「もう、風邪治った」

「そんな事言って…」

音楽で癒されるって、本当に有ると思うんだ。

僕は、姉上のピアノを聞いている時が一番幸せだ。

特に、こうして独り占めしている時がね。

あ、フレデリクも居るけど、この子は特別。

〈フレデリクの頭を撫でる星。ピアノを弾く陽。曲はドビュッシーの夢〉

気持ち良さそうに寝てるな、いつも。

僕も眠くなってきた…

お姉様のピアノ大好きだよな、フレデリク。


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