16 / 26
第16章 それぞれの身の上
しおりを挟む
【アッサムの屋敷】
「ミャー」
「良し良し、良い子だ」
〈猫を抱くアッサム。アッサムに甘える猫〉
この子の名前は、アポロン。
修道院の猫の名前は、アルテミス。
太陽と月…
太陽と月は、同時に我々の目に触れる事も有るが、ほんのわずかな時しか無い。
滅多に会えない私とローズマリーのようだ。
あれから何日過ぎたのだろう…
会えない時間は、途轍もなく長い時のように感じる。
〈猫を抱いて窓の外を見るアッサム〉
だいぶ雪が少なくなったな。
あの白い老竜は、どうしただろう?
【騎士団】
「アッサム。また出世したな。白竜は取り逃がしたと言うのにな」
「ナイト・キャラウェイ」
「私が代わりに塔へ行って、仕留めて来てやるか」
「キャラウェイ殿。今はもう、塔で白竜の目撃情報は有りませんよ。それに、口の利き方に気をつけた方が宜しいのでは?今は、アッサムの方が地位が上なのですから」
「己…」
「ルバーブ」
「気にするなアッサム。あ、いや、私も口の利き方に注意せねば」
「やめてくれ」
地位や身分など邪魔になるだけだ。
身分を持たぬ騎士達も大勢居る。
ナイトの家柄に生まれなければ、身分など無かったものを…
【アッサムの屋敷】
〈ローズマリーの手紙を読み返すアッサム〉
「私は、生まれてすぐに両親を亡くし、修道院に引き取られたのです。
修道院が私の家。
院長様や、他の修道女が家族なの。
そして、猫のアルテミスも大切な家族。
私達修道女は、ここで一生この家族達と暮らすのですよ」
修道女は、一生、恋も結婚もせず修道院で暮らすのだと言うが…
恋とは、しようと思ってするものではない。
してはいけないと思っても、自分にもどうしようもなくて…
魂が勝手に惹かれてしまう。
本当の恋とは、こういう物なのだと…私は知った。
【アルマンドの酒場】
〈大勢の客で賑わう酒場。騒ぐ男達。ドアが開く〉
「よう、アッサムさん。酒場に来るなんて珍しいな」
「バジルこそ、それほど呑めもしないのに酒場か」
「タイムみたいに酒豪じゃねえけど呑めるよ。ここは飯も美味いしな」
たまには来てみるものだな。
少し酒の回ったバジルが、身の上話しを始めた。
「俺はみなしごで、5才の時に、武闘家の師匠に拾われたんだ。爺さんは、俺に、自分の持てる技全てを教え込んで死んじまった」
「そうだったのか」
「ああ…また今度、酔ってない時に、ゆっくり話して聞かせてやるよ。ファー…眠くなってきた…」
【ギルドの魔獣の小屋】
〈自動餌やり機から燻された肉が出て来る。肉を食べるルナとミストラル〉
「ちゃんと噛んで食べるんだよ」
「ガウー」
「ガォー」
「今日は、タイム1人か」
「うん。バジルはセージさんと一緒に、発明の材料になる物を探しに行ったよ」
ミントは、ギルドの受け付けだな。
「最近、カモミールおばさんが、良くご飯に誘ってくれるんだ」
「そのようだな。タイムもバジルもミントも、皆んなうちの子みたいなもんだ、と言っていた」
「本当?嬉しいな」
「ガゥガゥ」
「ガォガォ」
「僕ね、小さい時、傭兵だった父さんが戦死して、母さんは出て行ったっきり帰らなくて、親戚を頼って暮らしてたんだけど、居辛くて出て来ちゃったんだ」
「そうか、大変だったな」
「母さん…まだ、どこかで生きてるのかな…?小さい頃別れたっきりだから、良く覚えてないや。カモミールおばさんみたいな人なら良いんだけどな」
【ギルド・レ・シルフィード】
「それは、2年前の冬の話しです」
「何の話しだ?ミント。俺にも聞かせろよ」
「ミントが、初めてこの町に来た日の話しを聞いてるんだよ」
「私、それまで伯爵家の小間使いをしてたんですけど、お屋敷で酷い目にあって、飛び出して来たんです」
「だいたい貴族なんて奴らは、俺達を人とも思ってねえからな」
「バジル」
「いけねえ…すまん。アッサムさんも貴族だった」
「いや、構わんよ」
本当に、身分など無ければどれほど楽か…
「貴族が皆んなアッサムさんみたいなら、良いのにね」
「私は、もう貴族のお屋敷にお支えするのは、死んでも嫌です」
この子の身に、どれほど辛い事が有ったと言うのだろう…?
あれは、私が正騎士になってまだ間も無い頃だった…
【伯爵家】
〈小間使いの手に触り、肩を抱く伯爵〉
「おやめ下さい、旦那様」
「良いではないか、ミント」
〈伯爵は、ミントの服を破る〉
「嫌!」
「待てと言っておるのに」
「嫌です!やめて!」
「金が欲しいか?なら、言う事を聞くのだな」
〈必死で抵抗して屋敷を出るミント〉
【屋敷の外の道】
〈雪が降っている。振り返りながら走るミント〉
「あっ…」
〈靴か脱げる。屋敷を振り返り、裸足で走るミント〉
「夜が明けてきたわ…とにかく、出来るだけ遠くへ逃げないと…」
【海辺】
「お願いです。その船に乗せて下さい」
「どこまで行きたいんだ?」
「どこでも良いから、遠くへ」
【アルマンド城下町南門】
〈町へ入ろうと、大勢の人が並んでいる。その中にミントの姿が有った。破れた服に、裸足で震えるミント〉
(町に入れてもらえるかしら…?)
「お前達は、家族か?」
〈子供が、ミントと手を繋ぐ。子供の顔を見るミント〉
「はい、家族です」
「良し、通れ」
〈前の家族に紛れて町の中へ入るミント〉
「ありがとうございました」
「良いんだよ」
(大きな町ね…どこか、働ける所が有ると良いけど…)
【宿屋】
「何でもしますから、働かせて下さい」
「悪いね。雇ってやりたいんだけど、今人手は足りてるんだよ」
「そうですか…」
【酒場】
「お前さんに、酒呑みや、荒くれ男の相手が務まるとは思えないね。悪い事は言わないよ、他を当たりな」
「お願いです。皿洗いでも何でもします」
「そう言われてもな…悪いね」
【城下町】
〈フラフラと歩くミント〉
(お腹が空いた…お金も無いし、伯爵家の人に見つかって、連れ戻されるのは嫌だわ)
【橋の上】
〈川の流れを見つめるミント。雪が降ってくる〉
(旦那様に抱かれるぐらいなら…死んだ方がまし)
〈橋の欄干に登る〉
(そうよ…死のう…)
〈飛び込もうとした時、抱き抱えられる〉
「川の水は冷たいぞ。やめておけ」
「離して!」
「川に入るなら、夏に限る」
〈橋から下ろし見ると服が破れている。アッサムは、自分のマントをミントにかける〉
何が有ったのかは知らんが、放っておくわけにはいかん。
「あ…貴方も…私の体がお望みなの?」
「何を言っている」
「だって、貴方も貴族でしょう?」
「ああ、だが一番下の身分ナイトだ」
「貴族なんて、皆んな同じよ!離して!」
「良いから来い」
「嫌よ!離して!」
【コリアンダーのサロン】
「寒かったでしょう。私ので良かったら、これに着替えて」
「ありがとうございます」
「着替えたらヒーリングするから、そこに寝てね」
「はい…」
「アッサムは、出てなさいよね」
「あ…そうだな…わかった」
【キッチン】
「さあ、温かい物でも食べて。嫌な事はみんな忘れちまいな」
「ギルドを立ち上げたばかりで、人手が必要でな、手伝ってはくれぬか?」
「…」
「大丈夫よ。アッサムなら…女の子に興味が無いんだかなんだか…鈍感だし」
「う…うう…」
「あ、何か…まずい事でも言ったかな?」
「うわーん…あん、あん…」
そんなに泣かれては、どうして良いか…
「コリアンダー、助けてくれ」
【ギルド・レ・シルフィード】
「それで、ギルドで雇って頂いて、今日までお世話になってるわけですよ」
「そんな大変な事が有ったのか….」
「私は、だいたい聞いてたけど…良く皆んなに話す気になったわね」
「ずっと忘れたかったんですけど…お話し出来てスッキリしました」
「嫌な事は、無理に話さなくても良い」
「マスターは、何も聞かずに優しくして下さって…いつかはお話ししないと、って思ってたんです」
【道具屋】
「アッサムちゃん。もう傷は治ったかい?どれ、見せてご覧」
〈アッサムの腕を引っ張るカモミール〉
「だいぶ良くなったね、でも、ちゃんと薬をつけないと治らないからね」
カモミールおばさんは、そう言うと、薬を塗ってくれた。
幼い頃から、喧嘩をしたり、ペイジの修行でケガをすると、良くこうして薬を塗ってくれたものだ。
「本当に、身分の違いさえ無ければ、うちのコリアンダーを嫁に貰ってほしいよ」
「…」
「おや、いけない。これは言わない約束だったね…ほら、終わったよ」
薬を塗ると、ポンと叩いた。
「ありがとう」
(本当に、アッサムちゃんは…コリアンダーの気持ちはわかってるだろに…全く、朴念仁なんだから)
「コリアンダーほどの器量なら、いくらでも相手は居るだろうに」
「アッサムちゃん!だからあんたは朴念仁だ、って言うんだよ!」
そう、怒鳴らなくても…
「全く。ちっちゃい頃からあの子は…ブツブツ…で…あんたの事が…ブツブツ…て言うのに…」
またいつものブツブツが始まった。
何をブツブツ言っているのだろう?
「お母さん。もうそのぐらいで解放してあげたら~?」
セージの助け船だ。
逃げるとするか…
「アッサムー」
いかん、コリアンダーに見つかった。
【コリアンダーの部屋】
〈ワインを出すコリアンダー〉
「開けて」
〈ワインを開けて注ぐアッサム〉
「さーて、呑むわよー」
そして、酒が回ってくると、またいつもの幼い頃の話しが始まった。
「アッサム、小さい時は弱かったわよねー」
「いつの話しをしている」
「初めて会った時よ」
「あの時はまだペイジになったばかりだった」
【町の裏通り】
〈武具を抱えて歩く7才のアッサム。通りの脇から、十代の少年5人が出て来て取り囲む〉
「貴族の坊ちゃんが、こんな所を1人で歩いてやがる」
「金貨持ってたら、出せよ」
「持っていない」
「嘘言うな、出せ」
「無いなら、その武具をよこせ。売れば金になる」
「これは、大事な物だ。渡せない」
「なら、力ずくで奪うしかねえな」
〈剣に手をかけるアッサム〉
「お、何だ?剣を抜くのか?」
「一般市民に、剣を振り翳す気か?」
「お前達のような者を相手に、剣は抜かない」
「やっちまえ!」
「おう!」
〈取っ組み合いをする6人〉
「あんた達!何やってるのよ!」
〈ペンキ玉を投げつける〉
「うわ」
「くそ、逃げろ」
〈ペンキまみれになって、走って逃げる少年達〉
「ちょっと、大丈夫?貴方ペイジでしょ、どうしてやられっぱなしなのよ。その剣は飾り?」
「…」
「酷いケガ…うちに来て」
【道具屋】
〈アッサムのケガに薬を塗るカモミール。ヒーリングするコリアンダー〉
「お兄ちゃんが作ったペンキ玉を持ってて、良かった」
「はいよ。終わったよ、アッサムちゃん」
【コリアンダーの部屋】
「あの時貴方、騎士になったら、今度は私がお前を守ってやる、って言ったわよね」
「ああ」
「ちゃんと守ってよね」
「わかっている」
「先に死んだりしないでよ」
「もう、そのぐらいにしておけ」
〈アッサムは、コリアンダーからワインを取り上げる〉
「まーだ、呑むわよ」
「ミャー」
「良し良し、良い子だ」
〈猫を抱くアッサム。アッサムに甘える猫〉
この子の名前は、アポロン。
修道院の猫の名前は、アルテミス。
太陽と月…
太陽と月は、同時に我々の目に触れる事も有るが、ほんのわずかな時しか無い。
滅多に会えない私とローズマリーのようだ。
あれから何日過ぎたのだろう…
会えない時間は、途轍もなく長い時のように感じる。
〈猫を抱いて窓の外を見るアッサム〉
だいぶ雪が少なくなったな。
あの白い老竜は、どうしただろう?
【騎士団】
「アッサム。また出世したな。白竜は取り逃がしたと言うのにな」
「ナイト・キャラウェイ」
「私が代わりに塔へ行って、仕留めて来てやるか」
「キャラウェイ殿。今はもう、塔で白竜の目撃情報は有りませんよ。それに、口の利き方に気をつけた方が宜しいのでは?今は、アッサムの方が地位が上なのですから」
「己…」
「ルバーブ」
「気にするなアッサム。あ、いや、私も口の利き方に注意せねば」
「やめてくれ」
地位や身分など邪魔になるだけだ。
身分を持たぬ騎士達も大勢居る。
ナイトの家柄に生まれなければ、身分など無かったものを…
【アッサムの屋敷】
〈ローズマリーの手紙を読み返すアッサム〉
「私は、生まれてすぐに両親を亡くし、修道院に引き取られたのです。
修道院が私の家。
院長様や、他の修道女が家族なの。
そして、猫のアルテミスも大切な家族。
私達修道女は、ここで一生この家族達と暮らすのですよ」
修道女は、一生、恋も結婚もせず修道院で暮らすのだと言うが…
恋とは、しようと思ってするものではない。
してはいけないと思っても、自分にもどうしようもなくて…
魂が勝手に惹かれてしまう。
本当の恋とは、こういう物なのだと…私は知った。
【アルマンドの酒場】
〈大勢の客で賑わう酒場。騒ぐ男達。ドアが開く〉
「よう、アッサムさん。酒場に来るなんて珍しいな」
「バジルこそ、それほど呑めもしないのに酒場か」
「タイムみたいに酒豪じゃねえけど呑めるよ。ここは飯も美味いしな」
たまには来てみるものだな。
少し酒の回ったバジルが、身の上話しを始めた。
「俺はみなしごで、5才の時に、武闘家の師匠に拾われたんだ。爺さんは、俺に、自分の持てる技全てを教え込んで死んじまった」
「そうだったのか」
「ああ…また今度、酔ってない時に、ゆっくり話して聞かせてやるよ。ファー…眠くなってきた…」
【ギルドの魔獣の小屋】
〈自動餌やり機から燻された肉が出て来る。肉を食べるルナとミストラル〉
「ちゃんと噛んで食べるんだよ」
「ガウー」
「ガォー」
「今日は、タイム1人か」
「うん。バジルはセージさんと一緒に、発明の材料になる物を探しに行ったよ」
ミントは、ギルドの受け付けだな。
「最近、カモミールおばさんが、良くご飯に誘ってくれるんだ」
「そのようだな。タイムもバジルもミントも、皆んなうちの子みたいなもんだ、と言っていた」
「本当?嬉しいな」
「ガゥガゥ」
「ガォガォ」
「僕ね、小さい時、傭兵だった父さんが戦死して、母さんは出て行ったっきり帰らなくて、親戚を頼って暮らしてたんだけど、居辛くて出て来ちゃったんだ」
「そうか、大変だったな」
「母さん…まだ、どこかで生きてるのかな…?小さい頃別れたっきりだから、良く覚えてないや。カモミールおばさんみたいな人なら良いんだけどな」
【ギルド・レ・シルフィード】
「それは、2年前の冬の話しです」
「何の話しだ?ミント。俺にも聞かせろよ」
「ミントが、初めてこの町に来た日の話しを聞いてるんだよ」
「私、それまで伯爵家の小間使いをしてたんですけど、お屋敷で酷い目にあって、飛び出して来たんです」
「だいたい貴族なんて奴らは、俺達を人とも思ってねえからな」
「バジル」
「いけねえ…すまん。アッサムさんも貴族だった」
「いや、構わんよ」
本当に、身分など無ければどれほど楽か…
「貴族が皆んなアッサムさんみたいなら、良いのにね」
「私は、もう貴族のお屋敷にお支えするのは、死んでも嫌です」
この子の身に、どれほど辛い事が有ったと言うのだろう…?
あれは、私が正騎士になってまだ間も無い頃だった…
【伯爵家】
〈小間使いの手に触り、肩を抱く伯爵〉
「おやめ下さい、旦那様」
「良いではないか、ミント」
〈伯爵は、ミントの服を破る〉
「嫌!」
「待てと言っておるのに」
「嫌です!やめて!」
「金が欲しいか?なら、言う事を聞くのだな」
〈必死で抵抗して屋敷を出るミント〉
【屋敷の外の道】
〈雪が降っている。振り返りながら走るミント〉
「あっ…」
〈靴か脱げる。屋敷を振り返り、裸足で走るミント〉
「夜が明けてきたわ…とにかく、出来るだけ遠くへ逃げないと…」
【海辺】
「お願いです。その船に乗せて下さい」
「どこまで行きたいんだ?」
「どこでも良いから、遠くへ」
【アルマンド城下町南門】
〈町へ入ろうと、大勢の人が並んでいる。その中にミントの姿が有った。破れた服に、裸足で震えるミント〉
(町に入れてもらえるかしら…?)
「お前達は、家族か?」
〈子供が、ミントと手を繋ぐ。子供の顔を見るミント〉
「はい、家族です」
「良し、通れ」
〈前の家族に紛れて町の中へ入るミント〉
「ありがとうございました」
「良いんだよ」
(大きな町ね…どこか、働ける所が有ると良いけど…)
【宿屋】
「何でもしますから、働かせて下さい」
「悪いね。雇ってやりたいんだけど、今人手は足りてるんだよ」
「そうですか…」
【酒場】
「お前さんに、酒呑みや、荒くれ男の相手が務まるとは思えないね。悪い事は言わないよ、他を当たりな」
「お願いです。皿洗いでも何でもします」
「そう言われてもな…悪いね」
【城下町】
〈フラフラと歩くミント〉
(お腹が空いた…お金も無いし、伯爵家の人に見つかって、連れ戻されるのは嫌だわ)
【橋の上】
〈川の流れを見つめるミント。雪が降ってくる〉
(旦那様に抱かれるぐらいなら…死んだ方がまし)
〈橋の欄干に登る〉
(そうよ…死のう…)
〈飛び込もうとした時、抱き抱えられる〉
「川の水は冷たいぞ。やめておけ」
「離して!」
「川に入るなら、夏に限る」
〈橋から下ろし見ると服が破れている。アッサムは、自分のマントをミントにかける〉
何が有ったのかは知らんが、放っておくわけにはいかん。
「あ…貴方も…私の体がお望みなの?」
「何を言っている」
「だって、貴方も貴族でしょう?」
「ああ、だが一番下の身分ナイトだ」
「貴族なんて、皆んな同じよ!離して!」
「良いから来い」
「嫌よ!離して!」
【コリアンダーのサロン】
「寒かったでしょう。私ので良かったら、これに着替えて」
「ありがとうございます」
「着替えたらヒーリングするから、そこに寝てね」
「はい…」
「アッサムは、出てなさいよね」
「あ…そうだな…わかった」
【キッチン】
「さあ、温かい物でも食べて。嫌な事はみんな忘れちまいな」
「ギルドを立ち上げたばかりで、人手が必要でな、手伝ってはくれぬか?」
「…」
「大丈夫よ。アッサムなら…女の子に興味が無いんだかなんだか…鈍感だし」
「う…うう…」
「あ、何か…まずい事でも言ったかな?」
「うわーん…あん、あん…」
そんなに泣かれては、どうして良いか…
「コリアンダー、助けてくれ」
【ギルド・レ・シルフィード】
「それで、ギルドで雇って頂いて、今日までお世話になってるわけですよ」
「そんな大変な事が有ったのか….」
「私は、だいたい聞いてたけど…良く皆んなに話す気になったわね」
「ずっと忘れたかったんですけど…お話し出来てスッキリしました」
「嫌な事は、無理に話さなくても良い」
「マスターは、何も聞かずに優しくして下さって…いつかはお話ししないと、って思ってたんです」
【道具屋】
「アッサムちゃん。もう傷は治ったかい?どれ、見せてご覧」
〈アッサムの腕を引っ張るカモミール〉
「だいぶ良くなったね、でも、ちゃんと薬をつけないと治らないからね」
カモミールおばさんは、そう言うと、薬を塗ってくれた。
幼い頃から、喧嘩をしたり、ペイジの修行でケガをすると、良くこうして薬を塗ってくれたものだ。
「本当に、身分の違いさえ無ければ、うちのコリアンダーを嫁に貰ってほしいよ」
「…」
「おや、いけない。これは言わない約束だったね…ほら、終わったよ」
薬を塗ると、ポンと叩いた。
「ありがとう」
(本当に、アッサムちゃんは…コリアンダーの気持ちはわかってるだろに…全く、朴念仁なんだから)
「コリアンダーほどの器量なら、いくらでも相手は居るだろうに」
「アッサムちゃん!だからあんたは朴念仁だ、って言うんだよ!」
そう、怒鳴らなくても…
「全く。ちっちゃい頃からあの子は…ブツブツ…で…あんたの事が…ブツブツ…て言うのに…」
またいつものブツブツが始まった。
何をブツブツ言っているのだろう?
「お母さん。もうそのぐらいで解放してあげたら~?」
セージの助け船だ。
逃げるとするか…
「アッサムー」
いかん、コリアンダーに見つかった。
【コリアンダーの部屋】
〈ワインを出すコリアンダー〉
「開けて」
〈ワインを開けて注ぐアッサム〉
「さーて、呑むわよー」
そして、酒が回ってくると、またいつもの幼い頃の話しが始まった。
「アッサム、小さい時は弱かったわよねー」
「いつの話しをしている」
「初めて会った時よ」
「あの時はまだペイジになったばかりだった」
【町の裏通り】
〈武具を抱えて歩く7才のアッサム。通りの脇から、十代の少年5人が出て来て取り囲む〉
「貴族の坊ちゃんが、こんな所を1人で歩いてやがる」
「金貨持ってたら、出せよ」
「持っていない」
「嘘言うな、出せ」
「無いなら、その武具をよこせ。売れば金になる」
「これは、大事な物だ。渡せない」
「なら、力ずくで奪うしかねえな」
〈剣に手をかけるアッサム〉
「お、何だ?剣を抜くのか?」
「一般市民に、剣を振り翳す気か?」
「お前達のような者を相手に、剣は抜かない」
「やっちまえ!」
「おう!」
〈取っ組み合いをする6人〉
「あんた達!何やってるのよ!」
〈ペンキ玉を投げつける〉
「うわ」
「くそ、逃げろ」
〈ペンキまみれになって、走って逃げる少年達〉
「ちょっと、大丈夫?貴方ペイジでしょ、どうしてやられっぱなしなのよ。その剣は飾り?」
「…」
「酷いケガ…うちに来て」
【道具屋】
〈アッサムのケガに薬を塗るカモミール。ヒーリングするコリアンダー〉
「お兄ちゃんが作ったペンキ玉を持ってて、良かった」
「はいよ。終わったよ、アッサムちゃん」
【コリアンダーの部屋】
「あの時貴方、騎士になったら、今度は私がお前を守ってやる、って言ったわよね」
「ああ」
「ちゃんと守ってよね」
「わかっている」
「先に死んだりしないでよ」
「もう、そのぐらいにしておけ」
〈アッサムは、コリアンダーからワインを取り上げる〉
「まーだ、呑むわよ」
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
【完結】純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜
来栖れいな
恋愛
「覚醒しなければ、生きられない———
しかし、覚醒すれば滅びの呪いが発動する」
100年前、ヴァンパイアの王家は滅び、純血種は絶えたはずだった。
しかし、その血を引く最後の姫ルナフィエラは古城の影で静かに息を潜めていた。
戦う術を持たぬ彼女は紅き月の夜に覚醒しなければ命を落とすという宿命を背負っていた。
しかし、覚醒すれば王族を滅ぼした「呪い」が発動するかもしれない———。
そんな彼女の前に現れたのは4人の騎士たち。
「100年間、貴女を探し続けていた———
もう二度と離れない」
ヴィクトル・エーベルヴァイン(ヴァンパイア)
——忠誠と本能の狭間で揺れる、王家の騎士。
「君が目覚めたとき、世界はどう変わるのか......僕はそれを見届けたい」
ユリウス・フォン・エルム(エルフ)
——知的な観察者として接近し、次第に執着を深めていく魔法騎士。
「お前は弱い。だから、俺が守る」
シグ・ヴァルガス(魔族)
——かつてルナフィエラに助けられた恩を返すため、寡黙に寄り添う戦士。
「君が苦しむくらいなら、僕が全部引き受ける」
フィン・ローゼン(人間)
——人間社会を捨てて、彼女のそばにいることを選んだ治癒魔法使い。
それぞれの想いを抱えてルナフィエラの騎士となる彼ら。
忠誠か、執着か。
守護か、支配か。
愛か、呪いか——。
運命の紅き月の夜、ルナフィエラは「覚醒」か「死」かの選択を迫られる。
その先に待つのは、破滅か、それとも奇跡か———。
——紅き誓いが交わされるとき、彼らの運命は交差する。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした。今度こそ幸せになります!!〜
ゆずき
恋愛
公爵家の御令嬢クレハは、18歳の誕生日に何者かに殺害されてしまう。そんなクレハを救ったのは、神を自称する青年(長身イケメン)だった。
イケメン神様の力で10年前の世界に戻されてしまったクレハ。そこから運命の軌道修正を図る。犯人を返り討ちにできるくらい、強くなればいいじゃないか!! そう思ったクレハは、神様からは魔法を、クレハに一目惚れした王太子からは武術の手ほどきを受ける。クレハの強化トレーニングが始まった。
8歳の子供の姿に戻ってしまった少女と、お人好しな神様。そんな2人が主人公の異世界恋愛ファンタジー小説です。
※メインではありませんが、ストーリーにBL的要素が含まれます。少しでもそのような描写が苦手な方はご注意下さい。
魔王様は転生王女を溺愛したい
みおな
恋愛
私はローズマリー・サフィロスとして、転生した。サフィロス王家の第2王女として。
私を愛してくださるお兄様たちやお姉様、申し訳ございません。私、魔王陛下の溺愛を受けているようです。
*****
タイトル、キャラの名前、年齢等改めて書き始めます。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる