『アルマンドの騎士1』“魂の伴侶、それは魂の片割れツインレイ”

大輝

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第23章 アルマンド炎上

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ミストラルは、右上から黒竜を足で攻撃した。

双頭の黒竜の左の頭がミストラルに噛みつく。

私は、左から攻撃。

黒竜の右の首が伸びて来る。

ランスで頭を突く。

「キーン!」

黒竜の咆哮。

爆音に、一瞬動けなくなる。

【丘の上の修道院】

「黒い…竜?」

「え?何を言ってるの?ローズマリー」

「ニャー」

〈ローズマリーは、アルテミスを抱く〉

(大きな黒い竜が見える…どこかしら?)

「見て、アルマンドが!」

〈窓からアルマンドを見るシスター達。稲妻が走り、アルマンドに落雷〉

「アルマンドの町が焼ける」

「ミャー」

「アポロンは、大丈夫かしら?」

「アポロンて、アッサムさんの猫?」

「ええ」

【アルマンドの町】

「荷物は置いて避難しろ!」

「城から火の手が上がっているぞ!」

「急いで消火に当たれ!」

「ルバーブさん」

「カモミール、セージ、ここは危険だ」

「自動汲み上げ機が出来たから、持って来たんだよ」

「おお、これは助かる。気をつけて帰られよ」

「もっと作らないと~足りないね~」

【神殿の儀式の間】

黒竜が地響きを起こす。

「踏ん張れ!」

「神殿が崩れ落ちそうじゃわい」

「ガォー!」

ミストラルの風のブレス。

「キーン!」

黒竜の咆哮で、金縛りのように動けない。

奴が私に向かって突進して来た。

「ぐわっ」

「アッサム!」

【修道院】

〈ローズマリーが倒れる〉

「ローズマリー、ローズマリーどうしたの?」

「ローズマリー、しっかりして」

「部屋に寝かせなさい」

「はい、院長様」

【神殿の儀式の間】

「ガォー!」

〈ミストラルが、皆んなと黒竜の間に割って入り体当たり〉

「ガゥー」

〈ルナは、意識の無いアッサムを引っ張って来る〉

「ルナ、良い子だ」

「ヒーリングするわ!」


「キーン!」

「うわあ、うるせえな。どうしても耳をふさがないと、鼓膜が破れそうだ」

〈黒竜は、長い首を振り回してバジルを攻撃する〉

「ガォー!」

〈バジルを庇ってミストラルが吹っ飛ばされる〉

「ミストラル!」

「ガゥー!!」

「ルナ!」

〈ルナは、舞い上がり炎のブレス〉

私が意思を取り戻すと、ルナは猛り狂って、黒竜に炎のブレスを吐きかけていた。

「ガゥー!ガゥー!」

「ミストラルのヒーリング完了よ」

ミストラルが舞い上がる。

猛り狂うルナの炎のブレス。

「ガゥー!!」

「わっち、熱ち、俺まで焼け焦げちまう」

バジルが戻って来た。

猛り狂うルナの炎のブレス連発!

「ガゥー!ガゥー!!」

燃え盛る炎の中、それでも黒竜は生きていた。

「しぶといね」

「ガゥー」

「ガォー」

ルナとミストラルは、アイコンタクトをして舞い上がると、左右から交差した。

黒竜の長い首が絡まり「ドスン!!!」と音を立てて倒れる。

物凄い地響きだ。

「ひえー」

神官が悲鳴を上げた。

「ガゥー!」

「ガォー!」

ルナの炎のブレスとミストラルの風のブレス。

「ガゥー!!」

「ガォー!!」

風に煽られ、物凄まじい炎だ。

「ガゥー!ガゥー!」

「ルナ、もう良いよ。落ち着いて」

「ガゥー…」

「神殿が黒焦げじゃ」

「黒竜の方は、ちょうど良い焼け具合だぜ。中々美味そうだぞ、ルナ」

「あれを、食べるんですか?」

「いつもの事よ」

「封印の間を、調べねば」

【封印の間】

「あー、ごっそり盗まれちまってるなー」

「あれは、あれは、どこじゃ、あれは…」

「爺さん。いったい何をそんなに探してるんだ?」

「無い…どこにも無い」

「そろそろ話して頂こう」

「300年前の独立戦争の後、封印して代々大神官だけが知る物」

「そんな大層な物なのか?」

「魔道書じゃよ」


魔道書…それは、吹雪や嵐、稲妻など、自然の力を自由に操る魔法が書かれた書物。

そんな物がどこかに有ると言う話しを聞いた事が有るが。

「魔法なんて、おとぎ話しだろ?」

「ワシも、先祖から伝え聞いただけなのじゃが、昔は本当に魔道士がおったそうじゃよ」

そして、その魔道士の一族も、どこかでひっそりと生きていると…

【神殿の門】

「うわー暗い空だわ」

「酷い雨だね」

ミストラルは、黒竜を引きずっている。

「その竜、どうするんですか?」

「食う」

と、言いながら、もうバジルは黒竜の肉を食べている。

「あー、冷めちまってる」

「ガゥー」

「うわっ、だから、炎を吐く時は先に言えって、いつも言ってるだろ」

「ガゥガゥ」

私は、湯気が出ている黒竜から、使えそうな素材を剥ぎ取った。

「食べ頃だね」

「美味いぞ、爺さん達も食ってみろよ」

〈神官達は、恐る恐る黒竜の肉を食べてみる〉

「どれどれ…うーん、これは中々ですね」

「だろ?」

それにしても、嫌な空模様だ。

雨は一向に止む気配が無い。

私達は、雨の中、大神官の屋敷に戻る事にした。

【大神官の屋敷】

「お帰りなさいませ」

「昨日からの雨で、河川の決壊が心配されます」

「朝だというのに空は暗く、村の者達は怯えています」

「良し、土嚢袋は有るか?川の淵に積んでやる」

【川の淵】

「僕は、力仕事は役に立たなくて、ごめんね」

「タイムにはタイムの本分があるのだから、気にせんで良い」

ミストラルが土嚢袋を運んで来る。

私とバジルが川の淵に積む。

「もう少し、そこに積み上げたら終わりだな」

「良し、これで少しは持つだろう」

「助かりました」

私達は、大神官の屋敷で一休みしたら、アルマンドに戻る事にした。

【サラバンド国】

〈屋敷の中、黒いマントを着た男の後ろ姿。男は、分厚い本を片手に呪文を唱えている〉

「タラゴン様。ディル様が出動なさいました」

「そうか。こちらは魔力が高まっているぞ!」

「アルマンドが炎上しております」

「うむ、占拠したのち、城を使うので残しておけとの事だな」

「はい、タラゴン様」

「城などどうなっても構わんのだがな」

「将軍のご命令ですので」

「私はただ、強力な魔力を身につけられればそれで良いのだ」


雨が降り続く中、私達がアルマンドに戻ったのは、翌日の朝だった。

アルマンドの町へ近づくにつれて、雨脚が強くなってきた。

【アルマンド 東門】

「何だ?この臭いは」

「いったい、何が有ったの?」

「お城の方から煙が上がってるよ」

門を入ると、城の近くの民家がいくつも焼け焦げていた。

「コリアンダー。無事に帰って来たんだね~」

「お兄ちゃん。これは、どういう事?」

【道具屋 セージの工房】

道具屋へ行くと、カモミールおばさんが、町に何が有ったのか話してくれた。

「うちは、セージの作った避雷針が有るから、雷は落ちなかったんだけどね」

「本当にそんな物で防げるのか?」

「試しにうちにつけておいたんだけど、ちゃんと地面に放電してたよ~」

「避雷針て、今作ってるそれ?」

「これが出来たらお城に取り付けたいんだけど~」

「お城の許可がもらえるかねえ?」

「私から話してみよう」

「雷は落ちなかったけどさ、火の手が回って来やしないか、ヒヤヒヤしたよ」

【アルマンド城】

「本当に、そんな物で落雷が防げるのか?」

「はい。うちの周りには落ちませんでしたから~」

許可を得られたので、セージは避雷針を取り付けた。

「良し、避雷針は取り付けた。被災者を受け入れて頂こう」

「仕方ない、受け入れを許可する。ただし、一般市民は、貴族の避難場所には近づかんようにな」

家を焼け出された市民達が、城に入って来る。

「空が怖いよー」

「ああ、いったいいつまで降り続くんだろうね」

「家か焼けちまった」

【修道院】

「アルマンド、鎮火したみたいね」

「あの人は、生きてる」

「え?アッサムさんの事?」

「ええ」

「どうしてわかるの?」

「感じるの」

(エネルギーを感じる。生きているわ)

「ローズマリーったら、本当に、いつも不思議な事を言うのね」

【北の国境の砦】

「敵襲だ!」

「迎撃準備!」

「敵の司令官は、またあのディルか?!」

「違います!」

「連合軍だ!」

【武具屋】

〈オレガノが工房で、トンカンと武具を作っている〉

「もう少しで、出来るからな」


【ギルド・レ・シルフィード】

「雨は止みましたけど、空の黒い雲は動きませんね」

火事騒ぎとこの天候で、市民からの依頼は無い。

久しぶりの休みだ。

「ミャー」

「アポロン」

「あらぁ、アッサムの猫ね」

火事騒ぎで、小間使いが猫を連れて避難して来たらしい。

幸い、私の屋敷は風上で、焼け残っていたが…

「おし、アポロン。こっちに来い」

アポロンは、耳だけバジルの方に向けて動かない。

「嫌だって」

「アポロン。いらっしゃい」

「ニャーオン」

コリアンダーが呼ぶと、足元に体を擦り付けて甘えてから膝に乗った。

「何で、俺が呼ぶと来ないんだよ」

「アポロンは、雄だからな」

「女性には優しいのね、アポロン」

「ミャー」

「さすが騎士の猫だわ」

「オレガノさん、いらっしゃい」

「黒竜の鎧が出来たよ」

「黒い鎧?」

「丈夫さには欠けるが、軽いぞ」

鎧を着けてみた。

「確かに軽いな」

「いつもの銀鎧の方が好きだわ」

「赤い鎧も青い鎧も、カッコいいけどね」

「丈夫じゃないところが嫌よ」

「だが、その分動きやすい」

「ちゃんと身を守れるかしら?」

「心配性だな、コリアンダーは」

「だって、敵の攻撃を受けたら」

「かわす!受ける!やっつける!アッサムさんなら、大丈夫だよ」

「バジルは、ノー天気なのよ」

防御力が高い鎧でも、重くて動けなくてはどうにもならんからな。

「コリアンダーは居るかい?」

「お母さん、どうしたの?」

「やけどの薬が売り切れちまったんだよ」

「あら、すぐに帰って作るわ」

【海上】

〈サラバンド軍の船と連合軍の船が合流する〉

「見ろ、アルマンド国の上だけ、すっぽりと黒い雲が覆い尽くしているぞ」

「国境の砦が落ちるのも時間の問題だ」

「装備を整えておけ!」

「クーラントの統一、成し遂げてみせるぞ!」


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