『猫が焼きもち妬くので結婚できません2』

大輝

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第11章 仕入れはデート気分

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【電車の中】

〈一番前の車両の運転席の後ろから前の車窓を見ている遊〉

「相変わらずね、遊ちゃん」

「え?」

「そうやって子供みたいに窓の外見てるの」

そうだった。

麻友さんと仕入れに行くの久しぶりだもんな。

問屋さんが持って来てくれるのを選ぶ時も有るけど、やっぱり行くと色々有るからね。

「由良ちゃんも行きたがってたわ。今度連れて行ってあげてね」

「そうだね」

今日は、僕は麻友さんとデート気分で仕入れが楽しみだったんだけど、今度は由良ちゃんや春陽ちゃんも連れて行こうかな。

〈電車が大きく揺れる〉

「あっ」

〈遊は麻友を抱きとめる〉

ああ、やっぱり良い匂いがするな。

いつもだけど。

香水とか柔軟剤とかじゃなくて、もっと自然な…

お化粧の匂いでもないし、シャンプーでもなさそうだ。

何だろう?

「遊…ちゃん」

「うん?」

「いつまでそうしてるの?」

「あ…」

〈遊は麻友を優しく包むように抱いていた手を解く〉

「あぁん」

〈ドアが開いて人の波が押し寄せて来た〉

結局さっきと同じ体制だね。

いや、さっきより密着してるかな?

まあ、麻友さんも他の乗客とこうなるのは嫌だろうし、僕の方がマシか。

しっかり守らないとね。

「(優しいのよね…誰にでもだけど)」

こんな時、女性はどんな事を考えているんだろう?

僕は、どうして良いかわからない感じだけど。

「この時間は、混むわね」

「ごめんね」

「謝らないの。10時の開店に行きたいんだもの。こっちからだと通勤時間とぶつかるの仕方ないわ」

「小田急は狭いし」

「狭い?」

「僕、荻窪で育ってるじゃない」

「中央線はもっと広かったかしら?」

「そう感じるね」

こんな事考えてたのか。

やっぱりこんな時も男とは違うんだね。

余裕だな。

【問屋街】

「今日は、どこから?」

「やっぱり一番沢山買うのはあそこだよね」

【いつもの問屋】

同じ石でも店によって値段が違うから、まずはここから。

ここはオーナーが外国の人で、産直だから良い物が安く買えるんだよね。

ここを基準に考えてて、安いのに良い石だな、なんて思ってたら他の店で5倍もしたの有ったよな。

全てではないんだけどね。

いつも親切に選ぶの手伝ってくれるんだよな。

「アクアマリンのグリーンがかったの有りますか?」

「アクアマリンはこの辺」

〈お店の人がアクアマリンのビーズの一連の束を持って来て並べる〉

「これ、良い色だな」

「これは、2本だけ有るね」

「本当、素敵な色ね」

薄い色のアクアマリンは多いけど、海の色のようなブルーグリーンのは探しても中々無いんだよね。

やっぱりここに有った。

「ミルキーアクアマリンは良く見るわね」

ミルキーは安いけど、僕はあまり買わないな。

エネルギー傾向も少し違うし。

ま、天然石って値段関係無いから、安く買えた方が良いんだけどね。

そしたらお客様に安く提供出来るから。

採掘される量が少なくなったり、人気が有ったりする石は値上がりするけど、沢山採れる石は安いんだ。

だから、エネルギーが素晴らしいのに安い石は沢山有るね。

まあ、同じ石でも一つ一つ違うからな。

クンツァイトも買いたかったんだけど、中々品物と値段が折り合わない。

残念。

「麻友さん、何か気になる石有る?」

「そうね…ルビーかしら?」

「ルビーは、これですね」

「色々な色が入ってるわ」

「これは、ルビー&サファイアの一連です」

ルビーとサファイアは鉱物の中ではコランダムグループて、赤をルビーと言って、それ以外はサファイアって言うんだよね。

イエローサファイアが入ってると良いんだけどな。

無いか…

「イエローサファイアは、これね」

お店の人が、探して持って来てくれた。

免疫力や自然治癒力のアップとか、胃腸にも良いし、骨や軟骨、関節にも良いから痛い所が有る人に使いたいんだ。

良し、色々買えたぞ。

さて、次はパール専門店に行こう。

【パール専門店】

「素敵」

「麻友さんて、パールが似合いそうだよね」

「そう?嬉しい」

ここは、淡水パールしか置いてないんだ。

淡水パールは、まん丸じゃなかったり、すじや笑窪が有ったりするんだけど、見た目美しい宝石のパールよりもエネルギーが良かったりするんだよね。

まあ、これが自然な形だからな。

人間が貝の中に異物を入れると、貝は痛いから分泌物を出すんだ。

そうやって貝が一生懸命作ったのがパールなんだよね。

初めて知った時、貝が可哀想で、パールがとっても愛おしく思った。

「この辺りが綺麗ですねよね?形もまん丸に近いですし」

お店の人が、色々並べて綺麗なのを一生懸命選んでくれた。

パールは、花粉症やアトピーなどのアレルギーや胃潰瘍とか、抗酸化作用が有って、アンチエイジング効果が有ると言われているんだよね。

さて、それから…バイカラータイガーアイはあの店で、サザレやなんかはあそこだな。

そして、今日も最後はお爺ちゃんの店だね。

【お爺ちゃんの店】

「いつも最後に寄るのがここね」

ここは凄くマニアックで、上手く探せば掘り出し物が見つかるんだ。

珍しい石と言うか、同じ石のちょっと変わったヤツとか有るよな。

他では凄く高い石が安かったりするんだけど、ちょっと難ありだったり。

でも、見た目難ありでもエネルギーは素晴らいとか、本当石ってわからないよね。

難ありと言っても、より原石に近い感じかな?

内包物が多くて見た目アクセには向かない石も有るけど、エネルギーが良ければ買う。

ここで絶対に買うのはシトリン。

アメジストを加熱したタイプだね。

エネルギーが強くて素晴らしいんだ。

「このインカローズはどう?半額だったけど、そのまた半額にするから持って行かない?」

お爺ちゃん時々こうやって勧めてくれるんだ。

本当に天然だから、内包物が多くてアクセに使える石は少なそうだな。

でも、エネルギーは素晴らしいからヒーリングには使える。

硬度が低くて割れやすい石だから、小さな欠けは有るけど、どうしようかな?

普通この大きさのインカローズはこの値段では買えないもんね。

買って行こう。

良し、今日も収穫有ったぞ。

【高架沿いの通り】

さて、デートデート。

「なあに?嬉しそうな顔して」

バレてます?

「ランチどうしようか?」

「地元に帰りましょうよ」

やっぱりか。

いつもそうだよね。

その方がゆっくり出来る。

「それ、持つわ」

「重いから良いよ」

「重いから持つのよ」

まあ石だから、これだけ沢山有れば重いけど…

じゃあ、こっちの軽い方。

「フフフ」

「何?」

「優しいのよね」

「え?何で?」

「さりげなく軽い方を渡すところ」

「普通でしょう?」

【レストランla mer】

結局いつもla merだよな。

イケメンギャルソンの羊里君は居ないけど。

まあ、バルコニーに出れば誰にも邪魔されないでデート気分を味わえる。

中は身内のような人達が沢山居て嫌だもんな。

麻友さんはここが好きなんだよね。

Lapis本店を開店する時引っ張って来ちゃったけど、la merに戻りたいとか思ってるのかな?

〈色々考える遊の顔を覗き込むように首を傾げて見る麻友〉

「なあに?」

「la merに戻りたいとか思う?」

「え?考えた事無かったわ」

「良かった」

「僕は本店に戻りたいけどね」

「フフフ、どうして?」

「そりゃあ…」

貴女が居るからでしょう。

「なあに?」

「うーん…」

「夢が丘店が軌道に乗ったら戻って来れるでしょう?」

「うん。そうなったら、行ったり来たりになりそう」

「また、私達も順番に手伝いに行くわ」

「そうしてくれると有難いよ」

【Lapis夢が丘店】

「あ、オーナー。おかえりなさい」

「ただいま」

「お久しぶりね」

「あ…」

〈胸の奥がズキっとする麻里愛〉

荷物が沢山だからって、麻友さんがついて来てくれた。

「一緒に行ったんですか?」

「うん。だいたい仕入れは麻友さんと行くね」

「ふーん…」

何だよ?

その「ふーん」は?

仕入れて来た石達を出してみる。

「うわぁー凄い」

「こうやって売ってるんですね」

「綺麗だね」

「本当、素敵」

「まだバラさないでよ。計算してないから」

「はーい」

数を数えて、一つ一つの値段を記録しないとね。

同じ石でもその時その時で値段が違ったり、品質が違ったリもするし。

上手い具合に安く仕入れられたりしたら、安く提供出来るからね。

〈遊と麻友は工房に入って行く。後ろ姿見ている麻里愛と真理絵〉

「何かさ、あの二人お似合いな感じよね」

「え?でも年上って」

「一つぐらい何よ。あ、麻里愛焼きもち?」

「ち、違うもん」

「素敵なお姉様よね」

「だろ?」

「わっ。もう羊里さん。いきなり後ろからびっくりします」

〈麻里愛と真理絵の後ろ2人の頭の上から顔を出している羊里〉

「遊ちゃんの初恋なんだよ。麻友は」

「えっ?」

「そうなんだぁ」

「まあさ、付き合ってたのは俺なんだけどな」

「えーー?!」

「何だよ?俺には勿体無いってか?」

「そんな事言ってませんよ、まだ」

「まだってな」

「まだ」

「二人とも、それは無いだろ」

【工房】

「シトリンの8mm加熱50個」

「はい」

〈遊がビーズを数えて麻友が書き込んで行く〉

とりあえず一連にいくつ有るが数えて…と。

中には欠けてたり、へこみが有ったり、アクセには使えない石も有るけどね。

そういうのよけて数えてたら小売価格が高くなってしまうから、よっぽど半分に割れてるのぐらいしかはずさないね。

そういう石達もエネルギーが生きてたら、処分したり出来ない。

「麻友ぅ、帰りに飯行かないか?」

「どうして貴方と?」

「良いじゃないか」

また始まったぞ。

もうとっくに別れてるのに。

「ちょっと、やめ…て」

〈工房の中に入って来て麻友の腰に手を回す羊里〉

「麻友ぅ」

「もう、離して」

「ミャー(わあ、良いおもちゃだ)」

〈チビタマがテーブルの上に上がる〉

「こらこら、チビタマ。ダメだぞ」

「もう。貴方がちゃんと戸を閉めないからよ」

〈チビタマを捕まえる羊里〉

「しょうがない奴だな」

しょうがないのは羊里君だよね。

〈チビタマを抱っこしたまま麻友に擦り寄る羊里〉

工房は狭いんだからね。

「ミャー(離せよ)」

「その子連れて出て」

「俺が捕まえとくから」

「羊里さーん。2カフェお願いしまーす」

〈真理絵の羊里を呼ぶ声〉

「はいはい。しょうがない行くかチビ助」

〈羊里はチビタマを連れて出て行く〉

「もう。ちゃんと閉めてよね」

〈麻友は工房の戸を閉める〉

ここの工房は本店と違って、店内からも外からも見えるようになっているからな。

二人っきりでもロマンチックな事は無いよね。

〈遊は本店の工房で麻友にキスされた事を思い出す〉

何だったのかな?

あの時のキス…?

あの後やっぱりいつもみたいに子供扱いだもんな。

一つしか違わないのに。

「遊ちゃん」

「うん?」

「どうしたの?」

あ、ビーズ数えないと。

【店内】

「猫は癒されるね」

「可愛いね」

「お待たせ致しました。コーヒーでございます」

「触っても大丈夫かな?」

「ほら、ポスターに僕達からのお願いって書いて有る」

「人間の食べ物はあげちゃいけないんだな」

〈お客さんはそーっとポンに触ってみる〉

「長い毛だね」

「(ポン良い子だぞ。お客様に触らせるようになったな)」

〈工房の方に目をやる羊里。同じく工房を見ている麻里愛と目が合う〉


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