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友情・3
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相合傘の俺と世楽は洞窟らしき場所に着いた。
遠くからだと、あまりよく
分からなかった“洞窟らしき場所”。
雨宿りくらいは出来そうな小さな洞窟だと
思ってたけど、近づいてみると
“かなり深そうな洞窟”だった。
まさか熊とか住んじゃってたりしないよな?
冬磨「出ないと思うよ…」
改「何が?」
冬磨「熊」
な、なぜ分かった!?
コイツ、俺の心とか読めるのか?
冬磨「君、無知そうだし。それに
ここ、熊さんのお家なのかな?なんて
幼稚園児みたいな事、思ってたんでしょ?」
なんだ、そういう事か。心を読まれたかと…
って、違うだろ!怒るところだよな、ここ。
ん?でも、何で熊がいないってわかるんだ?
熊出没看板あったよな?
改「看板あったけど、なんで
出ないってわかるんだよ?」
冬磨「何言ってるの?この山は昔から
熊なんて生息してないよ。」
改「じゃぁ、何で看板が…」
冬磨「だからおかしいんだよ。
いないのに、どうして嘘書いてあるんだって。
疑問に思って、近づいたら…その…」
改「落ちた…か。」
冬磨「まぁ、そんなところ。」
少し恥ずかしそうな顔で世楽が言う。
そして…
冬磨「あ、その、…君が、来てくれて
良かったなって……りが、と…」
ん?今、ありがとうって言ったか?
冬磨「そ、そんなに驚かなくても
いいよね?俺だって、感謝の一言くらいは…」
改「ごめん。そうじゃなくて
怪我してたし、落ち込んでるんじゃないかと
思ってたから、元気そうで良かったなって。」
冬磨「っ!」
素直な気持ちを伝えただけなのに
また、世楽が照れながらこんな事を言った。
冬磨「…正直、心細かったんだ。
それに少し、怖かったし。だから、君が…
ふ、二岾…くんが来てくれて、嬉しかった」
改「!」
今、“君”じゃなくて、俺の名前、呼んだよな?
俺は、嬉しくなって
改「改でいいよ、世…冬磨!」
冬磨「うん。か、改…
って、調子乗らないでくれる?
誰が、下の名前で呼んでいいって言ったの?」
少し沈黙した後、世楽が口を開く。
冬磨「いや、ごめん。冬磨でいい。」
改「うん。これからそう呼ぶ。冬磨。」
この事が切っ掛けで、俺と冬磨の距離が
少し縮まった。
最初は、茅菜の為にって思ってたけど
冬磨と(無理やり)一緒にいる事が多くなていた
せいか、いつの間にか俺の中で冬磨は
友達という部類の存在に
なっていたんだろうな。
じゃないと、こんな崖からわざわざ
滑り降りて、助けに行くわけ…
ん?崖?
そうだった!崖から落ちたんだった!
冬磨「わっ!何その絶望的な顔!」
改「いや、だって俺達、崖から落ちたじゃん?
得体の知れない洞窟の中じゃん?
しかもここ、電波ないし!ほら。」
俺は、ポケットの中に入ってたスマホを
冬磨に見せた。
冬磨「知ってる。さっき確認した。
って、今更?」
改「一応、茅菜には冬磨が居なくなった事
伝えてきたけど、場所知ってるわけじゃないし
俺達の事、見つけてくれるかどうかも
分からないし…それにっ」
冬磨「大丈夫だと思うよ。」
改「何でそんな事わかるんだよ?」
冬磨「…落ちる時に、水筒の紐、看板に
引っ掛けて外れた…俺の名前、書いてるやつ」
冬磨が、少し言いずらそうに言った。
あぁ!あの変な跡、紐だったのか。
焦ってたから、見てないけど
きっと看板付近に落ちてるんだろうな。
誰か、気付いてくれたらいいんだけど…。
冬磨「ところで、ひとつ聞きたいんだけど」
改「何?」
冬磨「改は、護利さんの事好きなの?」
好き?
俺が、茅菜を?
確かに茅菜が笑った顔が好きで
茅菜の為に、冬磨と仲良くなろうと
必死だったな。
タマゴの事も茅乃さんの事も。
ん?
そう言えば…誰かの為に、ここまで
必死になったのって、今まで生きてきた中で
無かったような気がするな。
それって、茅菜の笑顔がどうとかじゃなくて
俺は…茅菜の事が好き…
改「!」
自分の気持ちに気がついた途端
なんだか、めちゃくちゃ恥ずかしくなった。
冬磨「何その反応。
もしかして、今更気付いた感じ?」
呆れた顔をした冬磨が言う。
改「そ、そんな事あるわけ…」
あるけど…。
冬磨「そう。じゃぁ、もう一つ聞くけど
改は、護利さんがタマゴの方でも
好きって言える?」
改「え…」
ただ、YESと答えればいいのに
即答できなかった俺と
そのすぐ横にいる冬磨の間を
ひんやりと湿っぽい風が
洞窟の奥の方へ、すり抜けて行った。
遠くからだと、あまりよく
分からなかった“洞窟らしき場所”。
雨宿りくらいは出来そうな小さな洞窟だと
思ってたけど、近づいてみると
“かなり深そうな洞窟”だった。
まさか熊とか住んじゃってたりしないよな?
冬磨「出ないと思うよ…」
改「何が?」
冬磨「熊」
な、なぜ分かった!?
コイツ、俺の心とか読めるのか?
冬磨「君、無知そうだし。それに
ここ、熊さんのお家なのかな?なんて
幼稚園児みたいな事、思ってたんでしょ?」
なんだ、そういう事か。心を読まれたかと…
って、違うだろ!怒るところだよな、ここ。
ん?でも、何で熊がいないってわかるんだ?
熊出没看板あったよな?
改「看板あったけど、なんで
出ないってわかるんだよ?」
冬磨「何言ってるの?この山は昔から
熊なんて生息してないよ。」
改「じゃぁ、何で看板が…」
冬磨「だからおかしいんだよ。
いないのに、どうして嘘書いてあるんだって。
疑問に思って、近づいたら…その…」
改「落ちた…か。」
冬磨「まぁ、そんなところ。」
少し恥ずかしそうな顔で世楽が言う。
そして…
冬磨「あ、その、…君が、来てくれて
良かったなって……りが、と…」
ん?今、ありがとうって言ったか?
冬磨「そ、そんなに驚かなくても
いいよね?俺だって、感謝の一言くらいは…」
改「ごめん。そうじゃなくて
怪我してたし、落ち込んでるんじゃないかと
思ってたから、元気そうで良かったなって。」
冬磨「っ!」
素直な気持ちを伝えただけなのに
また、世楽が照れながらこんな事を言った。
冬磨「…正直、心細かったんだ。
それに少し、怖かったし。だから、君が…
ふ、二岾…くんが来てくれて、嬉しかった」
改「!」
今、“君”じゃなくて、俺の名前、呼んだよな?
俺は、嬉しくなって
改「改でいいよ、世…冬磨!」
冬磨「うん。か、改…
って、調子乗らないでくれる?
誰が、下の名前で呼んでいいって言ったの?」
少し沈黙した後、世楽が口を開く。
冬磨「いや、ごめん。冬磨でいい。」
改「うん。これからそう呼ぶ。冬磨。」
この事が切っ掛けで、俺と冬磨の距離が
少し縮まった。
最初は、茅菜の為にって思ってたけど
冬磨と(無理やり)一緒にいる事が多くなていた
せいか、いつの間にか俺の中で冬磨は
友達という部類の存在に
なっていたんだろうな。
じゃないと、こんな崖からわざわざ
滑り降りて、助けに行くわけ…
ん?崖?
そうだった!崖から落ちたんだった!
冬磨「わっ!何その絶望的な顔!」
改「いや、だって俺達、崖から落ちたじゃん?
得体の知れない洞窟の中じゃん?
しかもここ、電波ないし!ほら。」
俺は、ポケットの中に入ってたスマホを
冬磨に見せた。
冬磨「知ってる。さっき確認した。
って、今更?」
改「一応、茅菜には冬磨が居なくなった事
伝えてきたけど、場所知ってるわけじゃないし
俺達の事、見つけてくれるかどうかも
分からないし…それにっ」
冬磨「大丈夫だと思うよ。」
改「何でそんな事わかるんだよ?」
冬磨「…落ちる時に、水筒の紐、看板に
引っ掛けて外れた…俺の名前、書いてるやつ」
冬磨が、少し言いずらそうに言った。
あぁ!あの変な跡、紐だったのか。
焦ってたから、見てないけど
きっと看板付近に落ちてるんだろうな。
誰か、気付いてくれたらいいんだけど…。
冬磨「ところで、ひとつ聞きたいんだけど」
改「何?」
冬磨「改は、護利さんの事好きなの?」
好き?
俺が、茅菜を?
確かに茅菜が笑った顔が好きで
茅菜の為に、冬磨と仲良くなろうと
必死だったな。
タマゴの事も茅乃さんの事も。
ん?
そう言えば…誰かの為に、ここまで
必死になったのって、今まで生きてきた中で
無かったような気がするな。
それって、茅菜の笑顔がどうとかじゃなくて
俺は…茅菜の事が好き…
改「!」
自分の気持ちに気がついた途端
なんだか、めちゃくちゃ恥ずかしくなった。
冬磨「何その反応。
もしかして、今更気付いた感じ?」
呆れた顔をした冬磨が言う。
改「そ、そんな事あるわけ…」
あるけど…。
冬磨「そう。じゃぁ、もう一つ聞くけど
改は、護利さんがタマゴの方でも
好きって言える?」
改「え…」
ただ、YESと答えればいいのに
即答できなかった俺と
そのすぐ横にいる冬磨の間を
ひんやりと湿っぽい風が
洞窟の奥の方へ、すり抜けて行った。
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