日常を取り戻せ

最初に

　あなたにとって、日常とはなんですか？
　あなたは、どのような日常を生きていますか？
　その日常に、飽きてはいませんか？
　その日常が、愛おしくはありませんか？
　
　何気なく過ごしている毎日。
　朝起きて、ご飯を食べて、仕事や学校に行って、お昼ご飯を食べて、帰ってきて家族と過ごして、夜ご飯を食べて、お風呂に入って、そして布団で眠る。
　休みの日は趣味に没頭しようかな、友人と過ごそうかな、恋人と過ごそうかな、家族と過ごそうかな。それとも疲れが溜まってるから、一日ゆっくり家で録画をしていたドラマを見てようかな。
　そんな毎日が、きっと大抵の人に与えられていて、特にその日常を意識するでもなく過ごしているのだろう。
　きっと、意識しないなんて事は当たり前の事で、日常のありがたみや愛しさは、失って初めて気付く。僕がそうであったように。

　僕は、ある日突然、日常を奪われた。
　奪ったやつは、急性骨髄性白血病、という病気だ。

　突然奪われた日常。
　今までの僕はどこへいってしまったのだろう。
　全然受け入れる事ができない現実。
　それでも始まる辛い治療。
　やるしかない！そう思っても、治療の辛さで心が折れる。
　何より「死ぬかもしれない」という、想像を絶する恐怖心。

　そんな入院中の闘病生活に加えて、自宅療養についても自分の体験談として、ここに記したいと思う。
　そして、改めて日常生活に隠された「幸せ」を、この本を手に取ってくださった皆様に、感じていただけたらと思う。

　事前にお伝えしとかなければならない事がある。
　それは、白血病の治療法や病状、副作用などは「人による」というケースが非常に多いこと。
　例えばその人の体格や年齢、既往症や持病、抗がん剤の効き方、その他移植をするタイミングなど、本当に千差万別である。例えば風邪のように、ほぼ、ほとんどの人が同じ症状が出て、同じような治り方をしていく、ということがないのだそう。なので、この本に記す僕の体験談は、本当に一例にすぎない。
　でも、一つ、確実に言えるのは、今、僕は生きています。
　それはまぎれもない事実です。

　もし、この本を手に取っていただき、一人でも良いから、心が楽になってくれたらこんなに嬉しい事はない。

　どうか皆様の毎日が幸せでありますように。