日常を取り戻せ

ゆとそま

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最後に

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 二〇二二年八月現在、まさにこの原稿を執筆している最中であるが、体調は相変わらずである。もちろん日によって出る症状や重さは変わってくるが、健康体と言うには程遠い。めまい、吐き気、食欲不振、吹き出物、頭痛、下痢、便秘などなど。不調の数を挙げ始めたらキリがない。
 それに加え、精神面の不調もある。自宅療養時は精神的に辛い事が非常に多かった。それは今でも変わらない。再発の恐怖、パニック障害の症状、今まで出来ていた事が出来なくなった事への苛立ち。パニック障害に関しては、もしかしたら薬を飲んでいれば良くなるのかもしれない。少なくとも、心療内科で治療をしている。しかし、再発の恐怖と今まで出来ていた事が出来なくなった事への苛立ちは、どうしようもない。どうする事もできない。
 結局、受け入れて一日一日を噛みしめて懸命に生きていくしかないのだ。未だに僕は病気になった事を受け入れられていないんだと思う。そして、それを受け入れるのはとても時間のかかる事だと思う。おそらく、受け入れる事ができるのは、日常を取り戻せたとき。これまでの日常を取り戻せて、初めて病気を受け入れられる気がする。
 だから、それまでは後ろを七割、前を三割ぐらいの割合で向いて生きていけたらと思う。もちろん、気持ち的にはずっと前だけを向いて生きていきたいが、それは無理だ。どうしたって、何をしてる最中だって、あぁ、なぜ僕は白血病になったのだろう、と思うときがくる。どうしたって、あぁ、あの頃は楽しかったなぁ、と思うときがくる。それは決してネガティブな要素だけではなく、僕がこれまで生きてきた証だ。これまでの様々な思い出が、今の僕を作り上げていて、またそこに引き戻そうとしてくれている。
 何が何でも戻りたい。あの頃の自分に戻りたい。日常を取り戻したい。
 今の僕の生きる目標。

 さて、再度訪ねる。
 みなさんは、日常をどのように過ごしていますか?
 日常は日常であって、日常ではない。
 一日一日が奇跡でできている。それは当たり前じゃない。いつでも奪われてしまう。
 どうか、日常生活を大事にしてほしい。
 どんなにつまらない日常生活でも、生きていてほしい。
 きっと、生きていれば何かあるから。笑える日がきっとくるから。
 僕は今生きてます。これからも生きていく予定です。
 そして、何もかもを取り戻し、その時には思いっきり泣きながら、笑ってやろうと思います。

 最後に、治療に携わってくれた医療関係者の皆様、支えてくれた家族、友人、そして命をかけてドナーになってくれた兄に、心からお礼を言いたい。
 本当にありがとう。


 僕は今日も、生きています。
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みんなの感想(1件)

じゅんちゃん100%

読み始めなのに書いてすみません。俺は去年仕事中にぶっ倒れて医者に診てもらったら癌でした。手にしたはずのビッグな仕事も手放す事になって人生絶望したよ。多分あなたの方がより大変な病気だと思うけど、抗がん治療で何か月も手足の痺れや吐き気に悩まされた苦しみは少しは分かります。どうか負けないで下さい。 これ流してね~

ゆとそま
2022.07.08 ゆとそま

感想ありがとうございます。
じゅんちゃんさんも、お体に気をつけてください。
今続きを書いてますので、もし良かったら読んでくださいね。

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